あらすじ
「玉座に座った最初の近代人」と呼ばれる神聖ローマ帝国皇帝フリードリッヒ二世の巧みな外交により、イェルサレムではキリスト教徒とイスラム教徒が共存することに。しかしその平和は長続きせず、現代では「聖人」と崇められるフランス王ルイ九世が率いた二度の遠征は惨憺たる結末を迎え……。「神が望んだ戦争」の真の勝者は誰なのか――。『十字軍物語3』を文庫第三巻、第四巻として分冊。
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ついに読み終えた壮大な十字軍物語。
「キリスト教を信じる人々の間では、勝った人よりも負けても教えに殉じた人のほうが尊い」とされ、無血でイェルサレム解放を実現したフリードリヒ2世よりも、失策により壊滅的な敗北を喫したフランス王ルイの方が尊敬されるとは、現代の感覚からすれば大きくずれているのが面白い。
この十字軍で得をしたのは誰か。色々な見方はあるだろうが、フランス王家とヴェネツィアやジェノヴァ等のイタリアの国家なのではないだろうか。
カノッサの屈辱によりローマ法王の権力は頂点に達したが、その後の十字軍遠征時代、真面目にイェルサレム解放に取り組んだイギリスや新生ローマ帝国はローマ法王に叩かれ続けた。一方で十字軍遠征には真面目に傘下しなかったフランスは領土も力もつけ、いつも間にかローマ法王よりも強い力を握るようになった。
イタリアにいたっては十字軍国家壊滅後もイスラムの国々と貿易を行い財を成した。
色々な学びのある本である。
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王座に座った最初の近代人と呼ばれる神聖ローマ帝国フリードリッヒ二世の巧みな外交により、イェサレムではキリスト教徒とイスラム教徒が共存することになった。
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「十字軍物語」の最終巻。大きくは第六次(皇帝フリードリヒ)、第七次(聖王ルイ)、アッコン攻防と進んでいき、ついに「十字軍」はその役目を終える。第一次から一貫して指揮系統一本化の困難に悩めされており、それは諸国参加型であるが故、あるいは海軍をイタリア諸都市に外注するが故と語られる点が印象に残った。昨今でもコンサルや非正規社員に頼りがち...というのはよくある話で中々に思うところがあった。
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フリードリヒ二世キター!(本来は、こっちを咲に読むべきだったんだなと)
それにしても、ローマ法王からハモンされ、十字軍と公認されなかった第六次十字軍におけるフリードリヒ二世が交渉で求める者を全て手に入れたにもかかわらず、余計な十字軍をして、何一つ手に入れられなかったどころか、全てを失うきっかけを作ったルイ九世が「聖王」とはね・・・・・・
そして、マムルーク朝がでてくる。ナポレオンがエジプトに攻め込むまで続くマムルーク朝が。
それにしても、そこまでして異教徒を全て海に追い落としたはずなのに、異教徒同士の商売どころかキリスト教とのエルサレム巡礼まで復活しているのを見ると、何のためにおびただしい人命が失われたのだろうか?と思わざるをえない。
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情報とは、その重要性を認識した人にしか、正しく伝わらないもの。
これは、哲学者カントの感覚と認識の区別に通ずるのではないか。
カエサルはそのことを早くも喝破していたのではないか。
フリードリッヒ二世の柔軟性。
自身の側近に敵方のイスラム教徒も複数いた。
生まれは高貴だが育った環境が素養を育んだのか。合理的で近代的な人間だった。
十字軍の歴史にも
チンギスカンが開祖のモンゴル帝国が侵入してくる。歴史は有機的につながっていることの良い例。
宗教強騎士団最後の闘いは圧巻。
滅びの美学。
実質的な宗教戦争は十字軍で終わる。以後は、領土争いに宗教で色付けをしたもの。
最後の宗教戦争、それが十字軍。
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☆☆☆2019年9月☆☆☆
フリードリヒ2世が中心となった第六次十字軍から、ルイ9世の行った第七次、第八次十字軍。そしてアッコン陥落、騎士団の崩壊まで。
フリードリヒ2世の遠征は無血でエルサレムを解放したため当時は激しい批判にさらされた。イスラム教徒とキリスト教徒の共存を実現した稀代の名君だと塩野氏は評価する。アラビア語を自由に操ったり、ナポリ大学を開設し法律を重視したり、当時としては異例の人物だったのだろう。
一方、ルイ9世は宗教的情熱、信念ならだれにも負けなかったが決して優秀な人物ではなかった。悪い人ではなかったのだろうが、十字軍は大失敗に終わった。
その後、マムルーク朝により十字軍国家は崩壊。その歴史にピリオドを打った。
十字軍の足跡を辿る長い、長い旅が終わった。
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まずは、皇帝フリードリッヒによる第6次十字軍。戦うこともせず、無血でイェルサレムを取り返したのにもかかわらず、無血という理由で法王に破門されてしまう。
これまで以上の成果が出てるにもかかわらず、反宗教的な十字軍とされてしまうところが、宗教戦争であったのだろう。
次は、聖王ルイによる第7次十字軍と第8次十字軍。散々な結果に終わってしまい、かつ、イスラム側に勢いを与えてしまう結果に。
さらに、悪い結果は続くもので、イスラムのスルタンも教養者から軍人奴隷の出身者へと変わってしまう。そのことが重なり、十字軍構想は200年の時を経て、なくなってしまうのだった。
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その距離を~競うより~♪ どう飛んだか、どこを飛んだのか♪
♪それが、一番、大切なんだ♪、そうである。
人生ならそんな生き方もあってはいいと思うが、これが勝負の世界、とくに戦争ではそうはいかない。どう飛ぼうが、どのルートを飛ぼうが最後に目的地に着けばいい(勝てばいい)のであって、目的地に着かない(目的を達成できない)のであれば、それは飛んでないのと同じだ。
十字軍の目的は聖地イェルサレムの奪還だ。それ以外ない。第六次十字軍を率いた神聖ローマ帝国皇帝のフリードリヒ二世はイスラム文化に通暁し、自らもアラビア語を解し、通訳なしで交渉にも臨めるほどの稀有な皇帝。スルタンのアル・カミールとも打ち解ける間柄。お互いの立場をよく理解し、なんとな~く、妥協点を探りあっていた。何度かの交渉ののち、スルタンから、うちも身内のゴタゴタで大変で、あなた方を相手してる余裕がないから、軍の引き上げを条件に、イェルサレム、還して欲しいって言うなら還しまっせ、との棚からぼた餅の提案が。戦わずして目的を達成する一大好機到来。やった!俺って持ってる男かも、と皇帝が思ったがどうかはしらないが、ローマにお伺いを立てたりしてたら使者の往復だけで何カ月もかかるから時を逃す。ここは自分の一存で、乗りましょう!その提案。戦争を回避し、犠牲者を全く出さずに目的を達成したんだから、この遠征、大成功でしょ!?。
しかし、それを伝え聞いた法王は「けしけらぬ!」と激怒。なぜなら聖地はキリスト教徒が血を流して異教徒から奪回してこそ意味があるのに戦わないとは何たることか! 皇帝は破門じゃ!破門!と、何度目の破門かわからないけど、再び破門を通達。
意味わからん。
そこは「神がそう望んだ」から労せずして聖地が奪還できたっことでいいじゃん!
それは戦闘の勝利じゃないかもしれないが、戦略の勝利なんだから。と普通は考える。たぶん現地のキリスト教徒もそう考えた。しかし神の代理人の頭の中は違ったようだ。石頭め!
その後、法王の意思に忠実に第七次十字軍を組織したフランス王ルイは多くの犠牲を払うも、失地を回復するどころか次々と拠点を失い、自らも捕囚の身となる大惨敗。でも法王の意を汲んで、多くのキリスト教徒の血をイスラムの地に無駄に流させることに成功したフランス王ルイはのちに聖人に列せられる。
このことをもって個人的にはフランス王に「フランスの乃木将軍」との称号を与えたい。
聖地奪還より血を流すことに意味があるという本末転倒の展開となった今回の十字軍。以後の十字軍も勢力を盛り返すことはなく黄昏を迎える。
いつの時代も戦火や戦禍を拡大させるのは戦争を知らない権力者ということか。
大変お勉強になりました。
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現代でいえば最も評価されるであろうフリードリッヒ二世。無血で聖地イェルサレムを返還する。今までの十字軍史ではなかったこと。その無血を理由に当時では非難の的となる。宗教の厄介なところ。
今まで苦労して苦労して細い地域を奪い奪われ、講和を結んで一時的でも平和があって、とやってきた十字軍国家も終わりが見えてきたのは、相手側の頭がすげ代わったから。これまで数多くの失敗がありながらもやってこれたのは、対するイスラム側が内輪揉めをしていたり、異教徒同士であっても、最低限の共存への意思があったから。その疎通がない相手となると簡単に崩壊する柔さを持った国家だった。
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登場人物の活き活きとした描写。これぞ塩野七生という感じ。
1巻冒頭は役者の紹介から入りやや退屈、やがて十字軍世界に引き込まれていき、サラディンの振る舞いに軽い感嘆の念を抱き、リチャード獅子心王の登場で最高潮の盛り上がり、その後はだれていく十字軍にどんよりした心持ちになり、ラストの聖堂騎士団の悲劇に涙。
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11世紀末から約200年間にわたって、聖地エルサレムを奪還すべく8回もの十字軍遠征が行われ、最後は惨憺たる結末。
第7回の神聖ローマ帝国フリードリッヒ二世が交渉だけで一番上手にやってくれたと思うのだが、戦わなかったから駄目だったなんて、これが宗教なんでしょうかねぇ。一神教同士の戦いは壮烈でした。
キリスト教は、その後宗教改革もあって、まぁお付き合いも出来る宗教になってきたけど、イスラム教はどうなんだろ?
それにしても、50年前の高校で習った世界史に欲しかった書であった。
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第六次十字軍は、カトリック的には無かったものとされている。
神聖ローマ帝国皇帝フリードリッヒは全く戦わなかったのだ。
フリードリッヒはイスラム側のスルタンとの交渉によって、聖墳墓教会はキリスト教、岩のドームはイスラム教というイェルサレムの分割統治という方法で聖地を奪還した。
しかし、戦わず講和によってイェルサレムをキリスト側に取り戻した功績を、ローマ法王が許さなかった。
キリスト教、イスラム教それぞれが互いを不信神の徒と罵り合っていた中で、その不信神の相手と講和するなどもってのほか。
聖地イェルサレムはキリスト教徒の血によって解放されねばならぬ。
その信条を貫いたフランス王、ルイ九世が第七次十字軍を率いる。
フリードリッヒとアル・カミールの間で結ばれた講和だったが、イスラム側は王朝が変わっていた。
サラディンから続いたアイユーブ朝は、奴隷兵士出身の王が新たに開いたマムルーク朝に代わり、キリスト教に敵対していた。
そして第七次十字軍はルイ九世含め、一万人以上の軍勢全体が捕虜となる大敗を喫する。
そして十字軍国家唯一の都市アッコンの陥落により、200年弱続いた十字軍は終焉を迎える。
国の興亡史は参考になる。
栄枯盛衰、兵どもが夢の跡である。
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十字軍の最後の物語。そしてその後について書かれています。十字軍側の知将とイスラム側の知将が揃い、現代ならばそのまま平和へと至るような結果に導かれていた。それなのに、この時代ならではの不幸がそれを捻じ曲げてしまいます。そしてその時代の宗教的な不幸が、さらに事態を悪化させてしまいます。全てが終わった後に残ったものが何だったのか。時代はそのあと、キリスト教とイスラム教の争いが吹き飛ぶような、激動の時代に入って行くところまで書かれています。
最後まで、なかなか熱く読ませていただきました。この時代を好きになることができる一冊です。
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全8回、200年に及ぶ十字軍と迎え撃つイスラム勢の物語。
(全4巻を通しての感想です)
全体的に戦闘ばかりで悲惨なはずだけど、あまり陰鬱な感じはせずに楽しく読めた。
著者は主に西洋側の文献を参考にしているので、十字軍びいきの感があるが、イスラム側の資料も少し参考にしたらしく、数人のイスラム側の指導者は良く描かれている。
イスラム勢力が拡大しているのに、キリスト教国家同士が争っているので、時のローマ法王ウルバン2世が争いをやめさせるためにイェルサレム奪還に向けるために「神がそれを望んでおられる」と言って始まった十字軍。
主なプレーヤーは、ローマ法王、キリスト教国家の王、諸侯、宗教騎士団、イスラムのスルタン(王みたいもの)。
感じたことは
・キリスト教とイスラムの対立は根深い
・イスラムにも紳士的な人はいてしばらくの和平が成り立つ
・原理主義的な人たちは平和的な解決ができない
・宗教騎士団は人数は少ないものの強くて存在感がある
・赤十字は聖堂騎士団(キリスト教側)が胸につけているものなので、現代には馴染まない気がする
塩野七生ファンにオススメです。
Posted by ブクログ
ルイもフィリップも、フランス王はゲスだ…
聖王も美男王も、これはひどい。
第6次のフリードリヒ、個人的にはすごくいいと思うけど、評価低いのね。所詮無神論者では捉えが違うのでしょうね。
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フリードリッヒ二世の奔放ぶりが楽しい。フリードリッヒ二世はリチャードと気が合いそう。塩野さん的に親分肌の真のリーダーなんだろう。カエサルやアレクサンドロスを語っている時のテンポを感じる。
てもそれ以上にこの巻で印象に残ったのはテンプル騎士団。何のために闘ったのか?その存在意義を否定されることほど辛いことはないのでは?本人はおそらくいい人なんだろうけど周りにとっては迷惑千万なルイ9世が聖王で、十字軍国家に尽くしてきたテンプル騎士団が異端裁判とは何ともやるせない…
これで今度はロードス島とかの話にも興味が出てきた。塩野さんの思う壺だなww