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Posted by ブクログ
歴史の授業で習ったことはありますが、十字軍について深掘りしたのは初めてでした。
宗教戦争の通史と聞くと身構えますが、読み始めて感じたのは宗教論より、理想や大義を掲げた人間がどこまで愚かで、どこまで魅力的かという生々しさでした。
第一次十字軍からその終焉までを追いながら、英雄でも悪でもない人間たちが、判断と欲の積み重ねで歴史を動かしていく様子に引き込まれます。
物語として読ませる力は強く、遠い中世の話が妙に生々しく迫ってくる一方で、著者の視点がはっきりしている分、評価の切れ味に引っぱられている感覚になる場面もあります。
それでも、読み終えたあとに残るのは戦争の勝敗ではなく、「正義」は簡単に暴走するという事実でした。
歴史を知るというより、人間の変わらなさを突きつけられたような読後感でした。
Posted by ブクログ
実は今回、『十字軍物語』を選んだきっかけが、ボードワン四世の活躍が読みたかったからというのが大きい。「非株式会社いつかやる」の戦術紹介は秀逸だ。
イエルサレム王国を中心とした十字軍国家はシリア・パレスチナ沿岸の細長い地域でしかない。周りはイスラーム世界に囲まれており、キリスト教にとっての聖地であれば、イスラム教にとっても聖地という複雑な地、イエルサレム。常に兵力不足を抱えながらイスラーム軍の襲撃に耐え続ける。その地に生きる人々の緊迫感は計り知れない。そんな中でのボードワン四世の英明な立ち回り、ライ病を患い先が長くないのを自信も臣下達も悟ったうえで誰もが敬い崇拝した癩王。この1人のために国がまとまり、総力戦で外敵に挑む。13歳で即位し24歳で逝ってしまった儚くも華々しい活躍に涙を禁じ得ない。FGOで実装されたら何がなんでも引く。
そして、そのボードワン四世が倒れて無能なイケメンが即位してすぐにイエルサレム王国は崩壊する。癩王のカリスマあってこそ、なんとかなんとか食いつないできた国家が消え去るのは一瞬だった。
第二巻は第一巻と比べて、突出した人物が少なく、その分登場人物が多く覚えきれなかった。また、地中海の商業国家の話、城塞の話などなかなか読むに進めづらい内容もあったが、全体を通して読めば背景として絶対必要な部分であったと思えた。やっぱり面白い。
塩野七生、イスラーム側も書いてくれないかしら。
Posted by ブクログ
200年間にわたる十字軍国家時代の第二幕の幕開け。
「神がそれを望んでおられる」という号令のもとイェルサレム奪還を成し遂げたヨーロッパ諸国のキリスト教団達。
その名を連ねるのはタンクレディなどの卓越した人材達。
だが、イェルサレム奪還後、
第一次十字軍に名を連らねるような人材がキリスト教側にはいなくなってしまった。
「人材とは、なぜかある時期に、一方にだけ集中して輩出してくるものであるらしい。だがこの現象もしばらくすると止まり、今度は別のほうに集中して輩出してくる。なぜ双方とも同時期に人材は輩出しないのか、という疑問に明快に答えてくれた、哲学者も歴史家もいない。」
たしかに、
古代ローマ時代には、
ハンニバルによって内部からズタズタにされたローマ側には、正面きってハンニバルに太刀打ちできる人材はいなかった。
そのあと、スキピオアフリカヌスが台頭してきたことで、初めて退けることができたが。
イェルサレム奪還後は、
イスラム国家側に人材が輩出していく番であった。
イスラム国家の統一が、サラディンによって初めてなされることになる。
統一を欠いたイスラム国家が統一されたこと、そしてまたサラディンが稀代の戦略家であったことが、イェルサレムがまたもイスラム側に奪還されることへ歴史を動かす。
なぜサラディンは、
イェルサレムを奪還できたのか? その卓越性の大元は何にあるのだろうか?
そのサラディンは、
30歳まで人の眼を引かずに学問と教養を深めていたのだ。
そんなサラディンのことを、当時スンニ派のトップであったヌラディンはサラディンのことを舐めきっていた。
そして、強運だった。
都合の良い時に、都合の悪い人が死んでいった。
そして、教養から身につけたのであろう。今までのイスラム人達が考えなかった戦略でイェルサレム奪還を果たした。
無血開城で。
その際の、イベリンとサラディンの会談は騎士道精神にあふれた素晴らしいエピソードだ。
十字軍とはなんなのか。
その核心に迫ることができる。
Posted by ブクログ
☆☆☆2019年8月レビュー☆☆☆
ゴドフロア、ボエモント、タンクレディ、ボードワンといった第一次十字軍の築き上げた十字軍国家の維持という難題を背負った人々の物語。
完全アウェイの中に築かれた帝国だけに維持が困難なのは想像に難くない。そのために大きな役割を果たしたのは聖堂騎士団、病院騎士団、城砦、経済交流、海軍。
なるほどなぁ、と納得がいった。
約900年前の中東に遠く思いをはせる。
癩王、ボードワン4世の活躍も印象深い。
死を覚悟した人間の美しさがあらわれたような人物。部下からも慕われ、常に最前線で戦った。日本でいえば、大谷吉嗣のような人物だったのではないか。
イスラム側では、ヌラディン、サラディンと英雄が続々とあらわれる。大地震以降のヌラディンの変化(優しくなった?)も興味深い。
十字軍という壮大な人間ドラマもいよいよ折り返し。
花の第三次十字軍へ!
リチャード獅子心王!
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