塩野七生のレビュー一覧
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最高に面白い十字軍の物語。
今回は第一次十字軍の話だが、カノッサの屈辱でグレゴリウス7世が雪の中に皇帝ハインリヒに教皇の有利を示したあと、皇帝の反撃により教皇の権力は地に落ちていた。ウルバン二世が再度、教皇の威を示そうとヨーロッパの諸侯に呼ぶかけた聖地解放。
隠者ピエールの貧民十字軍を皮切りに、フランス王弟ユーグ伯、ノルマンジー公ロベール、ブロア伯エティエンヌ、フランドル伯ロベール。そして、この話の主役たち、ロベーヌ公ゴドフロア、弟ボードワン。ノルマン人のブーリア公ポエモンドと甥のタンクレディ。トゥールーズ伯、サン・ジル。名前を羅列しただけで、読んでいた時のワクワクが蘇って興奮してくる。かれら -
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何度も重複して買い増していた「コンスタンティーノープルの陥落」を、やっと読んだ。
複数の登場人物の立ち位置で陥落までを追っていく。
マホメット2世の冷徹なまでの作戦実行でコンスタンティーノープルは落ちるのだが、ジェノバとヴェネチアとの確執や、正教とカトリックの合同騒ぎでまとまらない中、ビザンチンはよく戦った。
トルコが大型大砲を使用したことが、今まで鎧を身に纏い、馬に跨り剣を振り翳していた騎士の無力さを浮き彫りにした。また、マホメットの領土拡大の行動が、ジェノバの東の拠点を壊滅させ、それがきっかけとして、ジェノバの船乗りが西に目を向け、大航海時代が始まる。この戦いが、中世と近世を分つキーになっ -
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国連の安保理会議で、ロシアも中国も賛成しているとき含め、アメリカがイスラエル批判や停戦決議を拒否した回数は、2024年までに49回(賛成した回数はゼロ)
イスラム世界と"交渉"で和平をもたらしたことをローマ法王に咎められ、破門3回、更には皇帝の位の剥奪という処分まで受けたフリードリヒ2世のその部下が、ローマ法王に直接ぶつけた言葉を、安保理会議の場でも大声でぶつけたい
『Dies ista dies irae, calamitatis et miseriae!
(今日この日は神が怒り災いをもたらし、それによって人間が苦しむ時代が始まる)』
彼の死後、
『「STVPOR -
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面白くて勉強になる。どんな政治評論家よりも納得感がある。
この人の外交センス、国防センス、国際関係の感覚はすごい。長年ローマ帝国の歴史を見てきているので、他国とどのような関係を築がなければならないか、どのような駆け引きが重要か、どのようにすれば平和な状態が続くのか、トップはどうあるべきなのか、そういうセンスが卓越している。文章は言うまでもなくわかりやすくて面白い。
各国これまで積み上げてきた歴史を経て今があるのでそれを尊重しながらだと難しい。特に宗教はややこしい。綺麗事でなくどのような人も国もソントクで動くことを理解しながら合理的な考え方のできる人だと思う。
この本に、小泉純一郎について -
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パレスチナ問題の本いうたら、もとはイギリスの三枚舌外交が招いた悲劇やとかそんな解説がようされとりますけど、ガザの惨状見とったら、それは分かったけどなんとかでけへんのんかい!ちゅうて憤懣やる方なくなりますわ
『テル・アヴィヴからガザまでの距離は、70キロしかない。21世紀の現在では、パレスティーナとイスラエルがこの距離をはさんで、一方がミサイルを撃ちこめば、他方は空爆で応酬する、という状態でつづいている。
しかし、現代からならば800年は昔になる1228年から29年にかけて、この同じ距離の間では、軍事力を使わないで共生を実現しようとする交渉が進んでいたのであった。
それも、キリスト教世界の -
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真打登場。
英国史にとっても十字軍史にとっても欠かせない人物、獅子心王リチャード一世の登場により、十字軍は組織として初めて一本化する。この漢が惚れる漢の中の漢リチャード。単純な戦闘力だけではなく統率力そして気を配れる偉大なリーダー。会ってみたいものだ。ボードワン四世が月ならリチャード一世は太陽であろう。それでもボードワンの方が好きだが。
真の巧者が揃ったところで、両軍の平和が訪れる。これは両首脳が同じくハイレベルであったから均衡が生み出されたのだろう。
それに引き換え、第四次十字軍は一言で言ってしまえば、グダグダだ。やることなすことちぐはぐで本来の十字軍の目的から逸脱し、足並みが揃うことが -
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ついに読み終えた壮大な十字軍物語。
「キリスト教を信じる人々の間では、勝った人よりも負けても教えに殉じた人のほうが尊い」とされ、無血でイェルサレム解放を実現したフリードリヒ2世よりも、失策により壊滅的な敗北を喫したフランス王ルイの方が尊敬されるとは、現代の感覚からすれば大きくずれているのが面白い。
この十字軍で得をしたのは誰か。色々な見方はあるだろうが、フランス王家とヴェネツィアやジェノヴァ等のイタリアの国家なのではないだろうか。
カノッサの屈辱によりローマ法王の権力は頂点に達したが、その後の十字軍遠征時代、真面目にイェルサレム解放に取り組んだイギリスや新生ローマ帝国はローマ法王に叩かれ続けた -
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実は今回、『十字軍物語』を選んだきっかけが、ボードワン四世の活躍が読みたかったからというのが大きい。「非株式会社いつかやる」の戦術紹介は秀逸だ。
イエルサレム王国を中心とした十字軍国家はシリア・パレスチナ沿岸の細長い地域でしかない。周りはイスラーム世界に囲まれており、キリスト教にとっての聖地であれば、イスラム教にとっても聖地という複雑な地、イエルサレム。常に兵力不足を抱えながらイスラーム軍の襲撃に耐え続ける。その地に生きる人々の緊迫感は計り知れない。そんな中でのボードワン四世の英明な立ち回り、ライ病を患い先が長くないのを自信も臣下達も悟ったうえで誰もが敬い崇拝した癩王。この1人のために国がま -
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塩野七生はあくまで物書きとして、物語として歴史を語る。それが面白い。教科書には「事実」が載っているかもしれないが、人の歴史は感情を抜きにしては味気ない。
歴史を単元として覚えようとすると、とても頭に入って来ない。世界史の授業自体は好きだったが、試験科目にしようとは思わなかった。だが、誰それがどこの領主でどんな性格で軍事経験がどうかといったことを踏まえると、活躍する人物は自然と入ってくる。『ハリー・ポッター』の登場人物を覚えるのと何ら変わりがない。それは塩野七生のおかげで各人物が生き生きと描かれているからだ。
さて、いつの時代の"連合軍"というやつも一枚岩ではないことは共