【感想・ネタバレ】ロードス島攻防記のレビュー

あらすじ

イスラム世界に対してキリスト教世界の最前線に位置するロードス島。コンスタンティノープルを陥落させ、巨大な帝国を形成しつつ西進を目指すオスマン・トルコにとっては、この島は喉元のトゲのような存在だった。1522年、大帝スレイマン一世はついに自ら陣頭指揮を取ってロードス島攻略戦を開始した――。島を守る聖ヨハネ騎士団との五ヶ月にわたる壮烈な攻防を描く歴史絵巻第二弾。

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ネタバレ

コンスタンティノープル陥落と同様、戦争では兵士はただの駒なんだと実感。死んだらただ駒が減っただけ。
イスラム教徒にとって異教徒を殺すこと、その戦いの中で死ぬこと、それらはどれも名誉。全く理解できない思想だけど、これが存在していて今も一部で生きている。
キリスト教徒の戦士は、ヴェネチアやジェノバのような通商国家は少し毛色が違うように見えるけど、その他は自国と名誉のためなら命を惜しまない。
これが昔からずっと続いてるんだから、世界平和なんて私が生きているうちには訪れないな。

オルシーニの女、私もあのような形で愛する者を失ったらどうするだろう、と胸が痛くなった。

肉体的にも精神的にも疲弊しきっているだろうに、できる限りの正装を尽くして威風堂々と敵の陣営に降伏条件交渉をしに行く姿、想像した。その精神、見習いたい。

スルタンは冷酷な殺戮者なのに、それでもあの紳士的な対応にはうっかり胸を打たれてしまった。まさに、騎士道。

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2024年12月15日

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ネタバレ

歴史を題材とした物語というよりは、8割方が歴史書のような感じで、物語性を求めると少々物足りなく感じる人もいるだろう。個人的にはもう少し登場人物の性格を表現したり人間関係を詳細に記してくれた方がのめり込みやすいし、特に途中でオルシーニがアニトニオに滔々と説く場面はあまりにも劇画らしくわざとらしさを感じたものである。
しかし、物語調になればなるほど、史実に作者の恣意は反映されて事実と乖離する可能性も高くなる。そう言う点から考えると非常に良書である。

と、まあここまで書いておいてなんだが、私の推しはオルシーニである。
そこまで人間性を書き込んだ表現を詳細にしているわけでもないのに、何故この人はここまで格好いいんですか。いや本当、格好良すぎやしませんか?
トータルなかなか良い人ではないかと思ったのだが、極め付きは
「人間には誰にも、自らの死を犬死と思わないで死ぬ権利がある。そして、そう思わせるのは、上にある者の義務でもある。」
である。いやもう本当これぞ帝王学ですよ、一端に過ぎないだろうけど。
モチベーション保つのは個人の仕事ですとか言いながら、部下のモチベーションどんどん削ってくる上司に言い聞かせたい台詞ナンバーワンである。
「人間には誰でも、自らの業務を無駄と思わず仕事する権利がある。そして、そう思わせるのは、上にある者の義務でもある。」
この汎用性の高さよ。ぜひ積極的に使っていきたい。

そして最後に、ネタバレに設定しているので許されるだろうと、該当場面を読んだ私の心の叫びを記しておく。




推しが死んだーーーーーーーーーーーっっ!!(号泣)

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2024年05月26日

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塩野七生氏 海戦三部作の第二

ベネチアの高い技術力 造船・築城
国家経営もそうだが。高い知力が不可欠
教育・人材育成システムは?

ロードス島の城壁を強化
トルコ スレイマンの勝利
騎士の時代の終わりの始まり

塩野七生氏の歴史観
 歴史は物語である
 近代歴史は科学であろうとして痩せていった
 ベネチアの歴史の教訓は現代日本へのもの

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2021年05月09日

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中世で数限りなく起こったキリスト教勢力とイスラム教勢力の戦いの一つの解説だが、一部、塩野先生好みの歴史小説めいた部分もある。
戦いの解説とはいえ、実際に放火が交えられるのは半分を超えた後であり、それまでは歴史状況の説明や防衛側の防衛強化の方策などの説明が入る。
また、この時期に登場した大砲により、それまでは城塞の防御力の象徴であった城壁の高さが却って攻撃側のメリットに転じるあたりはわかりやすく、例えば我が国の大坂の陣での天守閣への大砲直撃のエピソードなどを想起させられた。

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2021年02月16日

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めちゃ面白い。騎士団もスレイマン1世も、
まさに"ジェントルマン"!
私はロードス島に行ったことがあるので、
話の中の砦とか場所にも馴染みがあり、
すごく楽しめた。
ロードス島行く方には、ぜひ読んでほしい。
マルタ共和国も行きたいなぁ。
スレイマン1世の話も読みたくなった!

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2020年04月07日

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イスラム世界に対してキリスト教世界の最前線に位置するロードス島。コンスタンティノープルを陥落させ、巨大な帝国を形成しつつ西進を目指すオスマン・トルコにとっては、この島は喉元のトゲのような存在だった。1522年、大帝スレイマン1世はついに自ら陣頭指揮を取ってロードス島攻略戦を開始した―。島を守る聖ヨハネ騎士団との5ヶ月にわたる壮烈な攻防を描く歴史絵巻第2弾。

闘いが始まる前にロードス島に着任したイタリア騎士のアントニオと、
ヴェネツィア共和国が密かに送り込んだ城塞築城技師のマルティネンゴ。
この二人を登場させたことで、圧倒的防御にまわったロードス島攻防記の、
騎士たちの戦闘による活躍と、市民たちまでもが協力にまわった要塞防御の二面を、
分かりやすく物語にしている。

時のトルコのスルタンはスレイマン大帝。
トルコという国としても、国力充実していた時期であるし、
スレイマン大帝という非常に有能な人物のおかげで、ますます威力に拍車がかかる。
もしもスレイマン大帝でなかったら、非常に徹底した封鎖作戦と物流作戦、
および聖ヨハネ騎士団敗北後の住民および騎士たちの無事な撤退はありえなかっただろうと思える。
この戦争を通して騎士の中の騎士と呼べるのはスレイマン大帝である。

そして、ロードス島を撤退した後の騎士団の後日談があるのがよかった。
スペイン王カルロスの思惑もあり本拠地をマルタ島に移す騎士団。
マルタには行かず修道僧としての生き方を選んだアントニオ。
怪我のために自らはヴェネツィアに戻り、弟子をマルタに派遣したマルティエンゴ。
マルタ島で何もかも一から築き上げた聖ヨハネ騎士団は、
ナポレオンに追放されるまで、北アフリカを戦場にマルタを守りきる。

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2019年05月24日

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聖ヨハネ騎士団がロードス島防衛に敗北し、若きイスラムの長スレイマンに開城する、歴史的分岐点の物語です。
イスラム世界は異教徒に対して寛容であり、征服者として優れていたと思われます。
ロードス島征服においても、騎士や住民に対して蛮行は少なく、紳士的な交渉によって解決へ向かいます。
極めて洗練された外交(戦争も含む)は無駄がなく、更には双方に人間的な余裕を与え、望ましい結果へ導きます。
当事者だけでなく、後世の我々も心地よく感じることのできる一冊。

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2017年08月18日

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歴史に興味があるわけではなく、聞いたこともない島での戦いを綴ったこの小説は、家に読むものがなくて渋々読み始めた。
やっぱり読み始めは、外国の慣れない単語、宗教、歴史、地理などと興味が湧かず頭に入っていかないのだが、途中からだんだんとパズルが繋がっていき、面白くなってどんどん読み進めた。
1500〜1530年のどこの国というわけではない、ロードス島という特殊な背景にある島で起こったひとコマの物語。あらすじを読んだだけでは絶対に読みたいと思えない小説が、ドラマチックに描かれ、エンターテイメントであるのと同時に観光、地理、歴史書の類いでもあると言っていい。
何より、著者の状況説明や背景の描写が素晴らしく、読者だけ置いてけぼりにならない。歴史をよく理解していないとできない所業だろう。

とにかくお勧めしたい本。ロードス島へ行ってみたくなるだけではなく、ヨーロッパの歴史や宗教を面白く理解するのに適した一冊。

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2016年12月06日

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聖ヨハネ騎士団(マルタ騎士団)を知りたくて。

約250ページあっという間!史実を中心に読み進めていたので、アントニオとオルシーニのまさかの展開にはびっくり。笑

面白かったです。塩野さんはやはりすごいんだなあ…

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2016年05月10日

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『コンスタンティノープルの陥落』に続くキリスト教世界VSイスラム教世界の対決第二ラウンドです。
 コンスタンティノープルを攻略した後、巨大な帝国へとその勢力の拡大していたオスマン・トルコにとって、ロードス島は喉元のトゲのような存在でした。時の大帝スレイマン一世はついに自ら陣頭指揮を取ってロードス島攻略を開始します。攻めるオスマントルコ軍は二十万、一方でロードス島の守備隊・聖ヨハネ騎士団はわずか六百人。初めから勝負は決まっていましたが、ヨハネ騎士団は五ヶ月にわたり砦を守り抜きます。
 
 ペルシャとスパルタの「テルモピュライの戦い」や日本でいえば楠木正成の「千早城の戦い」と同じで数の戦力差は信用できませんが、圧倒的に不利な戦いに挑みゆく騎士道精神と宗教的使命感に感銘を受けます。

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2017年08月15日

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一四五三年のコンスタンティノープル攻防戦は、戦争が歴史を変える好例である。大砲活用によって以後の築城技術、つまり戦法全般に改革を強いたことと、大軍投入によって、大君主国時代への移向を強いるという、歴史的変革をともなった戦争であった。一五二二年のロードス島攻防戦は、この二面とも、七十年前に起ったことから生じた影響を、全面的に受けるかたちで行われる。

歴史の忠実性がどの程度かは分からない。だから小説として捉えて良いのか、いや、区分はいらないのだろう。例えば、司馬遼太郎のように、創作が混じったとしても仕方ない。既存の資料だけで物語を紡ぐのは難しいから、空想がそれを埋めるのだろうから。

本作は、時代背景の説明と物語、7対3位の比率だろうか。だから淡々と進む感じもあるのだが、しかし、面白い!この淡々としたストーリーテラーの中に、騎士道精神を彷彿させる人間ドラマがたっぷりと滲み出てくる。時代、世界観が伝わってくる内容で教養的にも、エンタメ的にも充実した読書だった。

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2024年09月21日

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ネタバレ

『コンスタンティノープルの陥落』が面白かったので、第二弾を。いつか行ってみたいマルタのマルタ騎士団が、ロードスにいた聖ヨハネ騎士団だったのかと、勉強にもなった。スレイマンもかなり寛大。

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2023年10月31日

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登場人物みんなかっこいい
アントニオとオルシーニの間に微かなブロマンスを感じ取りながら読み進め、最後は本を閉じて天を仰いだ。防衛側も熱いが侵略側のスレイマンがまた魅力的。勝者が敗者に敬意を示す瞬間はフィクションでもリアルでも、感慨深い気持ちになります。

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2022年06月18日

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「キリストの蛇の巣」をオスマン帝国が攻める話。騎士団と言うより日本で言う村上海賊みたいなものだったのかというものであったのかと思いました。
しかしこの騎士団が現在でも「国家」として存在しているのには衝撃を受けました。

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2019年10月18日

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ネタバレ

コンスタンチノープルの陥落に続いて、今度はスレイマン1世、ロードス島の攻防。オスマン帝国の最盛期に、大軍の包囲に4か月耐えたヨハネ騎士団の物語。
戦闘そのもの以上に背景や戦いの準備が丁寧に描かれている。
ヨハネ騎士団がマルタ騎士団になって、さらに現代にも残っていることに驚き。「マルタの鷹」もここから来たのか。

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2019年10月06日

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聖ヨハネ騎士団によるトルコ帝国からロードス島を守る戦いを描いた作品。
1522年に行われた戦いを主に騎士団側から描いている。
コンスタンティノープルの陥落と同様に複数人の視点で描かれているが、登場人物が少ないからか本作は読みやすい。
史実なのでネタバレしても構わない気もするけど、本作品も他の作品と同様に物語性が強いので避けますが、
・ロードス島は歴史が古く、気候が良く、バラの花が咲く島
・聖ヨハネ騎士団は今も続いている
・ほんの少しだけキリスト教的な奇跡の話が盛り込まれている
十字軍の物語を読んだ人におすすめです。

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2019年08月22日

Posted by ブクログ

高校で世界史を選択しなかった自分としてはキリスト教世界のヨーロッパ史もさっぱりだし、ましてやイスラム圏をや。

この2つが交錯する時代の話はだから新鮮。

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2019年01月20日

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ネタバレ

おもしろかったけど、コンスタンティノープルの方が好き。というか、史実にせよ、ラストが甘くて締まらない。なんで海賊の砦壊すだけでそんなに相手をケアしなきゃならんのか。

相変わらず西洋とアジアのスタイルの対比がいい。
スレイマンはさすが立法者という感じ。甘いけどそこがいい。というか相手ただの海賊なのにそんな丁寧に扱うなんて、スターのくせにほんとボンボン感ある。
カトリック側は見事な内輪もめでろくな体制を取らず、現場のみなさんは頑張ったにせよそのまま負ける。てかほんとスレイマンがいいやつすぎて、恐怖キャラのメフメトIIとの対談が聞きたくなるレベル。

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2018年05月20日

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 3大騎士団のひとつ、聖ヨハネ騎士団の興亡を、ロードス島をめぐるオスマン帝国との戦いをメインに描く。
歴史とはこうも今日への示唆に富むものなのかと驚かされるのは、著者の書く腕の良さゆえだろう。
 ロードス島の戦いの主役となるのは騎士団側、オスマン帝国側もそれぞれ20代の若者、いわばカデット(士官候補生)だった。そういった若者たちの活躍や心情といったミクロな視点から、勢力の興亡といった歴史のマクロの視点まで盛り込んでどちらも書ききっているのには驚かされる。

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2017年01月04日

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「ロードス島攻防記」
塩野七生の「コンスタンティノープルの陥落」「ロードス島攻防記」「レパントの海戦」三部作の一つ。
強大なオスマントルコに対してロードス島で防衛する聖ヨハネ騎士団の奮戦を描いた作品である。超大国のイスラム勢力に対抗するキリスト教徒の聖ヨハネ騎士団は、イスラム側から見れば低開発国の海賊にしかすぎないように見える。
物語はイタリア、フランスの二人の騎士とベネチアの築城技師を中心に描かれるが、書き方は「ローマ人の物語」に近く歴史奇譚調である。
10万の大軍を率いて攻めてくるオスマントルコに対し騎士団側は600名ばかり。もちろん島の住民の協力はあるものの圧倒的な多勢に無勢。
オスマントルコ側は大砲による大量の砲撃と地下を掘り進んで城壁下を発破する方法で攻撃してくる。対する騎士団側は砲撃対応の築城技術、火炎放射や手榴弾、地下を掘り進む振動を感知する方法を編み出すなど、果敢に応戦するが圧倒的な兵力の前に最後には名誉ある撤退することになる。
オスマントルコ側も兵力の半分を消耗し、それでも勝利したのは大帝スレイマン一世の強い意志によると評価している。騎士団側も奮闘したが最後は住民の戦意が失われ協力が得られなくなり、最後は降伏に応じざるを得なかった。
エピローグでロードス島を去った騎士団はマルタ島に本拠地を移し、40年後にオスマントルコのマルタ攻防でトルコ側を撃退して一矢報いたことを書いている。
読んでいて思い至るのは第2次大戦時の硫黄島での攻防である。玉砕するしか道が残っていなかったのだろうか。考えさせられる。

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2016年09月04日

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ネタバレ

いゃーー 
おもしろかった 
「歴史は、まず何よりも物語でなければならない」と言っているけど、これって物語だよね、こんな細かい具体的な表現

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2015年04月05日

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ネタバレ

コンスタンティノープルが陥落し、トルコ帝国がその手を地中海に伸ばす中で、要となるロードス島を攻略するために始まる篭城戦。トルコ軍に対するは聖ヨハネ騎士団。5ヶ月に渡る攻防の上に迎える結末とは?
前作に続き、多くの人物から1つの時期を見つめる物語形式は秀逸。歴史は物語形式、というのも納得。
前作に続き、国の興亡・戦う人の想い・人の一生というものを考えさせられる物語でした。

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2014年07月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

塩野氏の本はこれまでもいくつか読んでますが、ごく簡単に言ってしまうと「詳しい割に読みやすくて面白い」という評に尽きると思います。
史実やディテールを詳しく描写することで、ともすると難しい話になって拒否反応を起こす可能性もある中、塩野氏はちょうどいいバランスで「説明のための」記述を終え、次の舞台へと進めてくれます。各所に散りばめられた知識を拾い集めて読み進めていくうちに、いつの間にか全体的な知識と世界観が読み手の頭の中に作られている文章の運び方はまさに職人芸、といったところ。

作品の舞台は16世紀初頭、地中海に浮かぶロードス島。イスラム教勢力がキリスト教勢力を脅かし、西欧世界に侵略の手を伸ばそうとしていた時代、イスラム勢力にとっては「キリストの蛇」、キリスト勢力にとっては「最前線の砦」としてロードス島に立ちはだかっていた「聖ヨハネ病院騎士団」を主軸に置いた物語です。とは言っても、対立軸であるイスラム側のオスマン・トルコ帝国を単純に「悪」とすることはなく、冷静かつ中立的な視点から、むしろ帝国の専制君主であるスルタン・スレイマン一世を威風堂々とした尊敬すべき人物として描いていることに好感が持てます。

具体的なストーリーについて語れるほどの筆力がないので粗筋については触れませんが、恐らく世界史の教科書にさえ黙殺されかねない「騎士団」とはどんな構成員から成る集団であり、どのように生計を立て、どのような存在意義のもとで生きていったのかについて、小説を楽しみながらも知ることができます。
娯楽と教養を無理なく両立できる良書です。

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2014年05月21日

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聖ヨハネ騎士団がトルコのスルタン、スレイマン1世によって本拠地としていたロードス島を追い出される話。
聖ヨハネ騎士団はエルサレムで聖地巡礼者のための診療所であったが、
やがて他の騎士団のように武器を持ち、対トルコの最前先であった現ギリシャのロードス島に要塞を構えていた。騎士団員は貴族の次男坊が多く、この話のもととなった手記を残したアントニオ・デル・カレットもまだ20歳の若者であった。25歳のジャンバッティッスタ・オルシーニは名門オルシーニ家の出身。享楽的で奔放であったが、戦いっぷりは勇猛果敢で、一目置かれる存在。新参者のアントニオと意気投合し、以後愛情とも友情ともとれない親密な感情を育てていく。厳格で盲目的な騎士団長秘書官のジャン・ド・ラ・ヴァレッテとトルコのスレイマン1世は28歳。この若者たちが、5ヶ月にわったっての攻防戦を繰り広げるが、戦記というよりは政治的な駆け引きを感じさせる。双方すぐれた指導者、技術者を持ち、気合も十二分。
だけど現実的な講和も成せる聡さを持ち合わせているので、なかなか面白い。自国の建築技師マルティネンゴを見逃し、ロードス島の防衛に参加させることは、西欧諸国とトルコ双方との関係を維持している通商立国ヴェネチアの慎重な外交政策の結果であるのだがこれを表わすヴェネチア人の手紙、つまり作者がその著書で多く引用するヴェネチアの諜報部員、外交官からの本国への通信がいかに貴重な資料であるかを感じせずにはいられない。デル・カレットの手記もそうであるが、それが個人の主観で表わされたものであってもまた、政治外交とは一見無関係であるような日常の些事であっても
記録に残すことが、後世にとって大切な教訓となりうるのだと思う。身内の密通者があらわになったり、マルティネンゴが負傷したりで、いよいよ劣勢に陥った騎士団は講和の申し入れを受け入れ、条約締結のために訪れたスレイマン1世に面会する。彼はリラダンらが思い描いていた粗野で野暮な異教徒ではなかった。洗練された聡明さと意志の強さをもつ若きスルタンに、リラダンは誇り高い騎士の姿を見出す。
ロードス島を追われた騎士団は流浪の旅を続け、やがてマルタ島という絶海の孤島におわれることになるが、常に対トルコの最前線という位置に本拠地をおいていた騎士団にとっては、その存在意義そのものを変化させざるを得なくなっていくのである。それにしても幾多の危機を乗り越えながらも現代にまで存続する聖ヨハネ騎士団という
団体は、変化していく国際情勢や宗教的価値をある意味柔軟な姿勢で乗り越えてきたのだろう。

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2014年03月31日

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ロードス島における聖ヨハネ騎士団とオスマン・トルコの攻防戦。東地中海の一島における局地戦ではなく、キリスト教世界とイスラム教世界の間での重要な戦いとして捉え、長期に渡る攻城・篭城戦を活写する。

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2010年12月05日

A

購入済み

面白かった

個人的には面白かったけど
評価するのが難しい本です。
痛快活劇というわけではないので
読む人それぞれの面白さを見つけてください。

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2023年04月02日

Posted by ブクログ

Wikiによると、
1522年のロドス包囲戦(ロドスほういせん、英語:Siege of Rhodes イタリア語:Assedio di Rodi トルコ語:Rodos'un Fethi)は、オスマン帝国が聖ヨハネ騎士団をロドス島から完全に駆逐した戦い。この結果オスマン帝国は東地中海での覇権を確立し、聖ヨハネ騎士団はシチリア島に撤退、後にマルタ島へ移ってオスマン帝国に抵抗し続けた。


中世のほぼ最後の騎士による戦いといったところだろうか。
キリストvsイスラムという構図の中で、ヨーロッパ各国からの支援が全く期待できず、まさに孤軍奮闘する様は騎士道の最後にふさわしい。
ローマ人の物語のように長編ではなく、文庫本1冊に収まる分量なので流れは良いけれど、もう少し重厚感が欲しかったところではある。

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2021年02月27日

Posted by ブクログ

イスラム世界に対してキリスト教世界の最前線に位置するロードス島。コンスタンティノープルを陥落させ、巨大な帝国を形成しつつ西進を目指すオスマン・トルコにとっては、この島は喉元のトゲのような存在だった。1522年、大帝スレイマン一世はついに自ら陣頭指揮を取ってロードス島攻略戦を開始した――。島を守る聖ヨハネ騎士団との五ヶ月にわたる壮烈な攻防を描く

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2019年09月08日

Posted by ブクログ

『コンスタンティノープルの陥落』につづき『レパントの海戦』へとつながる三部作の第二弾です。

ビザンチン帝国がオスマン・トルコに敗北したのち、ロードス島に拠点を置く聖ヨハネ騎士団がトルコのスルタンであるスレイマン一世の猛攻に対してどのように戦い、どのような結末を迎えたのかということを、ラ・ヴァレッテ、オルシーニ、アントニオといった若き騎士たちや、ヴェネツィア共和国からロードス島へわたり砦の強化に尽力した築城技師マルティネンゴといった登場人物の眼を通してえがいています。

同時に著者は、前著であつかった1453年のコンスタンティノープル攻防戦を参照しつつ、「1522年のロードス島攻防戦は、……七十年前に起こったことから生じた影響を、全面的に受けるかたちで行われる、最初の戦争になるのである」と述べており、ヨーロッパの戦史におけるロードス島攻防戦の意味を俯瞰的な視座からもとらえようとしています。

前著が比較的「小説」らしい語り口をのこしていたのに対して、今作はもうすこし「歴史読み物」といったような印象が強く感じられる作風だったように思います。

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2018年09月04日

Posted by ブクログ

三部作の中で一番好きな本。

男性女性問わず、彼女の描く男たちの背中を思い浮かべては「男」というものの理想像を自分の中で作り上げている人は多いのではないでしょうか。

今回のこの作品で描かれている男たちは、
高貴であり、高潔かつ矜持をもったGentlemanが描かれていると思います。

特に、敗戦後の彼らの態度や姿勢は、敗戦を経験した国である日本の男たちもおおいに見習うべき「男らしさ」を感じました。

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2017年08月20日

Posted by ブクログ

一応、一人の若いヨハネ騎士団員が主人公の小説仕立てなのだが、いつもの説明口調の歴史書とあまり変わらない・・・

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2015年02月19日

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