塩野七生のレビュー一覧
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華々しい。歴史に名高いアレクサンドロス三世の物語は、小説よりも面白い。ギリシアの歴史としては4作目にはなるけれども、この一冊だけ単体で読んだとしても良いくらい。ギリシアの歴史がアテネを中心に繁栄から衰退へ辿っていく前回の方が頁数は少なかった。しかし内容が辛く読むのに時間がかかった。それに比べると今回はサクサク読める。内容も連勝に続く快進撃なので気持ちが全く違った。アレクサンドロスが持つ才能だけではなく若さ故の無鉄砲さ、また若いまま燃え尽きるように表舞台から消えてしまう儚さが、歴史の主人公として出来過ぎている。そして後継者争い、分裂。これほど典型的なのに惹かれる史実も無いだろう。
アレクサンドロスとへーファイスティオンの関係性は、少なからず『銀河英雄伝説』のラインハルトとキルヒアイスのモデルになっていると思う。
Fateのイスカンダルは、格好良いんだが歳は取りすぎでは?と改めて思った。リチャード1世とかシャルルマーニュくらいが丁度良いのではと思うのでセタンタみたいに若返り実装してくれると有難い。 -
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最高に面白い十字軍の物語。
今回は第一次十字軍の話だが、カノッサの屈辱でグレゴリウス7世が雪の中に皇帝ハインリヒに教皇の有利を示したあと、皇帝の反撃により教皇の権力は地に落ちていた。ウルバン二世が再度、教皇の威を示そうとヨーロッパの諸侯に呼ぶかけた聖地解放。
隠者ピエールの貧民十字軍を皮切りに、フランス王弟ユーグ伯、ノルマンジー公ロベール、ブロア伯エティエンヌ、フランドル伯ロベール。そして、この話の主役たち、ロベーヌ公ゴドフロア、弟ボードワン。ノルマン人のブーリア公ポエモンドと甥のタンクレディ。トゥールーズ伯、サン・ジル。名前を羅列しただけで、読んでいた時のワクワクが蘇って興奮してくる。かれらのセルジュークのトルコ人、エジプトのアラブ人などイスラム勢力との戦いにページを捲る手が止まらない。十字軍も中身を知らなければ、本当にわかったことにはならないんだな。私はタンクレディの優秀さに惹かれてしまった。 -
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何度も重複して買い増していた「コンスタンティーノープルの陥落」を、やっと読んだ。
複数の登場人物の立ち位置で陥落までを追っていく。
マホメット2世の冷徹なまでの作戦実行でコンスタンティーノープルは落ちるのだが、ジェノバとヴェネチアとの確執や、正教とカトリックの合同騒ぎでまとまらない中、ビザンチンはよく戦った。
トルコが大型大砲を使用したことが、今まで鎧を身に纏い、馬に跨り剣を振り翳していた騎士の無力さを浮き彫りにした。また、マホメットの領土拡大の行動が、ジェノバの東の拠点を壊滅させ、それがきっかけとして、ジェノバの船乗りが西に目を向け、大航海時代が始まる。この戦いが、中世と近世を分つキーになっていることが、よくわかる。 -
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国連の安保理会議で、ロシアも中国も賛成しているとき含め、アメリカがイスラエル批判や停戦決議を拒否した回数は、2024年までに49回(賛成した回数はゼロ)
イスラム世界と"交渉"で和平をもたらしたことをローマ法王に咎められ、破門3回、更には皇帝の位の剥奪という処分まで受けたフリードリヒ2世のその部下が、ローマ法王に直接ぶつけた言葉を、安保理会議の場でも大声でぶつけたい
『Dies ista dies irae, calamitatis et miseriae!
(今日この日は神が怒り災いをもたらし、それによって人間が苦しむ時代が始まる)』
彼の死後、
『「STVPOR MVNDI」(世界の驚異)が、以後のフリードリッヒの代名詞になるのである。「ストゥポール・ムンディ」と言うだけで、ヨーロッパの教養人ならば誰のことかわかる。』
どれだけすごい人がひとりいても、それは泡沫(うたかた)の夢になりこそすれ、時代の大きな流れを変えることはできない
でもそんな泡沫も、それが強く輝くものであれば、こうして1,000年後にまで語り継がれ、今度こそ夢を現(うつつ)に変える力になるのかもしれない
In the United Nations Security Council, despite Russia and China voting in favor, the United States has vetoed Israel criticism and ceasefire resolutions 49 times up to 2024 (and it has never voted in favor).
Friedrich II was condemned by the Pope—excommunicated three times and even stripped of his imperial title—for bringing peace through "negotiations" with the Islamic world. His subordinate, however, directly confronted the Pope with these words, and these words shold be loudly voiced at the Security Council meetings:
"Dies ista dies irae, calamitatis et miseriae!
(This day is the day of wrath, calamity, and misery brought by God, marking the beginning of an era in which humanity suffers.)"
After he passed away,
"'STVPOR MVNDI' (Wonder of the World) became synonymous with Friedrich thereafter. Just by saying 'Stupor Mundi,' any cultured European knows exactly who it refers to."
No matter how extraordinary one person may be, that person alone cannot change the great currents of the age—at best, it becomes a fleeting dream.
But even such fleeting dreams, if they shine brightly enough, can be passed down like this over a thousand years and may finally become the power to turn dreams into reality. -
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面白くて勉強になる。どんな政治評論家よりも納得感がある。
この人の外交センス、国防センス、国際関係の感覚はすごい。長年ローマ帝国の歴史を見てきているので、他国とどのような関係を築かなければならないか、どのような駆け引きが重要か、どのようにすれば平和な状態が続くのか、トップはどうあるべきなのか、そういうセンスが卓越している。文章は言うまでもなくわかりやすくて面白い。
各国これまで積み上げてきた歴史を経て今があるのでそれを尊重しながらだと難しい。特に宗教はややこしい。綺麗事でなくどのような人も国もソントクで動くことを理解しながら合理的な考え方のできる人だと思う。
この本に、小泉純一郎について書かれている。調べると、彼が総理大臣だったのは2001年から2006年なので、文章としてはその頃に書かれたものだろう。20年くらい前の文章を今読んでいることになる。この頃の情勢についての予想を書いたりしている。正直に言えば、国際情勢については、恥ずかしながらその後どういう経緯で今に至っているか知らない、または忘れてしまったことが多い。復習したい。
この本の中で「「事」に通じていながら「事前」に書かれたものを「事後」に読み、書き手の資質、つまり事後でも読むに耐えるものを書ける能力」ということに触れているが、十分に読み応えがある。20年どころか、2000年前の話を読ませる力があるのだから当然と言えば当然だろう。
しばらくこの人の本を読み漁ると思う。
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パレスチナ問題の本いうたら、もとはイギリスの三枚舌外交が招いた悲劇やとかそんな解説がようされとりますけど、ガザの惨状見とったら、それは分かったけどなんとかでけへんのんかい!ちゅうて憤懣やる方なくなりますわ
『テル・アヴィヴからガザまでの距離は、70キロしかない。21世紀の現在では、パレスティーナとイスラエルがこの距離をはさんで、一方がミサイルを撃ちこめば、他方は空爆で応酬する、という状態でつづいている。
しかし、現代からならば800年は昔になる1228年から29年にかけて、この同じ距離の間では、軍事力を使わないで共生を実現しようとする交渉が進んでいたのであった。
それも、キリスト教世界の俗界の第一人者である皇帝と、イスラム世界俗界の第一人者であるスルタンの間で。』
この皇帝はんこそ、神聖ローマ帝国のフリードリヒ2世はんでして、結局のところ軍事力やのうて外交交渉で聖地エルサレムを譲り受けはりました
さらに、融和政策でイスラム教とキリスト教の共生を成功させはったんやて
ほんにえらい方がおったもんどす
これと対象的なんは、異教徒との交渉など断じて許しまへんいう考えの当時のローマ法王はんどす(言うこと聞かへんフリードリヒ2世はんを2回も破門しはったんやで!)
そないな頑迷さがどれだけ共生の妨げになるかいうことが、ほんまよう分かりますわ
〔続きは下巻でよろしゅお頼み申します〕
When reading books about the Palestinian issue, the explanation often goes that the tragedy was originally brought about by Britain’s double- and triple-dealing diplomacy. However, every time I see the devastation in Gaza, I cannot help but feel a deep, unshakable frustration, thinking, "I get that, but isn’t there anything that can be done about it?"
“The distance from Tel Aviv to Gaza is only 70 kilometers. In the 21st century, Palestine and Israel continue to exist on opposite sides of this short stretch—with one side firing missiles and the other responding with airstrikes.
Yet, going back around 800 years from today, during 1228–1229, negotiations were underway along this very same distance, aiming to achieve coexistence without the use of military force.
What’s more, this was being conducted between the Holy Roman Emperor, the foremost secular leader of the Christian world, and the Sultan, the secular leader of the Islamic world.”
This emperor was none other than Frederick II of the Holy Roman Empire. In the end, he succeeded in gaining control of the holy city of Jerusalem not by military means, but through diplomatic negotiations, and he achieved coexistence between Islam and Christianity through his policy of reconciliation.
In stark contrast to this was the Pope of Rome at the time—who absolutely rejected negotiations with infidels (to the point that he excommunicated Frederick II not once, but twice for his disobedience!). This clearly shows just how much harm stubbornness can cause to the possibility of coexistence.
〔To be continued in the next volume〕 -
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真打登場。
英国史にとっても十字軍史にとっても欠かせない人物、獅子心王リチャード一世の登場により、十字軍は組織として初めて一本化する。この漢が惚れる漢の中の漢リチャード。単純な戦闘力だけではなく統率力そして気を配れる偉大なリーダー。会ってみたいものだ。ボードワン四世が月ならリチャード一世は太陽であろう。それでもボードワンの方が好きだが。
真の巧者が揃ったところで、両軍の平和が訪れる。これは両首脳が同じくハイレベルであったから均衡が生み出されたのだろう。
それに引き換え、第四次十字軍は一言で言ってしまえば、グダグダだ。やることなすことちぐはぐで本来の十字軍の目的から逸脱し、足並みが揃うことがない。こうもひどいのはしかし、そもそも封建領主の集まりだったり、王達が集って一つ「十字軍」という旗印を立てたとしても、一枚岩になるのが困難なのだと考えなければならないのかもしれない。第一次と第三次が奇跡的に機能出来たということに過ぎないといえばそうなのかもしれない。 -
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ついに読み終えた壮大な十字軍物語。
「キリスト教を信じる人々の間では、勝った人よりも負けても教えに殉じた人のほうが尊い」とされ、無血でイェルサレム解放を実現したフリードリヒ2世よりも、失策により壊滅的な敗北を喫したフランス王ルイの方が尊敬されるとは、現代の感覚からすれば大きくずれているのが面白い。
この十字軍で得をしたのは誰か。色々な見方はあるだろうが、フランス王家とヴェネツィアやジェノヴァ等のイタリアの国家なのではないだろうか。
カノッサの屈辱によりローマ法王の権力は頂点に達したが、その後の十字軍遠征時代、真面目にイェルサレム解放に取り組んだイギリスや新生ローマ帝国はローマ法王に叩かれ続けた。一方で十字軍遠征には真面目に傘下しなかったフランスは領土も力もつけ、いつも間にかローマ法王よりも強い力を握るようになった。
イタリアにいたっては十字軍国家壊滅後もイスラムの国々と貿易を行い財を成した。
色々な学びのある本である。 -
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実は今回、『十字軍物語』を選んだきっかけが、ボードワン四世の活躍が読みたかったからというのが大きい。「非株式会社いつかやる」の戦術紹介は秀逸だ。
イエルサレム王国を中心とした十字軍国家はシリア・パレスチナ沿岸の細長い地域でしかない。周りはイスラーム世界に囲まれており、キリスト教にとっての聖地であれば、イスラム教にとっても聖地という複雑な地、イエルサレム。常に兵力不足を抱えながらイスラーム軍の襲撃に耐え続ける。その地に生きる人々の緊迫感は計り知れない。そんな中でのボードワン四世の英明な立ち回り、ライ病を患い先が長くないのを自信も臣下達も悟ったうえで誰もが敬い崇拝した癩王。この1人のために国がまとまり、総力戦で外敵に挑む。13歳で即位し24歳で逝ってしまった儚くも華々しい活躍に涙を禁じ得ない。FGOで実装されたら何がなんでも引く。
そして、そのボードワン四世が倒れて無能なイケメンが即位してすぐにイエルサレム王国は崩壊する。癩王のカリスマあってこそ、なんとかなんとか食いつないできた国家が消え去るのは一瞬だった。
第二巻は第一巻と比べて、突出した人物が少なく、その分登場人物が多く覚えきれなかった。また、地中海の商業国家の話、城塞の話などなかなか読むに進めづらい内容もあったが、全体を通して読めば背景として絶対必要な部分であったと思えた。やっぱり面白い。
塩野七生、イスラーム側も書いてくれないかしら。