塩野七生のレビュー一覧
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ネタバレ『海の都の物語』シリーズの続きであり、ヴェネツィア共和国の衰退の一歩を描く海戦シリーズの最終巻。どのシリーズでもそうであったがヴェネツィア共和国の人たちの祖国愛の深さに感嘆されるばかりであった。イタリア本国や島々で活躍する人、コンスタンティノープルに残りトルコ相手に交渉する人、教皇を説得する人と様々な人々の模様を描きながら海戦本番に載せていく構成は流石であり、とても面白かった。
一度は失敗していても、次には成功させる。そのような粘り強い外交がヴェネツィア共和国繁栄の一因であったのであろう。そんな共和国がこの戦の後に衰退の一途をたどっていったというのは信じられないが、歴史であり国家というの -
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ネタバレ中世末期からルネサンスの時代に愛に生きていったイタリアの女性たちを描いた短編集。
最初の『大公妃ビアンカ・カペッロの回顧録』から、『ジュリア・デリ・アルビツィの話』へのつながりが面白かった。主人公だったカペッロが次の話では悪役のように描かれていて、視点が変わるとここまで変わるのか、とこの時代のイタリアの恐ろしさを感じられた。
他にも『エメラルド色の海』では海賊に惹かれる女性を描いたり、恋に踊らされる女性のみならず男性も描かれており多彩な物語を読めて面白かった。
最後の『女法王ジョヴァンナ』も史実か伝説かわからないところが非常に興味をそそられた。塩野先生も書いていたが、現代の中でずっと男性社会 -
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塩野七生氏が言うように彼女の作品の殆どは樹であったのだが、今回は森を書いている。
中世5世紀から15世紀にかけての千年を地中海を、即ち広がりのある森を中心に描いている。
その森の中には、レパントの戦い、ロードス島の戦い、コンスタンチノープルの戦いなどこれまで氏が書いた物語が含まれている。
そして、ヴェネツィアと十字軍もこの森の中に含まれるが、それらはちょっと広がった林といえるだろう。
歴史は地上を中心に形成されるのは確かであろうが、海である地中海に着目したのはなかなかの慧眼であろう。
それまで地中海を「我が海」としていたローマ帝国が滅びたあと、なんと千年以上にもわたってそこは海賊が暴 -
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塩野七生女子にしてはマイナーなテーマを選んでいる。
地中海でイスラムの海賊が長年にわたって荒らしまわって、その勢いはイタリア占領の一歩手前まで行ったことを知らなかった。
知っているのは、トゥール・ポワティエの戦いでキリスト教側がイスラム勢力をくい止め、ヨーロッパが救われたということだけ。
十字軍のずっと前から始まり、18世紀まで続いていたことはマイナーなテーマどころか、キリスト教世界にボディーブローのようにダメージを与えてきたことは中世を知る上で欠かすことの出来ない歴史だろう。
塩野女史の大好きなオトコマエの英雄は登場しないが、サラセン海賊に光を当ててくれたお陰で、中世が俄然面白くなっ -
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中世ヨーロッパで「神の代理人」としてキリスト教世界に君臨したローマ法王をめぐる、政治的陰謀の数々を描いた本。おおむね史実通りに記述されている。バチカンの法王や枢機卿は政争に明け暮れており、地方の王侯貴族の方がよっぽど信心深いのが何とも…。在バチカンのヴェネツィア大使が「イタリア人は法王を人間だと思っているから平気で失脚させるけど、フランス人は法王のことを神の代理人とみなす深層心理が働き、とことん失脚させるところまで行動できない」と喝破した文章を残しているのが印象的。本書はいくつか前提知識がないと読みにくいところがあり、同じ著者の「チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷」と「海の都の物語」を
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第1巻では、紀元前753年と言われているロムルス(ローマの語源)によるローマの建国から紀元前270年のルビコン川以南のイタリア半島統一までの約500年の期間を扱っています。著者をして「後にローマが大をなす要因のほとんどは、この五百年の間に芽生えはぐくまれたのである」と言わしめているように、後にローマ帝国として君臨する国家の基礎がつくられたのが、この500年に相当すると言えます。体力においても、知力においても決して優れていたとは言えない民族が、どのように国を作り出し発展させていったのか?また衰退していった原因などは、およそ2000年後に生きる僕たちにも大きな示唆を与えてくれました。
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この巻のもっとも印象的な人は、ルキウス・コルネリウス・スッラ。他人に何を言われようが気にせず、物事をやり遂げるところがすがすがしい。ただし、反対派を殺戮、財産の没収・競売に至る容赦のなさもある。「スッラの言動は、常に「ドス」が効いている」とあるがさもあらん。普通の人は他の人からよく思われたい。敵に容赦しないという態度を貫くことは並大抵ではできはしない。「私財を貯めこむことに、生涯無関心であった」ともあり。今の政治家と正反対!お金の使い方を現代人は学ぶべきでは。
また、高貴な生まれと裕福な環境人恵まれ、銀の匙をくわえて生まれてきたというグラックスの2人の兄弟。高貴でも裕福でもない人たちの権利を -
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ネタバレ先だっての大阪市長選挙結果を観て、「大阪ももうアカンな」と思ってたところにこの本である。
「一人の馬鹿は、一人の馬鹿である。二人の馬鹿は、二人の馬鹿である。一万人の馬鹿は、"歴史的な力"である」
なるほど8割がたの積極的であれ消極的であれ候補に票を入れなかったその意見より、バカが集まって歴史的な力なったということか。民主主義の盲点突かれたか。
歴史から学ぼうとせず「歴史は我々が作る」と行っている連中の行った政治がどういうものなのか…連中の「維新」という言葉の使い方が軽薄であることを見れば、いかに歴史を軽く見てるかが分かるのだけど…それでも、大阪市民はヤツを選んだ。