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コンスタンティノープルを陥落させ、トルコは西欧への攻勢を強めるばかりだった。イスラムの海賊の頭目「赤ひげ」は、ついにトルコ海軍総司令官に昇り詰める。迎え撃つは、キリスト教国連合軍の名将、アンドレア・ドーリア。周辺各国のパワーゲームも熾烈を極める中、この両巨頭の攻防の行方は? 劇的に描き出される完結編。※当電子版は単行本下巻(新潮文庫第3巻、第4巻)と同じ内容です。地図・年表なども含みます。
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Posted by ブクログ
地中海での海賊の動きを中心にローマ後から近世までの地中海世界を描ききった作品。前半は海賊の暴れ放題で意気消沈するが、後半はマルタ攻防戦の勝利で、胸がすく思いであった。ヨーロッパVS海賊は、ヨーロッパVSトルコという構図であったことがよく理解できた。トルコという国名では、EUに加盟するのは心情的に考え...続きを読むるとかなり厳しいということをあらためて感じている。また、海賊の撃退は、ほとんど近代になってからという事実も予想に反したところ。この下巻を読んで、また塩野本を読み直したくなった。
塩野七生氏が言うように彼女の作品の殆どは樹であったのだが、今回は森を書いている。 中世5世紀から15世紀にかけての千年を地中海を、即ち広がりのある森を中心に描いている。 その森の中には、レパントの戦い、ロードス島の戦い、コンスタンチノープルの戦いなどこれまで氏が書いた物語が含まれている。 そし...続きを読むて、ヴェネツィアと十字軍もこの森の中に含まれるが、それらはちょっと広がった林といえるだろう。 歴史は地上を中心に形成されるのは確かであろうが、海である地中海に着目したのはなかなかの慧眼であろう。 それまで地中海を「我が海」としていたローマ帝国が滅びたあと、なんと千年以上にもわたってそこは海賊が暴れまわる世界であったことを知っている人は少ないのではないか。 当然、海賊がヨーロッパ世界に与えた影響は小さくない。 小さくないどころか、地中海はキリスト教とイスラム教が相対する主戦場であったのである。 両宗教の対立といえば、十字軍や、ポワティエの戦いや、コンスタンチノープルあるいはウィーン攻防戦を連想しがちだが、海上の戦いもそれに劣らず歴史に大きな影響を与えていたのである。 しかしながら、正規軍対正規軍にスポットライトが当たり、海賊という非正規軍との戦いは日陰に追いやられざるを得ない。 地中海北岸の村や都市が海賊によってどれほどの被害を蒙ったか、その影響は計り知れない。 その日陰の部分にスポットライトを当てた塩野氏の功績は大と言えるだろう。
2003年の12月、ということは、もう7年以上前の話になるけれども、グラナダのアルハンブラ宮殿を訪問したことがある。名前からしてそのものであるが、アルハンブラ宮殿はイスラムの宮殿である。ということは、その昔、イベリア半島・スペインは、イスラムの勢力下にあった時期がある、ということだ。 アラビア半島は...続きを読むメッカで生まれた預言者モハメッドがイスラム教の布教を開始したのが紀元613年ということなのであるが、その後、イスラム勢力は驚くべきスピードで勢力範囲を拡大していく。642年に現在のエジプトをイスラム化、そのまま北アフリカを西方に勢力を拡大していき、ジブラルタル海峡を渡りスペインに達したのが710年頃。東方、北方へも勢力を拡大し、現在の中東を勢力下におき、遠く中央アジアのサマルカンドやタシケントに到達したのが750年頃。古代ローマ帝国が滅亡した後の地中海世界は、このイスラム勢力とヨーロッパキリスト教世界とのせめぎ合いの場となる。これは、イスラムが勢力を伸ばし始めた頃から始まり、十字軍遠征時代も、東ローマ帝国のコンスタンチノーブル、今のイスタンブールがトルコにより陥落して後も、またイタリア半島でルネッサンスが起こった後も、要するに1,000年間続いた構造なのである。 この本は、その間の様々な出来事を、「ローマ人の物語」と同様の物語風の語り口によって綴ったもの。たぶん、好き嫌いが、ものすごくはっきりと分かれる本だと思う。面白いと思えば、これほど面白い本はあまりないと思うだろうし(僕がそうだ)、この時代のこの地方の話に興味が持てなければそれまでだろう。 この本のいわば前史にあたる「ローマ人の物語」も非常に好きな本で、好きな本なので、多くの人に勧めたのだけれども、実際に読んで、「面白かった」と言ってくれた人は、残念ながら、比率的にはそんなに高くなかったので、そんなに一般受けする本なのではないのかもしれない。
地中海の島や都市はなかなか馴染みがないのですが 適宜地図が掲載されているので とても読みやすかったです。 現代はキリスト教側が優勢な印象ですが イスラム教側が優勢な時代もあったのだと 勉強になりました。
ローマ人の物語が完成し、早2年(だと思う)。10年以上の歳月を費やし、あれだけの大作を仕上げたのだから、もう七生さんの、新刊を読むこともあるまいと思っていただが、そうは問屋がおろさないとばかりに、「ローマ亡き後の地中海世界(上下巻あわせて800ページ)」の大作をこの短時間で仕上げてくるとは、まだまだ...続きを読むエネルギーに満ちて溢れております。 内容は、西ローマが滅んだ直後から、近代が始まる直前までの地中海の勢力争いについて。イスラムの興隆、キリスト国同士の反目、両陣営のイデオロギーのぶつかりあい、イデオロギーなど感知しないベネチア、イスラム後ろ盾を得た海賊などが織り成す地中海世界の混乱は、パックス・ロマーナを作り出したローマの偉大さをあらためて浮き彫りにする。
本棚を温めていた2冊を読むことができた。実は初めての塩野七生だったが、すばらしきストーリーテラーに導かれ、完全に地中海をタイムトラベル。海賊といえば、ワンピース並みにキャラの濃い実在の人物たちが生き生きと描かれ、著者がいうように樹と森のうち森がテーマな本書だけど、ちょこちょこ面白い逸話(=樹)を混ぜ...続きを読むてくれる。読むの大変だけど、いっきに読むべし!
下巻はコンスタンティノープルの陥落後、いよいよオスマントルコの勢力が地上でも海上でも西欧の脅威となっていた時代。オスマントルコ軍は赤ひげというギリシャ人海賊の頭目を海軍の司令官にしし、以後有力な海賊たちを利用することで、対西欧の海上での戦力としていた。一方西欧側もジェノバ人アンドレア・ドーリアなど、...続きを読む海上戦術に優れた指揮官を登用することで対イスラムの海上防衛を組織的に行うかに見えたが・・・。 当時の強国スペイン、フランス、そして交易国家のヴェネチア、さらにローマ法王庁のそれぞれの利権とキリスト教国としての立場が錯綜していて、まあ統制のとれないこと!よく500年後の今現在EUというひとつの共同体を組成できていると思う。そもそもイタリアという国もよくひとつの統一国家に成れたと思うけど。それも戦争の功罪? この本は主にヴェネチア共和国を軸に描かれているように思うが、1600年代以降の記述がないのは残念だと思う。でも、地中海が世界の中心であった時代は確かにここまで。以後新大陸の発見で舞台は大西洋へと移ってく。 上巻は海賊と奴隷の話に終始していたが、時代が下るにつれ、今巻では突出した個人が活躍しているので、読みやすさではこちらかな。でもあまりに登場人物が多くて混乱してしまいます。 少し前に「コンスタンティノープルの陥落」を読んだばかりだったので、入っていきやすかったですね。
巻末には14頁にわたる参考図書が記載されているが本文中に書名が出てくることはない。これこそ歴史小説だと思う。自署についても最初に注意書き、後は注釈程度で良かったと思うが。 欧州諸国の何故は充分読み応えがあるが、イスラム世界側は今ひとつである。その地に今立っても書いている時代に戻れたほどの資料は集まら...続きを読むなかったのだろうか。肖像画などビジュアルがないことも影響しているかもしれない(イスラムでは自画像は御法度らしい)。ローマ時代には緑豊かな農業地域であったという北アフリカが、緑化も困難な土地になってしまった経緯をもっと知りたかった。住み着いた人々の民族性だけが問題だったのだろうか。海賊産業に貿易業は無理だったのは理解できるが、周辺企業?の人々はどうやって食べていたんだろう。 一神教は度し難い。人が人のために作ったものであるとつくづく実感した。
本書では、1453年のビザンチン帝国の首都コンスタンチノープルの陥落以降の地中海世界の歴史を描いている。この時代以降、イスラム教とキリスト教の対立は「大国のパワーゲーム」の世紀となる。オスマン・トルコのスルタン、スレイマン。フランス王フランソワ1世。スペイン王で神聖ローマ帝国皇帝でもあったカルロス...続きを読む。そしてローマ法王パオロ3世。キャラの立つ登場人物が繰り広げる国際政治は、現在といささかも変わらぬリアルでシビアな冷酷さを持ったものであると感じた。 著者は戦いの描写がうまく、おもしろい。それぞれの勢力の背景である社会制度や経済状態、また文化の違いの描写は詳細にわたっており、興味深い。 「マルタ騎士団の戦い」は、読んで人間の残忍さとともに、血湧き肉踊るワクワク感をも感じた。全ての力を振り絞った戦いには残酷さとともに感動をも覚える。そして、戦いの最終決戦のような「レパントの戦い」(1571年)へと物語りは盛り上がる。 地中海世界におけるイスラムの海賊は、正規の事業として運営されていたことが本書で詳細に紹介されている。時代と価値観が違うとはいえ、あまりにもむごいと感じた。我々が「海賊」というと、ディズニーのカリブの海賊を思い浮かべるが、この地中海世界ではつい最近まで多くの「海賊」が跋扈しており、あらゆる海賊行為の厳禁を宣言した「パリ宣言」が成立したのは1856年だったことを本書は教えている。本書は、「平和」の価値と、それが成立するための条件をいろいろと考えさせてくれると思った。上・下巻ともに飽きずに読める良書であると感じた。
7世紀から18世紀まで地中海世界の歴史は、北アフリカから来襲してくるイスラムの海賊なしには物語ることはできない。 現在の地中海の観光地のほとんどが、かっては海賊に荒され人も住まない地であった。 1740年、トルコは「海賊禁令」に国として調印、海賊は政府公認の「コルサロ」は無くなり私的な利益の「ピ...続きを読むラータ」に戻った。 1830年、フランスによるアルジェリアの植民地化の開始 1856年、あらゆる海賊行為を禁止する「パリ宣言」が成立。
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