塩野七生のレビュー一覧
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イタリアを題材にしたエッセイ集…、と本書の概観を切り取るのは簡単だが、これほど芳醇な知識と感性が詰め込まれたものも、そうないのではないだろうか。
著者の感性は、イタリアを中心に西欧諸国の今と昔に自由自在に飛び跳ね、ローマ法王とすれ違ったり娼婦と友達になったりしながら、ギリシア軍の将校にスパルタの男たちの痕跡を見、オデュッセウスの旅路を単なる朝帰りダメ亭主の言い訳に貶める説を吟味するのである。
そして最後はレオナルド・ダ・ヴィンチへのラヴレター。
構成においても「やられた!」と思う瞬間である。
実は本書は再読。1995年5月23日に読み終えている。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ塩野七生さんの「ローマ亡き後の地中海世界」を読み終わった。
彼女の著作を読む上でのバックボーンを構築し、ガイドラインにもなるという、塩野七生ファンには重要な本となりそうだ。
細切れの時間を使って読んでいたので、えらく時間がかかってしまったが、それでもやっぱり、感慨は深い。
8世紀から18世紀までの地中海世界でのオスマントルコとキリスト教諸国との千年にわたる葛藤を大きく描いている。
一神教を奉ずるこの2大勢力は、その原理主義に従って、互いに略奪、拉致、暴虐を永きにわたって繰り返してきた。海は地中海全体、陸はウィーン近郊に迫るイスラムの伸張に歯止めをかけたのが、有名なレパントの海戦だ。世界史の教科書には、キリスト教側の主役として、法王庁とスペイン国王の事は描かれているが、実際に勝利の立役者になったのは、原理主義から離れ、ルネッサンスの花開いた、ベネチアの船と将兵だった。
ここがまさに、塩野七生さんのテーマであるといえる。
その締めくくりに書かれてある内容に胸を打たれた。
「現代のイスラム諸国とキリスト教諸国を分けるのはルネサンス時代を経たか、そうでないかという違いである」と彼女は述べている。
そのとおりかもしれない。
翻って日本を考えると、他のアジア諸国と違って、日本は、ヨーロッパ同様に封建時代を経験し、江戸時代という、人間を見つめる芸術が花開いた時代を経験した。
なんと幸せで豊かな過去をもつことができたのかと思う。
自由と人間の大切さを忘れた国民は危機に弱い。
それは世界の歴史が証明してきた。
日本は今、どちらなのだろう。
忘れかけているけれど、しっかりDNAに刻み込まれてると、ボクは思っている。
だから、今度の危機も日本は強く立ち向かえるし、最後には勝つと信じていられる。 -
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2003年の12月、ということは、もう7年以上前の話になるけれども、グラナダのアルハンブラ宮殿を訪問したことがある。名前からしてそのものであるが、アルハンブラ宮殿はイスラムの宮殿である。ということは、その昔、イベリア半島・スペインは、イスラムの勢力下にあった時期がある、ということだ。
アラビア半島はメッカで生まれた預言者モハメッドがイスラム教の布教を開始したのが紀元613年ということなのであるが、その後、イスラム勢力は驚くべきスピードで勢力範囲を拡大していく。642年に現在のエジプトをイスラム化、そのまま北アフリカを西方に勢力を拡大していき、ジブラルタル海峡を渡りスペインに達したのが710年頃。東方、北方へも勢力を拡大し、現在の中東を勢力下におき、遠く中央アジアのサマルカンドやタシケントに到達したのが750年頃。古代ローマ帝国が滅亡した後の地中海世界は、このイスラム勢力とヨーロッパキリスト教世界とのせめぎ合いの場となる。これは、イスラムが勢力を伸ばし始めた頃から始まり、十字軍遠征時代も、東ローマ帝国のコンスタンチノーブル、今のイスタンブールがトルコにより陥落して後も、またイタリア半島でルネッサンスが起こった後も、要するに1,000年間続いた構造なのである。
この本は、その間の様々な出来事を、「ローマ人の物語」と同様の物語風の語り口によって綴ったもの。たぶん、好き嫌いが、ものすごくはっきりと分かれる本だと思う。面白いと思えば、これほど面白い本はあまりないと思うだろうし(僕がそうだ)、この時代のこの地方の話に興味が持てなければそれまでだろう。
この本のいわば前史にあたる「ローマ人の物語」も非常に好きな本で、好きな本なので、多くの人に勧めたのだけれども、実際に読んで、「面白かった」と言ってくれた人は、残念ながら、比率的にはそんなに高くなかったので、そんなに一般受けする本なのではないのかもしれない。 -
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ローマ最大の偉人、ユリウス・カエサルが登場。この第4巻は丸ごと彼の伝記となっている。
それにしても、カエサルの行動力には圧倒。男として、多くの愛人を囲う。軍人として、8年にわたるガリア民族との戦いで、ほぼ常勝。文筆家として、その戦いを「ガリア戦記」にまとめる。政治家として、クラッススとポンペイウス2人の実力者を味方にして、元老院に実力を見せつける。さらには民衆や兵士からの人気も抜群。
さらには若き頃の武勇伝もあり、いくらでもエピソードが出てくる多忙なスーパースター。このブ厚い第4巻だけでも、彼の一生を書くには足りず、反ローマ側を覚悟して、ルビコン川を渡る直前で次巻へ続く。 -
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前2巻までのローマは敵の侵略を防ぐこともあれば、領土を手に入れるための侵略をしたりと、アグレッシブな若い国だった。が、ポエニ戦役を経て、当時の最強国となってしまったローマはもはや征服する土地が限られ、外敵よりも内部の調整に四苦八苦する。
そんな時代に登場したグラックス兄弟、マリウス、スッラ、ポンペイウスらローマの指導者たちは内戦の片づけと政治体制の修正と、やや地味な仕事に明け暮れる。
どうにも盛り上がりどころのない、爽快感のない国になってしまったローマ。そんな中、個人で頑張っていたのが小国ポントスのミトリダテス王。大国ローマに何度も敗れては立ち上がる姿に「漢」を感じた。