Posted by ブクログ
2022年04月17日
カエサルのカリスマ性を持った天才ではなかったが、偽善という性質は持っていたアウグストゥスが帝政を築き上げていく物語。自分が見たい現実しか見ない人間が多くいる中、アウグストゥスは見たくない現実も直視した。それ故、見たい現実しか見ない阿呆の相手をするには苦痛を伴ったが自己制御能力が抜群であったため、長時...続きを読む間かけて段階的に帝政を完成させていく。合法に見えるやり方でも、つなぎ合わせれば非合法の帝政を達成させた。しかしこれらの成功の影には常にカエサルが現れた。
1.統治前期
自らが持っていた特権を廃止し、共和政復活を宣言するも、内実は手放した方が利益になる特権を廃止したにすぎず、浅はかな元老院は上っ面しか受け取れなかったため帝政を進めることになる。彼は、周りからの熱があってようやく取り組む姿勢であって、カエサルのように一挙に進めることはしなかった。それ故、周りを欺き、訂正を進めることができた。14年の内乱がありながらも他国や属州から反乱がなかったのはカエサルがそのような統治体制を整えたおかげである。死してなおその姿を残し、大きな貢献をもたらすカエサルの偉大さたるや。
西方に次ぎ東方の再編成を終え、権威と権力を着実なものにする。有力貴族ではないため、先に名声を高め、その後明らかな帝政制度を進める基盤作りをしたのは自然な流れに感じる。カエサルと違い30代から動けたアウグストゥスにはのんびりと着実に進めることができたが、これもまたカエサルのおかげである。かといって全てを段階的に進めるではなく、時には考える隙を与えず次々と法を整えていたから、巧妙さが伺える。
2.統治中期
帝政の核とすべきローマ市民の質と量の確保に努める。属州民の更なる同化。信頼たる部下、アグリッパらを失う。
3.統治後期
固執した血の繋がりを重視した計画をことごとく失敗したため、次期皇帝ティベリウスに近づいていく。遺言でも細かな現状情報と指示を与えており、高効率な国家の運営と平和の確立を目指したアウグストゥスの働きぶりが現れている。一度も元老院達の大きな反発なく死を迎えられた点は、アウグストゥスの偽善が効いた証である。属州で反乱が起こったのは、アウグストゥスが現地で考えることを怠ったため、正確に把握できずに判断を鈍った故だと思う。今まで反乱が起こらなかったのはカエサルの統治能力に依るものである。
if.アウグストゥスが帝政を全面に出した政策を打ち出していたら?