塩野七生のレビュー一覧
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塩野七生はあくまで物書きとして、物語として歴史を語る。それが面白い。教科書には「事実」が載っているかもしれないが、人の歴史は感情を抜きにしては味気ない。
歴史を単元として覚えようとすると、とても頭に入って来ない。世界史の授業自体は好きだったが、試験科目にしようとは思わなかった。だが、誰それがどこの領主でどんな性格で軍事経験がどうかといったことを踏まえると、活躍する人物は自然と入ってくる。『ハリー・ポッター』の登場人物を覚えるのと何ら変わりがない。それは塩野七生のおかげで各人物が生き生きと描かれているからだ。
さて、いつの時代の"連合軍"というやつも一枚岩ではないことは共通している。利害関係を越えた繋がりは、個別に見たらあり得るかもしれないが、全くないということはあり得ない。しかしだからこそ面白い。群雄割拠においては、どの人物にも肩入れせず、俯瞰して見ることで、社会の大きな変動を感じることが出来る。それ即ち歴史である。
サラディン、獅子心王、ボードゥアン4世あたりを目当てに読み始めた。全然まだ出て来ないがかなり面白い。皇帝アレクシオスの害悪っぷりは、なかなか。 -
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ネタバレコンスタンティノープル陥落と同様、戦争では兵士はただの駒なんだと実感。死んだらただ駒が減っただけ。
イスラム教徒にとって異教徒を殺すこと、その戦いの中で死ぬこと、それらはどれも名誉。全く理解できない思想だけど、これが存在していて今も一部で生きている。
キリスト教徒の戦士は、ヴェネチアやジェノバのような通商国家は少し毛色が違うように見えるけど、その他は自国と名誉のためなら命を惜しまない。
これが昔からずっと続いてるんだから、世界平和なんて私が生きているうちには訪れないな。
オルシーニの女、私もあのような形で愛する者を失ったらどうするだろう、と胸が痛くなった。
肉体的にも精神的にも疲弊しきっているだろうに、できる限りの正装を尽くして威風堂々と敵の陣営に降伏条件交渉をしに行く姿、想像した。その精神、見習いたい。
スルタンは冷酷な殺戮者なのに、それでもあの紳士的な対応にはうっかり胸を打たれてしまった。まさに、騎士道。
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アレクサンドロス大王については、興味がありながら正直、名前くらいしか知らなったので、彼の生涯が分かったのは収穫。いつの世にも時代を変える英雄が出るものだが、ローマのスキピオにしろカエサル、オクタビアヌスにしろ、中世のフリードリッヒ二世にしろ、既成概念を崩すことでは変わらないし、敗者に対して寛容でありむしろ敗者をも最終的に味方にする点が共通している。そこは現代でも通じる気がする。
グラニコス
イッソス
ガウガメラ
ヒダスペス
の4つもの会戦でしかも相手有利の状況にありながら全て快勝をして、しかも味方の損害を最小限に抑えるというのはハンニバルが最高の司令官として褒めたたえるだけのことはある。 -
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誰が国家を殺すのか 日本人へⅤ
著:塩野 七生
文春新書 1386
辛口のエッセイ、塩野七生が世界を見る目は、冷静で、まるで期待がない。
気になったことは以下です。
夏のローマ
・日本からは悪いニュースしか入ってこないので、日本からのニュースがないだけで安心する
・肉体の眼よりも心の眼でみること
①短時間に何もかも見ようとはしないこと
②観光客が殺到する場所としない場所の違いは、ガイドブックが点数をつける重要度と比例関係にはない
監督には二種類ある
①選手たちを育てながら一年を通じてまあまあの成績を残す人
②持ち駒を駆使することで勝ちを重ねていく人
歴史
智者は歴史から学び愚者は経験から学ぶ ということになっているのに、愚者はせめて経験からは学んでいるのに、智者も愚者もいっこうに歴史から学ばない、という現実を見ているトメランコリックにならざるを得ない
法とは2つある
①神が人間に与えたからには神聖にして犯してはならない法
②ローマ法に代表されるもので、人間が人間のためにつくった法
日本人には多神教の国である
なにしろ、八百万の神の国なので、人間と宗教の関係ならば、古代のローマに似た多神教の国である
日本の憲法は改憲が絶望的、変えることが出来ない法は、法ではない。神が人間に与えた、神聖にして犯さざる「信仰」になってしまう
自由のないところに、文化文明は絶対に生まれない
人類の歴史は、疫病の歴史といっていい
民主政は、民主主義を自認する人々によって壊される
われらが日本には、カネもなければ、技術もない、だから、知恵を働かせるしかない
官僚とは、考えを打ち出しそれが決まれば実行に移す能力はあっても、やる、やりつづける、と決めるのはあくまでも政治家である
外交とは、血を流さない戦争である
自らに課せられた責務をもまっとうする、という生き方は何も女王にだけ課せられたことではない
われわれ庶民でも、一人一人の内実は変わっても、まねすることが充分に可能な生き方だ
目次
読んでくださる方々へ
Ⅰ
ローマで給水制限?
男と女・イタリア版
総選挙を観戦して
絶滅確実種宣言
現代の亡霊たち
欧州の空をおおう雲
迷走するイタリア
他者との共生のむずかしさ
一作者の深読み?
イタリア狂騒曲
夏のローマ
五十年昔の三十代が考えていたこと
民主政が「取り扱い注意」と思う理由
女が三割ならば若者も三割
Ⅱ
東北再訪
「廃炉」のプロを目指して
「民意」って何?
「寄りそう」だけで解決するのか
三千年後の「トロイの木馬」
「ノートルダム」哀歌
レオナルド没後五百年
夏のローマで思うこと
悪法と善法の別れ道
「最後の男」の常習犯
羽織を脱ぎ捨てて
読んでくれている人々に
Ⅲ
危機を甦生に
本を読んでいた政治家
アパティアという名の先進国病
コロナウイルスで考えたこと
人(国)みな本性を現わす
コロナウイルス散見記
発信力を早期に向上させるには?
私の「コロナ後」
壊れものにつき、取りあつかい注意
老いて読む、『君たちはどう生きるか』
失言の効用
東京とローマの間で
Ⅳ
楽しきフェミニズムはいかが?
ほんの小さな思い遣り
ロックダウンはしなかったヴェネツィアの例
スーパー・マリオの登場
ワクチン・打ってきました
三十人のためにだけに
窮極のソフト・パワー「知恵」
勝てる男
国民を幸せにするスポーツ
外交とは、血を流さない戦争である
Ⅴ
ローマでの”大患”
後書きに代えてー二人の有名人の死を見ての感想
ISBN:9784166613861
出版社:文藝春秋
判型:新書
ページ数:312ページ
定価:950円(本体)
2022年11月20日第1刷発行 -
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塩野先生の最後の歴史長編、最終巻の主人公はメーガス(大王)、アレクサンドロス。
財政難の国家を引き継ぎ、25歳でギリシアを統一、26歳でペルシアを制覇、32才でこの世を去る・・・
この英雄の物語が面白くないわけがなく、読み終わった時には軽い喪失感があり、すぐに再読してしまったほど。
また、本書には読者への手紙ともいうべきあとがきが収録されている。
「・・・これまで私が書きつづけてこれたのも、あなた方がいてくれてからでした・・・」
読者への感謝を示してくださる先生方は多いが、この一文は特に響いた。
塩野先生の目に触れることはないが、「歴史長編は最後でも、まだまだ新刊を楽しみにしていますからね」と書いておく。 -
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ネタバレ歴史を題材とした物語というよりは、8割方が歴史書のような感じで、物語性を求めると少々物足りなく感じる人もいるだろう。個人的にはもう少し登場人物の性格を表現したり人間関係を詳細に記してくれた方がのめり込みやすいし、特に途中でオルシーニがアニトニオに滔々と説く場面はあまりにも劇画らしくわざとらしさを感じたものである。
しかし、物語調になればなるほど、史実に作者の恣意は反映されて事実と乖離する可能性も高くなる。そう言う点から考えると非常に良書である。
と、まあここまで書いておいてなんだが、私の推しはオルシーニである。
そこまで人間性を書き込んだ表現を詳細にしているわけでもないのに、何故この人はここまで格好いいんですか。いや本当、格好良すぎやしませんか?
トータルなかなか良い人ではないかと思ったのだが、極め付きは
「人間には誰にも、自らの死を犬死と思わないで死ぬ権利がある。そして、そう思わせるのは、上にある者の義務でもある。」
である。いやもう本当これぞ帝王学ですよ、一端に過ぎないだろうけど。
モチベーション保つのは個人の仕事ですとか言いながら、部下のモチベーションどんどん削ってくる上司に言い聞かせたい台詞ナンバーワンである。
「人間には誰でも、自らの業務を無駄と思わず仕事する権利がある。そして、そう思わせるのは、上にある者の義務でもある。」
この汎用性の高さよ。ぜひ積極的に使っていきたい。
そして最後に、ネタバレに設定しているので許されるだろうと、該当場面を読んだ私の心の叫びを記しておく。
推しが死んだーーーーーーーーーーーっっ!!(号泣) -
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アテネの凋落から都市国家ギリシアの終焉、マケドニア台頭までを描いた「ギリシア人の物語」第三巻だが、アレキサンダー登場前の幕間のような退屈な巻かと言えば、全くそんなことはない。
ペロポネソス戦役で敗れて後、「民主制という制度」が「民主主義という唯一無二の絶対善」に変容し、凋落の一途を辿るアテネ。(現在の日本とダブって悲しかった)
覇権を握ったはずが経済センス皆無のスパルタ。スパルタを破ったが、人材不足のテーベ。そこに現れたマケドニアの若き王フィリッポス・・・
読みどころは多いが、個人的にはフィリッポスの軍事改革(ホプリーテスからファランクスへ)についての記述が非常に面白かった。
最終巻、アレキサンダーの活躍を読むのが楽しみ。 -
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皇帝フリードリッヒ二世の生涯 下巻
文庫版
著:塩野 七生
新潮文庫 し 12 103
「玉座に座った最初の近代人」
第6次十字軍で、聖地エルサレムを無血開城し、イスラムと融和、武力を使わなかった叡智の人
強大なローマ教会勢力から、封建領主を保護して、封建制度を維持しつつも、法治国家をめざした人
イスラム世界から、文化を取り入れ、ラテン語、イタリア語に翻訳して、ルネサンスへの道を拓いた人
下巻は、13世紀の政治状況の分析から、第2次ロンバルディア戦役後のローマ法王との確執と、その死、その後まで
城壁をめぐらせた都市を攻める場合の不利は、守る側は屋根の下で眠れるのに、攻める側にはそれが許させれないこともあった。眠るだけでなく、あらゆることを野外でしなければならない
これは特筆すべき価値があると思うのは、皇帝の愛人になった女の実家が、その理由だけで利益を得るようになる事態もまったく起こらなかったことである
トクになるわけでないのだから、わざわざ皇帝に娘を差し出す理由もないのだった
フリードリッヒという男は、愛人たちのめんどうを最後までみただけでなく、愛人たちから生まれた子たちのめんどうも徹底してみる男であったということだ
女にとって最も重要な存在は、何であろうと自分が生んだ子である
その子の将来を徹底して配慮してくれる男に対して、嫌がらせをしたいと思う女がいるだろうか
アリストレテス主義:証明できなということは、存在しないということにはならない
だからこそ、実験を積み重ねることによって真実を追求していく努力が重要になってくるのである
第6次十字軍が無血十字軍と呼ばれたのも、軍勢は率いていながらそれは使わないで、外交だけで目標に達したからである
皇帝フリードリッヒが目指したのは、法に基づいての秩序ある平和な国家の建設である
首尾一貫する生き方で通してきた人には、死んでもやれないこと、というのがあった
ある考えで通してきた以上、その考えに反することをやっては首尾一貫ではなくなるからである
反対に、「筋」を通すことなどは考えもしないで生きてきた人は、「筋」に反することでも簡単にできるのだ
中世ヨーロッパを震撼させて法王と皇帝の抗争は、「カノッサの屈辱」からはじまってフリードリッヒで正面からの激突となり、「アヴィニョンの捕囚」にまで及ぶことになる
皇帝フリードリッヒ2世は、中世の特質であった封建制度を全廃し、君主制国家に一変しようとしたのではない
封建領主たちの形は残しながら、その内実は変えようとしたのである
「誓い」とは「信義」であり、誓いを守ることは信義を貫くこと、と考えられてきたのである
目次
第7章 すべては大帝コンスタンティヌスから始まる
第8章 激突再開
第9章 その後
年表
参考文献
図版出典一覧
ISBN:9784101181493
出版社:新潮社
判型:文庫
ページ数:472ページ
定価:950円(本体)
発売日:2020年01月01日
上巻 目次
第1章 幼少時代
第2章 十七歳にして起つ
第3章 皇帝として
第4章 無血十字軍
第5章 もはやきっぱりと、法治国家へ
第6章 「フリードリッヒによる平和」 -
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皇帝フリードリッヒ二世の生涯 上巻
文庫版
著:塩野 七生
新潮文庫 し 12 102
「玉座に座った最初の近代人」
第6次十字軍で、聖地エルサレムを無血開城し、イスラムと融和、武力を使わなかった叡智の人
強大なローマ教会勢力から、封建領主を保護して、封建制度を維持しつつも、法治国家をめざした人
イスラム世界から、文化を取り入れ、ラテン語、イタリア語に翻訳して、ルネサンスへの道を拓いた人
上巻は、その生誕から、第2次ロンバルディア戦役によるフリードリッヒによる平和まで
気になったのは、以下
すべてはあるがままに、そして見たままに書くこと
科学上の経験がないところに、真の知識は、生まれない
歴史は鏡である
天涯の孤児になって以後の十年間、満年齢ならば四歳から十四歳までの十年間を、フリードリッヒは、言ってみれば「独学・独歩」で通すのである
思えば皮肉だが、アッシジのフランチェスコと皇帝フリードリッヒ二世という、中世に生まれながらルネサンスの先駆者になる二人ともが、中世そのものという感じのこの法王に認められたことで飛躍の機会をつかんだのだからおもしろい
カプア憲章:王国の統治は、力の論理を廃し、法に基づいて行われる
剣を交えないで済むためにこそ剣をたずさえていく
この点が、他の十字軍とフリードリッヒの十字軍のちがいであった
皇帝フリードリッヒ2世は、その生涯を通じて学芸の奨励に熱心であった
フリードリッヒという男は、嫌い人間は寄せつかなかった
そして、フリードリッヒの好感情は、アル・カミールの親書によって決定的になる
歴史を書きながら痛感させられることの一つは、情報とは、その重要性を理解できた者にしか、正しく伝わらないものであるということだ
人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない
多くの人は、見たいと欲する現実しか見えていない
情報を活用できるのは、見たくない現実でも直視する人だけなのであった
皇帝とは神よりその任務を委託された身である以上、その統治が法による正義に基づいて行われているかどうかを見極める責務は彼にある、と明言する
ただし、明言したということは、責任の所在もはっきりさせたということになる
そして、この一事こそが、彼の「憲法」、ないし、「憲章」の根幹になるのだった
本質的には武人ではなく政治家であったフリードリッヒは、可能ならば常に、武力による解決よりも話い合いによる解決を選んだ
目次
文庫版への前書き、あるいは、読者への手紙
読者に
第1章 幼少時代
第2章 十七歳にして起つ
第3章 皇帝として
第4章 無血十字軍
第5章 もはやきっぱりと、法治国家へ
第6章 「フリードリッヒによる平和」(Pax Fridericiana)
図版出典一覧
ISBN:9784101181486
出版社:新潮社
判型:文庫
ページ数:500ページ
定価:950円(本体)
発売日:2020年01月01日
下巻 目次
第7章 すべては大帝コンスタンティヌスから始まる
第8章 激突再開
第9章 その後 -
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ギリシア人の物語4
文庫版
新潮文庫 し 12 49
新しき力
著:塩野 七生
第4巻は、アレクサンドロスの初陣からその死まで、ギリシャから、リビア、インドに至る大帝国を打ち立てるまで
カエサルや、ナポレオンが心酔した王の中の王、生涯一度たりとも負けることがなかった無敗の将がアレクサンドロスなのである。
気になったのは、以下です
・生涯の友、ヘーファイスティオン
・命を託す馬 ブケファロス
カッパロ・ダ・バッターリア 戦場に連れ行く馬⇒大切な場で命を託す馬
生涯の友を得たばかりか、生涯の愛馬にも恵まれた
・戦の師、スパルタのレオニダスによるスパルタ教育とともに、学問の師、アリストテレスにも教えを得た
・BC338 カイロネアの会戦 が初陣
・兵士の一人一人が、自分たちは犬死しなくてもよいと得心することほど、リーダの価値を決めることもないのである
・古代ギリシアやローマの抱く想いの1つは、日本でいう「武士に二言はない」という言葉は西洋でも通じるのである。一度口にしたことをひっくり返す武士は、もはや武士とはみなされない
・BC334 グラニコスの会戦 小アジア
・ゴルディオンの結び目 ほどけないなら、切ってしまえばいい
・BC333 イッソスの会戦 ペルシャ主力軍との衝突
・BC332 ティロス攻防戦 シーレーンを確保し、補給路、兵の補充を図るために迂回
・BC331 ガウガメラの会戦 ペルシア主力軍との2度目の激突
・BC326 ヒダスペスの会戦 インダス川支流でのインド軍との激突
かくして、アレクサンドロスの遠征は、インダス川に達した時に終わった
・戦場では、兵士は肉体で戦うが、総指揮官は頭脳で戦う
・兵站(ロジスティクス)を重要視しない司令官は戦場ではいかに勇猛果敢でも、勝利者には絶対になれない
・一方で軍事的に制覇した地域の、彼の支配下での再編成も忘れなかった
彼に一貫していた戦略は、前進を続ける自分の背後には、ペルシアの勢力が戻ってくる可能性を絶対に残さないだった
・占領地の現状維持とはいってもそれは、殺したり、追放したりしないということで、ペルシア時代の制度をそのまま温存することではなかった
・自分が信じる神しか認めないのが、一神教で、自分は信じなくても他者は信じているのだからその神も認めるのが多神教である。それもいやいやながら認めるのではなく、リスペクトするから許容するのが多神教だ
・広大な国の統治は、軍事力や警察力だけでは絶対に長続きしない
その地域の特殊事情にも配慮しない限り、大国の統治はできないのである
アレクサンドロスは、このこともまた、早くも理解していたのだった
・マケドニアの若き王は、次の3点でも優れていた
①現地人のガイドの活用に巧みであった
②自軍の兵を使っての偵察行動を完璧に組織化していた
③捕らえた兵の尋問は、それが兵士としては高い地位にある騎兵であればなお、アレクサンドロス自身が行った
・いずれにしても、アレクサンドロスは、一時に大量で、かつ、貴重な情報を得たことになった
・アレクサンドロスの考えるリーダーとは、部下たちの模範にならねばならない存在であり、率先してリスクを冒している様を見せることで、彼らが自分たちのモデルと納得する存在でなければならなかった
・大事業は、一人ではできない。他の人々の協力なしには、絶対にできない
それには、他者を信頼して明確な目的を与えた上で、任務を一人する必要がある
信頼に値するかどうかを精密に審査していては何一つ始まらないので、ある意味では直感によって大胆に一任するしかないのだ
・アレクサンドロスは、キュロスをはじめとするペルシアの王たちの墓所にはいっさい手をふれさせていない
破壊行為などは絶対にさせなかった
生前の行為がどうあろうと、死者への冒涜行為には絶対に手を染めなかったのも、彼の性格なのだ
・アレクサンドロスとは、相当な自己中心主義者だったが、相手の立場に立つことも知っていた男であった
・アレクサンドロスの評伝を書いた古代の史家は、この若き王の特質として
①速攻、②忍耐、につづいて、③人間性、を上げている
フマニタス、とは、ヒューマニティの語源となるラテン語であった
・インド王ポロスに向かって、「どのような処遇を望まれるか」
ポロス「死であろうが、生であろうが、王としての処遇を求める」
・敗者同化による民族融和というアレクサンドロスの夢は、彼の死とともに霧散してしまう、この夢が実現するのには、ローマを待つしかなかった
・列伝の著者プルタルコス:ローマを強大にした要因は、敗者の同化に成功したことにおいて、他にない
目次
読者への手紙
第1章 息子・アレクサンドロス
第2章 ヘレニズム世界
十七歳の夏に 読者に
参考文献
図版出典一覧
ISBN:9784101181158
出版社:新潮社
判型:文庫
ページ数:494ページ
定価:1000円(本体)
発売日:2023年11月01日
全体の構成
1巻
第1章 ギリシア人て、誰?
第2章 それぞれの国づくり
第3章 侵略者ペルシアに抗して
第4章 ペルシア戦役以降
2巻
第1部 ペリクレス時代
前期(紀元前四六一年から四五一年までの十一年間)
後期(紀元前四五〇年から四二九年までの二十二年間)
第2部 ペリクレス以後
前期(紀元前四二九年から四一三年までの十七年間)
後期(紀元前四一二年から四〇四年までの九年間)
3巻
第1章 アテネの凋落
第2章 脱皮できないスパルタ
第3章 テーベの限界
第4章 マケドニアの台頭
4巻
第1章 息子・アレクサンドロス
第2章 ヘレニズム世界 -
Posted by ブクログ
ギリシア人の物語3
文庫版
新潮文庫 し 12 48
民主政のはじまり
著:塩野 七生
第3巻は、凋落により、寛容性が失われれていくアテネ、デロス同盟の解体
ギリシア市民兵の傭兵化、スパルタとペルシアの接近
テーベの一時的な興隆、そして、マケドニアの台頭を描く
ギリシャは、再び、ペルシャの影響力の下におかれるが、それに対応できるほどの力は
スパルタにもなかったにもなかっただけでなく、財政的な支援を、ペルシアに仰ぐこととなる
レウクトラの海戦は、テーベと、スパルタの間で行われる
テーベが圧勝し、ペロポネソス同盟も、このために瓦解することとなる
マンティネア平原の会戦
ギリシア本土にある都市国家を二分する戦い、テーベVS反テーベ
戦闘時代はテーベ側が勝利したのだが、結果的に勝者も敗者もおらず、ギリシア世界には、覇権国なしとの
結果で終わることとなる
その3年後、ギリシア北方のマケドニアで、フィリッポスが王位につく
フィリッポスは、軍制改革を行い、マケドニア軍を精鋭化していく
その業績、効果は、BC338のカイロネア平原での会戦にて結実していく
マケドニア軍は、テーベ、アテネ連合軍を破り、ギリシア世界の新しい盟主として、覇権を確立していく
そして、フィリッポスの後をアレキサンドロスへと繋いでいく
目次
第1章 アテネの凋落
第2章 脱皮できないスパルタ
第3章 テーベの限界
第4章 マケドニアの台頭
ISBN:9784101181141
出版社:新潮社
判型:文庫
ページ数:292ページ
定価:750円(本体)
発売日:2023年10月01日
全体の構成
1巻
第1章 ギリシア人て、誰?
第2章 それぞれの国づくり
第3章 侵略者ペルシアに抗して
第4章 ペルシア戦役以降
2巻
第1部 ペリクレス時代
前期(紀元前四六一年から四五一年までの十一年間)
後期(紀元前四五〇年から四二九年までの二十二年間)
第2部 ペリクレス以後
前期(紀元前四二九年から四一三年までの十七年間)
後期(紀元前四一二年から四〇四年までの九年間)
3巻
第1章 アテネの凋落
第2章 脱皮できないスパルタ
第3章 テーベの限界
第4章 マケドニアの台頭
4巻
第1章 息子・アレクサンドロス
第2章 ヘレニズム世界 -
Posted by ブクログ
1巻よりもとーっても読みやすくて面白かった。
キングダム、ローマ版。笑
頭の中で自作のアニメーション流れてた。
話の本筋では無いけど、歴史を振り返っていく中で先人に学ぶこととか大切な考え方に気づくこととかあって、
ところどころ、わあ、この考え方すごい分かる、って記述があったから引用する。
286ページ
⭐︎優れたリーダーとは、優秀な才能によって人々を率いていくだけの人間ではない。率いられていく人々に、自分たちがいなくては、と思わせることに成功した人でもある。持続する人間関係は、必ず相互関係である。
一方的関係では、持続は望めない。
参考文献
⭐︎ 人間の性格は、容説より以上に彼や彼女の書き言う言葉にあらわれる(プルタルコス)ということを。
すごく面白かった、本当に。