塩野七生のレビュー一覧
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封建社会から法に基づいた君主制国家の確立を目指し、ローマ法王の破門に屈せず政教分離を貫き、十字軍に行きながらもイスラムとの共存を考え和解の道を進む、中世ヨーロッパの先駆者・フリードリッヒ二世の生涯を塩野ワールドで描く後編。
上記の通り、フリードリッヒ二世はあまりにもいろんなことを同時代にやっていたので、頭の整理ができないところ、下巻では「間奏曲」として、女・子供・協力者など、いわゆる各論をまとめた章があったので読みやすかったです。
驚くのはフリードリッヒ二世の協力者を集める人たらしぶりと、女たらしぶり。
嫡子も庶子も一緒に教育させて自身、そして家臣の後継者を育成するなんてあらゆる意味で合理的 -
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ローマによる平和
一部ご紹介します。
・防衛を目的とした戦略を最も効果的に現実化する手段として、常備軍の設立がある。
・効率性を追求するために、ローマは集権と分権を共存させた。
・統治と街道には共通点がある。①不断のメンテナンスが不可欠と考える認識力②認識するや直ちに修正するのを厭わない柔軟な行動力③それを可能にする経済力。①~③のどれか一つでも欠けたら機能しなくなる。
・健全な「国家」は健全な「家族」の保護と育成無しには成り立たない。
・妄執は悲劇しか生まない。あくまでも運命を自分の思い通りにしようとする態度は謙虚を忘れさせ、それゆえに神々から復讐されるからである。
・公正を期して作られるのが法律 -
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内乱記
一部ご紹介します。
・防衛線を確立した内部での、国力の充実。秩序ある平和。それによる生活大国化の実現。生活大国とは、唱えさえすれば実現するというものではない。実現にはそれに適した諸制度の改革が先行されねばならない。
・平和とは、優劣なき国々相互の話し合いによるよりも、絶対的に優勢な国による調停とか裁定とか、止むを得ないとなれば、力で押さえつけるとかで成り立つ確率の方が高いのが、人間世界の現実だ。
・効率性とは、不測の事態も考慮に入れるからこそ、そのあくなき追求も意味を持つ。
・民主政とは、それが実施される領域の拡大につれて機能しがたくなる。寡頭政も、地理的な事情に無縁ではいられない。広 -
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ガリア戦記
一部ご紹介します。
・カエサル「人間ならば誰にでも、現実の全てが見えるわけではない。多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない。」
・幼時に母親の愛情に恵まれて育てば、人は自然に、自信に裏打ちされたバランス感覚を会得する。そして過去に捕らわれずに未来に眼を向ける積極性も知らず知らずのうちに身に付けてくる。
・女は無視されるのが何よりも傷つくものだ。
・女とは、モテたいがために贈り物をする男と、喜んでもらいたいために贈り物をする男の違いを、敏感に察するものだ。
・敵地で戦う総司令官にとって最も大事なことは、戦闘指揮と、兵糧確保だ。戦争は、死ぬためにやるのではなく、生きるためにやるもの -
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日本の世界史の講義では抜け落ちがちな第一次十字軍からルネサンスまでのヨーロッパの状況がよく理解できました。
ローマ教皇の力が絶大な時代に、「皇帝のものは皇帝のものに、教皇のものは教皇のものに」なる世界の実現に向かって突き進む力に勇気をもらいました。既存権力者(本書では教皇)に立ち向かう中で、度重なる困難に直面し失敗しても挽回する姿勢が特に印象的でした。
下巻ではフリードリッヒ二世を取り巻いた環境、特に人間関係についての記述が多く、彼のことをより理解できました。
しかし、何が彼をそこまで突き動かしたのかまでは本書からは分かりませんでした。読み終わって考えるに、青年期にシチリア王国の王、神聖 -
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社会問題
一部ご紹介します。
・ハンニバル「いかなる強大国といえども、長期にわたって安泰であり続けることは出来ない。国外には敵を持たなくなっても、国内に敵を持つようになる。外からの敵は寄せ付けない頑健そのものの肉体であっても、身体の内部の疾患に、肉体の成長についていけなかったがゆえの内臓疾患に苦しめられることに似ている。」
・失業者問題は、福祉の充実では、解決しきれない。なぜなら、失業するということは、生活手段を失うことだけでなく、人間の存在理由までも失うことになるからだ。
・人間とは、食べていけなくなるや、食べていけそうに思える土地に移動するものだ。この類いの民族移動を、古代では蛮族の侵入と呼び -
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ローマ対ハンニバル
一部ご紹介します。
・ハンニバル「あそこはもうイタリアだ。イタリアに入りさえすれば、ローマの城門の前に立ったと同じことになる。もうここからは下りだけだ。アルプスを超え終わったあとで、一つか二つの戦闘をやれば、われわれは全イタリアの主人になれる。」
・ファビウス「ローマは英雄を必要としない国家である。」
・フラミニヌス「ローマの伝統は、敗者さえも許容することにある。敗者の絶滅は、ローマ人のやり方ではない。」
・ローマ人は、肉を食べて体位向上をはかることはなかった。戦闘は体力で決まるものではないと思っていたからか。あるいは、海産物とチーズと穀物とオリーブ油に葡萄酒の、地中海世界の食事から離 -
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中世ヨーロッパに生まれ、神聖ローマ帝国皇帝として13世紀にかけて中央集権国家を築き、政治の面で神からの解放を進めたフリードリッヒ二世の生涯を塩野先生が書いています。
大きな目標を成し遂げるときは、合理的・現実的な選択の積み重ねで実現していくというのが王道の手段というのは、いつの時代も変わらないのかな、と思いました。
一番印象に残った文章
「法律は、施行しだいで良き法にもなれば悪法にもなる。それを常に意識しているのが統治者の責務の第一になるが、忠実に実施することこそが法の番人の責務と信じて疑わない人々から見れば、これさえも既成の秩序の破壊に映るのだった。」
これとセットで、異端裁判所の話が -
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「鷹に始まり、鷹に終わった」
そんな空気感いっぱいの読後感!
ここまで封建社会の真っただ中で、「人の気持ち」と戦った「王様」はいなかったんだろうな、そう思います。
現代社会とは、すさまじく「常識」が違う。
今生きる私の目線だけで、一概にフリードリッヒ二世を見ることはなかなかできないし、人権無視した目を覆いたいような事も実際はやっている。それを含めて、当時は生活や政治の一つだった。
それを踏まえても、人類歴史の多くの部分を一段階上げる施策をしようとした一人の人間だったんだと、思う。
なかなか出来ることじゃないなー、と思う。
「マグナカルタ」に埋もれてしまったが、「メルフィ憲章」は、歴史上の -
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フリードリッヒ2世は、長じて<神聖ローマ皇帝>となって行くのだが、結局は当時のイタリアに在っても少し独特であったシチリア王国の中、残念ながら両親が早くに他界してしまったために「独立独歩」で育つ。そうした中で「時代の遥か先を往く」というような、当時は独特とされた考え方を育み、それを実践して行くことになるのであろう。
「中世」とは、「祈る人」、「闘う人」、「働く人」が在って、“領主”である「祈る人」や「闘う人」に“領民”である「働く人」が納税する仕組みだった。その納税等が恣意的に行われがちであった中、フリードリッヒ2世は「法治主義」というような概念を打ち出し、自らの権威が及び易いシチリア王国の版図 -
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「ストゥポール・ムンディ」(世界の驚異)と同時代の人達に畏敬され、公式にはラテン語で「フリデリクス 神の恩寵によって ローマ皇帝アウグストゥス イェルサレムとシチリアの王」と称したというフリードリッヒ2世という人物…なかなかに興味深い訳だが、本作はその人物の生涯を概ね編年式に追いながら語る物語だ。
本作は、“主人公”であるフリードリッヒ2世等の史上の人物達をモデルにした劇中人物達が勇躍し、苦悩し、歓び、怒るというような「小説」ではなく所謂「史伝」という読物である。或いは、日本国内ではやや馴染みが薄いかもしれない欧州諸国の歴史を題材としながら、非常に読み易い感じだ。実は同じ著者の他作品も過去に読 -
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ネタバレエデッサ陥落、第二次十字軍、イェルサレム陥落を描いた第二巻。
読んでいて感じるのは、リーダー層の人材が何よりも大事ということ。
常に戦力不足に悩まされながら、城砦とそれを守る病院騎士団や聖堂騎士団、アマルフィ・ヴェネツィア、ピサ、ジェノヴァによる制海力と物資調達力により領土を保っていた十字軍キリスト教国家。
それが十字軍も第二世代になり、そして第三世代となると責任感と経験を備えたリーダーが少なり、弱体化していく。
そのような中、ボードワン四世が身体が崩れ落ちていくという癩病に侵されながら13歳で王に即位し、24歳で燃えつきるまで孤軍奮闘する様子には心を動かされる。
一方でバラバラだったイス -
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☆☆☆2020年1月レビュー☆☆☆
フリードリヒ2世は、高校で世界史を勉強した人でもなじみの少ない名前ではないだろうか?
僕も塩野氏の作品に出会う前はほとんど知らなった。
「最初のルネサンス人」と言ったら、興味をそそられるだろうか? 暗黒の中世と言われたヨーロッパにあって、「政教分離」という、今では常識となっている考えを推進した皇帝、と言えるだろうか?
日本で政教分離を推進したといえば織田信長だが、行動力の面でも信長に近い気がする。性格の激しさという点では少し違うかもしれないが・・・。
上巻では、孤独な少年時代から、インノケンティスウス3世の庇護を得てドイツに向かう場面、そして戴冠と、若 -
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本書の時代は日本では鎌倉時代か。この時代にヨーロッパでこんなダイナミックな動きが進行していたとは全く知らなかった。いや面白い、中世ヨーロッパにこのような君主がいたとは。
歴史上の人物を、現代人に理解できるような文章で魅力的に紹介することが著者の得意とするところなのだろう。
小生は「ローマ人の物語」を読むのが楽しく、あの大部冊を繰り返し愛読した。
本書の主人公は「カエサル」の次くらいにいい男である。著者は惚れた男を描くと文章が光る。
「フリードリッヒ二世」、世界史で名前くらいは出てきていただろうか。日本では業績なぞ全く知られていないのではないだろうか。この時代に法による支配を打ち出し「憲章」を制