塩野七生のレビュー一覧
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ネタバレ 購入済み
社会問題
一部ご紹介します。
・ハンニバル「いかなる強大国といえども、長期にわたって安泰であり続けることは出来ない。国外には敵を持たなくなっても、国内に敵を持つようになる。外からの敵は寄せ付けない頑健そのものの肉体であっても、身体の内部の疾患に、肉体の成長についていけなかったがゆえの内臓疾患に苦しめられることに似ている。」
・失業者問題は、福祉の充実では、解決しきれない。なぜなら、失業するということは、生活手段を失うことだけでなく、人間の存在理由までも失うことになるからだ。
・人間とは、食べていけなくなるや、食べていけそうに思える土地に移動するものだ。この類いの民族移動を、古代では蛮族の侵入と呼び -
ネタバレ 購入済み
ローマ対ハンニバル
一部ご紹介します。
・ハンニバル「あそこはもうイタリアだ。イタリアに入りさえすれば、ローマの城門の前に立ったと同じことになる。もうここからは下りだけだ。アルプスを超え終わったあとで、一つか二つの戦闘をやれば、われわれは全イタリアの主人になれる。」
・ファビウス「ローマは英雄を必要としない国家である。」
・フラミニヌス「ローマの伝統は、敗者さえも許容することにある。敗者の絶滅は、ローマ人のやり方ではない。」
・ローマ人は、肉を食べて体位向上をはかることはなかった。戦闘は体力で決まるものではないと思っていたからか。あるいは、海産物とチーズと穀物とオリーブ油に葡萄酒の、地中海世界の食事から離 -
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中世ヨーロッパに生まれ、神聖ローマ帝国皇帝として13世紀にかけて中央集権国家を築き、政治の面で神からの解放を進めたフリードリッヒ二世の生涯を塩野先生が書いています。
大きな目標を成し遂げるときは、合理的・現実的な選択の積み重ねで実現していくというのが王道の手段というのは、いつの時代も変わらないのかな、と思いました。
一番印象に残った文章
「法律は、施行しだいで良き法にもなれば悪法にもなる。それを常に意識しているのが統治者の責務の第一になるが、忠実に実施することこそが法の番人の責務と信じて疑わない人々から見れば、これさえも既成の秩序の破壊に映るのだった。」
これとセットで、異端裁判所の話が -
Posted by ブクログ
「鷹に始まり、鷹に終わった」
そんな空気感いっぱいの読後感!
ここまで封建社会の真っただ中で、「人の気持ち」と戦った「王様」はいなかったんだろうな、そう思います。
現代社会とは、すさまじく「常識」が違う。
今生きる私の目線だけで、一概にフリードリッヒ二世を見ることはなかなかできないし、人権無視した目を覆いたいような事も実際はやっている。それを含めて、当時は生活や政治の一つだった。
それを踏まえても、人類歴史の多くの部分を一段階上げる施策をしようとした一人の人間だったんだと、思う。
なかなか出来ることじゃないなー、と思う。
「マグナカルタ」に埋もれてしまったが、「メルフィ憲章」は、歴史上の -
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フリードリッヒ2世は、長じて<神聖ローマ皇帝>となって行くのだが、結局は当時のイタリアに在っても少し独特であったシチリア王国の中、残念ながら両親が早くに他界してしまったために「独立独歩」で育つ。そうした中で「時代の遥か先を往く」というような、当時は独特とされた考え方を育み、それを実践して行くことになるのであろう。
「中世」とは、「祈る人」、「闘う人」、「働く人」が在って、“領主”である「祈る人」や「闘う人」に“領民”である「働く人」が納税する仕組みだった。その納税等が恣意的に行われがちであった中、フリードリッヒ2世は「法治主義」というような概念を打ち出し、自らの権威が及び易いシチリア王国の版図 -
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「ストゥポール・ムンディ」(世界の驚異)と同時代の人達に畏敬され、公式にはラテン語で「フリデリクス 神の恩寵によって ローマ皇帝アウグストゥス イェルサレムとシチリアの王」と称したというフリードリッヒ2世という人物…なかなかに興味深い訳だが、本作はその人物の生涯を概ね編年式に追いながら語る物語だ。
本作は、“主人公”であるフリードリッヒ2世等の史上の人物達をモデルにした劇中人物達が勇躍し、苦悩し、歓び、怒るというような「小説」ではなく所謂「史伝」という読物である。或いは、日本国内ではやや馴染みが薄いかもしれない欧州諸国の歴史を題材としながら、非常に読み易い感じだ。実は同じ著者の他作品も過去に読 -
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ネタバレエデッサ陥落、第二次十字軍、イェルサレム陥落を描いた第二巻。
読んでいて感じるのは、リーダー層の人材が何よりも大事ということ。
常に戦力不足に悩まされながら、城砦とそれを守る病院騎士団や聖堂騎士団、アマルフィ・ヴェネツィア、ピサ、ジェノヴァによる制海力と物資調達力により領土を保っていた十字軍キリスト教国家。
それが十字軍も第二世代になり、そして第三世代となると責任感と経験を備えたリーダーが少なり、弱体化していく。
そのような中、ボードワン四世が身体が崩れ落ちていくという癩病に侵されながら13歳で王に即位し、24歳で燃えつきるまで孤軍奮闘する様子には心を動かされる。
一方でバラバラだったイス -
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☆☆☆2020年1月レビュー☆☆☆
フリードリヒ2世は、高校で世界史を勉強した人でもなじみの少ない名前ではないだろうか?
僕も塩野氏の作品に出会う前はほとんど知らなった。
「最初のルネサンス人」と言ったら、興味をそそられるだろうか? 暗黒の中世と言われたヨーロッパにあって、「政教分離」という、今では常識となっている考えを推進した皇帝、と言えるだろうか?
日本で政教分離を推進したといえば織田信長だが、行動力の面でも信長に近い気がする。性格の激しさという点では少し違うかもしれないが・・・。
上巻では、孤独な少年時代から、インノケンティスウス3世の庇護を得てドイツに向かう場面、そして戴冠と、若 -
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本書の時代は日本では鎌倉時代か。この時代にヨーロッパでこんなダイナミックな動きが進行していたとは全く知らなかった。いや面白い、中世ヨーロッパにこのような君主がいたとは。
歴史上の人物を、現代人に理解できるような文章で魅力的に紹介することが著者の得意とするところなのだろう。
小生は「ローマ人の物語」を読むのが楽しく、あの大部冊を繰り返し愛読した。
本書の主人公は「カエサル」の次くらいにいい男である。著者は惚れた男を描くと文章が光る。
「フリードリッヒ二世」、世界史で名前くらいは出てきていただろうか。日本では業績なぞ全く知られていないのではないだろうか。この時代に法による支配を打ち出し「憲章」を制 -
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ネタバレ久々に塩野七生を読みたくなって、手に取った1冊。中世ルネッサンス期近辺のヨーロッパ(主としてイタリア半島の都市国家)を舞台に、愛に翻弄され、愛を持って翻弄した女性たちの物語である。
恋愛沙汰ってのは、もうどうしようもない。惚れた腫れたの話になると理性やら理屈は吹っ飛びがち。それでもまあ、渦中の人たちは仕方ないとして、そこに、関係ない人が善意や損得勘定やもろもろから下手に関わると、大概ろくでもない(あるいは実にくだらない)結果に終わる。
部活やサークル活動、SNSやら、社内恋愛であれば、まぁまぁくだらなくても取り返しもつきやすい。芸能界やらであれば話題になっても1年もたてば禊もすむ。
ところ -
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情報とは、その重要性を認識した人にしか、正しく伝わらないもの。
これは、哲学者カントの感覚と認識の区別に通ずるのではないか。
カエサルはそのことを早くも喝破していたのではないか。
フリードリッヒ二世の柔軟性。
自身の側近に敵方のイスラム教徒も複数いた。
生まれは高貴だが育った環境が素養を育んだのか。合理的で近代的な人間だった。
十字軍の歴史にも
チンギスカンが開祖のモンゴル帝国が侵入してくる。歴史は有機的につながっていることの良い例。
宗教強騎士団最後の闘いは圧巻。
滅びの美学。
実質的な宗教戦争は十字軍で終わる。以後は、領土争いに宗教で色付けをしたもの。
最後の宗教戦争、それが -
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「 戦争は、人類にとって最大の悪業である。にもかかわらず、人類は、この悪から抜け出すことができないでいる。
ならば、戦争を、勝ったか負けたかで評価するのではなく、この悪を冒した後にどれだけの歳月の平和がつづいたか、で評価されてもよいのではないか。
また、
平和とは、人類が戦争という悪から抜け出せない以上、未来永劫つづく平和というのもありえず、短期間ではあっても一つ一つの平和を積み重ねていくことでしか、達成されないと考えるほうが現実的ではないだろうか。」
塩野七生氏の歴史物著書では、
このような鋭い指摘にもあるように、
リアリズムが物事の見方に通念として流れている。
それこそが
机上の -
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200年間にわたる十字軍国家時代の第二幕の幕開け。
「神がそれを望んでおられる」という号令のもとイェルサレム奪還を成し遂げたヨーロッパ諸国のキリスト教団達。
その名を連ねるのはタンクレディなどの卓越した人材達。
だが、イェルサレム奪還後、
第一次十字軍に名を連らねるような人材がキリスト教側にはいなくなってしまった。
「人材とは、なぜかある時期に、一方にだけ集中して輩出してくるものであるらしい。だがこの現象もしばらくすると止まり、今度は別のほうに集中して輩出してくる。なぜ双方とも同時期に人材は輩出しないのか、という疑問に明快に答えてくれた、哲学者も歴史家もいない。」
たしかに、
古代