塩野七生のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
文藝春秋に連載されたエッセイをまとめたもの。普段イタリアに住む著者が、海外から見た日本について辛口の批判をしており、納得できる記述が多い。記憶に残る部分を記す。
「戦争とは、良い悪いの区分がないだけではなく、防衛のための戦争か侵略のための戦争かの区分さえもむずかしい。いや、戦争は、ほとんどとしてよいくらいに侵略戦争である。なぜなら、防衛のつもりで行った戦争に勝ったとたんに、その防衛戦を確実なものにしたくなってさらに敵地深く侵略することになるからで、歴史に残る戦争のほとんどすべては、侵略戦争であったのが実相だ。」
「戦争そのものが姿を消したわけではない。それはおそらく、頭をガツンとやられないかぎりは言うことをきかない、国家や民族や部族が後を絶たないからだろう。昔も今も、人間性のこの現実は変わらないのではないかと思っている。」
「多く集まれば集まるほど、正しく、かつ問題の解決によりつながる対策が立てられると信じているとしたら、人間性に無知というしかない。首脳とて国益は無視できない以上、数が増えれば増えるほど意見も増える。結果は、結論なし、で散会だ。そして、数が増えれば一国当たりの権力と影響力は減少するので、その面でもサミットは、やるだけムダということになる。」
「ポイント主義は、単に勝者だけを決める手段であったはずである。だが、それのみが偏重されるようになると、手段の目的化になってしまう。スポーツにかぎらずどの分野でも、手段の目的化は、弊害になると同時に魅力を失わせる。」
「ちなみに、中東に攻め込んで勝ったヨーロッパ人は、後にも先にもアレクサンダー大王一人である。アメリカのインテリや指導者たちは、歴史を読んでいるのかしら。」 -
Posted by ブクログ
マキアヴェリや君主論を信奉しているような人とは、仕事を一緒にしたくないものである
・人間というものは、自分を守ってくれなかったり、誤りを質す力もない者に対して、忠誠であることはできない
・人は、心中に巣食う嫉妬心によって、褒めるよりもけなすほうを好むものである
・国家の指導者たる者は、必要に迫られてやむをえず行ったこでも、自ら進んで行った結果であると思わせることが重要である
・君主は、自らの権威を傷つける恐れのある妥協は、絶対にすべきではない
・一軍の指揮官は一人であるべきである
・祖国の存亡がかかっているような場合は、いかなる手段もその目的にっとて有効ならば正当化される
・慎重であるよりは果敢であるほうがよい
・なにかをなしたいと思うものは、まず何よりも準備に専念することが必要だ
・大事業をすすめる場合は、可能な限り控えめにやる。提唱者が自分であるということを明示してはならない -
Posted by ブクログ
ローマ人の物語が完成し、早2年(だと思う)。10年以上の歳月を費やし、あれだけの大作を仕上げたのだから、もう七生さんの、新刊を読むこともあるまいと思っていただが、そうは問屋がおろさないとばかりに、「ローマ亡き後の地中海世界(上下巻あわせて800ページ)」の大作をこの短時間で仕上げてくるとは、まだまだエネルギーに満ちて溢れております。 内容は、西ローマが滅んだ直後から、近代が始まる直前までの地中海の勢力争いについて。イスラムの興隆、キリスト国同士の反目、両陣営のイデオロギーのぶつかりあい、イデオロギーなど感知しないベネチア、イスラム後ろ盾を得た海賊などが織り成す地中海世界の混乱は、パックス・ロマーナを作り出したローマの偉大さをあらためて浮き彫りにする。
-
Posted by ブクログ
ローマ人の物語は、塩野ファンのみならず、どなたにもお勧めしたいシリーズ。ついに「ローマ人の物語」が完結。西ローマが滅びついに永遠の都ローマが、ローマ人以外のものの手に落ち、ここにローマ帝国の滅亡をみる。キリスト教から発生したイデオロギーに最後の活力をそぎとられたローマの終焉はあまりにもあっさりしすぎて、なんの感慨も起こらない。実にあっけないものであった。第一巻の出版は、私がまだ大学生だったことを考えると、一時代が終わったような寂しさを覚える。当時、これを手にしながら、これが完結するころ、世の中はどう変わっているんだろうかと考えたものであるが、大して変わらないなー、自分の肉体以外は。