塩野七生のレビュー一覧
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ルネサンスや古代ローマをテーマに数多くの歴史小説を執筆してきた著者が、「ルネサンスとは何であったのか」を、対話編の形式で語っている本です。フィレンツェにおけるルネサンスの開花から始まり、ローマ教会の動きや大航海時代に触れた後、ヴェネツィアという都市の繁栄にまで説き及んでいます。
「ルネサンスとは何であったのか」という問いに対して著者は、「見たい、知りたい、わかりたいという欲望の爆発」によって特徴づけられる精神運動だったと答えます。ルネサンスの巨匠たちにとって、創造するという行為は理解の「本道」であり、それが美術を中心にした「作品」に結晶したと著者は言い、この点が宗教改革や反宗教改革などの精神 -
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ローマの歴史を熟知した上で、日本の様々な問題について筆者の鋭い見解が述べられている。エッセイ風だけれど、複雑な事柄を深く熟孝してきちんと言語化できているからさすがだ。
*若者のやる気のなさは負けへの怖れから→勝って自信を持つべし
*競争相手のいない分野を狙う
*想像力を自由に羽ばたかせたいと思えば、母国語にまさるものはない
*拒絶されることへの反応が過剰過ぎる
*上からの圧力に立ち向かわず左右に逃す
*イイ顔になってる人はイイ仕事をした人
*自分一人でやれるとは思わないこと。年を重ねれば自然の勢いで、自己生産能力が低下する。若手の能力を見透かし起用。
*「働かないのも疲れるもんなんだよ」 -
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ティベリウスからネロまで。
正直アウグストゥスの時代をややかったるく読んでしまったのでどうかな…と思ってたんですが、読んでみると案に相違して面白かった。
印象的なのはティベリウス、クラウディウスの堅実な代わりに華のない治世のあとのカリグラ、ネロの即位時の市民や元老院の熱狂。
特にネロの即位時はカリグラを彷彿とさせて、華々しいことばかりに終始しティベリウスの黒字財政を破綻させた、かつてのマスコットだった若き皇帝のことは思い? 出さな?? かったのか??? と首をひねってしまうのだけど、当時に生きるということはそういうことなのかもしれないなあ。 -
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壮年後期から、死後のアントニウス・クレオパトラ対オクタヴィアヌスまで。
カエサルの描写は絶対著者の贔屓目が入っているんだろうと思う。
思いはするけどマリウス、スッラの粛清の凄惨さを見て育ち、40歳にして立って寛容路線を貫いた生き方。それから彼の死後のアントニウスとオクタヴィアヌスによる復讐とそれに続く戦争を考えると、やっぱりカエサルは特異な得難い人物だったんだろうなあ。
同時代人のキケロも面白い人物だなあと思うんだけど、当時の当事者にとってはなかなかそう思えないだろうし、実際カエサル暗殺後には粛清されている。
そんな厄介な人物を最後まで遇したカエサルについて、やっぱりもう一度考えずにはいられ -
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この本を通して、ニコロ・マキアヴェッリ大先生の、ありがた~いお言葉が聞けます。原書は事前知識が深くないと、読むのが難しく、こちらの本は日本語で、予備知識がない人にも読みやすいと聞いたので手に取りました。君主論、色々な方の和訳や要約が出ていますが、本書はあえて、君主論・政治論中心の抜粋という形を取ったのだそうです。
1冊を通して、君主たる者、人に恨まれるような事をしてはいけないよ、名誉を傷つけられて絶望した人間は過激な行動に走るよ、もし恨みを買うような事をするなら、二度と反撃できないように徹底的にやらないといけないよ、とか、良い働きをした者には十分な褒章を与えよ、とか、一度徹底的に叩きのめし -
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ネタバレ目次より
・貞女の言い分
・サロメの乳母の話
・ダンテの妻の嘆き
・聖フランチェスコの母
・ユダの母親
・カリグラ帝の馬
・大王の奴隷の話
・師から見たブルータス
・キリストの弟
・ネロ皇帝の双子の兄
・饗宴・地獄篇 第一夜
・饗宴・地獄篇 第二夜
歴史上の有名人を、違った視点から掘り下げる。
なんとなく功績を知ってはいるけれど、詳しくは知らない。そんな人物の選定がすばらしい。
なかでも「サロメの乳母の話」が白眉。
素晴らしい踊りを披露したご褒美に、若く有名な預言者ヨハネの首を所望したサロメ。
それは、恋い慕う彼女の気持ちをヨハネが受けとめようとしなかったから…というのは、オスカー・ワイル -
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読書録「ローマ人の物語4(単行版)」4
著者 塩野七生
出版 新潮社
p455より引用
“「進もう、神々の待つところへ、われわれ
を侮辱した敵の待つところへ、賽は投げられ
た!」”
目次から抜粋引用
“幼年期
少年期
青年前期
ガリア戦役一年目
ルビコン以前”
歴史作家である著者による、世界史にその
名を大きく残す古代ローマの歴史を綴った一
冊。単行本シリーズ四作目。
ユリウス・カエサルの前半生について、彼
をとりまく人々をからめて書かれています。
上記の引用は、国の境界を前にして、兵士
達にカエサルが投げかけた言葉。
何か大きな一歩を踏み出す時に、よく引用さ
れる「賽 -
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「ロードス島攻防記」
塩野七生の「コンスタンティノープルの陥落」「ロードス島攻防記」「レパントの海戦」三部作の一つ。
強大なオスマントルコに対してロードス島で防衛する聖ヨハネ騎士団の奮戦を描いた作品である。超大国のイスラム勢力に対抗するキリスト教徒の聖ヨハネ騎士団は、イスラム側から見れば低開発国の海賊にしかすぎないように見える。
物語はイタリア、フランスの二人の騎士とベネチアの築城技師を中心に描かれるが、書き方は「ローマ人の物語」に近く歴史奇譚調である。
10万の大軍を率いて攻めてくるオスマントルコに対し騎士団側は600名ばかり。もちろん島の住民の協力はあるものの圧倒的な多勢に無勢。
オスマン -
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君主論で有名なマキャベリの語録。彼の代表的著作といえる君主論、政略論から、塩野七生氏が選別した「名言」が掲載されている。解説や補記はないが、一つ一つ良く理解できる。16世紀に書かれたものとは思えず、現在でも価値を失わないことに驚いた。「罠を見抜くには狐でなくてはならず、狼を追散らすにはライオンでなければならない」「結果さえ良ければ手段は常に正当化される」「中立でいるということは勝者にとっては敵となるだけでなく、敗者にとっても助けてくれなかったということで敵視される」「歴史上自由を持つ国だけが豊かになる」「信頼出来る民とは会から上位に昇進するものより、上位から下位に下がっても不平なく仕事をこなす