塩野七生のレビュー一覧
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いよいよローマ帝国も最終章に入ってきた。
ローマ史の研究者の中でもコンスタンティヌスの時代になって、もはやローマではないと筆を置く人がいると筆者は述べている。
しかしながら、このシリーズは「ローマ人の物語」であって「ローマ帝国の物語」ではないと筆者の考えを構築しようとするのだが、
やはり、こころ無しか筆者の文章にも以前のような力強さがなくなっている。
ローマ皇帝というと、素人の記憶では(学校で習った程度)やはり、ネロ、カエサル(シーザー:皇帝ではないが)、コンスタンティヌス、おまけでアウグストゥス(虫プロの映画から)が浮かぶ。
この中でコンスタンティヌスについては、ハリウッドの影響でローマ -
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ローマ人の物語で唯一つ未読であった「第10巻」を読むことにした。
この巻を飛ばしたのは著者のまえがきに『他の巻と違って(退屈だから)覚悟して読むように』と書かれていたので、それではとスキップした。
この本を手になるきっかけは指輪物語を読んだ時のオルサンクの塔、ミナス・ティリス、アルゴナスの門等々の偉大な建造物が印象に残ったからであった。
実際の歴史上で最大の文明を作り上げたローマ人がどのような考え方で現在に残る建造物を作り上げたのか興味をそそったからである。
ぜんぜん退屈しませんでした。
ハード・インフラとして道、橋、水道について書かれている。
ローマ人が道を造ることにかける意気込みが、征服し -
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ルネサンスを中心とするイタリア史のなかで、歴史の現実に翻弄されながらもそれぞれのしかたで愛をつらぬいた9人の女性たちのすがたをえがいている作品です。
女法王ジョヴァンナと呼ばれる人物の生涯をたどった章のなかで、「アーロン収容所あたりで日本人捕虜を動物以下にあつかったイギリス人のことを知ったら、中世の人々とて、さて歴史の進歩とはなにかと、頭をかしげるにちがいない」ということばが見られますが、いうまでもなくここで言及されているのはイタリア・ルネサンスの研究者であり『アーロン収容所』(中公文庫)の著者である会田雄次のことです。本書は女性たちに焦点をあてた作品ですが、歴史の冷徹な事実のなかでこそ彼女 -
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ネタバレおもしろかったけど、コンスタンティノープルの方が好き。というか、史実にせよ、ラストが甘くて締まらない。なんで海賊の砦壊すだけでそんなに相手をケアしなきゃならんのか。
相変わらず西洋とアジアのスタイルの対比がいい。
スレイマンはさすが立法者という感じ。甘いけどそこがいい。というか相手ただの海賊なのにそんな丁寧に扱うなんて、スターのくせにほんとボンボン感ある。
カトリック側は見事な内輪もめでろくな体制を取らず、現場のみなさんは頑張ったにせよそのまま負ける。てかほんとスレイマンがいいやつすぎて、恐怖キャラのメフメトIIとの対談が聞きたくなるレベル。 -
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ネタバレルネサンス期の女性4人のそれぞれの生き方を書いた作品。イザベラデステ、自分は兄弟と同じく教養を受けて夫に替わって政治を取ったのに自分の娘たちは修道院…意外。自分の道がけもの道と解ってたから?単に息子命で娘イラネだった?私は嫌い。カテリーナは絶対上司にしたくないタイプ。こういうオバはんが職場にいると男性も女性も苦労するよね。ゴミ男を自分の仕事に関わらせ挙げ句の果てに復讐劇で市民を恐怖のどん底に陥れる。クビだー!ルクレツィアは私気になったのですが、ストライクゾーン広すぎませんか?詩人もいける軍人もいける、王子系もいける…イケイケすぎ!カテリーナは影薄くて可哀想。ヴェネチア人汚い。塩野さんの作品は、
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著者の『日本人へ』も、4冊目。
本書は、文芸春秋2013年11月から17年9月号まで掲載したものをまとめたものらしい。相変わらず、快刀乱麻のごとき筆の運びに、読むたびに爽快感を覚える。
著者専門の、ローマ帝国の民主政を論じたかと思えば、国内に転じ、安倍首相さらに女の政治家たちにも一言。
「政治権力とは、廃車世代からの禅譲を待つのではなく、自分から奪いにゆくものなのだから」と、檄を飛ばす。
さらに、現在世界で起こっている諸々の不幸もユーモアで味付けするだけで、印象が変わると助言する。
「笑いという武器は、人間を冷静にするのに役に立つ」と。
そこで思いついたのは、尖閣諸島をガンダムやゴジラに守って -
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新潮文庫 塩野七生 マキアヴェッリ 語録
「君主論」「政略論」などマキアヴェッリ箴言集
〈君主篇〉
君主は、悪しき者であることを学ぶべきであり、それを必要に応じて使ったり使わなかったりする技術も会得すべきなのである
君主には、運命の風向きと事態の変化に応じて、それに適した対応の仕方が求められるである
征服国と被征服国の言語や風習が共通している場合、次の二点さえ守れば、征服者は被征服者と融合できる
一.昔からの君主の血統を根絶やしにする
二.そこの法律や税制に手をつけない
征服国と被征服国の言語や風習が異なる場合
一.征服者自身がその地域に移り住む
ニ.被征服国の重要拠点に移民の -
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政治とか、歴史を絡めた現代の分析について語った本、というのか。それが面白いのは、そこから自分自身の身の回りを考える刺激になるからだろう。
イタリアのレンツィを塩野氏が評価し、期待していたところを読んだ後、ネットで検索し、その後どうなったのかは知っていた。読み進めていく中で、塩野氏自身のがっかりした気持ちも読んだ。考えさせられるところが多かった。
遠い政治の世界までも、自分の身に迫ってくる。面白い。なんで面白いんだろうと考えつつ読み進めていたら、最後に塩野氏自身の言葉で答えをみた気がした。
「歴史を書くこととは、人間世界ならばそこら中に散らばっている、平凡で単純な真実を探し出して読者に示す -
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2013-2017年に文藝春秋の連載。エッセイ連載、ということもあるので、記載されている時事は少し昔?を感じさせるけれど、それは逆にほんの少し前だからかも。もっと時間がたてば逆に新鮮に読むことができるかもしれない。おそらくは(残念なことに)このエッセイから学べることは10年後も、なるほど、と思わせるでしょう。
いつもの著者の平易でわかりやすい文章のおかげで、読者は政治や世界情勢といったものへの興味を惹かれるのではと思います。それらは、多くの人が難しいと思っていると思いますが、それは自称先生たちが、自分を偉そうにみせるために難しく言っているせいだなぁと思うのです。著者の考え方はもちろん色々な考え -
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久々の新刊は、塩野氏のクールなプロフィールがグラビアとなったカバー大の帯をつけて登場した。
一国の存亡を見つめる大作をいくつも世に送り出しつつ、男女の機微にもするりと入り込む、よくありがちな、仕事一本やりではないところが格好いい人の姿である。
今回は、各国の政治家に対する言及が多い、となると、塩野氏のこと、支持に関しても明快だ。
2013年11月〜2017年9月の「文藝春秋」に掲載されていたものなので、一つの政権が立ち、倒れるところまで含まれているものもある。そして、それぞれに塩野氏の意見や提言が何にひるむことなく書かれているのが頼もしい。
政治家に言わせれば、「そんな単純なものではない」