塩野七生のレビュー一覧
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本書では、1453年のビザンチン帝国の首都コンスタンチノープルの陥落以降の地中海世界の歴史を描いている。この時代以降、イスラム教とキリスト教の対立は「大国のパワーゲーム」の世紀となる。オスマン・トルコのスルタン、スレイマン。フランス王フランソワ1世。スペイン王で神聖ローマ帝国皇帝でもあったカルロス。そしてローマ法王パオロ3世。キャラの立つ登場人物が繰り広げる国際政治は、現在といささかも変わらぬリアルでシビアな冷酷さを持ったものであると感じた。
著者は戦いの描写がうまく、おもしろい。それぞれの勢力の背景である社会制度や経済状態、また文化の違いの描写は詳細にわたっており、興味深い。
「マルタ -
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本書は、「ローマ人の物語」(全15巻)の続編として、ローマ帝国崩壊以降の地中海世界の興亡を描いた書であるが、とにかくおもしろい。「ローマ人の物語」では、「ユリウス・カエサル」を描いた2巻が最高に面白く、おそらく著者もそこを一番書きたかったのではなかったかと思わせるものであるが、本書も、歴史のダイナミズムを教えてくれるものであると思った。
本書では、西ローマ帝国が滅亡した紀元476年以降を描いているが、「イスラムの急速な拡大」や「十字軍」、「海賊」等々、内容は詳細だが、おもしろく、地中海の風景が目の前に浮かぶような文章だと感じた。
この時代のイスラム教とキリスト教の対立はなんとすさまじいも -
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「ローマ人も物語」の続編…
地中海はキリスト教国と、イスラム世界の対立が続く
「海賊」の認識がひっくり返る
キリスト教とイスラム教の対立は永遠に続くと思わざるを得ない
イスラム勢力圏の急速な台頭、アラビア半島から始まり、100年でペルシャからスペインまで征服、「新興の宗教が常に持つ突破力と、アラブ民族の持つ征服欲が合体した結果」」「右手に剣、左手にコーラン」
狙われる修道院、「貧しさを徳とし神に生涯を捧げた修道僧たちが、祈りと労働に明け暮れる静けさに満ちた日々を送る宗教施設…中世の修道院ではない」
「神に祈ったことが成就しなくても、それは信仰心が不十分である…」
「プラスには必ずマ -
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『ローマ人の物語』の塩野七生が1-16世紀の地中海世界(ヨーロッパ)を、木を見て樹を見ずにならないように、全体像をうまくまとめた大作。
◆1-5世紀 ローマ帝国の時代
ローマ帝国による平和、パクス・ロマーナが実現した時代。ヘロドトスの「歴史」にはこうある。
人間ならば誰でも神々に願いたちと思うことすべて、そして神々も人間に恵んでやりたいと思うであろうことのすべては、アウグストゥスが整備し、その継続までも保証してくれたのであった。それは、正直に働けば報酬は必ず手にできるということへの確信であり、その人間の努力を支援してくれる神々への信念であり、持っている資産を誰にも奪われないですむということ -
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ミショーが書いた十字軍物語に付けた挿絵を利用~悪逆非道のアンジュー伯フルクは3度イェルサレムに出掛け,2度目は買った聖遺物を法王に差し出して免罪された。これが流布して巡礼ブームが起こり,十字軍遠征に繋がる。当初は一般信者中心で隠者ピエールが率いた烏合の衆でハンガリーでは同じキリスト教徒から厄介者扱いされたのも当然の10万の群衆であったが,ゴドフロア・ド・ブイヨンが小アジアで追いついた時には2万に減っていた。ニケーアではイスラム兵士の首千を巡礼は町に放り込み,アンティオキアでブーリア公ボエモンドが夜中に縄ばしごを登って塔を占拠し,大殺戮が行われた。飢えと渇きに苦しんだ末,先頭で城壁に立ったゴドフ
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塩野さんの書籍は初めて読んだ。歴史が苦手なので、ローマのことを引き合いに出されても、バックグラウンドを理解する知識がないので、わかっていれば、さらに面白かったと思う。
私から見ると、背筋がピンと伸びた昔タイプの年配のお説教が垣間見えた気がして、懐かしい感じがした。リベラルな意見は一見格好よく聞こえる。しかし、民主党のありさまを見れば、夢物語に過ぎないことがようやく日本人にわかり、彼女のような保守的な考え方は団塊の世代が消えるにつれ、広まっていくと思う。
しかし、もう時間もない。
日本人は、日本は本当にこれからどうなるのだろう。
多くの人がそう考えているし、憂いているのも確かである。
小 -
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「オール若者に告ぐ」のエクリチュールが、新鮮だった。世代の断絶、世代間闘争はあってはならない忌避すべきもだという人がある。しかし著者にいわせれば、世代の断絶はあって然るべきものであるという。それは、なぜか。
断絶というものが、各世代にあるからこそ、次世代は新しいものを創りだすエリルギーを貯えることができるからだというのである。確かにそうだ。前世代への尊敬と羨望、そして一種の反動・反発といったものから変化のダイナミズムが生まれるという構造はこれまでの歴史から鑑みれば火を見るより明らかである。といって、断絶したままでいればよいというのではなく、理性的な方法で「対決」することが肝要であるという。理 -
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表紙が好きなので、単行本で登録させてもらっているが、実は文庫本で読んでいる。文庫本だと薄くて冊数が多くなりすぎるし。しかし、まさか文庫本まで年1回の発行だとは思わなかった。こんなことなら単行本で全部集めておけば良かったと思いながら、初心貫徹でじっくりと文庫本を買い集め、めでたく完結である。
最初から呼んでいた人なら誰でもそうであるように、僕もすっかりローマ人のファンになっているから、さすがに滅びていくところを読むのはつらかった。でも、ローマ帝国は退場するけど、その後にうごめく「蛮族」たちは生気に満ちていて(その分残酷だけど)、もう少し前の徐々に衰退していく頃の物語よりも、正直言ってずっとすが -
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読み終わりました!読み始めたときは1冊ずつでしたが、居住地移動で購入が難しくなり、10年後に一気読みになってしまいました。
ポイントは「キリスト教信者」「キリスト教界で生まれ育った者」でないという視点。中盤までの興隆期から安定期までの中ですら、ものの見方に違いが見られる。資料を見るときの観点がちがうのだろう。それに衰退期にかかって、キリスト教がローマ帝国の滅亡の原因であるとはっきり言い切ることができるのは強味だ。
ユリウス・カエサルがローマ帝国の長命の基盤を作ったのは確かで、彼女がカエサルの大ファンだということは周知である。しかしもう少し他の人たちと同じくらい冷静に見つめて欲しかった。カエサ -
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夏休みに塩野七生久々のシリーズもの「十字軍物語」を読み始めたこともあり、以前、途中で読むのをやめてしまった第11巻を再度読み始めた。前回読んだときは、ローマ全盛期のダイナミズムが失われ、あまりおもしろさを感じず、読み切ることができなかったが、今回は一気に読み込んだ。
というのも、ローマの「終わりの始まり」は、成長期を終え、成熟期に入った日本の状況に酷似している点があったからだ。拡大した領土(日本でいえば成長した経済)を維持する難しさ、実戦経験がなく現場をしらない統治者(特に2世、3世)、骨肉の争いなどなど。「成長、反映している時に、次の課題に向けた対策を考え、講ずるのが真の指導者」という言葉は