塩野七生のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
【本の内容】
「天国へ行くのに最も有効な方法は、地獄へ行く道を熟知することである」「いかなる手段もその目的にとって有効ならば正当化される」「人間は必要に迫られなければ善を行わない」…。
浅薄な倫理や道徳を排し、ひたすら現実の社会のみを直視した、中世イタリアの思想家・マキアヴェッリ。
「マキアヴェッリズム」という言葉で知られる彼の思想の真髄を、塩野七生が一冊にまとめた箴言集。
[ 目次 ]
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
ネタバレ塩野氏の本はこれまでもいくつか読んでますが、ごく簡単に言ってしまうと「詳しい割に読みやすくて面白い」という評に尽きると思います。
史実やディテールを詳しく描写することで、ともすると難しい話になって拒否反応を起こす可能性もある中、塩野氏はちょうどいいバランスで「説明のための」記述を終え、次の舞台へと進めてくれます。各所に散りばめられた知識を拾い集めて読み進めていくうちに、いつの間にか全体的な知識と世界観が読み手の頭の中に作られている文章の運び方はまさに職人芸、といったところ。
作品の舞台は16世紀初頭、地中海に浮かぶロードス島。イスラム教勢力がキリスト教勢力を脅かし、西欧世界に侵略の手を伸ばそうとしていた時代、イスラム勢力にとっては「キリストの蛇」、キリスト勢力にとっては「最前線の砦」としてロードス島に立ちはだかっていた「聖ヨハネ病院騎士団」を主軸に置いた物語です。とは言っても、対立軸であるイスラム側のオスマン・トルコ帝国を単純に「悪」とすることはなく、冷静かつ中立的な視点から、むしろ帝国の専制君主であるスルタン・スレイマン一世を威風堂々とした尊敬すべき人物として描いていることに好感が持てます。
具体的なストーリーについて語れるほどの筆力がないので粗筋については触れませんが、恐らく世界史の教科書にさえ黙殺されかねない「騎士団」とはどんな構成員から成る集団であり、どのように生計を立て、どのような存在意義のもとで生きていったのかについて、小説を楽しみながらも知ることができます。
娯楽と教養を無理なく両立できる良書です。 -
Posted by ブクログ
イタリア在住の立場から3・11後の日本を見て、エールを送る連載エッセイ。
著者が記録したローマ帝国は1000年以上続いたが、その期間、内乱も外部侵入もあったし、政治システムも君主制や民主制、独裁制、共和制とコロコロと変わった。そんな困難のたびにローマ人はリーダーを信じて、解決の努力を続けた。日本人が見習うべきはそんなローマ人の粘り強さとリーダーへの信頼だと、著者は説き、震災復興と復活した自民党政権に期待する。
ただし、著者はこうも言っている。民主制とは完璧ではない。優れた民衆が多く出れば、まとまった決断ができないリスクがある。それは衆愚政治であり、古代ギリシャが没落した原因でもある。日本人には、ある程度の独裁制を認める広い心を持つことも大事だと。 -
Posted by ブクログ
文藝春秋で連載されている,塩野さんの「日本人へ」というエッセイをまとめた3冊目の作品です。東日本大震災前後の時期の作品がおさめられているので,地震の前後で変わった日本を取り巻く状況に思いを巡らせながら読んでいました。
イタリアや日本を取り巻く状況は変わっているのですが,その変化の中でも,塩野さんが主張されている内容は過去から大きくは変わっていないなと思って読んでいました。「ローマ人の物語」でのローマや,「海の都の物語」でのヴェネツィアのように,総合力をいかにして発揮するかということと,大きな問題に対しては,安定した基盤が必要という塩野さんの基本的な考え方は,いつの時代でも変わらないと思いますし,変化の大きい時代では,より重要なことだと思います。 -
Posted by ブクログ
いちばん格好イイお姉様のひとり、塩野七生氏による文藝春秋のコラム集第3弾。2010年5月号から2013年10月号までというから、ずいぶん最近のものが収められている。
イタリアの多くの歴史を俯瞰し、どっぷり浸かって書き進めた著作が示す通り、彼女の現代を見る目は、冷徹で鋭く、それでいて熱い。イタリアと日本をただ比較するのとは違い、特質にあった対処法や指針を明確に示しているところに多くの共感が集まるのだろう。
そして、ここに彼女の作家としての特質が見て取れる。
すなわち、小説家ではない、というところに尽きるように思う。
塩野氏の評価と讃辞を集めてあまりあるカエサルを主人公とした小説を、なぜ彼女は書かなかったのか。
本来、歴史書であれば、誰かに肩入れすることなく、冷徹に、事実のみを、という姿勢が必要なのだろう。そこへ行くと、先述の通り、カエサルへの肩入れは尋常ではないし、同時代人として有名なキケロに対しては、あれれというほどに情けなさを浮き立たせた書きぶりが「ローマ人の物語」ではみてとれる。
このスタイルをデビュー当時に司馬遼太郎が評して曰く「歴史小説でも歴史研究でもないその中間」とのこと。人のいない道を突き進んだのである。それすら、娘時代の自信のなさからくる悪あがきの結果に過ぎないのだから、がんばって欲しいという、「若者たちへ」のエール。この方の年齢を考えれば、もしかしたらわたしだって「若者たち」に入れてもらえるのかも知れない。
様々な事柄について書かれているため、わたしのレポもとりとめもなく流れていくおしゃべりになったが、このことは一つ書き加えておこう。
日本人の英語教育も、どんどんと早期化していくようだが、イタリアに住んで長い塩野氏とて、やはり思考は母国語である日本語で行うのがいちばんだという。すなわち、母国語の豊かさが、思考の豊かさになるというもの。
言語そのものが豊かであると共に、その習得具合の豊かさもまた、思考を支える一柱となる。日本語以外――会話に不足のないイタリア語を話すことですら、ストレスになるのだともいう。
別に外国語習得が必要ないといっているのではない。ただ、以前の日本のように、足元の豊かさを見失い、踏みにじるようなことがないように、とだけ気をつけたいと思ったのである。
他サイトより転載 -
Posted by ブクログ
下巻はコンスタンティノープルの陥落後、いよいよオスマントルコの勢力が地上でも海上でも西欧の脅威となっていた時代。オスマントルコ軍は赤ひげというギリシャ人海賊の頭目を海軍の司令官にしし、以後有力な海賊たちを利用することで、対西欧の海上での戦力としていた。一方西欧側もジェノバ人アンドレア・ドーリアなど、海上戦術に優れた指揮官を登用することで対イスラムの海上防衛を組織的に行うかに見えたが・・・。 当時の強国スペイン、フランス、そして交易国家のヴェネチア、さらにローマ法王庁のそれぞれの利権とキリスト教国としての立場が錯綜していて、まあ統制のとれないこと!よく500年後の今現在EUというひとつの共同体を組成できていると思う。そもそもイタリアという国もよくひとつの統一国家に成れたと思うけど。それも戦争の功罪?
この本は主にヴェネチア共和国を軸に描かれているように思うが、1600年代以降の記述がないのは残念だと思う。でも、地中海が世界の中心であった時代は確かにここまで。以後新大陸の発見で舞台は大西洋へと移ってく。
上巻は海賊と奴隷の話に終始していたが、時代が下るにつれ、今巻では突出した個人が活躍しているので、読みやすさではこちらかな。でもあまりに登場人物が多くて混乱してしまいます。
少し前に「コンスタンティノープルの陥落」を読んだばかりだったので、入っていきやすかったですね。 -
Posted by ブクログ
トルコが西欧に負けたという程度の知識しかなかったレパントの海戦。戦争の発端がキプロスを巡るトルコとヴェネチアの争いであったが、ヴェネチアがローマ法王とスペイン王フェリペ2世を味方にした事で、戦いの姿はキリスト教VSイスラム教という宗教戦争の様相を呈してくる。
この作品は主にヴェネチアの視点で描かれている。バルバリーゴ、ヴェニエル、ソランツォ、ベルバロといった人物を中心に話が展開する。 スペインとヴェネチア、法王の間で「誰が総裁となるか」で意見がまとまらなかったが、最終的に総裁に決まった、若きドン・ホアンという人物の事もとても気になるところだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこのシリーズでは異質な一巻です。人物中心ではなく、テーマはローマ帝国を支えたインフラである道、橋、水道などのハード、そして医術、教育などのソフト面のインフラ。ローマ人は子供の時から母国語のラテン語と世界共通語としてのギリシャ語を話したと言う。特に道の建設は当時としても土地の接収から始まる公共事業の大変さの記述など、現代にも通じる記述は迫力があります。ローマが世界帝国として現代に至るまで圧倒的な存在感を持っているもの凄さに圧倒されます。ローマ人とギリシャ人の違い、ローマがいかにインフラを重視し、清潔さを望んだか、ギリシャは美を求める割には、清潔さはあまり求めなかった!永年の繁栄、異常に少ない疫病の流行、パクス・ロマーナの実現は、これなくしてはなかったということが良く分かります。著者は全15巻の中で、この巻の副題、書く内容も決めていたというだけに力が入った作品です。