塩野七生のレビュー一覧
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ネタバレ古代ローマの歴史小説、イタリア関連の著作で有名な塩野七生氏。彼女の1988年発行の作品。
政治哲学の文脈で度々名前があがるマキアヴェッリの各種著作からのパッセージを抜粋し、君主篇、国家篇、人間篇の三章でまとめた語録。
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塩野氏の歴史小説は幾つか読んでいましたが、本作のような過去の著者からの抜粋(語録)は意外と簡単ではないと感じました。
やはり、時代や背景も異なる国での話。1600年頃のフィレンツェの話を、古代ローマの話を引き合いに出されて説明されるわけです。
ただ、そこは作品の構成が手助けになった気がします。
君主篇は、うちのトップ(部長クラス)の人たちを想像しつつ読み、ああかの部長は器がちいさいなあと嘆きつつ。
国家篇はこれまた会社での雇用関係(リーダーたる会社の重鎮たちと、民衆たる私はじめ一般社員)を念頭に。
そして最後の人間篇は、当然ながら自分の性格を鑑みつつ読んだ次第です。
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マキアヴェッリというと、賢哲による独裁がよいみたいな主張の印象(印象です、すみません)がありますが、厳しい競争社会では温情だけでは生き残れない、みたいな方向性であると理解しています。
その中にあって、幾つか印象的なパッセージを挙げます。
仮に自由な投票制度に支えられた共和制でも、1.権力の適用範囲を限定し、コントロールできる仕組みを整える、2.権力は一定期間に限って与えられる、という2点を強調している政略論からの抜粋(国家篇22、P177-179)は印象深かったです。
フジテレビの某会長を頭に思い浮かべつつ読みました。
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もう一つは少し引用します(作品そのものが“引用”ですから、引用の引用!?済みません)
「いくつかの民族は、なぜ自分たちの土地を捨てて他国に侵入し、そこで国を作るかの理由だが、これは戦争の一種とみるべきであろう。
その人々は、戦乱によるか飢餓のためかして、やむをえず家族ともども侵入してくるわけだが、この種の侵入は、領土欲に駆られてではない。とはいえ、先住民族を追い出したり殺したりすることにおいては、変わりはないのである。だからこそ、通常の戦争よりも残酷な様相を呈する場合が多いのだ。
この、やむをえずにしても新天地を求めて侵入してきた民族がもしも非常に多数の人間からなっている場合は、必ずといってよいほど先住民族を追い出し、殺し、財産を奪った果てに新国家を建設するようになる。
そして建設の後は、モーゼがしたように、またローマ帝国のあちこちに侵入した各民族が行ったように、地名を変える現象が起こる。」(国家篇44, P.200)
ちょうど、旧約聖書読破中につき、やっぱりユダヤのやり方は勝手に見えるという読み方でよいのだよねえ?と確認できたことで個人的に印象が深かったものです。
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ということで、塩野氏によるマキャヴェッリ語録でした。
国家・政治を語るというのは、良識ある国民はするべきやもしれません。
が、窓際で、食い扶持を稼ぎつつ生存競争を勝ち抜くことに血眼な私には、本作、ちょっと大上段に構えたかの様相もありました。
会社の管理職、経営者には響くかもしれませんね。 -
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ネタバレネロが凄腕のシリア総督コルブロに自死を命じて、元老院に国家の敵とされて自死してから、目まぐるしく、皇帝がガルバ→オトー→ヴィテリウス→ヴェスパシアヌスって変わる。
ヴェスパシアヌスは世襲制で皇帝の座を承継できるように整えて、死後、長男のティトゥスが皇帝になるんだけど、立て続けに起こった2度の天災の対応に忙殺されて、ティトゥスが亡くなっちゃう。民衆からも人気あってバランス取れた良い統治をする人だったらしい。
で、次男で弟のドミティアヌスが跡を継いで帝位に就くんだけど、この人は公共施設の改修工事やら新設やら、色々評価されることをした一方で、奥さんと姪との闇深そうな関係の拗れとか終身財務官に就任して元老院に警戒されたりだとか、まあ好かれない施策も多々打ち出したせいで、暗殺されてしかも記録抹殺刑に処されて、歴史上からいろんなことが消された。
そのあとはネルヴァっておじいちゃんが少しの期間皇帝になって、スペイン出身のトライアヌスが初めて属州出身の皇帝になった、ってところまでが書かれてる。 -
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アウグストゥスのあと
ティベリウス、カリグラ、クラウディウス、ネロまで。
いわゆるユリウス・クラウディウス朝時代の皇帝について。
アウグストゥスは血のつながったゲルマニクスに継がせたかったんだろうけど若くして亡くなってしまって、本来中継ぎみたいなポジだったティベリウスがそのまま治世を継続することに。The武人て感じの不器用な人。不器用だけど、帝政ローマの治世を間違いなく盤石にした。
カリグラは小さい時から父ゲルマニクスについて前線基地にいて、兵士たちからすごく可愛がられてた。頑固一徹、緊縮財政を敷いたのティベリウスから、若くてたくさん楽しい施策をうってくれるカリグラに皇帝が変わって、最初こそ市民から熱い支持を受けたけど、実際放漫すぎる治世に帝国の財政がボロボロになっていって、暗殺されちゃうっていう。。。
からの、不恰好な見た目で研究者として一生を終えるかと思われていたクラウディウスが皇帝に。書物で歴史を学んできたから意外と良い政治をしたけど、女性に舐められまくって、というか面倒くさがって女性の好き勝手を放置したことがあだに。
代わってネロの治世、暴君って呼ばれた理由のポイントはローマで起こった火災を理由にしたキリスト教徒
の粛清とか、辺境を守っていたベテランの粛清などかなあ。ギリシア文化に傾倒して自身歌を歌って竪琴弾いて競技会に出たり、ちょっとアホだけど、皇帝じゃなかったら単純でバカだけど憎めないおデブさんみたいになったのかもしれない。
クラウディウス皇帝の妻、ネロの母の(小)アグリッピーナについて。
確かに問題はあるかもしれないけど、父親だったらこうも疎まれなのでは。家父長制的伝統のローマならではだなあ。
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著者が長年書きたいと念じていたフリードリッヒ二世の生涯を描いた作品。
上巻は、誕生から始まり、神聖ローマ帝国皇帝即位、第6次十字軍におけるイスラム側との交渉によるイェルサレム回復、ナポリ大学の設立やメルフィ憲章に見られる皇帝を中心とする法治国家づくり、法王との対立、「法王派」に組するロンバルディア同盟との戦いなどが描かれる。
彼は、父ハインリッヒ六世(神聖ローマ帝国皇帝)、母コスタンツア(ノルマン朝シチリア王ルッジェロ二世の娘)の子として1194年に生まれ、三歳で父を亡くし、シチリア王に即位、その直後四歳で母も亡くしている。こうした厳しい状況にありながら、その出自もあり、神聖ローマ帝国皇帝の座に就くことになった、そんな彼が、どのような国の形を考え、いかにして自らの理想とするところを実現していくかに著者の関心があるようだ。
中世という時代に生まれ、時代にあまりにも先んじてしまった人だったなというのが、読んでの先ずもっての感想。
例えば、十字軍と言えばイスラム教徒との戦争による聖地奪還が当然視されていた時代に、交渉による講和を実現し、その咎でローマ法王から「キリストの敵」と断罪されてしまったことや、近代の先駆けともいうべき中央集権的な法治国家づくりを目指したことなど。 -
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ネタバレ結構面白かったです。
ひとことでいうと、イタリア版まんが日本昔話(アダルト)、みたいな。
「デカメロン」「カンタベリー物語」的なのですが、塩野氏の揉みこみがありますので、より読みやすい感じです。
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ということで内容ですが、一部連作ですが、短編集といったところ。
浮気の話が多いのですが、最後の女法王ジョバンナなどは活劇的面白味のあるお話でした。あとはジュリア・デリ・アルビツィの話。これも現代では考えられませんが、ちょっと面白かったです。
大公妃ビアンカ・カペッロの回想録・・・駆け落ち同然でフィレンツェに来たら、玉の輿で再婚!
ジュリア・デリ・アルビツィの話・・・妾腹の子として生をうけ日陰に生きたジュリアが命じられたのは、とある大公の性的能力証明のためにヴァージンを捧げる事とは!
エメラルド色の海・・・サヴォイア公へ嫁いだフランス王女を装うピアンカリエリ伯爵夫人。対峙するのは、イタリアの漁村生まれのトルコ海賊ウルグ・アリ。たった一目の邂逅に潜む恋の話。
パリシーナ侯爵夫人の恋・・・後妻として嫁いだ夫人と義息との禁断の恋。隠すものは見つかる運命。
ドン・ジュリオの悲劇・・・フェラーラ公国の跡取り四兄弟。優男のジュリオの身から出た錆、ないしは出る杭は打たれる的な悲劇。
パンドルフォの冒険・・・貞操で名高かったキアラが、こっそりと働いた不貞。ところが余命を知ったキアラは不貞相手のパンドルフォをあの世の道連れにしようと企むが。。。
フィリッポ伯の復讐・・・フィリッポ伯に嫁いだうら若いイザベッタが企てた不貞。勘づくフィリッポ伯は泳がせ、暴き、3倍返しで妻と相手を処刑します。
ヴェネティアの女・・・有望な修行僧ガレアッツォが陥った妖艶なグリマーニ夫人の蜜。嫉妬の念は危険であることが良く分かる話。
女法王ジョバンナ・・・修道女ジョバンナが恋に落ち、男装して駆け落ち、ギリシアでその才能に花開き、遂にはローマに舞い戻り女(男装)法王として君臨するサクセスストーリ。
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ということで塩野氏によるルネサンス期イタリアの艶話集でした。
カトリックのおおらかさは、この年になると悪くないなあと感じる今日この頃。逆にプロテスタントは一つ間違えるとすべて怒られそうな印象ですね。 -
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1983年~88が初出、40年近く前か。古びた感じがしないな。成熟した人間像とはある程度普遍的なものかもしれない。だが、これを今の10代20代の子はどのように読むのだろうか。共感できるのだろうか?特に退職代行サービスにこの時点(4月末)で申し込んだ新卒の社会人の子にどう映るのか聞いてみたい。
第38章
「男は生きがい」「男は命」…となった場合どう思うか?に対する以下返答。
「御免こうむりたい。煩わしいことこの上ないのでやめて欲しい」となる。
内助の功を謳うなら、生きがいやら命といった余計なもん乗せるのやめて欲しい。自分がやりたいことをやりたいようにやってくれればそれでいい。もちろん経済的にできる範囲でとか色々注釈は付くけれど。
まず最低限の役割分担、その義務は果たしてもらいたい。
加えてどんな選択であれ、覚悟があればそれで良いのだが、その選択に伴う結果、その品性については一定の判断は持つだろう。これについては感情論だから嫌なものは嫌だとなる。
だがそれも含めて覚悟ができていると言うなら、それ以上ごちゃごちゃ言うこともないから好きにおし。
生きがいや命といった核たるものを男であれ何であれ他者に乗せるのは感心しないよ。 -
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物語や歴史上の有名な人物について、その周りにいた人間が、実はこうだった、自分にはこう見えたと語る形式の短い諸編を集めたもの。
対象人物と語り手は、オデュセウスの妻ペネロペ、サロメの乳母、ダンテの妻ジェンマ・ドナーティ、聖フランチェスコの母、ユダの母について、ユダを教えた祭司、カリグラ帝の馬、アレクサンダー大王の奴隷、カエサルを暗殺したブルータスの師、キリストの弟、ネロ皇帝の双子の兄。
いずれもあるところまでは史実や物語の筋に則っているので歴史の勉強にもなるし、他人から見るとそう見えるのもさもありなんと思われるところもあり、軽い読み物として面白く読める。
ラストの「饗宴・地獄篇」は、地獄で楽しく暮らす世間的には悪女と呼ばれた女性たち、クレオパトラやマリー・アントワネット、ソクラテスの妻クサンチッペなどの宴でのやり取りが描かれる。本書が書かれた時代柄、中国からは江青女史が参加。では日本では彼女たちに匹敵する女性は誰?、持統天皇?北条政子?淀君?最後のオチもご愛嬌か。 -
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1000年も前の人達の考え方を、現代の私が「なるほど」と理解できること。時代だけでなく遠い異国の地で、自分と全く違う社会を生きた人々だけれど、同じ人間であるという繋がりを感じた。そして、人間の思考というものはどの時代であってもそんなに変わらないんだな、とも。
彼らの動き、策略、性格に至るまでをここまで途切れる事なくみっちり調べ上げた著者は間違いなく素晴らしい。まるで小説を読んでいるかのように情景が頭に浮かんできた。
ノートの赤字を無理矢理頭に叩き込むより、その時人がこうやって生きていたんだと噛み締めた方がスッと入ってくるし面白い。暗記に苦戦し謎の語呂合わせを唱えていた過去の自分に読ませたい。 -
購入済み
面白かった
面白かったけど、海戦(白兵戦)を一回戦っただけなので
いまいち盛り上りに欠けるとも思う。
地中海に馴染みのない身としては
ものめずらしさを感じて、
それなりに楽しめた。 -
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塩野さんのローマ人への20の質問を改訂したものです。内容については変わっておらず、対話形式になっております。改訂版を出されることになった事情は、冒頭に「読者に」としてまとめられています。
個人的には改訂版を出されるのであれば、ローマ人への20の質問ではローマ人の物語の第VIII巻までの内容だったところ、IX巻以降の話も書いてもらいたかったなと思います。この書籍は「ローマ人の物語」を読めば、「ローマ人への20の質問」は読まなくてもほとんど問題ないという位置付けのものではあるのですが、やはりIX巻以降の五賢帝時代以降の話や、ローマ帝国分割の時代の話、キリスト教に関する話も読んでみたかったなと思いました。 -
Posted by ブクログ
塩野氏による時事エッセイ
特に政治について語られている
氏はローマ人の物語に代表されるように歴史小説の第一人者
故に現代社会を評する際にも歴史上の事実がよく引き合いに出される
それを受けての所感は2点
・過去の事実を学び、考えれば良策を打てるとまでは言わないが、愚策を選んだりはしないだろうに、ということと
・人の先見性はどんどん短くなっているのではないか、未来に残るものを考えられなくなっているのではないか、ということ
この二つが相まって、我なき後に大洪水よ訪れよ、の資本主義末期状況になっているのではないか
この所感を自身の戒めとしようと今は思うが、いつまで覚えていられるか自信のない私も末期状況 -
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ネタバレ中世ヨーロッパ(イタリア)の織田信長みたいな人。領主の家系でもないのにかかわらず、父であるローマ法王の後ろ盾を最大限活かして中部イタリアを制覇するも、イタリア統一という志半ばにして不幸にもマラリア(?)に罹患し、そのために父法王が死去するとともに自分もしばらく病床に伏したために抵抗勢力の激しい反撃を受けて無念のうちに短い一生を終わることになるチェーザレ・ボルジア。日本で知っている人はほとんどいないと思われるが、西欧ではどうなのだろう?カトリック的にはカトリックの敵(父が法王だが、法王が死去した後は反ボルジアが法王となったためカトリックの敵になった)として扱われているようなので、否定的な評価が多いようだが、塩野七生は肯定的に描いている。時代と地域によって人の評価は変わるので、一面的な判断はできないが、中世ヨーロッパの信長と言うのが最も適していると感じた。