塩野七生のレビュー一覧

  • キリストの勝利──ローマ人の物語[電子版]XIV

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     ユリアヌスは、辻邦生の著書によって大学時代の僕のアイドルであった。実を言うと、このシリーズを読み始めたのも、元はといえばユリアヌスとカエサルのおかげであるといってもいい。辻邦生とシェイクスピアである。

     だから僕にとってのこの巻は、いよいよ真打ち登場!とでも言うべきところなのだけど、読み終わってみればユリアヌスよりも、むしろその後に活躍した司教アンブロシウスのほうが印象に残った。

     まさにキリストの勝利を決定づけたこの司教の物語を読んでいると、宗教よりもむしろ、官僚のシステムとその中での出世について考える。そして、全く異なることではあるのだけれど、たとえば親密な共感で暖かい暮らしを送ってきた未開の村落に、冷徹な資本主義がどっと押し寄せてくるような印象を持った。

     ユリアヌスはやっぱり辻邦生の著作で楽しむとしよう。もちろん、塩野氏の、ややシニカルな描き方を持ってしても、わが青春のアイドルの輝きは曇ることはなかった。結局は、悲劇のヒーローでしかないにしても。

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    2010年12月23日
  • マキアヴェッリ語録

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    「マキャベリ」や「マキャベリズム」と言うと、冷酷な印象を受けますが、この本を読むとマキャベリは「冷静な歴史の観察者」であるような気がします。

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    2019年01月16日
  • 生き方の演習 : 若者たちへ

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    ネタバレ

    ・自分というものは一生分からない-考え過ぎると一歩も前に進めない
    ・勉強も仕事もリズムが大事
    ・価値の多様化とは-例えば、サッカーが好きという価値観は一つ。
    プロ:試合に勝ちたい アマ:日曜日に試合を楽しむ
    どちらも方法は違えど、サッカーを好むという目標は一緒だということ。
    ・現実をクールに俯瞰する。情報の棒をたくさんたて、選択肢を増やす。一部の情報を丸のみするのではなく、疑ったり、考えたりする。現実は一つじゃない、その人が見たい現実だけ見てしまうものだ。
    ・若者の特権-1.好奇心を持つ 2.大胆になる(傷つくことを恐れない)
    ・ツェンツァ=サイエンス 観察、考える、伝える。
    ・論理的に、きちんとした母国語で伝えること。国語力は必須。

    新しい視点で気付きがたくさんありました。この年代の方からは学べることが多いです。そして、最後の機会だと思うからたくさん学んでおきたい。世代の断絶はあるからこそ、様々なアンテナや教養を学べます。

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    2010年12月08日
  • おとな二人の午後

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    私のようなお子さまとは、一世代、二世代隔たった、午後のひと時。古本屋で見かけて購入したまま、時々開いて読むと、面白い。そして真似できない。引用したくなるやりとりが随所にあります。

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    2010年11月23日
  • 生き方の演習 : 若者たちへ

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    日本歴史小説なら司馬遼太郎、ヨーロッパの歴史小説(小説としていいのか分かりませんが)といえば、塩野七生、というイメージ。

    でも、実はまだ手を出したことがありません。
    その量が膨大すぎて、果てしない感じ。

    その塩野さんが、10年ほど前に高校生に向けて行った講演などを書籍化した一冊。
    10年前にお話された内容でも、全く古さを感じない内容。
    これから進学・就職など将来を考える中高生にはもちろん、
    息子との接し方や、女性としての働き方、社会に対する姿勢とか、
    アラサーの自分でも得るものがたくさんある本だった。
    短くて薄いので、読書嫌いの人でも手に取りやすいのでは。

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    2010年11月13日
  • 終わりの始まり──ローマ人の物語[電子版]XI

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    13巻「最後の努力」を読んだ後、11巻の「終わりの始まり」に戻ってみた。

    時代はまだローマ全盛期とされる五賢帝の時代。しかし塩野さんは五人目のマルクス・アウレリウスを「賢帝」とは評価していないようで、この前の時代にあたる「賢帝の世紀」とは別巻にしている。ただ3世紀から2世紀に戻ってくると、まだローマ社会にもローマ軍にも随所にローマらしさ、ローマらしい強さやしなやかさがちゃんと残っていることに気付く。

    ゲルマン民族大移動の予兆ともいえる動きが始まり、東方ではパルティアが衰退していったこの時代、マルクス・アウレリウスは弱き心を叱咤しながらドナウ河畔で戦い、そして夜には一人自省する。現代で言えば、ブログやツイッターを書き連ねるようなものだろうか。良き心は充分に持っていたのだろうが、残念なことに武将としての資質には欠けていたようで、10年かけてもドナウ河戦線を収めることができなかった。そして何より、資質を冷静に推し量ることがないまま長男を後継者にし、死後10年の混乱の結果、軍人皇帝時代を導くことになった。それらがローマ帝国の「終わりの始まり」とされる所以だろうか。

    中国では秦漢王朝の最後、後漢の滅亡期にあたる時代。ローマ帝国はまだ充分に力を保っていたが、セヴェルス帝期以降は随分と違った色合いになっていく。その責任を軍人皇帝たちに押し付けることは簡単だが、根底にはローマ本国人たちの気力の低下があったことは、塩野さんも本文中で指摘している。この先を読み進めていくのは、ちょっと気が重い。

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    2010年11月07日
  • 絵で見る十字軍物語

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    これ意外なことに、塩野さんの作品に関する挿絵とかじゃなくて、十字軍の絵本を翻訳したものだった。全部絵で少し説明と、その出来事のあった所の地図がついてるから、十字軍がざっとどんなものかイメージするのに良い資料。面白かったし、文だけではわからないイメージしにくい部分の補充になった。

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    2012年06月26日
  • レパントの海戦

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    最後のガレー船艦隊対ガレー船艦隊の海戦となったレパントの海戦を、西洋側の視点、特にヴェネツィアを中心とした視点から描く。海戦以前の様々な政治情勢から、実際の戦闘に及ぶまでを、鮮明な描写で丹念に再構成している。平易な文章で読みやすく、かといって情報量が少ないわけではない。一気に読んで余韻に浸れる。

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    2019年01月16日
  • ロードス島攻防記

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    ロードス島における聖ヨハネ騎士団とオスマン・トルコの攻防戦。東地中海の一島における局地戦ではなく、キリスト教世界とイスラム教世界の間での重要な戦いとして捉え、長期に渡る攻城・篭城戦を活写する。

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    2019年01月16日
  • わが友マキアヴェッリ フィレンツェ存亡―塩野七生ルネサンス著作集7―

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    この本の狙い通り、「君主論」により目的のためには手段を選ばない冷徹な人間像からはかけ離れた人間ということがわかった。むしろ人間味のあふれた、俗っぽさが伺えた。残念ながら時代には翻弄されたがその中で「君主論」等を表すに至った洞察力で、指導者に下記の者を望んだのである。
    ヴィルトゥ(才能、力量、能力)、フォルトゥーな(運、幸運)、ネチェンタ(時代性、時代の要求に合致する)
    この本を読んで彼の生きた時代を考慮するとこれらを選ぶ理由が分かった。

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    2010年10月09日
  • 最後の努力──ローマ人の物語[電子版]XIII

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    久しぶりに、塩野さんのローマ人の物語を手にとってみた。千年近くを旅する物語も既に全15巻のうち13巻目。時代は3世紀末から4世紀になる頃で、同じく古代文明が花開いた中国では秦漢王朝も後継の三国も滅び、西晋が異民族の侵入で滅ぼされる時期に当たる。理性が花開いた古代は終わりに近づき、「暗黒の」とも形容される中世が近づいている。

    今回はそんなローマの本質が変わりゆく時代に、帝国を立て直そうとしたディオクレティアヌスとコンスタンティヌスを採り上げる。強くしなやかだったローマは既に過去のものになった。皇帝と軍隊は内紛を繰り返し、国の主導権は辺境の守護者であるバルカン人たちに委ねられる。しかしローマは分裂することなく、様々な人種からなるローマ人たちは団結を維持し、リメス(対異民族防衛線)に囲まれたローマ世界を守ろうとする。しかしどうすれば守れるのか。二人が出した答えは「普通の帝国化」だったようだ。皇帝の権威強化、帝位の世襲、皇帝を支える強い軍隊と官僚、それを賄う重税・・・。そうするしかないじゃないか、という当人たちの声が聞こえて来そうなものだが、塩野さんは「ローマがローマでなくなっていく」と、悲観的に捉えている。同じことの繰り返しが多く、老人の繰言のようにくどいのが難点だが。

    そして将来を大きく左右したのは、コンスタンティヌスの東方シフトだろう。コンスタンティヌスはローマをイタリア中心の古代ローマからギリシアのビザンティン帝国に生まれ変わらせ、更に千年の余命を与えた。そのためにはキリスト教徒の支持を得る必要がある、とまで見抜いていたとしたら、コンスタンティヌスは相当な慧眼だし、カエサルやシャルル大王と並んで、今日のヨーロッパ世界を作った一人、と称しても過言ではない。

    塩野さんの長い物語もあと2冊。ローマがローマでなくなっていくとなると正直気が重いが、やっぱり読むことにしよう。次巻ではあの、背教者ユリアヌスが登場することだし。

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    2010年10月03日
  • サロメの乳母の話

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    歴史上の有名人の身近にいた人たちから語られる人間像。
    「ユダの母親」は文字通りイスカリオエテのユダの母が語るユダ像。こんな母親だったらユダも可哀想に・・と思ってしまいました。また「キリストの弟」も興味深い話。
    これまでと違った視点で楽しめる短編集です。さすが塩野さん!! ぜひ一読下さい。

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    2010年10月02日
  • 愛の年代記

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    女って、すごいなーと思うわけです。

    女、おんな、オンナ、ヲンナ・・・

    古人は、こんなに簡単に人を殺していたんでしょうか。
    現代人は、死というものを恐れすぎなんでしょうか。

    死生観について、ちょっと考察してみたいなぁー。

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    2010年09月29日
  • パクス・ロマーナ──ローマ人の物語[電子版]VI

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    ローマ人の物語六巻目。塩野七生さんの見識の深さは素晴らしい。まだまだ続く物語。今年中に読み終えることができるかどうか?はなはだ怪しいものがある。じっくり読む作品。

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    2010年09月16日
  • わが友マキアヴェッリ フィレンツェ存亡―塩野七生ルネサンス著作集7―

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    著者のマキアヴェッリに対しての贔屓、いや愛が存分に伝わる1冊。著者自身が自分が書いたマキアヴェッリの友人たち(ヴェットーリやグイッチャルディーニなど)と、どちらがマキアヴェッリを理解しているか張り合ってるところが面白い。塩野作の他作品を読んでいてフィレンツェほどイタリア統一の足を引っ張っている国は無いなと感じていたが、視点がフィレンツェに移ると、ヴェネツィアや法王陣営、その他の小都市国家も三者三様だったんだなと。

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    2010年08月11日
  • ローマ世界の終焉──ローマ人の物語[電子版]XV

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    2010/08/06 「最後のローマ人」スティリコが退場してから、ローマなぞ滅びてもなんとも思わなくなった。あまり悲しくならなくてよい読後感。こんな大作を読みとおしたのは初めてである。

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    2010年08月07日
  • ユリウス・カエサル ルビコン以前──ローマ人の物語[電子版]IV

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    ローマ時代の歴史書として有名な一冊。

    世界史の教科書では三頭政治の一人でガリア遠征で成功を収め、志半ばでBrutusに暗殺された悲劇のヒーローとしてしか学ばなかったGaius Julius Caesarについての本。

    この本で学ぶべき知識は次の二点にあるとおもう。つまり、ローマ時代の風俗と価値観そしてGaius Julius Caesarその人自身である。

    ローマ時代の風俗特筆すべきはその政治体制であると思う。元老院が国会のそれにあたり、元老院のメンバーが国会議員と同様に、議論を行ない法を施行する。現在の政治システムの礎がローマにはある。

    そしてGaius Julius Caesarその人である。40歳で起つGaius Julius Caesarの幼少期と青年期を丁寧に描いしている。そして所々に記載されている著者による推察がお見事(このような歴史書の名著か否かの分水嶺が著者による対象の推察であると思う)。ただしCaesarを良く見せようとしている感じは否めないが・・・
    それにしても、当時の弁論術には脱帽をせざるを得ない。その言葉の明瞭さ、説得力そして論理展開は現在でも通用すると思う。

    歴史書というカテゴリーを超えた、教養書

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    2010年08月01日
  • ローマ亡き後の地中海世界(上)

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    ローマ帝国が滅び、イスラム教徒(サラセン人)が進出した地中海世界の話。
    イスラム教徒の海賊が跋扈する地中海。ローマ帝国が滅んだ後、キリスト教徒はいかにしてイスラム海賊に耐えたのか?
    イスラムの海賊が、19世紀前半まで拉致したキリスト教徒を奴隷にしていたというのは知らなかったです。

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    2010年07月27日
  • キリストの勝利──ローマ人の物語[電子版]XIV

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    2010/07/16 古来のローマを守ろうとした最後の皇帝ユリアヌスへの、筆者の哀惜があふれている。帝王教育を受けず政治も軍事も経験がなくても、歴史と哲学を学び、帝国を背負う覚悟ができた人なのだろう。

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    2010年07月17日
  • 最後の努力──ローマ人の物語[電子版]XIII

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    2010/07/08 ついにローマの首都がローマでなくなってしまった。通貨の純度を上げても良貨はみな死蔵されて流通しない、彫刻の技術があからさまに劣化しているなど、気がついたらここまで衰亡しているのだ。
    世界史で習った事なぞなんにも理解できていなかったのだということがよくわかる。

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    2010年07月10日