塩野七生のレビュー一覧
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『ローマ人の物語』の塩野七生が1-16世紀の地中海世界(ヨーロッパ)を、木を見て樹を見ずにならないように、全体像をうまくまとめた大作。
◆1-5世紀 ローマ帝国の時代
ローマ帝国による平和、パクス・ロマーナが実現した時代。ヘロドトスの「歴史」にはこうある。
人間ならば誰でも神々に願いたちと思うことすべて、そして神々も人間に恵んでやりたいと思うであろうことのすべては、アウグストゥスが整備し、その継続までも保証してくれたのであった。それは、正直に働けば報酬は必ず手にできるということへの確信であり、その人間の努力を支援してくれる神々への信念であり、持っている資産を誰にも奪われないですむということへの安心感であり、一人一人の身の安全であった。 ― 『歴史』
395 ローマ帝国、東西に分裂
476 西ローマ帝国滅亡
◆7-10世紀 イスラム教の拡大 (キリスト教 VS イスラム教)
ビザンチン帝国の汚職と重税により人々の間に不満が広まり、イスラム教が瞬く間に浸透する。イスラム教は死後の安心ではなく、税を払わないでよいという現世的な利点を与えた。キリスト教のように300年の歳月は必要としなかった。イスラムの海賊がキリスト教圏で破壊、略奪の限りを尽くし、安全の保証はなくなった。
613 マホメッド、布教を開始
635 イスラム勢、ダマスカスを征服し、首都を移転
642 イスラム勢、アレクサンドリアを征服
651 ササン朝ペルシア滅亡。メソポタミア地方がイスラム化される
652 海賊のキリスト教世界への侵入が始まる
762 イスラム勢、新都バクダットを建設、遷都
◆11-16世紀 キリスト教の反撃 (キリスト教 VS イスラム教)
十字軍遠征などキリスト教の反撃が始まる。この時代における東西のプレイヤーは以下の通り。
西の強国(キリスト教)はスペイン、フランス、ヴェネツィア共和国。
東の強国(イスラム教)はトルコ帝国。そして背後には元。
アマルフィの商人は、支那人が発明してアラブの商人が中近東にもたらた羅針盤を小型にして売り出した。ヴェネツィアは紙もガラスも印刷技術も発明していないが、ヴェネツィアで企業化された。海洋都市の発展も見逃せない。
◆17世紀以降
ローマの次に覇権国家として軍事による世界の秩序を確立したのはイギリスだった。ゆえにパクス・ロマーナに習い、パクス・ブリタニカと言われる。
しかしイギリスの前に大植民地帝国築いたのはスペインは、パクス・ヒスパニカとは言われない。それはスペイン人が自分以外の民族を活用する才能に欠けていたからである。インカ帝国を滅ぼしたのもスペイン人である。 -
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ミショーが書いた十字軍物語に付けた挿絵を利用~悪逆非道のアンジュー伯フルクは3度イェルサレムに出掛け,2度目は買った聖遺物を法王に差し出して免罪された。これが流布して巡礼ブームが起こり,十字軍遠征に繋がる。当初は一般信者中心で隠者ピエールが率いた烏合の衆でハンガリーでは同じキリスト教徒から厄介者扱いされたのも当然の10万の群衆であったが,ゴドフロア・ド・ブイヨンが小アジアで追いついた時には2万に減っていた。ニケーアではイスラム兵士の首千を巡礼は町に放り込み,アンティオキアでブーリア公ボエモンドが夜中に縄ばしごを登って塔を占拠し,大殺戮が行われた。飢えと渇きに苦しんだ末,先頭で城壁に立ったゴドフロアに続いた巡礼はイェルサレムを陥れた。住民の家に隠されていた聖なる十字架に感激する中,イスラムの太守たちはゴドフロアを訪問し,金貨を積んで退去を求めるが,あまりに簡素な様子に感銘を受ける。1年後に兄の王位を継いだボードワンの下で,地中海東岸の港町で皆殺しが始まって,イスラム側はこれが宗教紛争だと気がつく。エデッサが滅ぼされるとフランス王が出馬し,ダマスカス攻略戦が展開されるが,国を長く空けておくことが出来ずに撤退。イスラムにサラディンが出現し,対キリスト教徒のジハードが催されてイェルサレムが奪われると独帝・仏王・英王が出馬,ドイツ軍は惨敗し,リチャードだけが奮戦。アッコンを確保し,違約して大殺戮を行うと,目的達成と考えた仏王は引き上げ,ヤッファを攻めるが,弟ジョンの不穏な動きにリチャードもサラディンと講和。サラディンは翌年死去し,後継争いが開始される。リチャードはキリスト教徒の捕虜になり,母によって釈放される。ビザンツ帝国が十字軍情報をイスラムに流していて,ビザンツ皇帝位を巡る争いで,ヴェネウィアの元首はコンスタンティノープルを占領。皇帝を殺した親族の即位を認めず,帝位は空に。法王が認めた軍が攻めた他派のキリスト教徒も敵なのだ。少年達の十字軍は途中で行き倒れ騙されて売られる。聖地を放っておけないオリエントのキリスト教徒はハンガリーやポーランド・ノルウェーの騎士達を加え,ナイル河口のダミエッタを攻略するが,運河や支流や沼地に足をとられ,休戦協定が成立し撤退する。カイロのスルタンの許には聖フランチェスコが場違いな改宗の勧誘をする。神聖ローマ帝国皇帝フリードリッヒ2世が率いた第6次十字軍は血を一滴も流さず,スルタンとの直接交渉で,10年間のイェルサレムとベツレヘムとナザレの獲得に成功したが,破門の身の皇帝が催した軍をローマ法王は十字軍と認めず,多くのキリスト教徒もそれに倣った。フランス王ルイ9世は南仏のエーグモルトを大改造して港にしジェノヴァを頼りにエジプトに遠征。上陸したダミエッタは簡単に攻略したが,マンスールで大敗を喫し,撤退中に捕虜になり多額の身代金の支払いを約束して解放されるが,船が港を離れる時にスルタンは殺害された。ハレムの女性までがスルタンになる混乱の中,マムルーク朝が成立する。スルタン・リバルスはシリア・パレスティーナの十字軍諸都市に強硬姿勢をとり,イスラム支配に屈した。ルイ9世はチュニスから陸路でエジプトを攻めようとするが,上陸後間もなく王が死に,王弟は自主的に撤退。コンスタンティノープルを陥したオスマン・トルコは西欧への圧力を高めたが,レパントの海戦で完敗した。この戦いも最後の十字軍だ~十字軍は遠征7回,数え方によって色々だが,オリエントのキリスト教徒によるエジプト侵攻は数えないのが一般的で,ルイ9世の弟・シャルル・ダンジューと英王太子エドワードのアッコン遠征(成果なし)を最後にする場合もある。フランスにおけるアルビショワ十字軍では,シモン・ド・モンフォールも活躍する。これはインノケンティウス3世が提唱した。十字軍を概観するには良い本
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塩野さんの書籍は初めて読んだ。歴史が苦手なので、ローマのことを引き合いに出されても、バックグラウンドを理解する知識がないので、わかっていれば、さらに面白かったと思う。
私から見ると、背筋がピンと伸びた昔タイプの年配のお説教が垣間見えた気がして、懐かしい感じがした。リベラルな意見は一見格好よく聞こえる。しかし、民主党のありさまを見れば、夢物語に過ぎないことがようやく日本人にわかり、彼女のような保守的な考え方は団塊の世代が消えるにつれ、広まっていくと思う。
しかし、もう時間もない。
日本人は、日本は本当にこれからどうなるのだろう。
多くの人がそう考えているし、憂いているのも確かである。
小野田さんの言葉を思い出す。
「戦前、人々は“命を惜しむな”と教えられ、死を覚悟して生きた。戦後、日本人は“命を惜しまなければいけない”時代になった。何かを“命がけ”でやることを否定してしまった。だが、死を意識しないことで、日本人は“生きる”ことをおろそかにしてしまったのではないだろうか」と -
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「オール若者に告ぐ」のエクリチュールが、新鮮だった。世代の断絶、世代間闘争はあってはならない忌避すべきもだという人がある。しかし著者にいわせれば、世代の断絶はあって然るべきものであるという。それは、なぜか。
断絶というものが、各世代にあるからこそ、次世代は新しいものを創りだすエリルギーを貯えることができるからだというのである。確かにそうだ。前世代への尊敬と羨望、そして一種の反動・反発といったものから変化のダイナミズムが生まれるという構造はこれまでの歴史から鑑みれば火を見るより明らかである。といって、断絶したままでいればよいというのではなく、理性的な方法で「対決」することが肝要であるという。理性と論理によって、堂々と立ちはだかる壁を超克することこそいま、若者に求められていることなのだ。 -
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表紙が好きなので、単行本で登録させてもらっているが、実は文庫本で読んでいる。文庫本だと薄くて冊数が多くなりすぎるし。しかし、まさか文庫本まで年1回の発行だとは思わなかった。こんなことなら単行本で全部集めておけば良かったと思いながら、初心貫徹でじっくりと文庫本を買い集め、めでたく完結である。
最初から呼んでいた人なら誰でもそうであるように、僕もすっかりローマ人のファンになっているから、さすがに滅びていくところを読むのはつらかった。でも、ローマ帝国は退場するけど、その後にうごめく「蛮族」たちは生気に満ちていて(その分残酷だけど)、もう少し前の徐々に衰退していく頃の物語よりも、正直言ってずっとすがすがしい気持ちで読んでいた。
特に、「最後のローマ人」スティリコと、皮肉な形ではあるが新たな平和を創ったテオドリックは印象的で、長い物語を締めくくるにふさわしい星だったと思う。
最後のページを閉じて、改めて長かったなと感慨を持つ。そして、僕自身のものの考え方に、実はずいぶん影響を与えてくれた本であり、影響され続けた10年だったような気が改めてしてくる。
人間について考える、すばらしい材料を与えてくれた作者に感謝したい。
2011/09/11 -
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読み終わりました!読み始めたときは1冊ずつでしたが、居住地移動で購入が難しくなり、10年後に一気読みになってしまいました。
ポイントは「キリスト教信者」「キリスト教界で生まれ育った者」でないという視点。中盤までの興隆期から安定期までの中ですら、ものの見方に違いが見られる。資料を見るときの観点がちがうのだろう。それに衰退期にかかって、キリスト教がローマ帝国の滅亡の原因であるとはっきり言い切ることができるのは強味だ。
ユリウス・カエサルがローマ帝国の長命の基盤を作ったのは確かで、彼女がカエサルの大ファンだということは周知である。しかしもう少し他の人たちと同じくらい冷静に見つめて欲しかった。カエサルは為政者としてほとんど完全無傷である。しかし、「できる」人間にありがちな陥穽として、「できない」者の必死を侮ってはいなかったか。事半ばにして若造に暗殺されている場合ではなかったと思うのだが。
「海の都の物語」を何度も読み返すように、この作品もまた読み返すことだろう。 -
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夏休みに塩野七生久々のシリーズもの「十字軍物語」を読み始めたこともあり、以前、途中で読むのをやめてしまった第11巻を再度読み始めた。前回読んだときは、ローマ全盛期のダイナミズムが失われ、あまりおもしろさを感じず、読み切ることができなかったが、今回は一気に読み込んだ。
というのも、ローマの「終わりの始まり」は、成長期を終え、成熟期に入った日本の状況に酷似している点があったからだ。拡大した領土(日本でいえば成長した経済)を維持する難しさ、実戦経験がなく現場をしらない統治者(特に2世、3世)、骨肉の争いなどなど。「成長、反映している時に、次の課題に向けた対策を考え、講ずるのが真の指導者」という言葉はローマだけでなく、今の日本の状態にも通ずるところがあるだろう。 -
Posted by ブクログ
いつか読もうと思っていた塩野七生の本を初めて読んだ。
マキャベリズムという言葉で知られる、君主論を執筆したマキャベリについて徹底的に深く描かれている。マキャベリはどういう時代に育ち、書記官時代に何をして、そしてフィレンツェ追放後、物書きとして何を考えていたのか。
マキャベリは誠心誠意祖国のために尽くしてきたが、不当に祖国を追放された、そこにはどのような怒りがあったのか。活かされなかった天才の姿と、天才を活かさなかった時代が圧倒的な質量で書かれていてとても面白かった。
経営層に塩野七生が好まれるのが分かる気がする。交渉のやり方、それぞれのひとの立場の想い、攻略方法、経営戦略にも繋がりそうな政治の世界に触れることが出来る。
でも、天才マキャベリの無邪気さ、自由奔放さ、そういった人間味もしっかり描かれているのが、ただの歴史本で終わらない醍醐味を与えてくれる。