塩野七生のレビュー一覧
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外から見た日本という視点の持ち方と、著者のバックグラウンドを前面に押し出して様々なテーマについて著者なりの持論を展開している。展開というよりつぶやきにも似た主観に基づく意見であり、説教という類ではなく「こう思うんだけどなぁ」的な短い文章につづられた一つ一つが印象的だった。
特に印象に残ったのは、今の出版界について、短期的な投資回収に走りがちな傾向と、それに追従するための出版物が跋扈していることに対しての不安を綴っている。著者曰く「不安解消の為の本」が現代ではよく売れるそうなのだが、たとえば自己啓発本の類は将来や自分の能力に対する不安を解消する為の手段の本である、と考えると、たしかにそのような本 -
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ユリアヌスは、辻邦生の著書によって大学時代の僕のアイドルであった。実を言うと、このシリーズを読み始めたのも、元はといえばユリアヌスとカエサルのおかげであるといってもいい。辻邦生とシェイクスピアである。
だから僕にとってのこの巻は、いよいよ真打ち登場!とでも言うべきところなのだけど、読み終わってみればユリアヌスよりも、むしろその後に活躍した司教アンブロシウスのほうが印象に残った。
まさにキリストの勝利を決定づけたこの司教の物語を読んでいると、宗教よりもむしろ、官僚のシステムとその中での出世について考える。そして、全く異なることではあるのだけれど、たとえば親密な共感で暖かい暮らしを送って -
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ネタバレ・自分というものは一生分からない-考え過ぎると一歩も前に進めない
・勉強も仕事もリズムが大事
・価値の多様化とは-例えば、サッカーが好きという価値観は一つ。
プロ:試合に勝ちたい アマ:日曜日に試合を楽しむ
どちらも方法は違えど、サッカーを好むという目標は一緒だということ。
・現実をクールに俯瞰する。情報の棒をたくさんたて、選択肢を増やす。一部の情報を丸のみするのではなく、疑ったり、考えたりする。現実は一つじゃない、その人が見たい現実だけ見てしまうものだ。
・若者の特権-1.好奇心を持つ 2.大胆になる(傷つくことを恐れない)
・ツェンツァ=サイエンス 観察、考える、伝える。
・論理的に、きち -
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日本歴史小説なら司馬遼太郎、ヨーロッパの歴史小説(小説としていいのか分かりませんが)といえば、塩野七生、というイメージ。
でも、実はまだ手を出したことがありません。
その量が膨大すぎて、果てしない感じ。
その塩野さんが、10年ほど前に高校生に向けて行った講演などを書籍化した一冊。
10年前にお話された内容でも、全く古さを感じない内容。
これから進学・就職など将来を考える中高生にはもちろん、
息子との接し方や、女性としての働き方、社会に対する姿勢とか、
アラサーの自分でも得るものがたくさんある本だった。
短くて薄いので、読書嫌いの人でも手に取りやすいのでは。 -
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13巻「最後の努力」を読んだ後、11巻の「終わりの始まり」に戻ってみた。
時代はまだローマ全盛期とされる五賢帝の時代。しかし塩野さんは五人目のマルクス・アウレリウスを「賢帝」とは評価していないようで、この前の時代にあたる「賢帝の世紀」とは別巻にしている。ただ3世紀から2世紀に戻ってくると、まだローマ社会にもローマ軍にも随所にローマらしさ、ローマらしい強さやしなやかさがちゃんと残っていることに気付く。
ゲルマン民族大移動の予兆ともいえる動きが始まり、東方ではパルティアが衰退していったこの時代、マルクス・アウレリウスは弱き心を叱咤しながらドナウ河畔で戦い、そして夜には一人自省する。現代で言えば -
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久しぶりに、塩野さんのローマ人の物語を手にとってみた。千年近くを旅する物語も既に全15巻のうち13巻目。時代は3世紀末から4世紀になる頃で、同じく古代文明が花開いた中国では秦漢王朝も後継の三国も滅び、西晋が異民族の侵入で滅ぼされる時期に当たる。理性が花開いた古代は終わりに近づき、「暗黒の」とも形容される中世が近づいている。
今回はそんなローマの本質が変わりゆく時代に、帝国を立て直そうとしたディオクレティアヌスとコンスタンティヌスを採り上げる。強くしなやかだったローマは既に過去のものになった。皇帝と軍隊は内紛を繰り返し、国の主導権は辺境の守護者であるバルカン人たちに委ねられる。しかしローマは分