あらすじ
男たちに贈る辛辣にして華麗、ユーモアと毒にみちた54章の「男性改造講座」!
男の色気はうなじに出る、原則に忠実な男は不幸だ、薄毛も肥満も終わりにあらず、外国語の習得は必要か、成功する男の4つの条件、上手に年をとるための10の戦術など悩める男性を喝とユーモアを交えて実践指導!
周囲の目ばかりを勝手に忖度して、知らず知らずのうちに気疲れしている男性こそ読むべき言葉が満載。
たとえば……
□他人とは絶対に同じ服装をしたくない
□男性と女性は完全に平等であるべきだ
□職場の上司として、若い部下をよく理解しているつもりだ
□恋人・妻に何をプレゼントしたらよいか分からない
□不倫なんてけしからん
黒沢明、有吉佐和子、サッチャー、オノ・ヨーコ、カール・ルイスらの言動に着目し、ギリシャ・ローマ古典やマキャアヴェッリらの知見や美意識に学ぶ。
いまを生きる、悩める男たちへの処方箋。
解説・開沼博
感情タグBEST3
人間社会に生きること
一部ご紹介します。
・愛情の介在する関係が甘美な決闘ならば、贈り物は武器の役目を果たす。
毛皮、宝石、花、チョコレート、知的な映画、ハイブロウな本、香水など。女にはなんでも贈ったらよい(ただし下着はNG)。女は贈られたものに対して、様々に変身してみせるものだから。
・「めんどくさい」という考えは、おしゃれだけでなく全てにつながりやすい。それは感受性や好奇心の欠如をカムフラージュする言い訳。
・原則に忠実であろうとする者が、しばしば家庭でも職場でも、不運に泣くことが多いのは、相手のことを考える想像力に欠けているからだ。
他人の立場になって考えるとは、不幸になりたくない者にとって、良書を熟読するよりも心しなければならない問題なのではなかろうか。
・人間性を無視したことを望む者は、人間社会に生きる身である以上、不幸にならずにはすまない。この点では、完璧主義者も原則主義者も同様である。
・社会において、思うことをできる立場に就くことは、大変に重要だ。これが持てない男は、趣味や副業に熱心になる人が多いが、それでもかまわない。週末だけの幸福も、立派な幸福なのだから。問題は、好きで選んだ道で、このような立場を持てなかった男である。
・人は不幸な人に同情はしても、愛し協力を惜しまないのは、幸運に恵まれた人に対してだけである。
Posted by ブクログ
塩野さんの男とはかくあるべき。要は惹かれるオトコ、カッコいいオトコとはいかなるものかを、歴史上の人物や身近な人たちを比較して考察している。
ただ比較といっても読者を煙に巻くような論調ではなく、コーヒーを飲みながらカフェで話してるような雰囲気。
昼下がりのママたちが「あの人ってステキよね。なにが違うのかしら」という口調。しかし塩野さんの魔法にかかると、説得力が全く違う。
男女問わず、人間性とは何か?を知りたければぜひ本書をおすすめする。
Posted by ブクログ
わりといまっぽいカバーの文庫本だったから最近の本かと思いながら読み始めたら、もともとは1980年代に「花椿」で書かれたものの文庫の新装版だった。
実は塩野七生の本を読破したのって初めてじゃないだろうか。初めてにちょうどいいくだけた感じのエッセイで好き勝手(を装って?)男性論を展開している。自分の勝手な塩野七生像って研究者的な面をもち、史実に材をとりながらノンフィクションとフィクションの境い目あたりをゆく硬派な作家というイメージだったんだけど、アラフィフあたりの人生経験や外国生活を重ねた女性としての視点や、母としての顔ややっぱり戦前生まれかもと思わせるような古風なところも垣間見え、印象が近寄りやすいほうに変わった。
冒頭に書いたように、最近の本だと思って読み始めたんだけど何だか違和感が。それは著者が1937年生まれだし、外国暮らしが長いせい(で、いまの日本の男性事情がわかってないんじゃないの)かなと思ったんだけど、1980年代に書かれたものと知って納得。だってこの本に書かれてることって、いまどきの男性たちに向けるにはハードルが高すぎる。
たとえば「私は、電車の中でマンガ雑誌を読んでいる男は大嫌いだ」(p.327)って言っているけど、1980年代は確かにそういう男たちがいて、でもそういう振る舞いはみっともないという共通理解があったと思う。ところがいまや、電車の中で一心不乱にスマホやゲーム機を覗き没頭している男たちがわんさといるわけで、そういう輩を相手には言うのもムダってもんだろう。
ことほどさように、ジェンダー平等が進むのはよきこととして、どうもそれを盾に責任を放棄した男たちがどんどん楽な立場になっていってるような日本社会を感じるこのごろ。武士は食わねど高楊枝みたいなやせがまん、男であるがゆえの不利を甘んじて受け入れるようなこと、高みを目指して自分を磨くことなどを放棄すると生き方に品や筋や粋がなくなるね。塩野七生は男たちへそういうことを述べているんだと思うけど、1980年代はともかく、いまとなっては時すでに遅しだろう。
Posted by ブクログ
1983年~88が初出、40年近く前か。古びた感じがしないな。成熟した人間像とはある程度普遍的なものかもしれない。だが、これを今の10代20代の子はどのように読むのだろうか。共感できるのだろうか?特に退職代行サービスにこの時点(4月末)で申し込んだ新卒の社会人の子にどう映るのか聞いてみたい。
第38章
「男は生きがい」「男は命」…となった場合どう思うか?に対する以下返答。
「御免こうむりたい。煩わしいことこの上ないのでやめて欲しい」となる。
内助の功を謳うなら、生きがいやら命といった余計なもん乗せるのやめて欲しい。自分がやりたいことをやりたいようにやってくれればそれでいい。もちろん経済的にできる範囲でとか色々注釈は付くけれど。
まず最低限の役割分担、その義務は果たしてもらいたい。
加えてどんな選択であれ、覚悟があればそれで良いのだが、その選択に伴う結果、その品性については一定の判断は持つだろう。これについては感情論だから嫌なものは嫌だとなる。
だがそれも含めて覚悟ができていると言うなら、それ以上ごちゃごちゃ言うこともないから好きにおし。
生きがいや命といった核たるものを男であれ何であれ他者に乗せるのは感心しないよ。
Posted by ブクログ
基はかなり前の作品なので、社会背景や出てくる男性、女性、作品が古いけれどそれでも面白く読める。
ユーモアがところどころに散りばめられ、それが今でも面白いところがすごい。
これを読んだから、フツウでない男になるかと言ったらそうではないと思うけれど、男なら1回読んでみてもいいと思う。