塩野七生のレビュー一覧
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ティベリウスからネロまで。
正直アウグストゥスの時代をややかったるく読んでしまったのでどうかな…と思ってたんですが、読んでみると案に相違して面白かった。
印象的なのはティベリウス、クラウディウスの堅実な代わりに華のない治世のあとのカリグラ、ネロの即位時の市民や元老院の熱狂。
特にネロの即位時はカリグラを彷彿とさせて、華々しいことばかりに終始しティベリウスの黒字財政を破綻させた、かつてのマスコットだった若き皇帝のことは思い? 出さな?? かったのか??? と首をひねってしまうのだけど、当時に生きるということはそういうことなのかもしれないなあ。 -
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壮年後期から、死後のアントニウス・クレオパトラ対オクタヴィアヌスまで。
カエサルの描写は絶対著者の贔屓目が入っているんだろうと思う。
思いはするけどマリウス、スッラの粛清の凄惨さを見て育ち、40歳にして立って寛容路線を貫いた生き方。それから彼の死後のアントニウスとオクタヴィアヌスによる復讐とそれに続く戦争を考えると、やっぱりカエサルは特異な得難い人物だったんだろうなあ。
同時代人のキケロも面白い人物だなあと思うんだけど、当時の当事者にとってはなかなかそう思えないだろうし、実際カエサル暗殺後には粛清されている。
そんな厄介な人物を最後まで遇したカエサルについて、やっぱりもう一度考えずにはいられないのだった。 -
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この本を通して、ニコロ・マキアヴェッリ大先生の、ありがた~いお言葉が聞けます。原書は事前知識が深くないと、読むのが難しく、こちらの本は日本語で、予備知識がない人にも読みやすいと聞いたので手に取りました。君主論、色々な方の和訳や要約が出ていますが、本書はあえて、君主論・政治論中心の抜粋という形を取ったのだそうです。
1冊を通して、君主たる者、人に恨まれるような事をしてはいけないよ、名誉を傷つけられて絶望した人間は過激な行動に走るよ、もし恨みを買うような事をするなら、二度と反撃できないように徹底的にやらないといけないよ、とか、良い働きをした者には十分な褒章を与えよ、とか、一度徹底的に叩きのめした人間に重要な任務を与えてはいけないよ、とか、心理学とも通ずる、君主でなくても実社会で応用できる 内容になっています。 -
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ネタバレ目次より
・貞女の言い分
・サロメの乳母の話
・ダンテの妻の嘆き
・聖フランチェスコの母
・ユダの母親
・カリグラ帝の馬
・大王の奴隷の話
・師から見たブルータス
・キリストの弟
・ネロ皇帝の双子の兄
・饗宴・地獄篇 第一夜
・饗宴・地獄篇 第二夜
歴史上の有名人を、違った視点から掘り下げる。
なんとなく功績を知ってはいるけれど、詳しくは知らない。そんな人物の選定がすばらしい。
なかでも「サロメの乳母の話」が白眉。
素晴らしい踊りを披露したご褒美に、若く有名な預言者ヨハネの首を所望したサロメ。
それは、恋い慕う彼女の気持ちをヨハネが受けとめようとしなかったから…というのは、オスカー・ワイルドの戯曲の話。
多くの画家がサロメを題材にした絵を描いているけれど、衝撃的なそのシーンは実に冷静な政治的判断のものに行われたものであるというのが、塩野七生の解釈。
「善意に満ちていて、しかも行いの清らかな人が、過激な世改めを考え説くほど危険なことはないと思うけれど、乳母はどう思う?」
サロメの行動がいちいちクールでロックなの。格好いいわ。
「饗宴・地獄篇」は、地獄に落ちた女ども(クレオパトラ、ビザンチン帝国の皇后テオドラ、トロイのヘレン、ソクラテス夫人のクサンチッペ、マリー・アントワネット)が、繰り広げる女子会トーク。
第一夜は毛沢東婦人・江青をゲストに招いての夜会。
第二夜はゲストを日本から呼ぼうと思ったけれど、意外と悪女がいないのね…と結論付けようとした時、地上の方から推薦人の声が…!
地獄がまた楽しそうなのです。実際楽しいらしいです。
地獄の恐ろしげな描写は、天国サイドの陰謀らしいですよ。
“また、地獄に送られてきた顔ぶれが面白かった。だから、女たちにしてみれば、交き合う男たちにも恵まれていて、天国の住人のように、立派かもしれないが面白くもおかしくもない、まじめ人間の集団ではない。それに、天国は、住む人間だけが退屈なのではなく、一年中気候温暖でも四季の区別がないから、その点でも、一週間もいれば、頭がボケてしまいそうな思いになるのだった。”
天国、すごい言われようです。
地獄にはいい人たちもたくさんいます。
“女王に仕える奴隷たちの中には、天国に送られる資格充分な者が多かったが、天国と地獄を分けたのはキリスト教だから、それが普及する以前に現世で生を送った者は皆地獄行きなので、これら古代世界の善男善女たちも、地獄まで女王に従いてきたというわけである。だが、想像した以上に過ごしやすいので、誰一人、煉獄での試練を経た後に許される、天国行きを希望した者はいない。”
塩野さん、こんなに書いちゃっていいのでしょうか?
地獄に落とされちゃうんじゃないかしら?
あ、望むところなのか。 -
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読書録「ローマ人の物語4(単行版)」4
著者 塩野七生
出版 新潮社
p455より引用
“「進もう、神々の待つところへ、われわれ
を侮辱した敵の待つところへ、賽は投げられ
た!」”
目次から抜粋引用
“幼年期
少年期
青年前期
ガリア戦役一年目
ルビコン以前”
歴史作家である著者による、世界史にその
名を大きく残す古代ローマの歴史を綴った一
冊。単行本シリーズ四作目。
ユリウス・カエサルの前半生について、彼
をとりまく人々をからめて書かれています。
上記の引用は、国の境界を前にして、兵士
達にカエサルが投げかけた言葉。
何か大きな一歩を踏み出す時に、よく引用さ
れる「賽は投げられた」の一言の原典ですね。
それにしても、自国に攻め入るのと普段に使
うのとではあまりに重みが違いすぎます。
歴史に燦然と名を残す偉人であるカエサル
ですが、若い時は政敵から逃れるための亡命
や、借金漬けの生活をしていたりと、大変な
時代が長かったようです。ローマの中で台頭
し始めたのが、40歳前後とのことなので、今
が苦しくても、私達もなんとか先を見据えて
前に進むようにしたいものです。
文庫の分冊で読んでいるとわかりにくかっ
たのですが、単行本で手にすると、大作であ
ることがよくわかります。歴史の重みを感じ
ながら読みたいと思う人は、単行本で読むと
物理的に重みを感じて読めて面白いかも知れ
ません。立って読めばより一層です。
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「ロードス島攻防記」
塩野七生の「コンスタンティノープルの陥落」「ロードス島攻防記」「レパントの海戦」三部作の一つ。
強大なオスマントルコに対してロードス島で防衛する聖ヨハネ騎士団の奮戦を描いた作品である。超大国のイスラム勢力に対抗するキリスト教徒の聖ヨハネ騎士団は、イスラム側から見れば低開発国の海賊にしかすぎないように見える。
物語はイタリア、フランスの二人の騎士とベネチアの築城技師を中心に描かれるが、書き方は「ローマ人の物語」に近く歴史奇譚調である。
10万の大軍を率いて攻めてくるオスマントルコに対し騎士団側は600名ばかり。もちろん島の住民の協力はあるものの圧倒的な多勢に無勢。
オスマントルコ側は大砲による大量の砲撃と地下を掘り進んで城壁下を発破する方法で攻撃してくる。対する騎士団側は砲撃対応の築城技術、火炎放射や手榴弾、地下を掘り進む振動を感知する方法を編み出すなど、果敢に応戦するが圧倒的な兵力の前に最後には名誉ある撤退することになる。
オスマントルコ側も兵力の半分を消耗し、それでも勝利したのは大帝スレイマン一世の強い意志によると評価している。騎士団側も奮闘したが最後は住民の戦意が失われ協力が得られなくなり、最後は降伏に応じざるを得なかった。
エピローグでロードス島を去った騎士団はマルタ島に本拠地を移し、40年後にオスマントルコのマルタ攻防でトルコ側を撃退して一矢報いたことを書いている。
読んでいて思い至るのは第2次大戦時の硫黄島での攻防である。玉砕するしか道が残っていなかったのだろうか。考えさせられる。 -
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君主論で有名なマキャベリの語録。彼の代表的著作といえる君主論、政略論から、塩野七生氏が選別した「名言」が掲載されている。解説や補記はないが、一つ一つ良く理解できる。16世紀に書かれたものとは思えず、現在でも価値を失わないことに驚いた。「罠を見抜くには狐でなくてはならず、狼を追散らすにはライオンでなければならない」「結果さえ良ければ手段は常に正当化される」「中立でいるということは勝者にとっては敵となるだけでなく、敗者にとっても助けてくれなかったということで敵視される」「歴史上自由を持つ国だけが豊かになる」「信頼出来る民とは会から上位に昇進するものより、上位から下位に下がっても不平なく仕事をこなすものである」「優れた人物は運不運に関わらず常に態度を変えないものである」等々。君主論を是非読みたいと思う。
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読書録「絵で見る十字軍物語」4
著者 塩野七生
絵 ギュスターヴ・ドレ
出版 新潮社
p120より引用
“ 国家の弱体化は、外的要因よりもずっと
高い割合で、内的な要因によるものである。
言い換えれば、国内の混迷が国全体の力を弱
めるのだ。”
古代ローマや中世ヨーロッパに関する多く
の著作を持つ著者による、長年に渡る宗教対
立を描いた一冊。
聖地巡礼に関わるいざこざから始まり歴史
に残る大きな戦まで、地図と美しい絵を使い
描かれています。
上記の引用は、ビザンチン帝国皇帝が親族
に殺されたエピソードについて書かれた項で
の一節。
味方同士で諍いあっていると、敵に横っ面を
叩かれることになってしまうので、いかに
味方同士で争わないかが大切なようですね。
日々の気持ちの平安を求めるであろう宗教
によって、諍いが起こってしまうのはなんと
も複雑なものです。
平和を唱えながらも、やたらと暴力的な言動
を繰り返す人が現代にもいるようですが、こ
ういう歴史をいつまでも繰り返さないために
も、よく考えて行動したいものですね。
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ネタバレ一千年のキリスト教の抑圧へ
人間の欲望が反逆する。
それがルネサンス。
再読。
塩野七生を読むと
知的好奇心に駆られる。
中世から近世のヨーロッパについて
学びたい意欲が沸々とこみ上げる。
ルネサンスなんて高校時代は
たいして興味もなかった。
過去は過去。
温故知新?
はあっ?
って感じ。
でもね。
歴史に学ぶ。
歴史を学ぶって
とっても大切。
そう思うのはジジイだからか。
断定。そう。
で、塩野七生である。
珍しく、解説書。
ルネサンスを語る。
もちろん、口調はいつもの塩野節。
この人、絶対Sだよな。
でも、嫌いじゃない。
語られるのはルネサンスの人、人、人。
人なんだよな。
結局、歴史って。
だから、突き放したように見えても
塩野の本質は暖かい。
人の熱に感応するから。
『ルネサンスとは何であったのか』は
イタリアでのルネサンスの歩みをたどるように
フィレンツェ、ローマ、
キアンティ地方、ヴェネチアと
イタリア各地を巡る形で描かれていく。
この辺、映像で見たいね。
NHK辺りでやって欲しい。
最初にルネサンスとは
「見たい、知りたい、わかりたいという欲望の爆発」
と定義づける。
なぜ爆発したのか?
キリスト教会によって
一千年間も押さえつけられていたから。
そして、ルネサンスについて
フレンツェの地で
聖フランチェスコから始める。
続いてフリードリッヒ二世という皇帝までも。
さらに印刷業を確立した
アルド・マヌッツィオが登場する。
この辺は塩野ならではの視点である。
メディチ家が重要なのは言うまでもない。
そして、やはりレオナルドだ。
ミケランジェロだ。
各地を旅しながら
ルネサンスが
各都市で
どんな栄枯盛衰をたどったかを
人物を中心に語っていく。
この辺は目の前に
その時代の人がいるように
いきいきとしている。
塩野の洞察は一刀両断だ。
以下、記憶に残った言葉をいくつか。
「哲学とはギリシア哲学につきる。
それ以降は、キリスト教と哲学の一体化という
所詮は無為に終わるしかない
労力のくり返し」
「ローマは『arioso』(アリオーゾ)。
こせこせしない」
「ルネサンス精神とは、
人間がこの心眼を、
再びわがものにしたということ」
内容は豊富にして
とても語りきれない。
それが塩野の
ルネサンスの豊かさ。