塩野七生のレビュー一覧
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著者が「ローマ人の物語」を書いていた2000年当時の加筆・修正版。ローマ人の物語の中で書かれていることや、著者がほかの場所でローマと現代を対比しながら書いてきたことのうちのいくつかを対話形式にして”復習”した感じ。歴史家の中にはさまざまな意見があるのだろうが、著者がローマに向かう姿勢や視点というのは個人的に好みなので、頷きながら読んだ。
ローマが他民族を支配しても、そこから多くを学び、模倣し、ローマ市民権を与えてきたそのやり方が帝国の安定につながっていたことは、近現代の戦争や植民地主義と比較するとやはり一種憧憬の対象。悪行も含めてエネルギッシュだったローマは、やはり歴史物語の”主人公”として魅 -
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塩野七生先生が文藝春秋に寄稿されているコラム集。高校の時の友達が塩野七生先生の大ファンで、ずーっと気になっていたのですが…とりあえずコラム集なら、と軽い気持ちで手を出してしまいました。
表紙のお写真の佇まいが、義母に似てるな~と思ったら…お人柄まで義母にそっくりでした(爆笑)。
なぜ、2000年前のローマ人にできることが、今のイタリア人にできないのかと、憤りつつも、イタリア人への愛が溢れていて微笑ましい!ギリシアやローマの歴史と今の政治を対比させた考察は感嘆させられっぱなし!巻末の爆笑入院記も抱腹絶倒!塩野七生先生、おきゃんな娘さんが、素敵に80歳になられたような方ですね♪素敵な年配のご婦 -
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ネタバレアクティウムの海戦にてアントニウス・クレオパトラの連合軍を打倒したアウグストゥスに権力が集中する一方、アウグストゥスは危機管理を忘れなかった。内乱期に獲得した特権を放棄し、共和政に帰す事を突如元老院議員の前で宣言したのである。特筆すべき特権は課税権を伴った「イタリア宣誓」であり、これは対アントニウス戦のために国家ローマのためにアウグストゥスを総司令官と定めた特別法であったからだった。
チグリス・ユーフラテス川の両川を拠点とするパルティアの問題はオリエントの防衛にとって長らく無視できない重要な課題であった。初めて正面からぶつかったクラッススは無残な敗北を喫し、オクタヴィアヌスとの権力争いの中で自 -
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ネタバレカエサルはついにルビコン川を渡り、ポンペイウス擁する元老院派との対決に臨む。決意を決めたカエサルとは対照的に、国賊認定をしてカエサルを追い込んだ元老院派はルビコン川を越えたカエサルの行動は予想できていなかった。冬季であったため、軍勢を整えるためにも春まで待つだろうと予想をしていたからであった。準備ができていないポンペイウス陣営は、早々にローマを捨て南伊ブリンディシに向かい、イタリアをも捨てギリシャへと渡る。ポンペイウスは地中海の海賊一掃作戦を通して地中海全域に渡り多数の「クリエンテス」を有しており、イタリア内での決着よりも地中海全域を盤面とした方が有利とみたからであった。カエサルは当然この展開
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ネタバレローマの歴史における英雄中の英雄ガイウス・ユリウス・カエサルについての叙述がいよいよ始まる。カエサルは紀元前100年の生まれという事で覚えやすい。項羽と劉邦の時代のおよそ100年後、カエサルの100年後にキリストの時代となるのでなんとも贅沢な時代である。
カエサルの少年期は、マリウス(民衆派)とスッラ(元老院派)の抗争の時代と重なる。母方の伯父にあたるマリウスがカエサルの伯父2人を処刑するという凄惨な出来事を13歳の時に経験している。16歳で父親を亡くしたカエサルは家長となり、政略結婚を経て当時の政争に巻き込まれていく。マリウスのバトンを受けとった執政官キンナは、オリエント平定を終えたスッラを -
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ネタバレ第二次ポエニ戦役に勝利し、地中海の覇権を不動のものとしたローマであるが、大きくなりすぎた反動が自身を襲う。属州となったシラクサから安価な農産物が入るようになり、ローマの農業者は葡萄畑などに転換するしかなくなったが、この転換には多額の投資が必要であった。投資能力のない者は土地を富裕層に譲渡せざるを得ず、格差が拡大したのである。
このような背景の中、グラックス兄弟が登場する。兄のティベリウス・グラックスは、大規模農地の所有権を放棄させる農地法を護民官として提案し民衆に支持されるも、これが富裕層が多くを占める元老院の反感を買う。護民官への再選を期した集会において、反対派(背後には元老院が控えている) -
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ネタバレ北アフリカの強国カルタゴとローマの激戦が描かれる。シチリアの覇権をめぐる「第一次ポエニ戦役」、主戦場をイタリアとしたカルタゴの英雄ハンニバルによる侵略戦争である「第二次ポエニ戦役」がメインのテーマ。
第一次ポエニ戦役は地中海の制海権が重要となることから、当時は海軍を持っていなかったローマより沿岸国であるカルタゴが有利かと思いきや、そうならないのが面白いところ。「カラス」という回転する梯子のようなものを船に装着し、カルタゴの軍船に橋をかけローマの強みである重装歩兵を活用し戦闘を陸戦化するという発想の転換は学ぶ部分が多いなと感じた。
第一ポエニ戦役での敗戦の将となったハミルカルであるが、その長子で -
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ネタバレローマの事を全く知らない人間が読んでも、グイグイ引き込まれる文章で、漫画を読むような感覚で歴史理解を深める事ができた。長丁場になるが全巻読んでみたいと思う。ローマ建国からカルタゴ(現 北アフリカ)との戦争であるポエニ戦役勃発前までが描かれる。ローマに最初に拠点を築いたのは所謂「ならず者集団」で、サビニ人の女性たちを拉致して結婚して子孫を残したというのは驚きであった。共和制移行後のパトリキ(貴族)中心の政治から平民を取り入れた政治体制の確立(リキニウス法)や同盟国出身の者に違和感なく最高権力であるコンスル(執政官)の地位を与えるなど、外部リソースの活用の上手さがローマが今後ライジングしていくこと