塩野七生のレビュー一覧

  • 迷走する帝国──ローマ人の物語[電子版]XII

    mac

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    アイデンティティクライシス

    一部ご紹介します。
    ・歴史は現象としては繰り返さない。だが、この現象に際して露になる人間心理ならば繰り返す。それ故、人間の心理への深く鋭い洞察と、自分の体験していないことでも理解するのに欠かせない想像力と感受性、このうちの一つでも欠ければ、かつては成功した例も、失敗例となり得る。
    ・三世紀のローマの特質の一つは、政略面での継続性を失ったことにある。最早、ローマ帝国は、持てる力の無駄遣いに神経を払わないようになってしまった。ローマ人が、大帝国を築き上げ、しかも長期にわたって、その維持に成功できた最大の理由は、持てる力の合理的で徹底した活用への執着にあったのだ。「継続は力なり」は、やはり真理な

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    2022年09月30日
  • 終わりの始まり──ローマ人の物語[電子版]XI

    mac

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    新ローマ帝国衰亡史

    一部ご紹介します。
    ・内戦は悲劇である。これさえ起こらなければ国家という「共同体」に貢献できた多くの有能な人材が、ただ単に敗者になったというだけで消されてしまうのだから。内戦とは、自分で自分の肉体を傷つけ、自らの血を流すことなのだ。出血多量は、死に至らなかったとしても、体力の減退は避けられない。
    ・一般の人より強大な権力を与えられている指導者の存在意義は、いつかは訪れる雨の日のために、人々の使える傘を用意しておくことにある。
    ・思考も筋肉と同じように絶えざる鍛練を必要とする。思考も使わないとカンが鈍ってくる。
    ・戦略が確立していないと、戦争の長期化に繋がりやすい。戦争は、攻められる側だ

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    2022年09月30日
  • コンスタンティノープルの陥落

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    コンスタンティノープル陥落というと、マホメッド2世の勝利物語というイメージでしたが、これを読んでから、コンスタンティヌス11世と当時のヴェネツィア共和国により興味を持ちました。陥落後の主人公たちの人生に、ある程度のページが割かれていて、より悲哀が増し、作品を美しく魅せています。
    イスタンブール行きたくなりました。
    金角湾に鎖をかけるシーン…もっと詳しく書いて欲しかった。よくトルコ軍入って来なかったよなぁ。(笑)

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    2020年04月13日
  • すべての道はローマに通ず──ローマ人の物語[電子版]X

    mac

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    インフラの重要性

    一部ご紹介します。
    ・アリスティディス「かつて、ホメロスは語った。大地は全ての人の物であると。ローマは、詩人のこの夢を現実にしたのである。あなた方ローマ人は、傘下に収めた土地の全てを測量し記録した。そしてその後で、河川には橋を架け、平地はもちろんのこと山地にさえも街道を敷設し、帝国のどの地方に住まおうと、往き来が容易になるように整備したのである。しかもそのうえ、帝国全域の安全のための防衛体制を確立し、人種が違おうと、民族が異なろうと、共に生きていくに必要な法律を整備した。これらのこと全てによって、あなた方ローマ人は、ローマ市民でない人々にも秩序ある安定した社会に生きることの重要さを教えたので

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    2022年09月30日
  • 危機と克服──ローマ人の物語[電子版]VIII

    mac

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    危機管理

    一部ご紹介します。
    ・人間には、自らが生きた時代の危機を、他のどの時代よりも厳しいと感じてしまう傾向がある。ただし、興隆途上の危機とその克服は、さらなる繁栄に繋がるが、衰退期に入ると、危機は克服できても、それは最早さらなる繁栄に繋がらなくなってしまう。
    ・平時にも活躍できるタイプの人材でなければ、真の意味で戦時にも有益になり得ない。なぜなら、リーダーの第一条件が、彼に従う人々に対しての統率力であるからだ。
    ・「見たいと思う現実しか見ない」傾向は、人を不幸にする。異なる宗教、異なる生活様式、異なる人種であっても、共に生きていかなければならないのが人間社会の現実だ。玉砕は後世を感動させること

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    2022年09月30日
  • ルネサンスとは何であったのか―塩野七生ルネサンス著作集1―

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    塩野さんの作品が「ルネサンス」を軸に繋がってきます。良い解説書とも言えるかも。逆に読み返そうと思う人には良い入門書。今度はもっと深く味わえる気がします。

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    2020年04月06日
  • 悪名高き皇帝たち──ローマ人の物語[電子版]VII

    mac

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    経験と理性

    一部ご紹介します。
    ・偽善とは、演技をすること。フリをすること。
    ・全てを所有する人にとっての最大の恐怖は、現に所有しているものを失うことである。
    ・最も有効な外交は、軍事力を使って脅したあとで握手をすることだ。なぜなら、人間とは、理(ことわり)によって眼を覚ます場合は少ないのに、武力を突きつけられれば眼を覚ますものだからだ。
    ・システムとは、現状に適応するように修理修復さるべきものである。それを怠ればシステム自体に疲労をもたらし、終には崩壊する。それは、長期的に見て大変に非経済的なことである。機能性の不断の追求は、持てる力の効率的な活用の巧みさによって、はじめて可能となる。
    ・組織

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    2022年09月30日
  • ルネサンスとは何であったのか―塩野七生ルネサンス著作集1―

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    「ルネサンスとは何であったか」とは難しい質問であろう.学校で習った知識によれば「1000年近く続いた教会支配からの脱却,人間性の回復」だろうが,ではなぜ,どんな背景で1500年頃にイタリアで起こったのか?きっかけは何で推進力は何だったのか?がよくわかる.
    「哲学」に対する作者の評価は目から鱗.ギリシア哲学を勉強してみようかしら.

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    2020年03月26日
  • ローマは一日にして成らず──ローマ人の物語[電子版]I

    mac

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    ローマ興隆の要因

    一部ご紹介します。
    ・ペリクレス「貧しいことは恥ではない。だが、貧しさから脱出しようと努めないことは恥である。」
    ・プルタルコス「敗者さえも同化する、ローマ人の開放的な性向こそローマ興隆の要因。」
    ・多神教では、人間の行いや倫理道徳を正す役割を神に求めない。多神教の神は、努力を惜しまない人間を側面から援助する守護者。
    ・多神教では、他者の神を認める。それは、他者の存在を認める寛容の精神を育む。
    ・国民の義務は、税金を払うことである。もうひとつの義務は、国を守ることである。
    ・宗教は、それを共有しない人との間では効力を発揮しない。だが、法は、価値観を共有しない人との間でも、効力を発揮

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    2022年09月30日
  • 皇帝フリードリッヒ二世の生涯(上)(新潮文庫)

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    塩野七生先生がずっと書きたかった人物を書いた本が文庫になったということを知り、購入しました。

    高校時代に世界史を学んでいましたがあまり記憶に残っていない人物だったので、新鮮な気持ちで読め面白かったです。

    ローマ法王の権力が絶大だった中世時代に、法王とどう折り合いをつけて改革を起こしていったのか。ルネサンスに繋がる一大人物の生き方は魅力的でした。

    下巻の内容がたのしみです。

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    2020年03月14日
  • イタリア遺聞

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    何度目かわからないけど再読(?)。

    ローマ人の物語だとか、優雅なる冷酷チェーザレ・ボルジアとか、わが友マキャベリとかを書いた塩野七生のイタリアエッセイ。

    この人の文体は好き。

    この中に入っている話のなかでは、「ハレムのフランス女」が秀逸。
    あと、ロッサーナの話も。
    司馬遼太郎と同じく、結構バイアスを気にして読むべき作家だけど、やっぱり最初の興味をひくまでに持ってくことが大事だからね。
    この人がいなければ、チェーザレもこれほど注目されることはなかっただろうし。

    モノエッセイも上手い。

    私の持ってる版は平成8年版なのでもう20年以上も前に最初に読んだんだなー。

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    2020年03月01日
  • チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷―塩野七生ルネサンス著作集3―

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    近世初頭に史上初めて統一された「イタリア」を目指したチェーザレの、波乱に満ちた生涯を描いた作品。文献を援用しながら情景もたっぷりと描写する‬独特の構成で、歴史書とも物語ともつかない絶妙な読み心地。そして、この時代はやっぱり面白いなあ。‬

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    2020年02月26日
  • 十字軍物語 第二巻―イスラムの反撃―(新潮文庫)

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    「ハッシシを吸う者たち」という意味の暗殺者集団が後の「アサシン」という言葉になったという事実が印象的。

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    2020年02月07日
  • 十字軍物語 第一巻―神がそれを望んでおられる―(新潮文庫)

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    タンクレディという姓がこの時代からあったことが、個人的トリビア。
    絶対的権力を持つ皇帝のような存在が立ち上がったわけではなく、地方貴族の財力によるところが大きかったということと、よっこらせという雰囲気でバラバラにイスラエルに向かったことが意外

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    2020年02月07日
  • 十字軍物語 第一巻―神がそれを望んでおられる―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    十字軍というとケビンコスナーの映画「ロビンフット」のイメージしかなかったが、この本を読んで随分イメージが変わった。もともと十字軍を体系だって書いてある本をあまり知らないので、非常に勉強になった。中世のイスラム教というと狂信的で残忍なイメージがあるが(多分にアメリカ映画ではキリスト教世界の敵役ということからかなりデフォルメして無表情な殺人者として描くことが多いからと思うが)、この本を読むと決してそのようなことはなく、むしろキリスト教側(特にローマ教会)の方が独善的であったようだ。それでも中世という時代だけあり、日本の戦国時代と同様、英雄がどちらの側にも輩出されその英雄譚を読むだけでも価値がある。

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    2020年02月02日
  • 皇帝フリードリッヒ二世の生涯(上)(新潮文庫)

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    塩野さんが書きたかった人物に興味 塩野さんの本は好き。書き手の「好き」が伝わってくる。西洋史のキリスト教が絡むあたりはあまり好きではなくて敬遠していたけど、塩野さんが前から書きたかった人物の本という事で買ってみた。読んでて楽しくなるのはさすが。

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    2025年12月13日
  • 皇帝フリードリッヒ二世の生涯(下)(新潮文庫)

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    中世のイタリアにこんな興味深い皇帝がいたとは知らなかった。小説ではなく、歴史書として書かれているんだが、ときどき著者の思い入れの強さのせいか、想像による解釈が断定調に書かれてたりするので、その点は注意したほうが良いかも。
    まぁ、その辺を割り引いてとても面白い。

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    2020年01月25日
  • 皇帝フリードリッヒ二世の生涯(下)(新潮文庫)

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    「ローマ人の物語」のカエサルの時もそうだったが、著者は、好きな男の女の話題は実に詳しくしかも楽しげに書いている。本書のフリードリッヒ二世の女たちの章には笑ってしまった。この男は実に愉快ないい男ではないか。
    本書は主人公がハッキリしているだけに、読んでわかりやすく楽しい。しかもそのままヨーロッパ中世史の知識も得られる本だ。
    本書が読んで楽しいのは過去の「歴史的事実」を知る事ができるからだけではない。後世でなければ得ることができない「歴史認識」をもって過去を読み解けるからだろう。そういう書を書ける著者の力を絶賛したい。
    しかし、フリードリッヒ二世が偉大な政治家だったことは言うまでもないが、それでも

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    2020年01月24日
  • わが友マキアヴェッリ フィレンツェ存亡―塩野七生ルネサンス著作集7―

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    塩野七生 「 わが友マキアヴェッリ 」

    マキアヴェッリ の政治思想「君主論」の思想背景を紐解いた本。

    君主論の目的は ロレンツォの死により滅亡の道を進むフィレンツェを救うために、チヤーザレボルジアが行ったような 市民兵による自力防衛を実現すること。

    マキアヴェッリは フィレンツェ市民兵による イタリア統一まで視野に入れているとし、マキアヴェッリのイタリア統一の野心は スペインによるローマ略奪を持って 終了したとする構成。


    君主論やマキアヴェッリを スペイン台頭など国際関係の変化、フィレンツェ人の気質、グイッチャルディーニ との比較から捉えている。著者しか書けない視点で面白い。

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    2020年01月29日
  • 皇帝フリードリッヒ二世の生涯(上)(新潮文庫)

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    法王と熾烈な闘争を繰り広げたことで知られる、中世きっての知識人であった皇帝フリードリヒリッヒ二世の前半生。
    エルサレムを血を流さず手に入れ、南イタリアのイスラム教徒と共存し、ミラノ大学を設立。

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    2020年01月19日