塩野七生のレビュー一覧
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アイデンティティクライシス
一部ご紹介します。
・歴史は現象としては繰り返さない。だが、この現象に際して露になる人間心理ならば繰り返す。それ故、人間の心理への深く鋭い洞察と、自分の体験していないことでも理解するのに欠かせない想像力と感受性、このうちの一つでも欠ければ、かつては成功した例も、失敗例となり得る。
・三世紀のローマの特質の一つは、政略面での継続性を失ったことにある。最早、ローマ帝国は、持てる力の無駄遣いに神経を払わないようになってしまった。ローマ人が、大帝国を築き上げ、しかも長期にわたって、その維持に成功できた最大の理由は、持てる力の合理的で徹底した活用への執着にあったのだ。「継続は力なり」は、やはり真理な -
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新ローマ帝国衰亡史
一部ご紹介します。
・内戦は悲劇である。これさえ起こらなければ国家という「共同体」に貢献できた多くの有能な人材が、ただ単に敗者になったというだけで消されてしまうのだから。内戦とは、自分で自分の肉体を傷つけ、自らの血を流すことなのだ。出血多量は、死に至らなかったとしても、体力の減退は避けられない。
・一般の人より強大な権力を与えられている指導者の存在意義は、いつかは訪れる雨の日のために、人々の使える傘を用意しておくことにある。
・思考も筋肉と同じように絶えざる鍛練を必要とする。思考も使わないとカンが鈍ってくる。
・戦略が確立していないと、戦争の長期化に繋がりやすい。戦争は、攻められる側だ -
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インフラの重要性
一部ご紹介します。
・アリスティディス「かつて、ホメロスは語った。大地は全ての人の物であると。ローマは、詩人のこの夢を現実にしたのである。あなた方ローマ人は、傘下に収めた土地の全てを測量し記録した。そしてその後で、河川には橋を架け、平地はもちろんのこと山地にさえも街道を敷設し、帝国のどの地方に住まおうと、往き来が容易になるように整備したのである。しかもそのうえ、帝国全域の安全のための防衛体制を確立し、人種が違おうと、民族が異なろうと、共に生きていくに必要な法律を整備した。これらのこと全てによって、あなた方ローマ人は、ローマ市民でない人々にも秩序ある安定した社会に生きることの重要さを教えたので -
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危機管理
一部ご紹介します。
・人間には、自らが生きた時代の危機を、他のどの時代よりも厳しいと感じてしまう傾向がある。ただし、興隆途上の危機とその克服は、さらなる繁栄に繋がるが、衰退期に入ると、危機は克服できても、それは最早さらなる繁栄に繋がらなくなってしまう。
・平時にも活躍できるタイプの人材でなければ、真の意味で戦時にも有益になり得ない。なぜなら、リーダーの第一条件が、彼に従う人々に対しての統率力であるからだ。
・「見たいと思う現実しか見ない」傾向は、人を不幸にする。異なる宗教、異なる生活様式、異なる人種であっても、共に生きていかなければならないのが人間社会の現実だ。玉砕は後世を感動させること -
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経験と理性
一部ご紹介します。
・偽善とは、演技をすること。フリをすること。
・全てを所有する人にとっての最大の恐怖は、現に所有しているものを失うことである。
・最も有効な外交は、軍事力を使って脅したあとで握手をすることだ。なぜなら、人間とは、理(ことわり)によって眼を覚ます場合は少ないのに、武力を突きつけられれば眼を覚ますものだからだ。
・システムとは、現状に適応するように修理修復さるべきものである。それを怠ればシステム自体に疲労をもたらし、終には崩壊する。それは、長期的に見て大変に非経済的なことである。機能性の不断の追求は、持てる力の効率的な活用の巧みさによって、はじめて可能となる。
・組織 -
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ローマ興隆の要因
一部ご紹介します。
・ペリクレス「貧しいことは恥ではない。だが、貧しさから脱出しようと努めないことは恥である。」
・プルタルコス「敗者さえも同化する、ローマ人の開放的な性向こそローマ興隆の要因。」
・多神教では、人間の行いや倫理道徳を正す役割を神に求めない。多神教の神は、努力を惜しまない人間を側面から援助する守護者。
・多神教では、他者の神を認める。それは、他者の存在を認める寛容の精神を育む。
・国民の義務は、税金を払うことである。もうひとつの義務は、国を守ることである。
・宗教は、それを共有しない人との間では効力を発揮しない。だが、法は、価値観を共有しない人との間でも、効力を発揮 -
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何度目かわからないけど再読(?)。
ローマ人の物語だとか、優雅なる冷酷チェーザレ・ボルジアとか、わが友マキャベリとかを書いた塩野七生のイタリアエッセイ。
この人の文体は好き。
この中に入っている話のなかでは、「ハレムのフランス女」が秀逸。
あと、ロッサーナの話も。
司馬遼太郎と同じく、結構バイアスを気にして読むべき作家だけど、やっぱり最初の興味をひくまでに持ってくことが大事だからね。
この人がいなければ、チェーザレもこれほど注目されることはなかっただろうし。
モノエッセイも上手い。
私の持ってる版は平成8年版なのでもう20年以上も前に最初に読んだんだなー。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ十字軍というとケビンコスナーの映画「ロビンフット」のイメージしかなかったが、この本を読んで随分イメージが変わった。もともと十字軍を体系だって書いてある本をあまり知らないので、非常に勉強になった。中世のイスラム教というと狂信的で残忍なイメージがあるが(多分にアメリカ映画ではキリスト教世界の敵役ということからかなりデフォルメして無表情な殺人者として描くことが多いからと思うが)、この本を読むと決してそのようなことはなく、むしろキリスト教側(特にローマ教会)の方が独善的であったようだ。それでも中世という時代だけあり、日本の戦国時代と同様、英雄がどちらの側にも輩出されその英雄譚を読むだけでも価値がある。
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Posted by ブクログ
「ローマ人の物語」のカエサルの時もそうだったが、著者は、好きな男の女の話題は実に詳しくしかも楽しげに書いている。本書のフリードリッヒ二世の女たちの章には笑ってしまった。この男は実に愉快ないい男ではないか。
本書は主人公がハッキリしているだけに、読んでわかりやすく楽しい。しかもそのままヨーロッパ中世史の知識も得られる本だ。
本書が読んで楽しいのは過去の「歴史的事実」を知る事ができるからだけではない。後世でなければ得ることができない「歴史認識」をもって過去を読み解けるからだろう。そういう書を書ける著者の力を絶賛したい。
しかし、フリードリッヒ二世が偉大な政治家だったことは言うまでもないが、それでも -
Posted by ブクログ
塩野七生 「 わが友マキアヴェッリ 」
マキアヴェッリ の政治思想「君主論」の思想背景を紐解いた本。
君主論の目的は ロレンツォの死により滅亡の道を進むフィレンツェを救うために、チヤーザレボルジアが行ったような 市民兵による自力防衛を実現すること。
マキアヴェッリは フィレンツェ市民兵による イタリア統一まで視野に入れているとし、マキアヴェッリのイタリア統一の野心は スペインによるローマ略奪を持って 終了したとする構成。
君主論やマキアヴェッリを スペイン台頭など国際関係の変化、フィレンツェ人の気質、グイッチャルディーニ との比較から捉えている。著者しか書けない視点で面白い。
全