森博嗣のレビュー一覧
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オーロラ。北極基地に設置され、基地の閉鎖後、忘れさられたスーパ・コンピュータ。彼女は海底五千メートルで稼働し続けた。データを集積し、思考を重ね、そしていまジレンマに陥っていた。放置しておけば暴走の可能性もあるとして、オーロラの停止を依頼されるハギリだが、オーロラとは接触することも出来ない。
孤独な人工知能が描く夢とは。知性が涵養する萌芽の物語。
「講談社タイガ」より
どんどん面白くなっていく.
人工知能って本当にどこまで行くんだろうとワクワクする.
100年間学んだオーロラが感情を学んでそれを実行していることに驚いた.人間をしていると一番やっかいに思える感情は、人工知能にとっては有意義なもの -
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著者の仕事の仕方が書かれていてとても為になった。
・地道に毎日コツコツやること
・やる気がなくともとりあえず、取りかかってみること
・めんどくさい道がもっとも失敗が少ない
・無駄な時間をなくすこと。本来やるべきことが取り掛かりやすくなるかも。
・ダイエットは確実に痩せる方法はあるのに(食べない、運動する)楽して痩せる方法を探してしまう。仕事も同じように楽して稼ぐことはできない。
・考えることとは、発想すること。発想してアウトプットすれば仕事に繋がり楽しくもなってくる。
・努力がしんどいのは、その努力に不信感があるから。試行錯誤、トライアンドエラーの繰り返しこそが人生。
・スポーツ選手の「楽しん -
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「ミステリ」に分類したが、この本の主眼は
ミステリ成分にはない、と思う。
割と早い段階で犯人分かるし(^ ^;
それよりも、ハードボイルドで洒脱な
登場人物達の会話を楽しむのが心地よい。
古き良き「探偵小説」という感じ(^ ^
ピート・ハミル的な?(^ ^
森氏の文章は、リズム感がものすごく強調されている。
平常部分はわりとゆったりとしたテンポで、
珍しくウキウキするシーンではアップテンポになり、
最後の空港に向かうシーンの激しさがあって、
最後の虚脱した「無音」のシーンがとても生きる。
もちろん、登場人物の魅力や校正の緻密さなど、
森氏らしいきっちりとした作風は健在。
その上で、「すべ -
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いつも、ハッとさせられた言葉が載っているページは読んでいる最中に折って、読み終わったら別のノートに書き写すようにしているのですが、今回もたくさんのページを折りました。
特に心に残っているのは、「平和は複雑だ」という箇所。単純さを求め、単純であることを是とする風潮があるけれど、あれは一種の懐古主義なのかもしれません。不安定であること、複雑であることにこそ成熟を感じるという彼の意見に大いに頷きました。
誰かに面白いですよ!と無理やり渡すのではなくて、個々のタイミングで出会ってほしいなと思う本です。誰かとシェアしたくなるというよりは、自分と対話したくなる本。 -
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祈りの場。フランス西海岸にある古い修道院で生殖可能な一族とスーパ・コンピュータが発見された。施設構造は、ナクチュのものと相似。ヴォッシュ博士は調査に参加し、ハギリを呼び寄せる。一方、ナクチュの頭脳が再起動。失われていたネットワークの再構築が開始され、新たにトランスファの存在が明らかになる。拡大と縮小が織りなす無限。知性が挑発する閃きの物語。
「講談社BOOK倶楽部」より
今度はフランスが舞台.
新しいスーパ・コンピュータが発見されて、トランスファというものの存在が登場して、少しずつ話が拡大している.
ウォーカロンがどんどん人間に近づいていて、境界線はどこにあるのだろいうという疑問をシリーズの -
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例えば、思春期に読んでいたけれど自然と離れていった作家さんはいるし、思春期に読んでいて、しばらく離れていたけれど読むのを再開した作家さんはいる。けれど、思春期の頃から継続して読んでいるのは、森博嗣ただ一人かもしれないなあと最近気づきました。
なので、レビューを書くといっても毎度同じことしか言えないのですが。とにかく、彼の思考が好きです。彼のものの見方や言葉選びが好きです。そして彼のそういった思考の片鱗に触れられることが嬉しくて仕方がありません。彼と同じ時代に生きていられて、彼が存命中に彼の本が読めることが、これ以上ない幸せです。
今回、冒頭の第一声(といっても良いのか?)がタイトルだったこ -
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韜晦した探偵兼ライターが主役で、
森氏らしい乾いた文体が全体を貫く。
が、文体は乾いていても、主人公の心の奥底には、
今もドロドロした思いが蠢いている。
そのドロドロが表に出ないように、薄いかさぶた一枚で
覆いをして、そのかさぶたをいつもドライに保つために
飄々とした風を吹きかけている...という印象。
前作があったようだが、私は未読なので
細かい過去のストーリーは分からない。
が、大きな後悔を抱えて生きている、
ということが分かれば主人公に感情移入できる。
みな、多かれ少なかれこんな「部分」は内包している。
一応はミステリで、連続殺人事件が起こり、犯人は捕まる。
が、ストーリーのメイ -
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聖地。チベット・ナクチュ特区にある神殿の地下、長い眠りについていた試料の収められた遺跡は、まさに人類の聖地だった。ハギリはヴォッシュらと、調査のためその峻厳な地を再訪する。ウォーカロン・メーカHIXの研究員に招かれた帰り、トラブルに足止めされたハギリは、聖地以外の遺跡の存在を知らされる。小さな気づきがもたらす未来。知性が掬い上げる奇跡の物語。
「裏表紙に記載」
読み進めるうちにドキドキが止まらなくなる.哲学的.何処へ行くのだろう.そしてあの人へとつながっている証拠がポロポロと出てきて、さらにドキドキが加速する.
途中、ハギリ博士がタナカさんに「彼女(ウグイ)は人間です」と言った言葉に、ハギリ -
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小説の書き方ではなく、小説家という職業について、著者の体験や考え方を中心に書かれた一冊です。悲観的な意見もたびたび見受けられますが、なるほどなと思える話も多く、個人的には実りの多い内容でした。
冷めた性格というより、はっきりと割り切った考え方をするんだなという印象です。だからこそ小説の執筆をビジネスだと意識し、プロとしての仕事を貫いているのでしょう。
読み進めていくうちに突き放されているような応援してくれているような、不思議な感覚になりました。何度か繰り返し読んでいますが、回を重ねるごとに自身の体験や知識と呼応する箇所が多くなり、より理解が深まるように思えています。