安部龍太郎のレビュー一覧
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いい本を読んだ。
読後、何かに打ちのめされたかのようにしばらく放心状態になった。こんなにも迫力を感じることは久しい。
著者の安部龍太郎はこの本で第147回直木賞を受賞。
筆力が凄いと思う。
長谷川等伯、安土桃山時代から江戸時代にかけて活躍した絵師。
33歳で絵師を目指し能登から上洛し、苦難の道を経て、狩野派と肩を並べるほどの絵師になる。
小説のクライマックス、日本水墨画の最高傑作「松林図」を身命を賭して描く場面が圧巻。
この時代、歴史は激動の時。絵師も多かれ少なかれときの人により歴史の影響を受ける。
故郷、七尾の家が七人衆の手のものに襲われ、養父母が自決に追い込まれる。上洛する途上、比叡 -
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鎌倉時代末期の津軽「安藤氏の乱」を描いた作品。中盤までは津軽・陸奥における各勢力図や経済体系が丁寧に描かれる。中盤から終盤にかけては室町期に向けた倒幕の動きが重なり、時代が動いていく。
面白いけど冗長的というのが正直な感想。どのエピソードも面白く、盛り込みたい気持ちは分かるが、枝葉のエピソードの長さのせいで本筋がぶれてしまうのを度々感じた。例えば、イタクニップとの戦い。彼を追い込むが逃げられてしまうところで、急に熊との戦いが始まる。この経験がイアンパヌとの絆や季兼の覚悟に繋がるので必要性は理解するも次の展開を早くという気持ちが先行してしまう。都のシーンもしかり。最終盤でどんどん新しい人物が -
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作家さん達が全国18か所の灯台を巡り、紹介する紀行文。島国である日本人は古くから海と共生してきたが、現在のような西洋式灯台が建設されたのは明治維新以降になってからだという。風の吹きすさぶ岬の突端でポツンと立ちながら必死に灯を届ける様子は、孤高であり浪漫を掻きたてられる。
近代日本の文化遺産として、灯台が見直されつつあり、各地域では新たな観光資源となっている。各地に旅行に行く際に、灯台へふらりと寄ってみるのも楽しそうだ。私の地元の灯台も紹介されていたので、まずはそこから訪問したい。
また、どの作家さんも『喜びも悲しみも幾年月』という映画について言及されていた。近代日本を支えた誇りある灯台守という -
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去年、楠木正成の息子を主人公とした朝日新聞朝刊小説にハマっていて、新聞の連載はとうに終わっているのに、未だ書籍にならず!!
その影響で南北朝時代に興味を持ったので、書籍化を待っている間に、、と本書を手に取りました。
道誉も正成も人望があり、とても魅力的な人物でした。
特に佐々木道誉についてはほとんど知識がなかったので、本書が第一印象になります。
二人は時に心強い仲間として、またある時は敵味方に分かれて戦うという、混沌とした時代ならではの運命が切なかったです。二人とも同じ志を持っているのにね。
そして、後醍醐天皇の建武の新政って教科書でどう習ったっけ?!と気になりました。悪政、っていうかバ -
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読んだ本 風の如く水の如く 安部龍太郎 20240612
長らく歴史小説、時代小説ばかり読んでた時期があって、司馬遼太郎、山岡荘八、吉川英治、池波正太郎。人物や出来事に焦点を当てて、それぞれの歴史観、解釈を楽しんでました。
安部龍太郎の場合、設定が大胆なので歴史小説の範疇を超えて時代小説って感じがするんですが、段々とこれが事実のように感じていく。記録に残った事実は皆に知られてるけど、記録に残ってない事実も当然ある訳で、それは作家の想像力が埋めていくって意味では立派な歴史小説なんだよな。
黒田如水は、関ケ原の合戦が行われてる時に九州を席巻して、どさくさ紛れに天下を狙ってたってのは周知の事