安部龍太郎のレビュー一覧
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ネタバレ語り手の朝河貫一という人物は知らない。
歴史小説を読むたびに自分の不勉強を呪う。
戊辰戦争を生き延びた元二本松藩士の息子である貫一氏は、後にイェール大学の教授になる人物である。
戊辰戦争だけでなく明治維新を語るときに、薩長側からの視点なのか、旧幕府側からの視点で語られるのかで、全く逆の物語になる。
新政府軍の手段を選ばない姿勢が、満州事変や上海事変を起こし、そこには義がないと見る歴史学者の貫一。
手段を選ばず、勝てば何をしてもかまわない、と言う考え方は、現在における大国の覇権主義とかわらず、唾棄すべき思想であるが、その正義を声に出さない日本がある。
と、現状のわが国を憂うような内容である。
フィクションなので、史実の真偽を問う声はあるだろうが、戊辰戦争で会津鶴ヶ城の惨劇がなんのためだったのだろうか。
改めて色々と考えさせられる小説だった。 -
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主な舞台は今の岩手になるだろうか。
豊臣秀吉の最後の国内戦。
たった3,000の相手に10万以上の軍を派遣し制圧せんとする。
前半まで東北の暮らしや価値観が丹念に描かれる。そして中央と内通している味方の誰か。ミステリ要素もふんだんに散りばめられ、物語は続く。
あの極寒の冬になれば、豊臣軍は退く。そうしてまたいつもの暮らしを、自分たちの普通の暮らしができる。誰もがそう思っていた。だからこそ冬を待つ城というタイトルなのかな。
だが、そこには豊臣側の野望も含まれていた…見据える先には何が…という話。
実際の事実は別にして、歴史小説としてとても面白いし、読みやすいものでもある。職場の人たちに勧めたこともある小説のひとつだ。 -
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ネタバレ長谷川等伯という安土桃山時代から江戸初期に活躍した画家の伝記小説。上下2冊の長編小説ですが、一気に読み進むことが出来ました。
恥ずかしながら私は、この本を読むまで長谷川等伯を知りませんでした。同時代活躍した狩野永徳は知っていましたが。こういう本を読んで、今まで自分の知らなかった有名人を知るのは楽しいですね。
さて、この本の終盤の山場に出てくる「松林図屏風」ですが、東京国立博物館の新春特別公開で、実物を見ることが出来ました。感激です!!
椅子に座って暫く「松林図屏風」を観てみました。しかし、その屏風から光と陰は感じることは出来ましたが、残念ながら私には、風までは感じることが出来ませんでした。残念です! -
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当時世界情勢の中の日本の状況と国内世論で戦争反対を叫ぶことは相当困難だったと想像する。
唯一と言って良いマスメディアが戦争を煽っていた中、一般市民に戦争を避ける判断はできるはずがないと思われる。
そこで重要なのは学者、政治家、軍人といった当時のエリートが国際関係を正しく判断して戦争を避けつつ国益を損なわない舵取りをすべきだったがそれに失敗したのが破滅に至った原因。
本書で触れられている南京虐殺のくだりは知れて良かった。敵は便衣兵であることの恐怖は計り知れない。一般人であろうがやらなければやられる恐怖、女子供でも密告されて後で標的になるかも知れない恐怖、自分が軍に入れば同じことをやらざるを得ない。下士官以下の兵は加害者であり被害者であった、そして当時の中国の一般市民が1番の被害者であったことは間違いない。
戦争の1番の被害者はいつも一般市民、この事は絶対忘れてはならず、昨今の勇ましいテレビやネットメディアでの勇ましい言説に不安を覚える。 -
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いい本を読んだ。
読後、何かに打ちのめされたかのようにしばらく放心状態になった。こんなにも迫力を感じることは久しい。
著者の安部龍太郎はこの本で第147回直木賞を受賞。
筆力が凄いと思う。
長谷川等伯、安土桃山時代から江戸時代にかけて活躍した絵師。
33歳で絵師を目指し能登から上洛し、苦難の道を経て、狩野派と肩を並べるほどの絵師になる。
小説のクライマックス、日本水墨画の最高傑作「松林図」を身命を賭して描く場面が圧巻。
この時代、歴史は激動の時。絵師も多かれ少なかれときの人により歴史の影響を受ける。
故郷、七尾の家が七人衆の手のものに襲われ、養父母が自決に追い込まれる。上洛する途上、比叡山の焼き討ちに巻き込まれる。信場が上京を焼き討ちした際、妻子を連れて炎の中を逃げ惑う。病気の妻静子を七尾に連れて帰る途中、死なせる。利休事件に連座してどん底に突き落とされる。など数々の悲劇が等伯を襲う。
が、そんなことにめげずに苦難の道を歩み続ける。その精神が凄い。
その根底にあるのは、絵師として大成するという高い志しだ。
絵師になるという激しい情熱を秘めつつ、「ゆがみのない鏡が物事を正しく写すように、真に見たままを写しとるには心が空でなければならない。描きたいという欲を捨てて描く。目指したのはその境地だ」という悟りが印象的。
あとがきに「打ちのめされそうになった時は等伯の画集を開き、しばらく茫然とながめることが多かった。すると不思議な生命力が伝わって、もう一度立ち上がる気力を取り戻すことができた」とある。
パワースポットならぬパワーピクチャー。
素晴らしい絵とは、画家の精神的気迫が伝わってくる絵なんだろうな。
そうだ、等伯の絵を見に行こう。本物を見れば、等伯の気迫に迫ることができるかもしれない。 -
Posted by ブクログ
鎌倉時代末期の津軽「安藤氏の乱」を描いた作品。中盤までは津軽・陸奥における各勢力図や経済体系が丁寧に描かれる。中盤から終盤にかけては室町期に向けた倒幕の動きが重なり、時代が動いていく。
面白いけど冗長的というのが正直な感想。どのエピソードも面白く、盛り込みたい気持ちは分かるが、枝葉のエピソードの長さのせいで本筋がぶれてしまうのを度々感じた。例えば、イタクニップとの戦い。彼を追い込むが逃げられてしまうところで、急に熊との戦いが始まる。この経験がイアンパヌとの絆や季兼の覚悟に繋がるので必要性は理解するも次の展開を早くという気持ちが先行してしまう。都のシーンもしかり。最終盤でどんどん新しい人物が出てきて戸惑いが隠せなかった。つまりは、北畠・帝は津軽を利用しようとしていた、ということを知るわけだが、それに100頁弱も必要か疑問だ。
東北史を好きな私としては、蝦夷の意地、独自の道に繋がる本作には非常に惹きつけられたし、全体としては満足している。最後に内乱関係者が一同に集まり、幕府軍に立ち向かうのはアベンジャーズ感があり、見ごたえがあった。