安部龍太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
題名の『宗麟の海』の「宗麟」とは、戦国大名の大友宗麟である。現在の大分県である豊後国を本拠地としていた。そして大分駅の辺りには、「旅の者よ!我が領国を観たか!」とでも言い出しそうな雰囲気を漂わせる大友宗麟の銅像が在った。
加えて題名の「海」であるが、これは大友宗麟の人生が「海」と共に在ったかもしれないということを示唆しているように思う。
大友宗麟は心臓に病気が在って、長時間の激しい運動のようなことはし悪いというような若殿として作中世界に登場している。健康上の些かの問題を抱えているが故に、自身の人生、自身の立場や役目、その他様々な事柄に関して思索的で、探求心が強い性格になっているような感でもある。
大友宗麟は、ポルトガルとの交易や明国(中国大陸)との関係、国内での交易というような海に関連が深い事項と関わるのだが、敵対する勢力との抗争という中でも海を制する、海を利用するということに意を向けて行くこととなる。そういう意味で題名に「海」なのだと思った。
大友宗麟は自身が文字どおりに軍勢の先頭に立って勇戦するということはしない。(それでも出陣の際は、ポルトガル人に贈られたアラブ種の大きな馬に、白く輝く甲冑姿で跨って現れるということはしている。)大友宗麟は、大友家の旗の下に集まった大軍勢の総帥として、戦いの全般の方針を構想し、構想に基づいて配下の将達に指示を与え、各将が役目を完遂することを助けるべく外交交渉や情報戦を展開させるのである。文字どおりに大友家の最盛期、絶頂期を「演出」ということになる訳だ。
大友宗麟は、父と未だ幼かった末弟が謀略で殺害されてしまった<二階崩れ>という呼称で知られる混乱を収拾して行った後、豊前、筑前に勢力を持っていた周防、長門の大内家を「近攻遠交」を排除してしまうことに成功する。そして周防、長門を手中にして行く毛利家との抗争に入って行く。
領国を護ろうとする大友家の戦いをプロデュースする総帥は大友宗麟であるのに対し、その領国を奪って傘下に収めようとする毛利家の戦いをプロデュースする総帥は老獪極まりない毛利元就である。あの手、この手と知恵と戦力を出し合っての抗争の場面は非常に面白い。
この他、宣教師が「豊後国王の悪妻イザベラ」と伝えている奈多夫人こと弘子との挿話や、晩年に同居する女性ジュリアとの出会いや展開の挿話、「やや残念?」な息子達の挿話等、面白い箇所が本作には満載である。
あらゆる手段を講じて領国を奪うべく侵入した毛利勢を、あらゆる手段を講じて跳ね返した大友宗麟であったが、そういう大きな仕事を成し遂げた他方で「全ての国を従がえる王となっても心が満たされるのか?」というようなことを想っているという辺り…興味深い。
或いは本作は「大友宗麟?」という問いに答える作品として、永く読み継がれて行くように思える。そういうことも思うのだが、それ以上に、単純に本作は面白かった!! -
ネタバレ 購入済み
久しぶりに面白い本に出会えた
私は若いときバスガイドをしていて長崎は修学旅行のコースでしたので、鎖国やキリシタンの事を学んでいたので、この本は凄く読みごたえがありました。ぜひほかの時代も対決して欲しい。特に南九州には神和があるので、古事記、日本書紀を読みといて欲しいです。楽しみにしています
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Posted by ブクログ
敵対する陣営に在る者同士として出会う道誉と正成は、やがて手を携え、そして袂を分かって行くが…その両者を軸に描かれる『太平記』の世界が非常に面白い!少し夢中になった…
鎌倉幕府の時代の末期、建武新政、そして室町幕府が起こる南北朝時代の始まりというような時期は戦乱が相次いだ。そういう時代の群像を代表するような人物として、本作では佐々木道誉と楠木正成とを取上げて主要視点人物に据えている。
作中の佐々木道誉や楠木正成は、知行地や縁者の知行地等を結ぶ流通経路や商業に大きな影響力を持って、徴税権を行使して財力を蓄え、それを背景に味方への物資補給を行いながら軍勢を動かす勢力として描かれる。土地の産物を動かす、それに徴税する権利を有するに留まらず、流通商業に影響力を行使する勢力が伸びるという構図が、鎌倉時代末期には既に勃興していたとする訳である。
作中の「戦い」の描写が面白い。合戦そのものは、新旧様々な戦術が出て来て興味深いのだが、佐々木道誉の陣営も楠木正成の陣営も諜報活動を担う“忍者”に相当する配下を擁している。更に、足利陣営に在って本作では謀略を担っている足利直義は、筆跡を巧みに真似て文書を偽造する者まで擁している…
臣下や様々な層の関係者に慕われる人格者で、大塔宮護良親王に心酔して義を貫こうとする楠木正成…剛勇を誇る名門出身の武人であり、用兵の駆け引きに巧みで、大胆な謀略を駆使してでも、自由に流通・商業を起こして安寧な領国経営をしながら全国に影響力を行使しようとする野心家の佐々木道誉…作中の2人の中心的視点人物は何れも魅力的だ!
更に、作中の“新政”の時代だが…主流に立った者ばかりが色々な意味で有利になり、様々な利害が余り顧みられず、何やら混乱が深まる様…何処となく「現代」を想起させた…
“時代モノ”の背景になる時代として、この時代のモノは相対的に少ないかもしれないが、かなり興味深い。御薦め!! -
Posted by ブクログ
「遣隋使」の構想を実現させようと、抵抗勢力の様々な妨害にも負けずに打ち込む熱い人達が在り、それに共鳴する宗像の疾風や、九州北部の水軍の関係者が在り、そういう男達の間で平和を願う可憐なヒロインの伽耶が在る。実に好い!!
一寸面白いのは…大和朝廷の人達や、彼らと接していて日本語を話す朝鮮半島の関係者は「普通の日本語」を話す。“姫様”の伽耶も「普通の日本語」だ。が、疾風達のような水軍の男達、或いは伽耶の身近に使える侍女は「バリバリな福岡弁」を話している。「古代の日本の話し言葉?」ということになるが、本作の感じは「中央や外国に対して地方」という具合なので「疾風達が話す福岡弁」が妙にハマる…
戦いを繰り広げる男達が操る船や武器、作中人物達が身に着けるモノや、細々したモノに関しては、それなりに“考証”もなされた描写で、加えて「未だに古い伝統を受け継いで、人々の立ち入りを制限している」という島も含めた自然、四天王寺のような大和側の都会や朝鮮半島や大陸の都市というような情景も生き生きとしている。本作を読んでいると、何か「7世紀頃の世界で冒険をしている」ような不思議な気分になる…
偶々ながら、なかなかに愉しい作品に出会った!!或いは…本作は「映画化?」ということにでもなれば、なかなかに華々しい作品になりそうだとも思った…