あらすじ
時は鎌倉末期。後醍醐天皇率いる軍勢が挙兵し、倒幕の機運が高まっている。強い者につく変節漢としてののしられても己の道を貫いた「バサラ大名」佐々木道誉。そして、天皇への忠節を貫いて華々しく散り、愛国の士としてもてはやされる「悪党」楠木正成。この国の未来を案じ、乱世を治めるべく闘った両雄の行く末は──。この国の礎が築かれた南北朝史に熱き一石を投じる大シリーズ、堂々開幕!!
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
南北朝期について教科書に毛が生えたくらいの知識しかなかったけれど、非常に面白く読みました。「天皇」とは、物流の利権、など、読み返してもう少し自分のうちにおとし込みたい。
太平記にますます深まりそう
佐々木道誉に惹かれ、本書を読んだ。
いつもながら先生の分析力、創造力に舌を巻きながらますます道誉が理解出来、好きになった。
これまで太平記を読んで道誉と正成はこれまでまったく別次元の存在と思っていたが、存外共通するところが多いところに気づき太平記にますます深まってしまいそう。
Posted by ブクログ
敵対する陣営に在る者同士として出会う道誉と正成は、やがて手を携え、そして袂を分かって行くが…その両者を軸に描かれる『太平記』の世界が非常に面白い!少し夢中になった…
鎌倉幕府の時代の末期、建武新政、そして室町幕府が起こる南北朝時代の始まりというような時期は戦乱が相次いだ。そういう時代の群像を代表するような人物として、本作では佐々木道誉と楠木正成とを取上げて主要視点人物に据えている。
作中の佐々木道誉や楠木正成は、知行地や縁者の知行地等を結ぶ流通経路や商業に大きな影響力を持って、徴税権を行使して財力を蓄え、それを背景に味方への物資補給を行いながら軍勢を動かす勢力として描かれる。土地の産物を動かす、それに徴税する権利を有するに留まらず、流通商業に影響力を行使する勢力が伸びるという構図が、鎌倉時代末期には既に勃興していたとする訳である。
作中の「戦い」の描写が面白い。合戦そのものは、新旧様々な戦術が出て来て興味深いのだが、佐々木道誉の陣営も楠木正成の陣営も諜報活動を担う“忍者”に相当する配下を擁している。更に、足利陣営に在って本作では謀略を担っている足利直義は、筆跡を巧みに真似て文書を偽造する者まで擁している…
臣下や様々な層の関係者に慕われる人格者で、大塔宮護良親王に心酔して義を貫こうとする楠木正成…剛勇を誇る名門出身の武人であり、用兵の駆け引きに巧みで、大胆な謀略を駆使してでも、自由に流通・商業を起こして安寧な領国経営をしながら全国に影響力を行使しようとする野心家の佐々木道誉…作中の2人の中心的視点人物は何れも魅力的だ!
更に、作中の“新政”の時代だが…主流に立った者ばかりが色々な意味で有利になり、様々な利害が余り顧みられず、何やら混乱が深まる様…何処となく「現代」を想起させた…
“時代モノ”の背景になる時代として、この時代のモノは相対的に少ないかもしれないが、かなり興味深い。御薦め!!
Posted by ブクログ
去年、楠木正成の息子を主人公とした朝日新聞朝刊小説にハマっていて、新聞の連載はとうに終わっているのに、未だ書籍にならず!!
その影響で南北朝時代に興味を持ったので、書籍化を待っている間に、、と本書を手に取りました。
道誉も正成も人望があり、とても魅力的な人物でした。
特に佐々木道誉についてはほとんど知識がなかったので、本書が第一印象になります。
二人は時に心強い仲間として、またある時は敵味方に分かれて戦うという、混沌とした時代ならではの運命が切なかったです。二人とも同じ志を持っているのにね。
そして、後醍醐天皇の建武の新政って教科書でどう習ったっけ?!と気になりました。悪政、っていうかバカ過ぎるな。
本書では新田義貞さんのことはお味方ながらボロボロに描かれていますが、本書のシリーズ2作目はその義貞を主役にしたものです。
彼視点になるとどんな展開になるのでしょうか。楽しみです。
新たな正成像
南朝に殉じた忠臣という側面から描かれることが多かった楠木正成。経済的事情から台頭した背景を説き起こし、新たな正成像を提示した。伊勢湾利権から織田家の発展を描いてきた安部龍太郎ならではの分析は興味深い。著者の初期作品で後南朝時代を舞台にした「彷徨える帝」には正成の末裔という設定で、南木正盛という人物が登場する。本書を読んで興味を持った方は、ぜひ「彷徨える帝」も読んでほしい。