【感想・ネタバレ】維新の肖像のレビュー

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2018年03月13日

今年2018年は明治維新150年。このため全国で様々なイベントが行われたりしているが、政府も「明治150年」関連施設推進室を設置して「明治の精神に学び、日本の強みを再認識」すべきと提言しているようである。しかしこの作品は実在した歴史学者「朝河貫一」の人生を通じて明治維新そのものが持つ思想と制度の欠陥...続きを読むを指摘する。

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Posted by ブクログ 2022年08月23日

誰もが無意識のうちに明治維新を近代化への第一歩と捉えてきた中、その意義を改めて問い直した作品。

主人公は、二本松出身の歴史学者にして実在の人物。父は戊辰戦争に参戦し、敗北した経験を持つ。
主人公は明治以降の教育を受けたため、戊辰戦争に敗北した父をはじめ故郷の人たちを見下し反発する。そして、アメリカ...続きを読むに渡り大学教授となる。

しかし、時代は日露戦争後の混乱期。
日本は満州事変に上海事変、首相暗殺、と軍部の暴走がエスカレートする。
そんな時代にあって、主人公は父の書付をもとに明治維新を再検討する。
そして、軍部の暴走の根源は明治維新にあると発見する。
「勝てさえすればどんな不正を働いても構わない」という明治維新・薩長の価値観が今日の混乱をもたらした。

薩摩の御用盗に、明治天皇の暗殺、大義のない会津攻め。
薩長はやりたい放題をやって、政権を奪取した。
日本が太平洋戦争に至った原因も敗北した原因も、全て明治維新及び薩長にあると言っても過言ではない。
そして、その体制から未だ脱却できていない政権の時代を私達は生きている。

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Posted by ブクログ 2020年05月06日

明治維新により、失ったものも大きいという事が良く理解できた。いつの時代も勝った者の世の中。しかし、多くの人を犠牲にした戦争へと進んだ罪は重いと思う。

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Posted by ブクログ 2018年02月28日

太平洋戦争前夜のアメリカ・イエール大学で教鞭をとる朝河貫一が、戊辰戦争を戦った二本松藩藩士の父の書き残した手記をもとに、明治維新の意味を問い直すため「維新の肖像」という小説を書くという二重構造となっている。
アメリカで反日の人々から迫害を受けながら、貫一は軍国主義に傾倒する日本を憂える。そして父の手...続きを読む記から、破滅への道へと邁進する日本の病根は明治維新にあると考えるに至る。
明治維新を否定的にとらえ、戊辰戦争で行った薩長の卑怯なやり方が関東軍で踏襲され、満州事変を起こしたと、貫一は考える。
書中の登場人物に、孝明天皇の崩御は長州による毒殺だとも、語らせる。
さらに、薩長同盟の立役者は坂本龍馬との説が一般的だが、これも龍馬がグラバー商会に頼まれ、イギリスの指示を伝えただけだとか。
日本が明治維新で失ったものは、と問われた書中の人物は「やさしさ、人を思いやるやさしさではないでしょうか」と、答える。
戊辰戦争は、日本の古き良き伝統と精神を守ろうとした戦いでもあったのだろうか。
「歴史の地下には、これまで生きてきた人々の声なき声が埋まっている。それを汲みあげることこそ、歴史を語るということなのだ」。
この小説を著す著者の意図でもあるだろう。

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Posted by ブクログ 2023年12月03日

朝河貫一の作中作。明治維新から繋がる第二次世界大戦の日本の暗部を炙り出す。伊藤博文亡き後の日露戦争以後の日本の迷走から日中戦争へと軍部の暴走と国民の無関心に対して切り込んでいる点が素晴らしい。現代まで生き残る長州閥の暴走を改めて思い起こさせた。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年07月16日

一昨年の、明治維新から150年を記念したイベントが目白押しだったころから、「本当に江戸時代は暗黒時代だったのか。明治維新で世の中はよくなったのか」に疑問を呈するような本がずいぶんと出版されるようになったと思う。
この本も、その一冊。

第二次大戦直前の、反日感情渦巻くアメリカで、イェール大学の歴史学...続きを読む教授として勤める朝河貫一は、数々の嫌がらせを受けながらも、その地に踏みとどまるのだった。
日本が批判を受ける、手段を選ばない軍国主義、帝国主義については、かねてから論文を通して批判をしてきたところだが、学問の場である大学で、いわれのない差別や嫌がらせを受けるのは間違っていると、こちらについても断固として主張する。
しかし、彼を取り巻く環境は日に日に悪化し…。

朝河貫一ー日本人初のイェール大学教授だそうですが、寡聞にして知りませんでした。
父親が戊辰戦争を戦った二本松藩士であるということも含めて、ほぼ史実に則った小説というのに驚きました。

歴史学者として、軍国主義へと舵を切った転換点を明治維新と見るのは、ありだと思います。
勝てば官軍、力が正義。
勝つためには手段を選ばない。
薩長を筆頭とした明治政府軍は、そういう戦い方をした軍隊で、戊辰戦争に勝ってしまったことが、それを「正しいこと」に塗り替えてしまったのだと思います。

長州がなぜ、あれほどまでに会津を目の敵にしたのか。
それは京都で多くの長州藩士が、京都守護職である松平容保率いる会津藩士たちに誅殺されたから。
だけではない、というのも、この小説の一つの肝。
長州藩が官軍を名乗るためには、絶対に会津藩をつぶさねばならなかった。
なぜなら、朝敵であるはずの松平容保こそが孝明天皇に信頼されていたのだから。
その信頼の証と共に会津を倒さないことには、長州の立場こそが危うくなってしまう。

あり得ることだと思いました。
この辺のことについて書き始めると、読書感想を通り越してしまうのでやめますが、私にとっては非常に納得のいく理由でした。

”「もともと武士は領民を守るために戦の矢面に立った。逃げる時にも常に殿(しんがり)をつとめた。それゆえ領民から信頼され尊敬され、殿(との)と称されるようになった」”

降伏した敵兵を人間の盾として使い、さっさと自分達だけ戦線離脱するような薩長とは違う、と死んでいく二本松藩士。
民間人を盾にしてさっさと日本に帰国した日本陸軍の姿が浮かんでしまう。

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Posted by ブクログ 2018年07月08日

時代は昭和初期と明治維新の時を行き来する珍しいタイプの歴史小説。
アメリカのイエール大学で日本史を教える60歳の准教授が戦争に突き進む日本に警鐘を鳴らしていたが、効はならず歯がゆい想いをしていた。
そんなときになぜ、日本はこのように心なく無茶を押し付けるような国になったのだろうと思案した時に明治維新...続きを読むそのものに原型があったのではないかと思うようになる。
それをテーマにした書籍を書こうとするが、内容は学術書でなくて、小説とした。そしてテーマは青年期に対立した父の若き日々について。
彼の父は二本松藩の若き侍であり、江戸幕府側として戊辰戦争に参加していた。

その若き父が見たのは、薩長が旗を振る新政府軍の横暴で、勝てば官軍を地でいくような人道を無視したやり方であった。
絶望的な戦いに身を置くことになったが、最後、人としての義を貫かんとした藩の侍達の最後と、昭和初期の政治的暴走を相互に描いている。

今まで、勝った側の視点しかしらなかったが、世の中には勝った側がひた隠したい、不都合な事柄というのはあるのかもしれないと思った。
更にもしかすると、それが現在の問題の原型になっているかも。。
なにかを考えるときに、片方だけの視点に終始する危険性を感じた。

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Posted by ブクログ 2018年10月14日

明治維新時に、旧幕府側の藩士として多難な目にあった父と、藩閥を嫌い日本を飛び出してボストンで教職にある息子との、行きつ戻りつで近代日本のやりきれない部分を描こうとしたものか。

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Posted by ブクログ 2021年11月03日

幕末パートだけで良かったのではないか。S&Bのメンバーに歴代CIA長官が、という話が出てくるが、CIAないしその前身の設立は第二次大戦中ではないか。

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