安部龍太郎のレビュー一覧

  • 家康(六) 小牧・長久手の戦い

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    第6巻は、引き続き本能寺の変の真相について、当時の日記とか家譜を傍証しつつ、詳述される(興味のある読者はぜひ)。
    安部版家康6巻を通じての特徴は、母親於大の方との愛憎半ばの関係と、相思相愛ともいえるお市の方への恋慕という、家康の人間的側面が縦糸として、描かれていることだ。
    何人もの側室がいても、幼馴染で信長の妹だったお市は、家康にとって特別な存在で、正室に迎える約束もあり、信長も認めていたとか。ここら辺は、小説上の創作であろうが・・・
    柴田勝家の正室となっていたお市の方が、秀吉によって討ち死にされたことにより、家康は秀吉との戦いを決意することになる。
    さらに、織田家を立てようとする家康に対し、

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    2021年03月02日
  • 家康(五) 本能寺の変

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    第5巻は、家康の側から見た本能寺の変。
    著者は、当時の日記などの文献を拠り所に、本能寺の変の黒幕を近衛前久と足利義昭と記す。
    この二人は従兄弟にあたり、それぞれ朝廷と幕府の再建に尽力してきた間柄だという。
    変の原因のひとつに、信長の天皇譲位の強要があると。前久は、将軍宣下を口実に信長を京におびき出し、光秀に討たせ、義昭を都に呼び戻して幕府再興するという計画があったそうだ。
    しかし、秀吉のすばやい備中高松城からの大返しにより、計画が狂う。
    秀吉にそれが可能だったのは、黒田官兵衛らクリスタン勢力により、本能寺の変が起こることを事前に知っていたからと。
    それにしても、様々な場面で記録されている家康の

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    2021年03月02日
  • 家康(六) 小牧・長久手の戦い

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    第6巻は本能寺の変ののち信長に代わり天下を狙う秀吉を家康が敵視し、小牧長久手の戦いで秀吉に勝利するまでが描かれている。
    安倍龍太郎の家康はこれまでの伝記とは異なり、ポルトガル・スペインの情勢を念頭に世界の中でいかに日本を外国の脅威から守り、厭離穢土極楽浄土の家康の初心を貫き通すかに主眼を置いている所が特筆に値する。
    「家康」は第六巻にて一旦完結となっているが、早く続きが執筆され刊行されることを望む。

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    2021年03月02日
  • 家康(五) 本能寺の変

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    ネタバレ

    5巻は本能寺の変を最新研究を元に描いている。
    信長は正親町天皇を誠仁親王に譲位させ征夷大将軍に就き武家のトップに君臨し、併せて嗣子五の宮を皇太子につかせ太上天皇となることで宮廷をも牛耳ることを画策。これに反対する前関白近衛前久が暗躍し、信長包囲網を築かんとする将軍足利義昭、イエズス会の情報網、光秀が懇意にしていた四国の長宗我部を信長が方針転換して侵攻を始めたこと、などなどが背景にあって光秀が前久に取り込まれ、信長を京都に誘き出した上で信長を討ったという筋書きで物語が進行する。
    秀吉が事前に信長暗殺を知っていて中国大返しの準備を着々と進めると言うのは新説としては定着しているのだろうか。太閤記と比

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    2021年03月02日
  • 家康(四) 甲州征伐

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    第4巻は、長篠の戦に勝利した家康が、宿敵武田を滅ぼすまで。
    ここでは、「この世を浄土に近づけるために生きてみよ」と諭した登誉上人の教えを守ろうとする家康が描かれる。
    「この世を浄土に近づけるとは、家臣、領民が幸せに暮らせる国、戦いに怯えることなく安穏に暮らせる国を築くことだ」と考えるまでの高みに至った家康。
    彼は浄土を信じているのに対し、信長はそうした心はない。
    その信長が湯殿で家康に語る場面がある。
    土地の私有と人の自由が、戦乱を拡大させてきたと、信長。戦いのない世を作るには、かつて大和朝廷がものした制度=律令制を取り入れ、すべての土地と領民は国のものとする=公地公民制にする必要があり、これ

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    2021年02月22日
  • 家康(三) 長篠の戦い

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    この時代、各勢力間の調略などの外交戦は凄まじいばかり。
    家康に信長、武田、上杉、今川さらに足利義昭と、目まぐるしいほどの離合集散が繰り広げられる。
    徳川と今川の「両川自滅の策」を巡らした信玄の裏を掻いた家康への恨みが、三方ヶ原の戦いの原因になったらしい。
    この当時、鉛は貴重で高価だったから、戦いの後、鉄砲で討ち取られた遺体から、鉛玉を取り出したとの記述がある。
    人や馬の遺体を切り裂き、真珠でも取り出すかのように回収したとか。
    そんな時代の現実ゆえ、家康は「厭離穢土、欣求浄土」の旗を掲げていたのだろう。

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    2021年02月17日
  • 家康(二) 三方ヶ原の戦い

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    第2巻は、家康の大敗北で有名な三方ヶ原の戦いに至るまで。
    三河一国を手に入れた家康に、信玄の脅威が迫る。
    信玄との緊張関係が続く中、「わしはとても信玄どのには勝てぬ。信長どののような才もない。大恩ある今川どのを、亡ぼしたくないのじゃ」と、若き家康は思い悩む。
    ここには、後年評される「狸おやじ」などの面影は、寸分もない。
    しかし、三方ヶ原の敗戦により、「その犠牲の大きさが、家康にこれまで足りなかった何かをさずけてくれたのだった」と、第3巻に続く。

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    2021年02月13日
  • 家康(一) 信長との同盟

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    桶狭間の戦いから説き起こした家康物語。
    大概の歴史小説は会話もそれらしき言葉で綴られるが、本作は現代語で語られる会話が多く、歴史小説は初めてという読者には取り組みやすいか。一方、コアな歴史小説ファンにとっては、重みが感じられないか。
    家康も自分自身を「俺」と表現し、現代言葉が多用されている。年若い正義感の持ち主として、青年家康を象徴するひとつの手法か(途中から「わし」になるが)。
    この家康、「人はなぜ殺し合い、奪い合うのか。なぜ欲や敵意から離れられないのか」と、悩みながら闘いの日々を生きる。
    そんな家康であるが、やがて相手の人の良さを弱点と見做し、逆手にとって勝ちにつなげる冷静さを身につけてゆ

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    2021年02月13日
  • 信長燃ゆ(下)

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    対立構造が、はっきりしていて読みやすい。

    第三者の目線で書かれている信長と近衛前久。

    黒幕となる朝廷

    朝廷、公家社会にいながら信長に恋焦がれる観修寺晴子。

    非常に揺さぶられる作品であった。

    最近の研究を取り入れながらの作品で高評価できる。

    しかしながら、言い回しや文書の好みの問題でこの評価にした。

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    2021年02月12日
  • 対決! 日本史 戦国から鎖国篇

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    読みやすく面白い。対談形式も全く気にならない。織田信長中心に、イエズス会の動きや、南蛮の野望、日本が植民地にならなくてよかったと思える内容だった。

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    2021年01月31日
  • 生きて候 下

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    やはり安部龍太郎はおもしろい。筋を通して生きていかねばと考えさせられる。焦点を当てる人物が素晴らしかった。

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    2020年12月18日
  • 対決! 日本史 戦国から鎖国篇

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    学校で教える表面的な歴史ではなく、当時の歴史の本質的な部分を学ぶことができる一冊です。

    織田信長がその時代にいち早く鉄砲を取り入れ、それによって天下を取ったことは学校で習いますが、鉄砲に必要な火薬や鉛の弾をどうやって手に入れたかということは学校では教えてくれませんでした。

    信長が単純にいち早く他の大名よりも優れた武器を手に入れたから天下をとれたということではなく、それらの武器を使うために資金調達、物流、貿易といった基盤を掌握できたからこそ大事を為し得たのだと改めて考えさせられました。

    現代のビジネスに通じる視点も学ぶことができる良書でした。

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    2020年12月16日
  • 血の日本史

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    作者のデビュー作。1日1短編、ゆっくり読み進めたが、どれも面白い充実したラインナップ。

    どの話も物語の形式や語り手の目線が同じでないのが面白い(例えば「団十郎横死」や「俺たちの維新」のように目玉の人物目線で描くものもあれば、「山門炎上」のように全く無関係の第三者目線から描くもの、「鬼界ヶ島」や「比叡おろし」のように語り口調のものなど)。

    特に好きなのは「銭屋丸難破」と「孝明天皇の死」。前者は全く知らなかった金沢の商人の話であり、「守りに入ったら負けなのだ」という死や失敗を恐れぬ信念がビジネスマンの私には刺さった。後者は文学作品の質が高い。孝明天皇と対立し、過去には死んでくれればと思ったこと

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    2020年12月10日
  • 信長はなぜ葬られたのか 世界史の中の本能寺の変

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    ちょうどNHK大河ドラマ「麒麟が来る」では、これから信長が朝倉義景を討つための出陣前夜である。信長は帝から、天下を平定し平和な世を構築することを目的とした戦を認められ、戦の大義名分ができた。

    信長は朝倉を討つ戦いに、幕府の後ろ盾を求めたが、将軍足利義昭は朝倉を討つことに難色を示し、幕府の後ろ盾を得られないままの出陣というところで、前回の放映が終わっている。

    本書は、本能寺の変での信長暗殺に関する、著者の説が述べられたものである。本能寺の変まで、まだまだ幾つもの山場を控えた大河ドラマの倍楽しく観るための予習ということになる。ドラマは、安部氏の推理を採用しているのか否か、そういう楽しみ方もでき

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    2020年11月06日
  • 宗麟の海

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    久しぶりに安倍龍太郎の本を読んだが、面白かった。この人は意外な人物を取り上げて、良い話にするのが上手いと思う。昔の作品は寝るのも惜しんで読んだものも多かったので、割と好きな作家。

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    2020年11月04日
  • 家康(四) 甲州征伐

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    第4回は武田を滅ぼすあたりの話。その中で瀬名と信康を信長の指示で殺されてしまう場面が印象に残った。この場面、山岡荘八の『家康』では帰蝶(築山殿)が根っからの悪人扱いで書かれていたが、実際にはこの小説のような展開ではなかったか?
    解説にもあるが、山岡版は60年以上前の作品。それ以降の歴史的発見等を踏まえた解釈の変化が反映されていない。この小説、家康の最後まで描いて欲しい。

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    2020年10月23日
  • 家康(二) 三方ヶ原の戦い

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    信玄の圧倒的な武力、三方ヶ原での家康の意地、命からがら浜松城に逃げ帰った有名なエピソード。読んでいて血肉踊る痛快さを感じた。

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    2020年09月26日
  • 家康(三) 長篠の戦い

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    長篠の合戦の凄惨さがとても印象に残った。また信長の世界情勢の捉え方も新鮮だった。本当にここまで把握していたのだろうか?

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    2020年09月26日
  • 家康(一) 信長との同盟

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    一巻は桶狭間の戦いから織田-徳川連盟まで。
    桶狭間の戦いを今川方の武将家康という従来とは逆の目線で描いている点に新鮮味を感じた。

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    2020年09月09日
  • 天馬、翔ける 源義経 下

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    終盤では、鎌倉から都に返された静御前を、義経らが奪還して共に奥州に逃げるというストーリーに描かれている。この辺りは確かな資料が残っていないだろうから、このような解釈もよいと思う。そして義経の物語をハッピーエンドで締めくくるというスタイルはとても斬新に思えた。
    義経の妻としては静御前のほか河越重頼の娘と平時忠の娘がいたことが知られているが、時忠の娘が意外な形で登場してびっくりする。さすがにこれは筆者の創作だろうが、感情移入できる粋な演出である。一方で河越重頼の娘はほとんど話に出てこない。重頼の娘こそが義経の最後まで寄り添った妻であるとする説もあるので、そこは少し残念だ。

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    2020年07月17日