あらすじ
ときは鎌倉末期。蝦夷管領、安藤又太郎季長の三男・新九郎は父から出羽の叛乱鎮圧を命じられる。ことの首謀者で幕府方を標榜する叔父の安藤五郎季久に対し、天皇方と手を組み討幕を目論む季長。一族や領地の垣根を越えて、北朝と南朝に分かれて争う時代の波は東北にも広がり、大規模な戦の影が迫る――。幕府と朝廷に翻弄されながらも、新九郎はアイヌとの関係を築いて人びとを守り、逞しく活躍する。これまでの歴史解釈に大きな一石を投じる安部版「太平記」シリーズ第3弾。
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戦の場面が数多く出てきたのに、主人公が一度も刀を使わなかったのには、驚いた。鎌倉時代の末という戦乱の時代に、こうゆう武将もいたというのは驚きだった。
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鎌倉時代末期の津軽「安藤氏の乱」を描いた作品。中盤までは津軽・陸奥における各勢力図や経済体系が丁寧に描かれる。中盤から終盤にかけては室町期に向けた倒幕の動きが重なり、時代が動いていく。
面白いけど冗長的というのが正直な感想。どのエピソードも面白く、盛り込みたい気持ちは分かるが、枝葉のエピソードの長さのせいで本筋がぶれてしまうのを度々感じた。例えば、イタクニップとの戦い。彼を追い込むが逃げられてしまうところで、急に熊との戦いが始まる。この経験がイアンパヌとの絆や季兼の覚悟に繋がるので必要性は理解するも次の展開を早くという気持ちが先行してしまう。都のシーンもしかり。最終盤でどんどん新しい人物が出てきて戸惑いが隠せなかった。つまりは、北畠・帝は津軽を利用しようとしていた、ということを知るわけだが、それに100頁弱も必要か疑問だ。
東北史を好きな私としては、蝦夷の意地、独自の道に繋がる本作には非常に惹きつけられたし、全体としては満足している。最後に内乱関係者が一同に集まり、幕府軍に立ち向かうのはアベンジャーズ感があり、見ごたえがあった。
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「道誉と正成」、「義貞の旗」に続く安部龍太郎版太平記三部作の三作目。
津軽で起きた、鎌倉幕府滅亡につながったといわれる「安藤氏の大乱」の物語。蝦夷管領の三男、身長190cmの青年武将、安藤新九郎季兼が主人公。
歴史小説は、結末が分かっていながら読むのだが、恥ずかしながら「安藤氏の大乱」を知らずに読んだため、「どんな展開になるんだろう?」と最後まで楽しく読むことが出来た。
津軽海峡を船で航行する場面は、とてもスリリングに描かれており、難所なんだなぁと思った。
文庫本とはいえ、一冊600ページを片手に持って読むのは少々難儀だった。
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鎌倉時代末期の陸奥の安藤氏を描いた歴史小説。陸奥には和人とアイヌが共に住んでいた。アイヌ対和人というより、アイヌの中でも和人の中でも対立があり、それぞれ同盟関係になっている。
護良親王は超自然的な能力を持った人物として描かれる。これは同じ著者の『婆娑羅太平記 道誉と正成』『義貞の旗』と重なる。
主人公は政略結婚するが、家同士が対立する。『ロミオとジュリエット』のように家が対立しても愛を貫く展開にはならない。家同士が戦う中で愛を貫くならば一方が家を捨てることになる。相手にとっては御都合主義である。