歌野晶午のレビュー一覧
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「新装版 正月十一日、鏡殺」
初版の刊行は1996年。
長編が全く書けなくなった頃、代わりに文量が少ない短編を書くことに集中した結果、また創作意欲が湧き出したとのこと。短編のおかげで今があると作者は語っています。新装化にあたり、修正は施していないため、作者当時の若さを感じ取れる。
*結末の後味は悪くない(作者初期作品だからか?)のものは●としてます。後味最悪なのは、★としています。
■盗聴●
浪人生の僕は、教えてもらった盗聴技術を駆使して、「カチカチドリを飛ばす」と話す電話を盗聴する。
■逃亡者 大河内清秀●
2人のコーチ(大河内)が交わる?謎が無いように見えるストーリー。
■猫部屋 -
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ネタバレ評価
サプライズ ★★★☆☆
熱中度 ★★★☆☆
インパクト ★★★★☆
キャラクター★★★★☆
読後感 ★★☆☆☆
希少価値 ★☆☆☆☆
総合評価 ★★★☆☆
〇 サプライズ ★★★☆☆
河合来未の正体が加藤月だったというオチがサプライズ。真藤数馬の妄想の世界という設定のため,SF的な要素もある。歌野晶午の描く河合来未=加藤月や真藤数馬の内面的な描写が結構しっかりしているので,加藤月が真藤数馬をはめようとしていたというところで驚くことができる。とはいえ,そこまで大きなサプライズがある作品ではない。
〇 熱中度 ★★★★☆
真藤数馬の妄想の世界は,妄想の世界 -
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定年で教壇を降り嘱託で学校史編纂の仕事を続けている70の老人に寄生している44歳の息子。少女の人形を連れまわし一人二役で無聊を慰める。学校にも仕事にも行けないひきこもり状態を情けなくも思うも、さりとて何をすればいいのかも分からない。自分の適性を見出すことができず結局ずるずる家にひきこもる。分かっているのは集団が苦手で勤めには向いていないこと。世の多くの人は、給料がいいとか休暇が多いとか親方日の丸だとか、志とはほど遠い理由から職に就き心を空っぽにして定年まで黙々と働く。自分に何ができるのだろうかと悩み続けるひきこもりは、ある意味よっぽど人間らしいとも思う。ひきこもり状態から何かを契機にめまぐるし
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準ひきこもりの真藤数馬。彼は妹の絵夢の服を探しに日暮里を訪れ、そこで女王様と出会う。高い食事をおごらされ、貢がされる日々に快感を覚え始めた頃、競争率が高いアイドルのコンサートのチケットを取るように命令される。何とかネットオークションで獲得したものの、女王様はなぜか気落ちした様子でもういらないと言う。理由は、一緒に行くはずだった友達が殺されたからー。
とにかくギャル文字?が読みにくい…。絵夢のしゃべり口調はふつうにして欲しかった。演出だったのかもしれないけど。内容はとにかく先が見えずどうなるのか分からなかったけど、ラストは何となく予想できた。 -
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歌野晶午さんの小説を読むのは二冊目。
マラソンランナーのジェシカと、もう一人のランナー・アユミが主人公。彼女を中心に、ある事件が起こる。しかも軸となる事件が起こるのは物語の中盤。
著者は昔マラソンをやっていたことがあるようで、その経験も生かされているようだ。
1冊目に読んだ「葉桜の季節に君を想うということ」が傑作だったため(ご存知、我らがSMAP中居正広がスマスマでオススメしてくれて読んだ一冊だ)、期待値が自分の中で上がりすぎてたかな・・・。「分身」というのが大きな伏線となって物語のキーになると思いきや、大きな山場がなかったように感じてしまった。 -
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現実社会と仮想社会。
リアルな自分とインターネットなどを含む媒体の中で生きている自分。
どんどんその境目があやふやになっていき、本当の自分を見失っていく・・・。
妄想の果てに待っている世界は、たぶん自分が一番楽で生きやすい世界なのだろう。
有り得ない世界への境界線を越えてしまったとき、人は壊れていく一歩を踏み出しているのかもしれない。
結末は中盤でおおよそわかってしまうけれど、最後まで飽きずに読ませる力量はさすが。
とくに12歳の来未のキャラクターが見事すぎて圧倒された。
読者の錯覚を利用し、考え抜かれた構成によって不思議な世界に引きずり込み、そして最後には「またやられた!」が待ち受けている。 -
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ネタバレ前作から併せたシリーズとして見れば,そこそこ楽しめる。前作のラストとのズレ,今作のキャラクターとの関係性が明らかになる中盤までは楽しく読めたが,今作のキャラクターの正体が,前作のキャラクターを真似ている別人と分かった後はダレた。
最後の,意外な被害者というトリックを実行するために自分を殺すという意外性も,ここまで読みすすめてきた展開を踏まえると,ふーんという印象にとどまってしまう。下手にメッセージ性を持たせようとしないが失敗の原因だと思う。トリックはバカミス的だし,構成上,個々の人間のキャラクターも人間関係も描けないのだから,前作のキャラクターとのズレをオチに使った衝撃だけを狙ったエンター