歌野晶午のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本来文章というのは不完全な情報だ。
全てを文章で説明すると冗長だし、読みづらい。
だから世の中の文章は、一定のコンセンサスを前提として成立している。
人の脳は文章を読みながら頭の中でイメージを想起するが、イメージ化するにあたって与えられていない情報については経験上最もありそうな情報を補完する。
読み進めるうちに新しい情報が与えられると、仮置きしていた情報が書き換えられていくので、新しい情報が意外な内容だと驚く。
本書にはこうした細かい叙述トリックと大枠の叙述トリックが同在していて、主人公の姿、ヒロインの姿、妹の姿、物語の前提条件すらもコロコロ変わるのが面白い。
中盤以降のなんでもアリの展開には食傷したけど、主人公の幼さ、醜さ、哀れさ、欲望、混迷がよく表れてると思う。
読んでる間は楽しかったけど、頭がスッキリはしないので★×3 -
Posted by ブクログ
おどろおどろしい題名にも拘らず、冒頭は可愛らしい「ジュブナイル風の物語」が始まります。途中で「日本人留学生と切り裂き魔の物語」が始まり、更にその途中で、メインの「安達ヶ原の鬼密室」の物語が始まります。
これらの物語に共通点があるのですが、それが「安達ヶ原の鬼密室」の謎を解く鍵になっています。途中挿入されている「密室の行水者」がバレバレのヒントになっているのは残念ですが、非常に斬新な構成だと思いました。
メイン以外の物語は完全に独立した物語なので、一緒に収録する必然性がないのが難点ですが、一風変わった作品として一読の価値があると思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレぶっちゃけ、だから何。と言いたくなるような。
汚らしいものが汚らしく描かれたものをどうして楽しく読むことができるのだろうか。葉桜でもあったが、あれの原型的な叙述トリック――つーか、xxオチ。
ありえんだろ。って言いたくなる全体的な構成。
新しい様式に挑戦しているとか、ネットを取り入れた前衛的な作風は感心するが、今となっては古びている問題もある。
十年前に読んでいれば評価は違うのかもしれないが、ギャル語的なものを今更読んでみても、という気しかしない。
ただ、歌野らしい文章の上手さとか美味さはあるし、女王様の正体はそうくるか。と驚きはあるけれど、やっぱり、「アレ」は微妙だよな。としか言いようがない。
つまり、全ては「アレ」で終わってしまった。そんな感じの作品である。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ3-
【完全ネタバレ感想】
本編のほとんどは信濃譲二?の一人称で語られるのだが、『長い〜』や『白い〜』の既読者からしてみれば(先に『放浪探偵〜』も読んでいればなおのこと)、こいつは違うなという印象を早々に抱くのではないだろうか。書かれて然るべきことが書かれていないと読み手に気付かれると、作者の作為は簡単に見抜かれてしまう。途中、容易に考えつきそうな自作自演説に一切触れず、物理トリック推理合戦に突入するのも腑に落ちない。そもそも残り頁数からこれが茶番だと察せられて空しいし、何しろ事件の真相は、その真っ先に想像のつく最もありそうな結末に落ち着くのだから、拍子抜けもいいところだ。
ミステリの創作は難しいな、と思い至っても不思議ではない。結局この路線に閉塞感を覚え、名探偵を捨て、新たな地平を切り開こうとした作者の決断は、その後の作品の受け入れられ方を見るに正解だったのかもしれない。しかし信濃譲二はどこか憎めないキャラクターだけに、少し残念でもある。本作でも、終盤に本物の彼が登場し語り出すと、あーこれこれ、と思わずニヤリとしてしまう。シリーズ・キャラクターがもたらす安心感、名探偵への信頼感、それによりもたらされる説得力は作品にとって大きな力となる。もう少し彼の活躍を読んでみたかった。常にタンクトップでも笑って済ませて。