歌野晶午のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
本来文章というのは不完全な情報だ。
全てを文章で説明すると冗長だし、読みづらい。
だから世の中の文章は、一定のコンセンサスを前提として成立している。
人の脳は文章を読みながら頭の中でイメージを想起するが、イメージ化するにあたって与えられていない情報については経験上最もありそうな情報を補完する。
読み進めるうちに新しい情報が与えられると、仮置きしていた情報が書き換えられていくので、新しい情報が意外な内容だと驚く。
本書にはこうした細かい叙述トリックと大枠の叙述トリックが同在していて、主人公の姿、ヒロインの姿、妹の姿、物語の前提条件すらもコロコロ変わるのが面白い。
中盤以降のなんでもアリの -
Posted by ブクログ
おどろおどろしい題名にも拘らず、冒頭は可愛らしい「ジュブナイル風の物語」が始まります。途中で「日本人留学生と切り裂き魔の物語」が始まり、更にその途中で、メインの「安達ヶ原の鬼密室」の物語が始まります。
これらの物語に共通点があるのですが、それが「安達ヶ原の鬼密室」の謎を解く鍵になっています。途中挿入されている「密室の行水者」がバレバレのヒントになっているのは残念ですが、非常に斬新な構成だと思いました。
メイン以外の物語は完全に独立した物語なので、一緒に収録する必然性がないのが難点ですが、一風変わった作品として一読の価値があると思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレぶっちゃけ、だから何。と言いたくなるような。
汚らしいものが汚らしく描かれたものをどうして楽しく読むことができるのだろうか。葉桜でもあったが、あれの原型的な叙述トリック――つーか、xxオチ。
ありえんだろ。って言いたくなる全体的な構成。
新しい様式に挑戦しているとか、ネットを取り入れた前衛的な作風は感心するが、今となっては古びている問題もある。
十年前に読んでいれば評価は違うのかもしれないが、ギャル語的なものを今更読んでみても、という気しかしない。
ただ、歌野らしい文章の上手さとか美味さはあるし、女王様の正体はそうくるか。と驚きはあるけれど、やっぱり、「アレ」は微妙だよな。としか言いようが