歌野晶午のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
そして名探偵は生まれた
生存者、一名
館という名の楽園で
夏の雪、冬のサンバ
中編3つ、短編1つ。
①は愚痴の多い名探偵が事件解決のお礼に招かれた山荘でオーナー兼社長が殺された。山荘内、密室。もちろんそれだけではない。
②は宗教教団によるテロを起こした犯人達が海外逃亡準備が整うまで孤島に隠れることになったが…。教団に裏切られた犯人達の心情、そして一人一人と人数が減っていく。犯人というより生き残るのは誰だ!
もちろんそれだけではない。
③推理小説好きが頑張って、夢である館を建てた。大学時代の仲間を集めて推理ごっこをすることになったが…。館にまつわる甲冑の話がトリックに絡んで来るため、これを解かな -
Posted by ブクログ
歌野さんらしい、読み応えのある作品でした。
クライマックスに向かうにつれて、本当にわくわくする。
蓋を開けてみれば何も謎はない、素直な事件なわけですが、またもや綺麗に騙されました。
この見事さが本当にはまります。
ただ、エピローグ(?)部分はちょっと説明が冗長に感じられてしまいました。
グランドキャニオンのくだりもそうですが、必ずしも一から十まで登場人物の口から語らせなくても良かったのでは?という気もします。
グランドキャニオンの別れ際の謎くらいは、調べればわかることですし、そのままにしておいても、作品に余韻も出るし、ある日突然気づいてにやり、なんてこともありそうで私好みかな…なんて。
-
Posted by ブクログ
本来文章というのは不完全な情報だ。
全てを文章で説明すると冗長だし、読みづらい。
だから世の中の文章は、一定のコンセンサスを前提として成立している。
人の脳は文章を読みながら頭の中でイメージを想起するが、イメージ化するにあたって与えられていない情報については経験上最もありそうな情報を補完する。
読み進めるうちに新しい情報が与えられると、仮置きしていた情報が書き換えられていくので、新しい情報が意外な内容だと驚く。
本書にはこうした細かい叙述トリックと大枠の叙述トリックが同在していて、主人公の姿、ヒロインの姿、妹の姿、物語の前提条件すらもコロコロ変わるのが面白い。
中盤以降のなんでもアリの