歌野晶午のレビュー一覧
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ネタバレ連続する誘拐殺人事件。富樫修は,息子「富樫雄介」の部屋から,息子が誘拐殺人事件に関与していたと思われる被害者の名刺,銃などを見つける。
「世界の終わり,あるいは始まり」は,誘拐殺人事件を,犯人の視点,被害者の視点,刑事の視点のいずれでもなく,犯人と思われる人物の父親の視点から描かれている。
物語は,中盤から富樫修の妄想が繰り返される。
最初の妄想は,富樫雄介の犯罪が明らかになり,補導されるというストーリー。二つ目の妄想は,一家心中を図るが,死にきれないというストーリー。三つ目は,修が雄介に全てを告白するように仕向け,雄介が告白するというストーリー。四つ目は,連続誘拐殺人事件の一つと偽装する形で修が雄介を殺害し,浮浪者を犯人に偽装するというストーリー。
どの妄想も,最後は悲惨な結末で終わる。物語のラストシーンは,パンドラの箱の神話の話…箱には「希望」が残ったという話をしながら,修と雄介がキャッチボールをするシーンで終わる。
ミステリ的なカタルシスは存在せず,なんとも言えない終わり方。物語を盛り上げるだけ盛り上げ,本来であればいずれかを真相とすべきところを,惜しげもなく描き切り,最後のオチを用意しないという手法は,竹本健二の作品を思わせる。この終わり方は賛否両論だろう。個人的には嫌いではないが…。★3かな。 -
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ネタバレ雪の山荘,孤島などの密室小説を集めた短編集。歌野晶午の作品は,本格ミステリらしい本格ミステリが多く,好きな作家の一人である。
「そして名探偵は生まれた」では,関わった事件について書いた小説によって損害賠償を請求されたことがあり,関わった事件について語ることすらしなくなった卑屈な探偵役が登場する。なんともひねくれた作品。真相を解明するのではなく,犯人をゆすろうとし,ワトソン役に殺されるという真相。ワトソン役が,名探偵になろうと誓うラストシーンが「そして名探偵は生まれた」というタイトルと相まって印象に残る。
「生存者,一名」は爆発テロを行った新興宗教団体のメンバーが無人島で希少な食料をめぐって殺し合いを行うという作品。最後に生き残った1名は誰かという,生き残る人物を当てる,一風変わったミステリで,生き残ったのは登場人物のうち,一人の子どもというオチ。新本格系ではちょくちょくあるようなトリックだが,妙に印象に残る作品である。
「館という名の楽園で」は,息子に先立たれた夫婦がトリックを使うために館を建てて,推理ゲームを開催するという作品。こちらも,寂しい雰囲気の作品で,妙に心に残る。
「夏の雪,冬のサンバ」は,キノシタという人物が,日系ペルー人の「アルベルト・キノシタ」であるということを隠した叙述トリックの作品。これは比較的軽いトリックの作品。
いずれも歌野晶午らしい作品揃いだが,できはそこそこという感じ。評価は★3かな。 -
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そして名探偵は生まれた
生存者、一名
館という名の楽園で
夏の雪、冬のサンバ
中編3つ、短編1つ。
①は愚痴の多い名探偵が事件解決のお礼に招かれた山荘でオーナー兼社長が殺された。山荘内、密室。もちろんそれだけではない。
②は宗教教団によるテロを起こした犯人達が海外逃亡準備が整うまで孤島に隠れることになったが…。教団に裏切られた犯人達の心情、そして一人一人と人数が減っていく。犯人というより生き残るのは誰だ!
もちろんそれだけではない。
③推理小説好きが頑張って、夢である館を建てた。大学時代の仲間を集めて推理ごっこをすることになったが…。館にまつわる甲冑の話がトリックに絡んで来るため、これを解かないと。
もちろんそれだけではない。
④アパート内で殺人が発生する。住人は1名の日本人以外は全て外国人、さらに外では雪が降っていた。短編ではあるが、話もトリックも申し分ない。
兎に角、作者はフェアであるため、読む側としては充分に条件が揃っているのに解けない…、しかも話しが面白く、次が気になり読んでしまう。何と抜群な作家だろうか。 -
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歌野さんらしい、読み応えのある作品でした。
クライマックスに向かうにつれて、本当にわくわくする。
蓋を開けてみれば何も謎はない、素直な事件なわけですが、またもや綺麗に騙されました。
この見事さが本当にはまります。
ただ、エピローグ(?)部分はちょっと説明が冗長に感じられてしまいました。
グランドキャニオンのくだりもそうですが、必ずしも一から十まで登場人物の口から語らせなくても良かったのでは?という気もします。
グランドキャニオンの別れ際の謎くらいは、調べればわかることですし、そのままにしておいても、作品に余韻も出るし、ある日突然気づいてにやり、なんてこともありそうで私好みかな…なんて。
とはいえ、面白かったです。