歌野晶午のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「家」をテーマにした五編のミステリー。どれも後味は悪いがミステリーとしては楽しめた。
「人形師の家で」
冒頭、人形師と彼が造った女性の人形との夢とも幻想とも現実とも分からないシーンがある。その後、主人公の青年がかつて住んでいた町に戻り自身に関する秘密の確認をするのだが、それが冒頭のシーンにこうした形で繋がるとは。一番罪深いのは…。
「家守」
密室トリックは散々読んできたが、これはちょっと斬新。力業という感じもするが面白い。しかしタイトルからしてもメインテーマはそこではなく、被害者がなぜ頑なにその家を離れようとしなかったかという物語。何とも暗澹たる思いにさせられる。
「埴生の宿」
記憶が混乱しているらしい老人視点と、その老人の若き頃の息子になりすますバイトを引き受ける青年視点とで展開する話。この作品のみ悪意は存在しない。親が子を守りたいという本能と、生存本能と、ちょっとした保身とが悪いように重なりあってしまった。この屋敷、実際に見てみたい気もする。
「鄙」
『あまりに辺鄙な場所』を旅した兄弟が遭遇した、同時期に帰省してきた男の首吊り自殺に見せかけた殺人事件。兄が解決したものの、数年後に実は違う真実があったのではと気付く。
横溝正史先生の『獄門島』を思い出した。トリック以上にその動機、心理状態、このコミュニティならではの状況に印象が残る。
「転居先不明」
九州から東京の一軒家に越してきた夫婦。遅れて移った妻は間もなく誰かの視線を感じると不安を訴える。やがて夫はその家で過去に凄惨な事件が起きていたことを突き止めるのだが、夫は転居することを面倒臭がり妻はますます不安と不満を募らせる。
読んでいくうちにそういうことかな?という気はしたが、やはり気分は悪い。結果ブラックジョークなオチになっているが、こんなことしなくても…という気持ちでいっぱいになる。
直接的な意味での「家」から広義的な意味での「家」まで、人が「家」を守るための様々な闘いを見せられた。その印象や感想も様々。滑稽なものから切なかったりゾッとするものまで。しかし本人たちは至って真剣なのだから笑ってはいけない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ以前読んだ「誘拐リフレイン」で高校生だったひとみが小学五年生になってて、前作の過去話なのかと思ったのですが、本作の方が先に出ていたんですね。「誘拐リフレイン」と同じノリで、ひとみがいろんなことに頭を突っ込んでいくような話を想定していたら、ほとんど歳三の活躍を描いた内容だったので、ちょっと期待と違った感があります。
前作の印象から「舞田ひとみシリーズ」は、ひとみの無茶な(けれど事件の核心に繋がる)行動が特徴のシリーズだと思っていました。なのでそれがない本作には、最後の最後で何か驚きの仕掛けがあるのかも、という期待をどうしても抱いてしまいます(「葉桜の季節に~」の印象も未だ残ってるので……)。その結果、ここでも肩透かしを喰らった気分に。
「誘拐リフレイン」よりこちらの方が先に出ていたら、そのような印象を抱かなかったのでは?と思うので、何で本作を後から出したのか、その意図の方が気になってしまった読後でした。