山田詠美のレビュー一覧
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『痴人の愛』のオマージュ。
素質のある異性を育て上げて自分の理想に仕立て上げる試みは、『源氏物語』から何ら変わっちゃいない人類の憧れなのかもしれん。
何やかんやで優位に立つ百合は圧倒的だ。後天的に人を翻弄するしぐさを身につけたという意味では主人公と一緒だが、子供ながらに身につけるのと、復讐を期に意識的に身につけようとし始めた付け焼き刃な所作とだと、どうしても主人公は育ちの良さが出てしまう。それでも、家庭に入った痴女とキャリアウーマンの遊び人とだと、前者の方が社会的には良しとされるんだよな。
この本を通して過去の自分の行動思考に納得を与えている。罪深い。 -
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2010年に大阪で起きたネグレクトによる二児餓死事件をもとにした小説。
母親、祖母、子供たちの視点から繰り返し語られるので、それぞれの事情やその時の気持ちがすれ違う様子がわかり、苦しく、読むのが辛かったです。
今もどこかで助けを求められない母親や虐待に苦しんでいても声をあげられない子供達がいるかと思うと本当に辛いです。
母親一人が処罰され責められるけれど、一人の問題ではないということを理解し、助けを求めたり助けやすい社会の仕組みがもっとできることを願うばかりです。
家庭のことだから介入が難しいことも想像できるので、そのためにはどうすればいいのだろう。
この事件から12年経つけれど、同様のネ -
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山田詠美さんの作品はたしかもう10年以上前に読んだことがあるような気がする。
内容もほとんど覚えていないけれどこの独特な文章はぼんやりと記憶にある。新しいのにちょっと古い小説を読んでいるようだった。
不倫関係の2人とそれを眺める妻、3者の視点からユーモアを交えつつも淡々と語られる。話は展開して行くが、よくあるストーリーならポイントとなる出来事も淡々と語られて、全体としてはずっと穏やかさを保ったままとくに盛り上がることもなく終わりを向かえる。
3人はそれぞれとても人間らしかった。
それぞれ自分の信念に基づいて生きていた。自分らしく生きていた。でも気づけばキャラクターを背負っていた。すべて含め -
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ネタバレ料理研究家の妻とイラストレーターの夫、夫の不倫相手は妻の有能な助手。設定だけ見るとドロドロの三角関係を想像してしまうが、1人の男を取り合う妻と愛人の話では決してない。
桃子は、不倫相手の妻である喜久江を敬愛してやまないし、喜久江も桃子の有能さを認めている。夫とのことを知って心は揺れるが信頼関係は揺るがない。桃子も罪悪感に苛まれる様子はない。
不倫ものでありながら終始軽妙洒脱だし、3人が交互に語る構成は、山田詠美が声色を変えながらしゃべってるように感じるくらい、作者が全面に出ていて、そこも楽しかった。
そして最終的には二人に去られた夫、沢口が実は自分は弱虫なんだと嘆く情けなさ。逆に喜久江に -
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大きな声では聞こえすぎて、小さな声では聞こえない。
誰かに共有したいけれど、誰にでも共有したいわけじゃない。
世の中の普通と、自分の中の普通。
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読み進めていくうちに「これは山田詠美のエッセイなのでは」と錯覚させる(あとがきが余計にそうさせる)。
あとがきにもある通り、ずっとこの調子ではなく箸休めになるような物語も挟まれているので、重苦しい雰囲気のまま読み進める…ということはなかった。途中途中自身が触れたことのないカルチャー(一定昔の音楽や映画)については調べながら読み進めた。
ずっと手元には残さない本かもしれないけれど、山田詠美の本を手に取るたびこの本のことは思い出すだろう。 -
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高校生の時に初めて読み、挫折。
当時は女にモテることをひけらかし、先生たちに歯向かう生意気な主人公をバカにしていた。
同世代だが、先生の側に立って読んでいたように思う。
しかし三十路を超えて再読すると、あら不思議。
主人公の言い分がとても分かるのだ。
世の中のおかしな部分を容赦なく糾弾し、なぜ?のマシンガンを撃ちまくる主人公。時に過激な言動でも、いまは鼻白むことなくむしろ狼狽える先生たちの姿を見るのが痛快だった。
おまけに勉強ができないと言っているのに、最後のタイトルは 勉強ができる、って・・・。
結局できるんかい!と言いたくなった。
異性にモテるということは秀でている箇所があることを示唆し -
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なぜ今更山田詠美?と思ったけれど、好きな芸能人がお勧めしていたので読んでみました。
ダブル不倫のお話なのですが、夫婦が壊れていく様、ではなく、それによって夫婦の絆が浮かび上がってくるという・・・ある意味幸せな恋愛小説でした。
こんなに変わった価値観を共有できる彼らは特異かもしれないけれど、価値観が同じであれば究極にはここまでOKなのね、と面白く読みました。
ただ、30代女性の、「いい女っぷり」が押しつけがましくて、ちょっと辟易しました。
古い本を読んでいるので織り込み済みなのだけど、この時代ってこういう女性がトレンディドラマでも主人公だったな、と苦笑気味に読み終えました。。 -
Posted by ブクログ
のっけから仕舞いまで詠美節が炸裂しまくりで、読んでいて大変楽しい小説である。この前に、私が手にした彼女の作品はネグレクトを扱った「つみびと」だったが、それとこれとでは雰囲気が全く異なり、改めてその振り幅の大きさには感心させられるばかりだ。私にとって、軽妙洒脱な文章を書ける人は羨望の的でしかないが、なかでも山田詠美の、ヘビー過ぎず、かと言ってライト過ぎもしない、程良いバランスで成り立つ筆致への憧れは強い
高い人気を誇る料理研究家・喜久江、彼女の夫でイラストレーターの太郎、喜久江の助手且つ太郎の愛人・桃子。章ごとに、この三者が入れ替わり、それぞれの視点を一人称で語っていく構成が良い。フィクション -
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短編集。表題作はじめ性にまつわる問題や昨今のポリコレ事情との相性の悪さを語る短編があるかと思いきや、想像力を膨らませてくれるエロ短編もある。
私はエロの方が好きで、面白おかしく読ませてもらった。
『陰茎天国』は女性たちだけの村にびっしりと生えている陰茎の姿を想像すると、それだけで楽しい。しかも女性たちは自分のお気に入りの陰茎を見つけるため、いろいろな陰茎を試し、これと決めたら陰茎を自分好みにアレンジしたりしているのだ。映像化したらとんでもないだろうな。笑
男が村を訪ねた時点で結末は見えてくるが、一捻りあって面白かった。
『F××K PC』はもう分かったよというぐらいポリコレ全盛期である社会