山田詠美のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
大きな声では聞こえすぎて、小さな声では聞こえない。
誰かに共有したいけれど、誰にでも共有したいわけじゃない。
世の中の普通と、自分の中の普通。
***
読み進めていくうちに「これは山田詠美のエッセイなのでは」と錯覚させる(あとがきが余計にそうさせる)。
あとがきにもある通り、ずっとこの調子ではなく箸休めになるような物語も挟まれているので、重苦しい雰囲気のまま読み進める…ということはなかった。途中途中自身が触れたことのないカルチャー(一定昔の音楽や映画)については調べながら読み進めた。
ずっと手元には残さない本かもしれないけれど、山田詠美の本を手に取るたびこの本のことは思い出すだろう。 -
Posted by ブクログ
高校生の時に初めて読み、挫折。
当時は女にモテることをひけらかし、先生たちに歯向かう生意気な主人公をバカにしていた。
同世代だが、先生の側に立って読んでいたように思う。
しかし三十路を超えて再読すると、あら不思議。
主人公の言い分がとても分かるのだ。
世の中のおかしな部分を容赦なく糾弾し、なぜ?のマシンガンを撃ちまくる主人公。時に過激な言動でも、いまは鼻白むことなくむしろ狼狽える先生たちの姿を見るのが痛快だった。
おまけに勉強ができないと言っているのに、最後のタイトルは 勉強ができる、って・・・。
結局できるんかい!と言いたくなった。
異性にモテるということは秀でている箇所があることを示唆し -
Posted by ブクログ
なぜ今更山田詠美?と思ったけれど、好きな芸能人がお勧めしていたので読んでみました。
ダブル不倫のお話なのですが、夫婦が壊れていく様、ではなく、それによって夫婦の絆が浮かび上がってくるという・・・ある意味幸せな恋愛小説でした。
こんなに変わった価値観を共有できる彼らは特異かもしれないけれど、価値観が同じであれば究極にはここまでOKなのね、と面白く読みました。
ただ、30代女性の、「いい女っぷり」が押しつけがましくて、ちょっと辟易しました。
古い本を読んでいるので織り込み済みなのだけど、この時代ってこういう女性がトレンディドラマでも主人公だったな、と苦笑気味に読み終えました。。 -
Posted by ブクログ
のっけから仕舞いまで詠美節が炸裂しまくりで、読んでいて大変楽しい小説である。この前に、私が手にした彼女の作品はネグレクトを扱った「つみびと」だったが、それとこれとでは雰囲気が全く異なり、改めてその振り幅の大きさには感心させられるばかりだ。私にとって、軽妙洒脱な文章を書ける人は羨望の的でしかないが、なかでも山田詠美の、ヘビー過ぎず、かと言ってライト過ぎもしない、程良いバランスで成り立つ筆致への憧れは強い
高い人気を誇る料理研究家・喜久江、彼女の夫でイラストレーターの太郎、喜久江の助手且つ太郎の愛人・桃子。章ごとに、この三者が入れ替わり、それぞれの視点を一人称で語っていく構成が良い。フィクション -
-
-
Posted by ブクログ
短編集。表題作はじめ性にまつわる問題や昨今のポリコレ事情との相性の悪さを語る短編があるかと思いきや、想像力を膨らませてくれるエロ短編もある。
私はエロの方が好きで、面白おかしく読ませてもらった。
『陰茎天国』は女性たちだけの村にびっしりと生えている陰茎の姿を想像すると、それだけで楽しい。しかも女性たちは自分のお気に入りの陰茎を見つけるため、いろいろな陰茎を試し、これと決めたら陰茎を自分好みにアレンジしたりしているのだ。映像化したらとんでもないだろうな。笑
男が村を訪ねた時点で結末は見えてくるが、一捻りあって面白かった。
『F××K PC』はもう分かったよというぐらいポリコレ全盛期である社会 -
Posted by ブクログ
まずタイトルに惹かれた。『血も涙もある』どういうことだろう?加えて意味深なカバー。よく見ると不気味なのだがそれよりもあらすじが気になり手に取った。そして、主人公が同世代の35歳の女性。これは読みたい!
山田詠美さんってどんな作風だっけ?というほど私にとってご無沙汰の作家さん。
登場人物は、料理研究家の沢口喜久江、夫の太郎、その不倫相手で沢口の助手を務める和泉桃子。章ごとに語り手が変わる。喜久江を尊敬し、太郎と不倫関係にあることとそれとは別次元の話であると考える桃子、夫の不倫を知りながら受け入れる喜久江、不倫をしながら妻を愛していると語る太郎。思考や言葉遣いが独特だが、ある種現代風で、読みやすい -
Posted by ブクログ
ネタバレ大阪で起こった幼児二人を部屋に置き去りにしたまま若い母親が放置して餓死した事件ーー
ここから構想を得たフィクション作品、だが重すぎる。
事件を起こしたのは娘 蓮音。
厳格で真面目な父、でも家庭より自身の立場や理想を優先する。
母の琴音は小さい子どもを置いて逃げた。
父は仕事はすれども家のことはなにもしない。親の代わりに、小学生のころから幼い子二人の世話をした。
歪みはじめる蓮音。自分を自分で大切にできない。
母親 琴音。彼女もまた愛のない家庭だった。
つねに暴力をふるう父親。それを耐える母、怒る兄、怯える自分…
やっと父親から解放されて現れた継父から性的虐待…
守ってくれるはずの母親も壊