角田光代のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
旅がお好きな角田さんならではのストーリー展開かな、と思いました。
恋愛に、男に夢中になって、そしてふとしたきっかけで喧嘩して。
そこでリセットして旅に出る。
リセットはどうやるかというと、住み替えだったり、旅だったりするのです。
世間一般にはなかなかリセットに踏み切ることはできないけれど、いずちゃんは家財すべてを捨ててリュックひとつで踏み出します。
今住んでいるところをすべて捨てるので、戻るところはとりあえずなくなっています。そこまでリセットして大丈夫か? と不安になるくらいのリセットなのですけれどある意味潔い。
こうやってときどきリセットする人は世の中に結構存在しているのかもしれない。
でも、リセットにはお金と行動力が必要。できるひとは限られます。
断捨離もそこまでとはいわないけれど、生きていくために必要なものって、そんなにないし、あの世にもっていけるもの、そんなモノなんてなにもないわけだから、そう捨てちゃっていいんだよな~、と別な視点で読んでいました。 -
Posted by ブクログ
ハッピーエンドから始まる11組の恋人たちの、平凡な日常。そう、日常というものはこういうことなんだよな、と思わされるビターな味わい。角田光代さんは、なんてことのない日常の、けれど決定的な歪みを見逃さずに書くのがほんっっっとうに上手い。
解説で芦沢央さんも引用されているのだけど、ドレッシングのたとえが絶妙に当を得ている。
〈永福町ではじめた私たちの暮らしは、ドレッシングみたいなものだったと思うことがある。サラダ油に酢を入れて、ぐるぐるかき混ぜる。なかなか混じり合わない両者は、数秒でちゃんと融合しどろりと白濁したドレッシングになる。三十四、五年で培ってきたそれぞれの生活は、油と酢のようにくっきりと独立した何かで、両者を混ぜ合わせるにはそれ相応の気負いと行為が要る。専用泡立て器でぐるぐるかき混ぜる行為は、しかしたのしかった。譲歩も変更もたのしかった。
けれど白濁したドレッシングを放置すればまたすぐに分離してしまう。譲歩も変更も、あたらしい習慣も入りこむ余地のない何かを、私たちはそれぞれ相手のなかに見つけ出してしまう〉
もうこれで全部を言い表し切ったかと思うぐらい秀逸なたとえ。
菓子中毒、買い物依存症、風呂嫌い、万引き常習犯、迷信好き……。出会ったばかりの時には唯一無二の個性や長所にみえたはずのそれらが、どうしてか、やがて許せなくなっていく。
私は現夫とは、勢いで同棲して勢いで結婚したので、こんなことを考える時間も余裕もなかった。夫はずっと実家暮らしだったし、私も上京してはじめての一人暮らしも板についてないうちだったし。
互いの生活のペースやこだわりなんていう、ややこしいものは私たちの間にはまだなくって、ただ好きという気持ちだけを持ち寄って、まぁただの若気の至りとはいえ今にして思えばそれがこうして10年も一緒に暮らしてられる理由なのかなとは思う。
「お酒をたくさん飲めるところが格好いい!」「人に気前よくご馳走するところが素敵!」なんて思ってた長所は、もちろん今じゃ一番許せない点ではありますが、でもともかく。
愛は消えても二人でつくってきた生活は残る。きっとこれからもだらだらと続いていく。
離婚したとしても、じゃあ新しい誰かとまたドレッシングをつくりましょうなんて到底無理だもん、これは絶対。 -
購入済み
夏の屋外の暑さをジリジリと感じるようなお話でした。父親にも娘にも感情移入できずじまいだったので、私にとっては記憶に残る一冊にはならなそうですが、夏の冒険を楽しむには良い一冊かなと思いました。
-
Posted by ブクログ
恋愛至上主義になると、こんなふうに、自分でダメだとか思わないまま突っ走ってしまうんだろうか。
多くの人が味わいたくない失敗、相手のことばかり見てしまってアホになる感覚。
自分のこと大事にしなよって言われても、恋愛が突き動かしてくる衝動ってすごいものがあるし、なかなかそうはできないよね。
苦い思いばっかりして、自分が悪かったんだって思って、自分のこと嫌いになって、ますますいい恋愛なんか程遠くなっていく。
苦い恋愛なんて、誰だってしたくはない。
頭の中が男のことばっかりになっているそんな自分にも、OKが出せるようになる小説でなんじゃないかと思う。
いつも満たされなくて、誰かを好きになってしまうと後先考えない、ダメ女な泉が主人公。
高校時代から始まり、1年から2年くらい次々と時代が進んでいく小説。
いっときはラブラブだった男子ともひどい別れ方をしていたり、恋人との関係をやり直したくて旅に出たり、愛した人がストーカーになっちゃったり。
恋に溺れてここまで行動力を示せるのがすごい。
昔読んだ「ハッピーマニア」という漫画ばりにいきすぎた女性目線。
自分自身も好きな人ができてアホみたいになっちゃったことがあったので、恋愛至上主義な人にちょっと軽蔑する気持ちがある方なんだけど、
恋愛至上主義な人たちも、男の人が自分の価値観を作ってしまっていることに悩んだり、逃れようとしたり、自分に言い訳してみたり、そんな堂々回りを繰り返すことがあるんだろうと思う。
そのときそのときでダメな男を好きになったり、恋愛に失敗したり、何度同じことを繰り返してしまうんだろうって、怖くなる気持ちはわかる。
ダメならダメで突っ走ってみればいい。
こんな恋愛したいと思わせる小説も素敵だが、世の中には上手くいかない恋愛の形の方が多いように思う。
恋に溺れたら、その方がドラマチック。
恋に溺れても、少しずつ成長できる。 -
Posted by ブクログ
最初は、まるで金平糖の詰め合わせのような短編集だと思いました。少し甘くて、トゲトゲしていて、美しい物語たち。
途中から短編の雰囲気がすこし変わったな、と思ったら、最初の6篇はティファニーとのタイアップ、その他は山田うどんであったり、プラチナギルド・インターナショナルであったり、タイアップ先が異なるからなんですね。
恋って、愛って、結婚って、なんだっけ・・・
いろんな人に出会いながら模索して、時には幼かった過去を振り返りながら私たちは進んでいくけれど、そんな中で忘れられない鍵となる物や場所が存在する。
それらを思い出させてくれるような、物語たちです。
昔は私も婚約指輪や結婚指輪なんて…と思っていたりもしましたが、わくわくしながら選んだあの時間は、私にとって時に立ち返れる大事なものです。
どのお話も素敵ですが、表題作がいちばん好き。