古沢嘉通のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
丈ちゃんオススメの本
600pを超える15の短編集。それぞれの時代においてサイボーグ化したエージェントが、それぞれに活躍するファンタジーである。
複数登場するエージェントに感情移入できるかどうかってところが楽しむコツなんだが、外国作品だからか、そこが多少難しい。人間味を感じさせる好々爺ジョゼフも良いが、人間になりたいサイボーグのヒロイン・メンドーサや成長を続ける少年アレックなんかが、私の好みかな。
序文はエージェントの紹介っぽい「ゼウスの猟犬たち」、メンドーサがブドウの樹の下の過去の事件を発見してしまう「貴腐」、役割がイマイチわかんない「スマート・アレック」、出来損ないエージェントの存在を示す「カルーギン博士の逮捕に関連する事実について」、種の起源を描く「オールド・フラット・トップ」、知性体となったシェイクスピアとスマート・アレックの「ここに葬られし亡骸」、作家スティーヴンスンに原稿を依頼するジョゼフのドタバタ喜劇「リテラリー・エージェント」とここまでで半分。
永遠の夢アトランティスからUFOにつながるメンドーサの「レムリアは甦る!」、舞台が船だからなのかイマイチ乗れなかった「グラッドストーン号の遭難」、シリーズ中で私がけっこう好きなエージェントのアレックの萌芽を『地球へ』風の選別試験で描く「モンスター・ストーリー」、アウストラロピテクスをして、サイボーグたるエージェントを語る「ハヌマーン」、エージェントに残るジョゼフの暖かいハートを描く「スタジオの便利屋、マリブの海に消ゆ」、アレックの思春期を描く「将来有望な少年」、若者ルイスと美女キウが古文書をめぐり活躍する、本作唯一と言える人類との接近遭遇物語「黄衣の女王」、そしてラストはエージェント同士の諍い「ハーランズ・ランディングのホテルにて」。
楽しめる物語だ。この世界でのエージェントたちの活躍をもっと読みたいな。作者は死に、妹が引き継ぐらしい。それもまたいいじゃないか。 -
Posted by ブクログ
ボッシュはもちろん、テリー・マッケイレブやポエットまで、ファミリー総出演。ボッシュ・シリーズは順序通りに読む必要はないと思うけど、本作品だけは別。作中でがっつり『サ・ポエット』の犯人についてネタばらししてあるので、必ずそちらを先に読みましょう。
私立探偵になっているボッシュだが、中身は警察小説のまんま。探偵というカラーが目立っているとも思えないし、刑事時代と違うのはバッジの有り無しだけという気もする。まあ、前職時代から一匹狼スタイルで捜査をしてきたボッシュなので、それが私立探偵になっても特に違和感は感じないが。
高度に知的な殺人犯──よく目にするキャラだが、このタイプの取扱いって実は難儀だったりするのでは? 無関係に思えた物証を足掛かりに隠れ家を特定。捜査員が踏み込んだ途端にトラップ発動で大爆発。犯人の方が一枚上手だったという皮肉なオチだが、これが行き過ぎると、緊迫の展開を飛び越えてただのSFになっちまう。先の先の先を読むなんてこと、タイムマシンにでも乗ってない限り無理っしょ、とかいう具合に。そういうことをチラチラと思いながら、本作品を楽しんでみた。
クライマックスにアクションをもってくる“お約束”についてはさすがに食傷気味。ここがアメリカと北欧の違いだったりするのかしら。でも今回はいろいろとケリがついていくので、今までの既読シリーズを思い返しながらの終盤になった。 -
Posted by ブクログ
ハリー・ボッシュとテリー・マッケイレブ、さらにはジャック・マカヴォイの三人が共演するというファンには贅沢な作品。
これまでのシリーズにはなかった法廷シーンなどで緊張感を盛り上げてあり、さくさくと面白く読めたのだが、全体的にばたばたしてまとまりに欠ける。ボッリュとマッケイレブのふたりを主役にし、全く別の事件を展開させるのはさすがに混乱する。ヒエロニムスの絵画をモチーフにしてるのも、その後の展開に都合よく利用されたようで効果的とは思えない。
とまあ、細かい点が目立ってしまうのも、このシリーズが常にハイレベルをキープしてるからこそなのだが。一番の収穫はヒエロニムスの作品に興味を持ったことかな。 -
Posted by ブクログ
ボッシュ・シリーズ第13作。上下巻でもなくページ数も多くないのでサッと読めてしまう。
「ニューヨーク・タイムズ・マガジン」の日曜版にて、連載回数が決められていた作品だということを了承の上、読んでいただきたい。確かに、通常のシリーズ作と比べると物足りなさはあるが、限られた枠の中でもボッシュらしさは存分に体感できる。
作中では12時間足らずの出来事だが、中身がギュッと詰まっているのでより多くの時間の拡がりを感じ取れる。レイチェルを中心とした各キャラとの微妙な距離感もいい。終盤の目まぐるしい展開とも併せて、次回作を楽しみにさせる手腕に隙はない。動機やラストへの運びに強引さはあるものの、映像が脳裏に浮かぶクライマックスは素直にかっこいいと思った。今後も順調に刊行されるらしいので、いちファンとしては有難い限りである。 -
Posted by ブクログ
過去を清算した前作で一区切りついたのか、本作品はシリーズして見ると第二章というか、新しい展開の印象がある。新しい上司、新しいチーム。現場復帰したことに喜びを見出し、エレノアとの再会もあって、オンオフともに充実しまくりのボッシュ──どうもイメージではない。でもこのスタイルでいくなら慣れるしかない。モヤモヤを払拭するだけの面白味ある事件ならばなおよかったのだが、それがそうでもないので一気読みというわけにはいかず。
ショウビズとベガス。二流三流レベルの世界で儲けた金に群がる人間たちの間で事件は起こる。序盤までは面白かったのだが、舞台がベガスに移ったあたりからどことなく都合のいい展開が目につき始め、いい感じで集中できない。内部監査チームが乗り込んでくるところも無理っぽい。個人的には、お約束の立場逆転シーンをもってこなくても、ボッシュのイメージやスタイルに対する読者の印象は変わらないと思うのだが。
とは言っても、これみなコナリーのハイレベルな筆力を踏まえての評価なので、ブツブツ文句を言ってもその水準は相変わらず素晴らしいのだ。