古沢嘉通のレビュー一覧
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休職中のボッシュが母親殺しの犯人を追う本作品は、ボッシュのルーツを辿るロード・ムービーを観るようなイメージで読める。カウンセリングを通して自分の取るべき行動について閃く辺りは都合がいいようにも感じたが、その後のボッシュの覚悟を伴った心境の変化に比例するように、ひとつひとつ踏み込んでいく複雑な過去にすっかり入り込んでしまった。
善と悪、守るべきものと排除するもの、これらのコントラストが効いており、いろんな局面で考えさせられることが多い。またミステリ的にも面白く、ふっと気の抜けた後のサプライズに、心地よい緊張を強いられた。
憂いを帯びた物悲しいストーリーが読み手に訴えるものは大きく、いかにしてボッシュが現在のキャラクターになったのか、またそうならざるを得なかったのかが、本作品を読むとよくわかる。シリーズの中でも、この四作目はある種の節目となるのではなかろうか。 -
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ボッシュ・シリーズ第三弾。法廷シーンが多く、これまでのシリーズとは違った印象がある。と同時に、コナリーがリーガル・ミステリにも秀でた書き手だということがよくわかる。
容疑者は無実だったのか? という設定はよくあるが、コナリーはそこに緊迫した法廷劇と主人公の葛藤をうまく絡ませることによって、吸引力の強いストーリーに仕上げている。どことなく派手がシーンが多いせいか、いつもの重苦しさは多少軽減されている。謎解きへの興味が強くなる展開のため、ページを繰る手はさくさく進む。しかし多くの読者は、コナリーが巧くコントロールしているプロットにハマり、ミスリードされてしまうのではないだろうか。
クライマックスは衝撃的。その後の推理のプロセスから伏線回収の一連の流れは手際良し。最後までリーガル・ミステリのエッセンスを詰め込み、きりりと引き締める手腕はお見事。でも結局、ボッシュの人生を見つめなおす作品なんだよなあ。 -
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例の如く、チームに加えてもらえないボッシュだが、一匹狼の特性(?)を活かして執拗に捜査を続けていく。ボッシュの人となりが浮かび上がると同時に、別々だった事件がやがてひとつの方向性を導いていく──この辺りのプロットが秀逸である。
事件性だけではなく、人間ドラマとしてもしっかり読ませてくれる。メキシコの可能性を見出してからの、個々の背景を事件に投影させる様は、ストーリーに重厚さと奥行きを与えている。アクション色の濃いクライマックスを経てのサプライズなラストまで、中盤から一気に駆け上がるスピード感は中身も充実しており読み応え抜群。
これまで麻薬ルートを扱ったサスペンスでは、『トラフィック』と『犬の力』の印象が強すぎたが、本作品もそれに負けず劣らずハートに響く。二作目ですでにボッシュ・シリーズを確立させたかのような完成度には脱帽するしかない。 -
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短期間でシリーズを読破しようと思わないこと。刊行に合わせてリアルタイムで読むのがベストだが、私のように逆走してシリーズを制覇しようとする場合は、間に別作家を挟んでから次の作品に取り掛かるべし。恐ろしくクオリティの高いシリーズだが、続けて読むとそのハイレベルさが当たり前になる。当然、次作品におけるハードルも高くなる。コナリー作品基準でハードルを上げてしまうということは、他の小説はもう読めないということにもなりかねない。なので、一定の間隔を空けてからこの世界観を堪能しましょう。
現代ハードボイルドでは、こういう展開が常なのだろうが、刑事という職業に忠実な警察ミステリとしてのボッシュ・シリーズも読んでみたいと思う。事件をある程度まで掘り下げると、そこに別の一面を発見する。この転調がシリーズの魅力となっているが、事件の裏側ではなく表側だけをもっとこってり描いてもそれはそれで面白いと思う。二作品だけ読んだ印象では、そんな単純なプロットで展開するシリーズではなさそうだ。
結末にはいつも感心する。決してハッピーではないが、作中の緊張感から解放され、同時に納得もできる。事件を解決したボッシュには副産物(?)としてそれ相当の試練が待ち受けるが、いい兆候もないわけではない。実に伸びやかで余韻のあるラストである。この充実感を味わいながら、気持ちは次作品へ向いている。 -
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いやー、おもしろかったー。驚きの展開が次々とあって、ほんとに、ええっ!と思いながら読む。犯人をさがす、っていうこととはまた別に、警察組織内の悪をさぐる、本当の黒幕はだれかつきとめるっていう部分にもおもしろさがあって。自分のなかにはいい犬と悪い犬がいて餌をやる犬をまちがえてはいけない、っていう話も心に残った。里親家庭や施設で育ったボッシュの過去がまたしても出てきて胸が痛むような。そのせいか、このシリーズはいつも暗いなーと思ってしまう。二転三転する展開で最後に謎が解けてもなぜかあんまり爽快感はないというか……。あと、読んでるときはすごーくおもしろいと思ってるのに、読み終わるとすぐ忘れちゃうような。わたしだけなんだろうけど。今回レイチェル・ウォリングとまた一緒に行動するんだけれども、わたしは覚えてなくて、レイチェルの出てきた話を読み直したいと思ったりした。彼女はどんな心の傷を負っていたんだっけ……。
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ミッキー・ハラーは、高級車リンカーンを事務所代わりに乗り回して移動するやり手の刑事弁護士。
ちょっと久しぶりな気がするマイクル・コナリーの作品です。
刑事ボッシュ・シリーズではなく、弁護士が主人公。
二度の離婚経験のあるミッキー、仕事に追われて幼い娘に会いに行く時間もなかなか取れない。
広大な州に点在する裁判所や刑務所をこまめに回って、仕事を受けているのだ。
そこそこ成功しているが、大仕事には最近恵まれていなかった。前半、現実的な事件の描写は余り盛り上がらないが、勤めている大人にはわかりやすいかも。
そこへ飛び込んできた事件は…
大金持ちの一人息子の30男が、女性に暴行で訴えられたのだが無罪を主張。
事件のほとんどは常習的な犯罪者で、無罪の人間は少ないという現実があり、これは珍しい無罪かも知れないと思う…
弁護士にとってはやりにくいんだそうです。なるほどね?
人生を変える事件に巡り会った中年の弁護士の奮闘を描きます。 -
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マイクル・コナリーは面白いのに、たなぞうでは人気がないなぁ〜。もったいない。でも、この主人公はちょっと……待ちに待ったコナリー最新作なのに。う〜ん、残念。内容(「BOOK」データベースより)高級車の後部座席を事務所代わりにロサンジェルスを駆け巡り、細かく報酬を稼ぐ刑事弁護士ミッキー・ハラー。収入は苦しく誇れる地位もない。そんな彼に暴行容疑で逮捕された資産家の息子から弁護依頼が舞い込んだ。久々の儲け話に意気込むハラーだが…警察小説の名手が挑む迫真のリーガル・サスペンス。わくわくしながら読み始めたものの、主人公の刑事弁護士ミッキー・ハラーを「なんていけ好かない男なんだ」と感じてしまい、がっかりしてしまった。なぜなら、ハラーはいかに多くの報酬を得るかということにしか関心のない弁護士だったからだ。仕事の進め方も、依頼人を第一に考えるのではなく、より多くの報酬を見こめる手順を踏もうとする。悪徳とは言わないまでも、嫌なタイプだ。<ハリー・ボッシュ>シリーズが最高で、気に入ったマイクル・コナリー。本書は彼の最新作。それで期待に胸躍っていたのだが、予想外の幕開きにはちょっと引き気味になってしまった。ところが、やはりコナリーは裏切らない。中盤から後半、新たな動きが……一気に期待もテンションも高まる。当初嫌悪感を抱いた主人公ハラーではあったが、ちらりと正義感を覗かせ、下巻へ繋ぐ。さあ、どうする、ハラー?急展開は、コナリーの真骨頂。一筋縄では行くわけはなかった。こう展開させるために、ハラーの人物設定をそうしたわけか。こういう展開があるから好きになったのを忘れていた。