Posted by ブクログ
2010年07月27日
“現代ハードボイルドの最高峰”というフレコミに納得。イントロ、プロセス、巧みな人物造形に主人公を取巻くジレンマと企み、冷静で非情なクライマックスを経ての心揺さぶられるラストまで、クールで隙のないプロットにただただ酔いしれた。
ミステリらしい視点から紐解く真相もよかったが、やはり特筆すべきは、事件...続きを読むに関わる人物たちのドラマだろう。さらりとした描写の中にいかに多くの怒りや悲しみが隠されていることか。シチュエーション、会話、すべてが絶妙のタイミングなので、少ない行間から余りある感情をダイレクトに受け取ることができる。この感触が最後まで途切れないので、引き込まれた作中からはみ出すストレスは皆無だった。
『マルタの鷹』の“コケにされるはごめんだ”が、本作品の“アンジェラ・ベントン”になるのだろう。サム・スペードとハリー・ボッシュの共通点は、心に一本強い柱が通っていること。その信念を前面に出し、圧倒的な筆力で描ききったコナリーには脱帽するしかない。
ディーヴァーが東の横綱なら、西の横綱は間違いなくコナリーだろう。お互いタイプの違うシリーズだが、リピート必至という点では同じかな。ただボッシュの方が、人生と事件がシンクロしているような印象を受ける。そういう意味ではこちらの方が中毒性が高いかも。