古沢嘉通のレビュー一覧
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ネタバレボッシュ&バラードの第四弾。
長年続いてきたシリーズだが、
COVID-19やマスクが登場する時が来るとは思わなかった。
マスクをする、しないにナーバスになっているのは、
アメリカの現実を反映しているのだろう。
なんだろう、例えば防護服を着て街中を歩けと言われているぐらい、
アメリカ人にとってマスクは違和感があったり、
抵抗感があることなんだろうか。
年越しパーティで空に向かって発砲するお祝いの最中に、
元ギャングの銃弾で死ぬ。
バラードがやる気のない臨時の相棒と現場にむかうが、
事故ではなく殺人とわかり、
薬莢はボッシュが昔担当した事件に導く。
バラードはこの殺人事件を担当するよう上司と掛け合う一方、
本来の担当である二人組によるレイプ事件も調べる。
どうやって彼らは標的を決めているのか、
家に侵入しているのか。
(下巻へ) -
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ジャック・マカボイ、ミッキー・ハラーと続いていたコナリー・ワールドだが、久々にハリーボッシュ&レネイ・バラードの登場でぼくは新年を美味い酒とともに迎えさせて頂いた。美味い酒というのは銘柄とか酒の種類のことではなく、良い物語が美味しくさせてくれる酒のこと。
今回はタイトルの通り、夜の事件なので主人公役はほぼレネイ・バラードと見て良い作品であった。そもそもハワイからやって来たバラードは、その後の展開で愛犬を失い、ビーチのテント生活から現在は普通のマンションに居を移している。いろいろ初期設定から変化を遂げている。
彼女の持ち前の捜査勘の良さはさらに鋭さを増しており、ボッシュという大先輩に限りなく近づきつつあるように見える。まわりの捜査スタッフから孤立して正義に生きる一匹狼感には、さらに磨きがかかっており、逆に警察組織自体は、ボッシュの時代よりもさらに乱れて悪化しているかに見える。
時代は変わる。そう、ボッシュからバラードへ。さらに本書の背景となる時代もリアルに描かれている。時代はコロナ禍の初年度だから、マスク着用は必須。バラードは既にコロナ感染を数か月前に終えていた。ボッシュは未だワクチンを打っていない(彼らしい、かも)。そしてトランプ対バイデンの大統領選挙後の議事堂襲撃事件という本当に逢った異常事態も時代背景となり、きな臭い現在の雰囲気が物語の世界を領している。
ちなみにぼくはこの作品を大晦日の夜半から読み始めたのだが、思いがけぬことに、物語はまさに大晦日の夜半から始まり、年明けとともに銃撃事件が発生するのだ。まさにバラードの時間とぼくの読書の時間がシンクロしており驚きだった。かなり遅くまで本を読み込み、翌朝、ぼくはバラードと一緒の時間帯に午前と午後を過ごす。彼女の街ではさらにもうひとつの連続侵入レイプ事件が発生していて、こちらの捜査と殺人事件との二つの事件を抱えたバラードを読者は追跡してゆくことになる。
殺人事件の方では使用された銃弾が、かつてボッシュが携わった古い事件に使われたものと一致することで、バラードはボッシュの協力を必要とする。ヒーローとヒロインのダブル主人公の交錯を作者はこうして果たす。警察内で孤立するバラードは、夜と昼とのシフトを丸抱えしながら、精神的にも肉体的にも限界に近い状況でボッシュと言うもう一人の孤立した仲間とタッグを組んでゆく。罪多き街も、警察という組織内部の劣化も、彼らを包む不幸な舞台装置である。汚れた街をゆく誇り高きヒーロー。ハードボイルドの基本構図。
本作は終わってみれば、ボッシュの出番がとても少なかったという印象がある。二人のシリーズというよりは、ボッシュはまるでバラードのシリーズの一登場人物のようである。さらに、訳者の古沢さんがあとがきで気になることを書いている。「次作の衝撃的な内容に茫然とした」と。どうかボッシュにこれ以上何かの試練が与えられませんように。われらがハリー・ボッシュをどうかお守りください。もちろんレネイ・バラードのことも。 -
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ジャック・マカボイ、ミッキー・ハラーと続いていたコナリー・ワールドだが、久々にハリーボッシュ&レネイ・バラードの登場でぼくは新年を美味い酒とともに迎えさせて頂いた。美味い酒というのは銘柄とか酒の種類のことではなく、良い物語が美味しくさせてくれる酒のこと。
今回はタイトルの通り、夜の事件なので主人公役はほぼレネイ・バラードと見て良い作品であった。そもそもハワイからやって来たバラードは、その後の展開で愛犬を失い、ビーチのテント生活から現在は普通のマンションに居を移している。いろいろ初期設定から変化を遂げている。
彼女の持ち前の捜査勘の良さはさらに鋭さを増しており、ボッシュという大先輩に限りなく近づきつつあるように見える。まわりの捜査スタッフから孤立して正義に生きる一匹狼感には、さらに磨きがかかっており、逆に警察組織自体は、ボッシュの時代よりもさらに乱れて悪化しているかに見える。
時代は変わる。そう、ボッシュからバラードへ。さらに本書の背景となる時代もリアルに描かれている。時代はコロナ禍の初年度だから、マスク着用は必須。バラードは既にコロナ感染を数か月前に終えていた。ボッシュは未だワクチンを打っていない(彼らしい、かも)。そしてトランプ対バイデンの大統領選挙後の議事堂襲撃事件という本当に逢った異常事態も時代背景となり、きな臭い現在の雰囲気が物語の世界を領している。
ちなみにぼくはこの作品を大晦日の夜半から読み始めたのだが、思いがけぬことに、物語はまさに大晦日の夜半から始まり、年明けとともに銃撃事件が発生するのだ。まさにバラードの時間とぼくの読書の時間がシンクロしており驚きだった。かなり遅くまで本を読み込み、翌朝、ぼくはバラードと一緒の時間帯に午前と午後を過ごす。彼女の街ではさらにもうひとつの連続侵入レイプ事件が発生していて、こちらの捜査と殺人事件との二つの事件を抱えたバラードを読者は追跡してゆくことになる。
殺人事件の方では使用された銃弾が、かつてボッシュが携わった古い事件に使われたものと一致することで、バラードはボッシュの協力を必要とする。ヒーローとヒロインのダブル主人公の交錯を作者はこうして果たす。警察内で孤立するバラードは、夜と昼とのシフトを丸抱えしながら、精神的にも肉体的にも限界に近い状況でボッシュと言うもう一人の孤立した仲間とタッグを組んでゆく。罪多き街も、警察という組織内部の劣化も、彼らを包む不幸な舞台装置である。汚れた街をゆく誇り高きヒーロー。ハードボイルドの基本構図。
本作は終わってみれば、ボッシュの出番がとても少なかったという印象がある。二人のシリーズというよりは、ボッシュはまるでバラードのシリーズの一登場人物のようである。さらに、訳者の古沢さんがあとがきで気になることを書いている。「次作の衝撃的な内容に茫然とした」と。どうかボッシュにこれ以上何かの試練が与えられませんように。われらがハリー・ボッシュをどうかお守りください。もちろんレネイ・バラードのことも。 -
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ネタバレケン・リュウのハヤカワの新書は全部買っているけれど、これは私の中で「紙の動物園」に迫るかも。ただ、第二次大戦でアジアを支配していた日本の話が2篇あるので、とても重い。初期の短編集に「歴史を終わらせた男」を入れなかったという判断もわかる。
「マクスウェルの悪魔」
戦時下の沖縄ユタの血筋の日系アメリカ人、かつ女性で科学者の主人公。
どこの土地でも余所者・敵地人として不当な扱いをされ、戦争も地獄の様相を見せる中、それでも人が拠り所とする故郷について描かれる。
重ねて出てくる「それが戦争ってものじゃないか」が重くのしかかる。
「歴史を終わらせた男」
ここで731部隊の話を突きつけられるとは。
タイムマシンによって直接歴史を見聞きできるようになったとき、「歴史」が過去の死んだものではなく今扱える生きたものとなったとき、当時の出来事をどう見るのか、責任の所在はどうなるのか。
そういうSFを土台にしているけれども、話中で人体実験の現場を訪れた観察者同様、731部隊の話が終わった過去でなく、実際にそこに在った事実として辛い。
もちろん日本が行った反省すべき戦争犯罪だという認識はあったけれど、たかだか100年前に、医療の発展のためにという名実で「必要なこと」として行われ、それが実際に医療データとして利用されていたというのは、こう読むと相当なショックだった。
乗り越えて終わった過去でなく、今もその出来事と連続して今いるのが自分なのだと。
100光年離れた星の、100年前の光が今届くように、過去発せられた光は今の光景であり、時間による差はあまりないのかもしれない。
ロシア・ウクライナ戦が始まり、戦争とはすでに乗り越えた過去のものと漠然と考えていた自分の能天気さを恥じたけれど、発売当時に買ったままだったこの本を今読んだというのも、本に呼ばれたのかもしれないなあ。
「切り取り」
こういう技巧が凝らされた上に、儚さの感じられる物語は大好き。 -
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物語の世界にもCOVID-19はやってきています。
この物語の時間は、2019年の末から、2020年の初頭から3月ごろにかけて。ちょうど、世界がCOVID-19で騒ぎ始める時期ですね。
そんな大変な時期に、ミッキー・ハラーは、覚えのない殺人事件の容疑をかけられてしまい、絶体絶命の事態に追い込まれてしまうわけですが、まぁね、主人公がそのまま有罪になってしまう事は無いですよねw
でも、その無罪に至る過程が、また面白い。アメリカならでは(と、敢えて言いますが)の司法制度、刑事制度がそこにあるわけですが、それよってミッキー・ハラーは殺人容疑をかけられ、それによって無罪になると言ってもいいでしょう。
面白かったです。作者の自作は、2020年の末ごろの時代。COVID-19が猛威を振るってしまっている世界の話になる様です。 -
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邦題は御覧のとおり『警告』なのだけれど、本書の主人公ジャック・マカヴォイが今、所属している消費者問題専門ニュースサイトの会社名が、実は原題の"Fair Warining"。本書でもジャックの所属会社名は「フェアウォーニング」とカナ訳されている。実はこのタイトルの仕掛けに気づいたのは、実は読書半ばのこと。原書読者は最初からそんな時差感はなしに読んでいるだろうから、老婆心ながら最初にここで触れておく。
さてマカヴォイ主演作としては『ザ・ポエット』『スケアクロウ』に続く三作目。前作から何と11年ぶりの続編ということで、現実と同じように歳を重ねてゆくコナリー世界のキャラクターの例に倣って、マカヴォイは本作では58歳となっている。コナリー作品常連の元FBI捜査官のレイチェル・ウォーレスもいつものマカヴォイ作品と同じく巻半ばから共演を果たしてくれる。彼女はボッシュ・シリーズにもミッキー・ハラーのシリーズにもしばしば登場するコナリー作品ではお馴染みのキャラクターなのだが、本書でもよい味を出してくれる。
コナリー作品はすべてがLAを舞台にした実際の時制で進行してゆくため、すべてのキャラクターが同時にコナリーのペンにより生を受け、同じ地平に存在しているという設定である。コナリーは生涯変えることなくそれを自身の作品特性として頑なに堅持している。コナリー作品のキャラクターたちの作中交錯は、全作を読んでいるディープなコナリー・ファンにとってはとても素敵なサービスであり、人間重視のその作風は必ずや心に響くのだ。
さて本書であるが、さすが現実の時間に時計を合わせてくる作家であるだけに、非常に現代的なサイエンスをミステリーの道具立てに使ってきている。連続殺人事件の裏側で利用されてしまうのが、個人のDNA。そして主人公マカヴォイの所属するのはネットニュースの運営会社。スマホやPCを駆使する犯罪と捜査が、実に現代的で、最新テクノロジーに満ちている。
この作家は、実はかく言うぼくと同年齢。明日まさに誕生日で否応なく緑寿を迎えることになるぼくと同い年の作家なのである。若いとはもうとても言えないコナリーが、最先端の科学捜査や、情報取得を犯罪手段とする新手の殺人鬼の物語をスムースに駆使しているのだ。個人的にもかなり刺激的な読書体験である。
本作では際立った犯行の悪どさ(首を半回転させて即死させる内的断頭という容赦ない手口)に怒りを禁じえない主人公とその個人捜査トリオ。公的捜査組織に現在属していない者ばかりのトリオである。マカヴォイ、レイチェル・ウォーレス、そしてマカヴォイの仕事仲間のエミリー・アトウォーター。この三人の不屈の追跡劇が、微妙な男女三角関係のニュアンスと絡み合いつつ、最悪の悪党を追いつめる二重のハラハラ感。ページを開いたら最後まで止まらない一気読み必至の面白さは、コナリーならではの構成とキャラ設定とストーリーテリングゆえだろう。
マカヴォイ・シリーズは現在のところたった三作だが、いつも極めてエキセントリックであるように思う。定年間近なマカヴォイではあるが、まだ退場には早すぎると思うのは、おそらくぼくばかりではあるまい。作者(とぼく自身)の年齢に追いついたマカヴォイに再会したいものである。 -
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邦題は御覧のとおり『警告』なのだけれど、本書の主人公ジャック・マカヴォイが今、所属している消費者問題専門ニュースサイトの会社名が、実は原題の"Fair Warining"。本書でもジャックの所属会社名は「フェアウォーニング」とカナ訳されている。実はこのタイトルの仕掛けに気づいたのは、実は読書半ばのこと。原書読者は最初からそんな時差感はなしに読んでいるだろうから、老婆心ながら最初にここで触れておく。
さてマカヴォイ主演作としては『ザ・ポエット』『スケアクロウ』に続く三作目。前作から何と11年ぶりの続編ということで、現実と同じように歳を重ねてゆくコナリー世界のキャラクターの例に倣って、マカヴォイは本作では58歳となっている。コナリー作品常連の元FBI捜査官のレイチェル・ウォーレスもいつものマカヴォイ作品と同じく巻半ばから共演を果たしてくれる。彼女はボッシュ・シリーズにもミッキー・ハラーのシリーズにもしばしば登場するコナリー作品ではお馴染みのキャラクターなのだが、本書でもよい味を出してくれる。
コナリー作品はすべてがLAを舞台にした実際の時制で進行してゆくため、すべてのキャラクターが同時にコナリーのペンにより生を受け、同じ地平に存在しているという設定である。コナリーは生涯変えることなくそれを自身の作品特性として頑なに堅持している。コナリー作品のキャラクターたちの作中交錯は、全作を読んでいるディープなコナリー・ファンにとってはとても素敵なサービスであり、人間重視のその作風は必ずや心に響くのだ。
さて本書であるが、さすが現実の時間に時計を合わせてくる作家であるだけに、非常に現代的なサイエンスをミステリーの道具立てに使ってきている。連続殺人事件の裏側で利用されてしまうのが、個人のDNA。そして主人公マカヴォイの所属するのはネットニュースの運営会社。スマホやPCを駆使する犯罪と捜査が、実に現代的で、最新テクノロジーに満ちている。
この作家は、実はかく言うぼくと同年齢。明日まさに誕生日で否応なく緑寿を迎えることになるぼくと同い年の作家なのである。若いとはもうとても言えないコナリーが、最先端の科学捜査や、情報取得を犯罪手段とする新手の殺人鬼の物語をスムースに駆使しているのだ。個人的にもかなり刺激的な読書体験である。
本作では際立った犯行の悪どさ(首を半回転させて即死させる内的断頭という容赦ない手口)に怒りを禁じえない主人公とその個人捜査トリオ。公的捜査組織に現在属していない者ばかりのトリオである。マカヴォイ、レイチェル・ウォーレス、そしてマカヴォイの仕事仲間のエミリー・アトウォーター。この三人の不屈の追跡劇が、微妙な男女三角関係のニュアンスと絡み合いつつ、最悪の悪党を追いつめる二重のハラハラ感。ページを開いたら最後まで止まらない一気読み必至の面白さは、コナリーならではの構成とキャラ設定とストーリーテリングゆえだろう。
マカヴォイ・シリーズは現在のところたった三作だが、いつも極めてエキセントリックであるように思う。定年間近なマカヴォイではあるが、まだ退場には早すぎると思うのは、おそらくぼくばかりではあるまい。作者(とぼく自身)の年齢に追いついたマカヴォイに再会したいものである。