古沢嘉通のレビュー一覧

  • 迷宮(下)

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    マイクル・コナリー『迷宮 下』講談社文庫。

    マイクル・コナリーの39冊目の長編。レネイ・バラード刑事シリーズの第6弾。

    一難去ってまた一難。二転三転のうねるような展開とレネイ・バラードが画策した見事な結末。

    バラードが対決する相手は未解決事件の真犯人たちだけではなく、新たにロス市警未解決事件班に加わったマディをクビにしろと言い出すロス市警のトップやブラック・ダリア事件の真犯人を示す新たな証拠の受け取りを拒む地区検事長と一筋縄ではいかない。

    一般企業でも必死に品質改善に取り組む社員が居る一方で品質問題を隠蔽したり、売上だけを重視して品質を無視するようなトップが居るのだから、似たような構図

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    2025年12月17日
  • 迷宮(上)

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    マイクル・コナリー『迷宮 上』講談社文庫。

    マイクル・コナリーの39冊目の長編。レネイ・バラード刑事シリーズの第6弾。ハリー・ボッシュとハリーの娘でロス市警の巡査マディも登場する。

    安定安心の面白さ。同時に3つの事件が動き出すという何とも盛り沢山で、面白いストーリー。1つは未解決事件のまくらカバー強姦事件、2つ目はバラードが波乗り中に車の中からバッチと銃を盗まれた事件、3つ目は何と未解決事件の中でも特に有名なブラック・ダリア事件である。

    冒頭でレネイ・バラードが波乗りをするシーンには驚いた。波待ちからパドルに移行し、波のトップからテイクオフしてから波の壁を滑り落ちる描写は実際に波乗りを経

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    2025年12月16日
  • バベル オックスフォード翻訳家革命秘史 下

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    物語の時代背景や人物像をじっくり描いたため、読み応えのあった上巻。ラストの衝撃を抱えたまま、下巻に突入!こちらはこちらで怒涛のスピード感。一気読み必至。これまで観てきた映画やドラマのワンシーンが折々に目に浮かんでは消えた。単純に“おもしろかった”で片付けられない複雑な気持ち。やっぱり豊崎由美さんが絶賛する本にハズレ無しだな。

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    2025年12月13日
  • スタートボタンを押してください ゲームSF傑作選

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    SF作家たちがノベルゲームに感じている可能性というか、テキストに感じている可能性をまざまざと見せつけられたような感じだ。

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    2025年10月01日
  • バベル オックスフォード翻訳家革命秘史 上

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    寝食を忘れて物語に没頭したのは何十年ぶりだろうか。
    それほどまでにこの物語は、ここ十数年で読んだ本の中で特別に素晴らしい。

    舞台は十九世紀のイギリス。銀と翻訳を支配する者が世界を制する時代。その中枢機関・オックスフォードのバベルで学ぶ一人の学生が主人公。

    中国の広東の港で育ったことから複数の言語が得意という能力をもち少年の頃に教授に拾われる。その生い立ちがまさしくこの本の作者の人生そのものだ。

    伝統と格式を重んじるイギリスにおいてアジア人はあざけられ不当な扱いを受ける。その様子が同じアジアの日本人である読者に共感を呼ぶ。

    たいていの翻訳SFものはカタカナが多く人の名前は覚えられず世界に

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    2025年05月26日
  • バベル オックスフォード翻訳家革命秘史 下

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    ネタバレ

    物語は佳境に入り、登場人物がどんどん死んでいく。
    バベルの塔を占拠しストライキを決行。ラッダイトやチャーチストと同盟し、議会の中国との戦争決議を阻止しようとする。同盟がすぐに結ばれるのは聊か安直。
    「翻訳とはー他人の話に耳を傾け、自分の偏見を越えて、相手が言おうとすることをわかろうとすること。自分自身を世界に示し、ほかのだれかが理解してくれることを期待する。」

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    2025年05月11日
  • バベル オックスフォード翻訳家革命秘史 上

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    ネタバレ

    1830年代大英帝国は、言語間の意味の差異により魔法を生じさせることを力に植民地帝国を維持・建設する。言語間の隔たりのと意味の差異が銀を媒介に魔法の力となることから、混血のバイリンガルの少年がオックスフォード大学のバベルに呼ばれ教育を受ける。
    大学生活の勉学と試験、友人との交流の穏やかな流れに、秘密結社との接触、さらにアヘン戦争直前の広州へ。

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    2025年05月10日
  • レッドリバー・セブン:ワン・ミッション

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     これは面白い。「あとがき」にもそう書いてある。SFと言うよりは、冒険小説の風味が強い。

     ボートの上で7人の男女が目覚める。物語の早々に一人が自殺する。周囲は霧に包まれていて状況がよく分からない。彼らの腕には各人の名前とおぼしきタトゥーが、また頭部には手術痕らしきものがあり、全員記憶を失っていた。そして各人が医療や戦闘などのスキルや物理学や歴史などの知識を持っていることが明らかになる。そして突然、ボートの操舵室に何者からか指令が入り、疑心暗鬼に陥りながらも、体が覚えている「筋肉記憶」を駆使しボートを進める。そして仲間の変容や謎の「敵」、予期せぬ事態が次々と…

     どうやら世界は、何らかのデ

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    2025年05月04日
  • バベル オックスフォード翻訳家革命秘史 下

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    ネタバレ

    もし原題のうち省略された部分(バベル、もしくは〇〇)を知っていたら、どういう読書になっていたのか考えてしまう。しかも創元の紹介HPのファンタジーっぽい登場人物イラストとかの騙し要素に完全に誘い込まれたし。で、下巻からは怒涛かつ想定できる厳しい展開で、まさかこうなるとは正直思ってなかった。帝国主義のイギリスに翻弄される革命家たち。4人それぞれの避けられない運命は胸を打つ。現実と虚構を取り混ぜたスケールの極めて大きな異世界が構築されており、素晴らしい小説。この類の読書を習慣とする者は必読だと思う。

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    2025年04月14日
  • バベル オックスフォード翻訳家革命秘史 上

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    ネタバレ

    二つの言語での単語の意味のずれから生じる翻訳魔法が支配する世界の中で、多数言語を学ぶ学生たちの物語という導入設定から、ハリポタを大人向けにしたブラックファンタジーと誤解して読み始めたが、開始とともに違和感満載(笑)。その裏には、アヘン戦争時の植民地政策末期での帝国主義のほころびを描いた骨太の展開があった。DEIと真反対の環境下で4人のオックスフォード大学生の視点から描かかれる反乱の萌芽は上巻を通じてゆっくり育っていき、一気にクライマックスへ。上巻と下巻の分量的バランスがこうなったのもよくわかる。嫌な予感がしつつ、これはすごく面白い。下巻へ。

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    2025年04月14日
  • 鬼火(下)

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    判事暗殺事件の真犯人を追うハリー・ボッシュ。
    ホームレス焼死の真相を探るレネイ・バラード。
    老いてきたボッシュには出来かねる活躍を見せるバラードです。

    亡き先輩刑事トンプスンが執着していた事件の謎は。
    なぜ、捜査資料を家に隠し持っていたのか。
    三つの事件の絡み合いが読み応えあり!

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    2025年04月13日
  • 素晴らしき世界(下)

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    「汚名」のハリー・ボッシュと、「レイトショー」のレネイ・バラードが合流した作品。
    二人で、ハリウッド署管内で起きた未解決事件に挑みます。
    15歳の少女が殺された過去の事件。

    通常の定年を迎えた後も粘ってきたボッシュは、さすがに年老いてきた様子がありますが、それはあまり書かないでほしいと思ったり(笑)
    ものすごく元気な老人だって、いるじゃないの~?
    作者自身よりもちょっと年上のボッシュのシリーズは、現実とほぼ同じペースでリアルに年を取っているので、その変化を描くのも、ポイントなんでしょうね。

    若くてやる気満々のレネイは、体力もある。
    が、やはり若気の至りもあり‥孤独がちなのでねえ。単独行動は

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    2025年04月13日
  • レッドリバー・セブン:ワン・ミッション

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    ネタバレ

    面白かった。夢中になって読んだ。
    最初は、記憶喪失状態で何が何だかわからないので、とっつきにくかったけれど、登場キャラが勢ぞろいし、目的地へ進んでいくにつれ、各キャラを把握し面白く感じられるようになった。

    最初は気付かなかったが、途中でキャラの名前は作家の名前じゃん!と気付いて調べたら訳者あとがきで触れられていて、簡単に紹介されていた。ハクスリー、ゴールディング、ピンチョンはわかったが、それ以外の作家は代表作を挙げられてもわからなかった。向こうではメジャーらしい。

    話としては記憶喪失状態から始まり、なんらかの任務を帯びているということがわかるが、この導入は『プロジェクト・ヘイル・メアリー』

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    2025年04月05日
  • バベル オックスフォード翻訳家革命秘史 下

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    上下巻で価格違うくらい厚さも違うって珍しくね?その割に厚くて高い上巻は若者たちの成長物語が続いてオッさんはちょっと引きかけてたんやけど、上巻の最後からかなり畳みかけてくる怒涛の展開。いわゆるスチームパンクともちょっと違うんやろうけど、「屍者の帝国」とかあのあたりの時代の話ってええよね。元を辿ればホームズなんかな。

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    2025年03月29日
  • バベル オックスフォード翻訳家革命秘史 下

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    衝撃の上巻最終シーンを受けて、ひたすら重い下巻。恐ろしいのはあれほど心揺さぶられた上巻が、下巻の“フリ”だったということだ。下巻は上巻の諸々をどっかり受け止めて、さらなるドラマの展開を図る。重いが読むのが憂鬱ではない。期待を裏切らないとはこのことだ。読むべし。

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    2025年03月16日
  • バベル オックスフォード翻訳家革命秘史 上

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    こいつは久々ガツンときた。上巻約470頁弱、ここまで文字みっしりだとダラダラと無駄な装飾に飽き飽きしそうなもんだけど、全シーンまったく飽きが来ない。後半などは常に胃が痛むほどの緊張感を感じつつ読み耽ることになった。が、決して読むのが辛くない。敢えて言うならウンベルト・エーコ風味のハリーポッター。知的好奇心と友情をない混ぜにして楽しめる贅沢よ。いざ下巻へ続く。

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    2025年03月09日
  • バベル オックスフォード翻訳家革命秘史 下

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    人間同士の意思疎通がどれだけ困難なことかを思い知らされた
    しかしその「翻訳」がいかに無駄であっても、双方が生きる世界を行き来するために必要な努力として、その地位は保たれる

    立場や境遇が違うために、たとえ生活を共にしたとしても価値観が揃うことはなく、分かってくれないことへの恨みや憐れみで武力を行使しだす
    その苦痛を味わったことが無い者には想像すらできず、ただ我儘なだけに思えてしまう

    人間の考えを変えることはとても難しく、正確な意思疎通を取ることも不可能に等しい
    何とも虚しく悲しい話だった

    未来を手にするためには行動を止めてはならず、死という誘惑に抗って進み続けなければならないのだ

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    2025年03月03日
  • バベル オックスフォード翻訳家革命秘史 上

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    本が出る前からSNS流れてきて気になっていた。帯の「言語の力」「ふたつの言語における単語の意味のずれから生じる翻訳の魔法」というのに惹かれてた。
    単行本上下巻はなかなか勇気が必要で、まずは上巻だけを味見して失敗…上下で買うべき本でした。読んで良かった。

     翻訳の力が魔法として働く19世紀の大英帝国。大英帝国の植民地支配は広大で、日の沈まない国と言われた時代。
     翻訳の魔法は、銀の棒に同じ意味を含む対になる言葉…適合対…を刻み、それを唱えると発動する。
     扱えるのは言語に精通した者、外国語も英語もネイティブと同じくらい扱える者だけ。その銀工という技術の研究と製作を担うのがオックスフォード大学に

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    2025年03月02日
  • 潔白の法則 リンカーン弁護士(上)

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    リンカーンを乗り回す弁護士ミッキー・ハラー。そのリンカーンのトランクに死体が積んであった。収監され、自分の弁護を自分でする。潔白は証明されるのか?読み進む手が止まらない。

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    2025年02月18日
  • 隣接界

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    ネタバレ

    グレートブリテン・イスラム共和国のフリーカメラマンが看護師の妻とアナトリアで援助活動をしていたところ、妻がテロに巻き込まれ消失する。イングランドに戻ると、宣戦布告なしの戦争が激化しており、隣接界を生じさせ津機器が兵器として使用されていた。
     隣接界というキーワードで繋がっていることがわかるが、そこに唐突に「第一次世界大戦中の奇術師とHG・ウエルズ」、「第二次世界大戦中の亡命ポーランド女性飛行士と整備兵」の短編が挟まれるが、二番目は秀逸なロマンス小説。
     その後、隣接界で領主制の群島に登場人物たちが集まるが、どうやら微妙にずれた別の時空間から来たようで錯綜し、更に時間線も分裂していく。
     カメラ

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    2024年12月15日