古沢嘉通のレビュー一覧

  • レイトショー(下)

    Posted by ブクログ

    バラード刑事のパワフルな行動に感激!
    マイクル・コナリーの新たな主人公にこれからも目が離せないと思う。

    0
    2021年01月03日
  • 訣別(下)

    Posted by ブクログ

    テレビドラマBOSCHを観てから読む小説は2作目だけど、相乗効果は高くボッシュも娘のマディ(デスキャブのブラックサンをボッシュの着メロに設定してる)もドラマのイメージでいきいきと話し動く。
    無給刑事として未解決事件の捜査にあたりながら、私立探偵として調査も請け負う生活を続けるボッシュ。元の勤務先であるロス市警とは訴訟沙汰以来、険悪な関係が続いてる。
    連続強姦事件の捜査と大富豪の跡取り探し、という二つの立場でストーリーがグイグイと進み(特に跡取り探しの面白さ、ベトナム戦争絡みだと話が具体的立体感を持って迫ってくる!)どんなトラブルが待っているのかとハラハラしてしまうほど。
    義弟のリンカーン弁護士とのタッグも相変わらず順調で、こちらも定番のストーリーになってるな。
    もっともっと永遠に続いてもらいたいな。

    0
    2020年12月28日
  • 素晴らしき世界(下)

    Posted by ブクログ

    引き続き非常に面白かった。ハリーボッシュのシリーズが新しい展開を見せたという印象。最後にうまい具合にレネイバラードが絡んできて、まだまだボッシュが活躍してくれそうな感じで、とても楽しみだ。ひとつだけ問題は日本語タイトル。あとがきに翻訳者の言い訳が出ているが、英語のタイトルと異なる日本語タイトルを付けると、今回のようなしょうもない失敗になる例。映画のタイトルでもよくあるが、翻訳関係者や編集の人は気をつけてもらいたい。もちろん本の中身には全く問題なし。

    0
    2020年12月17日
  • 素晴らしき世界(上)

    Posted by ブクログ

    引き続き非常に面白かった。ハリーボッシュのシリーズが新しい展開を見せたという印象。最後にうまい具合にレネイバラードが絡んできて、まだまだボッシュが活躍してくれそうな感じで、とても楽しみだ。ひとつだけ問題は日本語タイトル。あとがきに翻訳者の言い訳が出ているが、英語のタイトルと異なる日本語タイトルを付けると、今回のようなしょうもない失敗になる例。映画のタイトルでもよくあるが、翻訳関係者や編集の人は気をつけてもらいたい。もちろん本の中身には全く問題なし。

    0
    2020年12月17日
  • レイトショー(下)

    Posted by ブクログ

    面白いと言うしかない面白さ。マイケルコナリーの作品は本当にどれもクォリティが高い。本作はコナリーの新キャラだが、今後どのように展開していくのか興味津々。恐らくLAPDの他の部署に行くだろう。そして、他のキャラとの交錯もあるはず。主人公の考えがボッシュに似ている時があり、ファンはニンマリと言う感じ。次回作が楽しみ。

    0
    2020年12月05日
  • レイトショー(上)

    Posted by ブクログ

    面白いと言うしかない面白さ。マイケルコナリーの作品は本当にどれもクォリティが高い。本作はコナリーの新キャラだが、今後どのように展開していくのか興味津々。恐らくLAPDの他の部署に行くだろう。そして、他のキャラとの交錯もあるはず。主人公の考えがボッシュに似ている時があり、ファンはニンマリと言う感じ。次回作が楽しみ。

    0
    2020年12月05日
  • 素晴らしき世界(下)

    Posted by ブクログ

    マイクル・コナリー『素晴らしき世界(下)』講談社文庫。

    マイクル・コナリーの32作目の長編にして、ボッシュ・シリーズの21作目。さらには『レイトショー』に登場したロス市警ハリウッド署深夜勤務担当女性刑事レネイ・バラードとハリー・ボッシュの共演作となっており、ボッシュ・シリーズ前作の『汚名』からの続きが描かれる。

    下巻では、我等がボッシュが主役の座を奪回。スリリングで結末まで予断を許さぬ展開は、なかなか面白い。さすがは現代最高峰のハードボイルドと賞賛されるシリーズのことだけのことはある。

    ボッシュとバラードによる未解決事件の捜査は続き、ボッシュに最大の危機が訪れる。ボッシュの危機を救うバラード。そして、ボッシュは15歳の少女デイジー・クレイトン殺害の未解決事件に自ら決着をつけるが、悲しい事実がボッシュを待ち受ける。

    扶桑社ミステリーの『ナイトホークス』以来、読み続けているが、まさかハリー・ボッシュ・シリーズがここまで長く続くとは思わなかった。次作もボッシュとバラードの共演で、さらにはミッキー・ハラーも登場するようだ。

    本体価格900円
    ★★★★★

    0
    2020年11月19日
  • 素晴らしき世界(上)

    Posted by ブクログ

    マイクル・コナリー『素晴らしき世界(上)』講談社文庫。

    マイクル・コナリーの32作目の長編にして、ボッシュ・シリーズの21作目。さらには『レイトショー』に登場したロス市警ハリウッド署深夜勤務担当女性刑事レネイ・バラードとハリー・ボッシュの共演作となっており、ボッシュ・シリーズ前作の『汚名』からの続きが描かれる。

    ボッシュとバラードの2人の主人公は確かに話題性がある。上巻を読む限りでは、どちらかと言えば、バラードの方が主役という感じ。その点は、ボッシュのファンとしては少し不満。しかし、このコンビの活躍も面白い。

    今回は、ボッシュがこだわってきた15歳の少女デイジー・クレイトン殺害の未解決事件の捜査にバラードが協力するというストーリーである。ボッシュはデイジーの母親で薬物中毒だったエリザベス・クレイトンを自宅に保護していたのだが、ある日、エリザベスが失踪する……

    本体価格900円
    ★★★★★

    0
    2020年11月19日
  • 汚名(下)

    Posted by ブクログ

    マイクル・コナリー『汚名(下)』講談社文庫。

    現代最高峰のハードボイルド警察小説、ハリー・ボッシュ・シリーズの第20作。

    65歳を超えてもなお、根っからの警察官であり続けるハリー・ボッシュ。騙す者と騙される者、金に支配される者と支配する者。悪と善の構図は大昔から変わらない。

    ボッシュの警察人生の最大の危険を救うのはリンカーン弁護士ことミッキー・ハラー。終盤の緊迫した法廷劇だけでも読み応えがある。

    そして、ラストには次作へのプロローグが。

    ボッシュが担当した30年前のロス市警での殺人事件捜査の証拠が捏造され、ボッシュの捜査に嫌疑が掛かり、警察人生に最大の危機が訪れる。また、サンフェルナンド市警の管轄で、薬局を経営する父親と息子が薬局内で銃殺されるという事件が発生し、ボッシュは命の危険を省みずに不正薬物売買組織に潜入捜査を試みる。

    本体価格880円
    ★★★★★

    0
    2020年08月24日
  • 汚名(上)

    Posted by ブクログ

    マイクル・コナリー『汚名(上)』講談社文庫。

    現代最高峰のハードボイルド警察小説、ハリー・ボッシュ・シリーズの第20作。扶桑社ミステリーの『ナイトホークス』を読んで以来、マイクル・コナリーの作品を読み続けて28年になる。毎回、巧みなプロットと類い稀なるリーダビリティには脱帽する。

    原題が『TWO KINDS OF TRUTH』というからにはボッシュの過去と現在の2つの事件で何らかの真実が明らかになるのだろう。

    サンフェルナンド市警の予備刑事として自発的に未解決事件の捜査を行うハリー・ボッシュに突然訪れた警察人生最大の危機。ボッシュが担当した30年前のロス市警での殺人事件捜査の瑕疵を巡り、ロス市警の元相棒のソトらがボッシュの元を訪ねる。

    一方、サンフェルナンド市警の管轄で、薬局を経営する父親と息子が薬局内で銃殺されるという事件が発生し、ボッシュが捜査に狩りだされる。

    リンカーン弁護士ミッキー・ハラーも登場する。

    本体価格880円
    ★★★★★

    0
    2020年08月23日
  • 汚名(下)

    Posted by ブクログ

    当代最高のハードボイルド作品と言われる、ハリー・ボッシュ・シリーズの邦訳最新刊! ボッシュ刑事物の最新作は、前作『訣別』同様、ボッシュに関わるふたつの事件を平行して描く。ボッシュが陥る二種類の危機(潜入捜査における現実的な死の危険と、捜査官としての名誉が汚される危機)を迫力たっぷりに描きだし、またしても抜群のページターナーに仕上がっている。特に前者の潜入捜査では、何度も死の危険に襲われ、シリーズ中”ボッシュ最大の危機”を描いたと言っても過言ではない。
    原著題名のTwo Kinds of Truth(二種類の真実)とは、かつての同僚たちからも証拠捏造を疑われた際のボッシュの心情に関するくだり(「ボッシュは、この世には二種類の真実があると知っていた。ひとつは、ひとりの人間の人生と使命に関して、けっして変わらぬ原則である真実。もうひとつは、政治家やペテン師や、悪徳弁護士とその顧客たちの、目的に適うように折り曲げ、加工できる柔軟な真実」)に出てくるもの。

    同情は行動の代わりにはならない。これが、ボッシュ刑事の行動原理なのか。次回作も楽しみ。

    0
    2020年08月17日
  • 汚名(上)

    Posted by ブクログ

    シリーズ第20作。
    SFPD(サンフェルナンド市警)の予備刑事(reserve officer)として、自発的に未解決事件捜査にあたっているハリー・ボッシュのもとを、昔のパートナーだったロス市警本部強盗殺人課未解決事件班刑事のルシア・ソトが現在パートナーを組んでいるボブ・タプスコットとロス検事局のアレックス・ケネディ検事補とともに訪れ、ボッシュが三十年ほど前に逮捕し、現在も死刑囚として服役中の連続殺人犯プレストン・ボーダーズに関して、あらたな証拠が出たとして、再審がひらかれる見込みだと聞かされる。残された証拠を調べ直したところ、すでに死亡している別の死刑囚ルーカス・ジョン・オルマー(連続婦女暴行殺人犯)のDNAが被害者の着衣に精液の形で付着していたことが科学的に立証されたという。事件発生当時、DNAは、犯罪捜査の証拠として認められていなかった。証拠保管庫に収められた被害者の着衣の入っている当該事件の証拠保管箱をソトとタプスコットが開封する様子は、ビデオに録画されており、そこに問題はまるで無いように思えた。
    ボーダーズの弁護士ランス・クローニンの主張は、被害者の着衣に別人のDNAが付着している以上、ボーダーズ逮捕の決定的な物証(ボーダーズの住居で見つかった被害者のペンダント)は、事件担当の捜査官(ボッシュと彼のパートナー)が仕込んだものだ、というものだった。ロス市警と喧嘩別れしたいきさつから、ロス市警と検事局のボッシュに対する心証はことのほか悪く、証拠を捏造した悪徳警官としてボッシュに責任をかぶせようという気が満々だった。おのれの信用が地に落とされる危機に際し、リンカーン弁護士ミッキー・ハラーにボッシュは相談し、ミッキーの導師であるリーガル・シーゲルの智慧を借りることになる。
    一方、サンフェルナンド市警の管轄で、薬局を経営する父親と息子が薬局内で銃殺されるという事件が発生し、小規模共同体の警察としては、手が足りず、ボッシュも捜査に狩りだされる。捜査を進めるなかで、この事件が、薬局を舞台にしたオキシコドン(半合成麻薬)不正請求にまつわるものであることが判明する。すなわち、身内に引き込んだ医師に鎮痛剤でもあるオキシコドンの処方箋を書かせ、患者を装った出し子たちに薬局で大量に入手させ(料金は医療保険Medicareでカバーされる)、それを売りさばいて大金をせしめている犯罪者集団がいた。薬局の父親は、永年その片棒を担がされていたのだが、息子がその不正に気づき、手を引こうとして、犯罪者集団に処刑されたのだった。犯罪者集団のアジトを突き止め、親玉を逮捕する証拠を手に入れるため、ボッシュは、潜入捜査に赴く。

    内容紹介のコピーだが、これを読めば、ほぼ上巻は読まずに済んでしまう丁寧さ。
    一粒で二度以上の美味しさを堪能しつつ、下巻へ。

    0
    2020年08月17日
  • 紙の動物園

    Posted by ブクログ

    散々話題になって、2010年代SFのベスト10にも選ばれて、ようやく読んだケン・リュウの『紙の動物園』
    確かに面白いのだけど、それ以上にSFというジャンルに吹いた新しい風というか、雰囲気を感じる短編集だったように思います。

    表題作の「紙の動物園」は特に傑作だと評判は高かった気がしますが、本当に評判に違わない傑作!
    アメリカ人の父と中国人の母を持つ息子が主人公。折り紙の動物に命を吹き込むことが出来る母。しかし息子は成長するに従い、中国人の母に反発を覚えるようになり……

    国籍や言語の違い、文化の違い、それは親子ですらも遠い距離にしてしまいます。そして母からの手紙で明かされる、語られることのなかった母の人生と息子への想い。

    過酷で孤独だった彼女の人生。そして見つけた居場所。一方でどれだけ愛が深くても埋めることのできない、我が子との距離。

    どこかメルヘンチックな紙の動物たち。それはおもちゃで自分だけの世界を作っていた子どものころを思い出させるような気がします。
    そして母への反発と紙の動物からの卒業。作中では人種や言語、文化の違いからこの反発の端を発していますが、この反発心やおもちゃからの卒業も、子どもだった人の多くが思い当たりそう。

    そして、離れて失われてから分かる母の存在と愛情の大きさ。それでも決して時間は戻ることは無く……。

    SFであったり、幻想であったり、海外が舞台であったり、異文化がキーワードになったり、歴史的な事件も織り込まれたりするのですが、それ以上に「紙の動物園」という作品は、どこにでもある普通の母子の物語でもあった気がします。

    郷愁や思い出、母に対する決まり悪さ、そして母の愛と想い。あらゆる人が共感できそうな感情と過去をゆっくりとなでおこすような、そんな感覚を読み終えた時に思いました。
    この切なさであったり、あるいは郷愁であったりは、ジャンルに縛られずあらゆる人に届くのではないか、とも思います。

    もう一つ強く印象的だったのは「文字占い師」
    台湾に引っ越してきたリリー。しかし父の仕事のため、台湾の米軍学校の同級生から距離を置かれてしまう。そんなリリーがある日出会った一人の少年と、彼を育てるおじいさん。
    そのおじいさんは、自分は文字占い師だと話し、リリーが何気なく選んだ単語から、リリーの現在を言い当てて見せると言う。

    リリーが選んだのは『秋』という単語。それに対し文字占い師の甘(カン)は、秋の漢字の成り立ちを説明した後、その下に心を書き加え『愁』という字に書き換えます。
    そして「愁」には愁いや悲しみの意味があることを語り、リリーの孤独を言い当てます。そうしてリリーは、どんどん二人との距離を詰めていきますが……。

    この文字占い師の甘の語りは、本当に魔術のよう。漢字の意味や成り立ちを説明していく中で、徐々に話は甘の人生、そして中国や台湾の歴史や国家の話へ形を変えていきます。
    そしてそれは、国家や歴史、政治や思惑に振り回されてきた個人の悲劇と、それでも前を向こうとする人々の強さまでも表現しようとするのです。

    しかし、やがて訪れる登場人物たちへの過酷な運命は、国家の矛盾と、国家に繋がれた個人の哀しさを浮き彫りにします。最後に残る切なさや寂しさが、印象に強く残りました。

    「結縄」のアイディアは、この短編集でも随一の面白さだったなあ。縄で文字を伝える少数民族。その少数民族の元を訪れる研究者ト・ムの目的が明らかになったときは、アイディアの面白さに脱帽しました。

    そしてアイディアの面白さで話を終わらせず、そこから科学や時代の波に飲み込まれる、少数民族の哀切を浮かび上がらせるのもすごい。

    アイディアでいうと「選抜宇宙種族の本づくり習性」はまさにセンス・オブ・ワンダーという言葉が当てはまります。
    様々な異星人、さらにはロボットのような種族までが、地球人からすると本とは思えない、それでも「本」としか言いようのないものを作っていく様子をただ解説する話。

    想像力がかなり必要とされますが、これだけのことを文章に起こせるのがまずすごい。そして、ラスト一行は本好きにはある意味力強く響くかも。

    他に印象的だった短編を簡単に。

    「もののあはれ」の主人公は宇宙船の乗組員の日本人。
    東日本大震災の時に、物資の配給にちゃんと列を作って受け取る日本人の姿が世界から賞賛されましたが、ケン・リュウもそんなふうに日本を良く思ってくれているのか、とも感じる短編。

    ひねくれてる自分は、列を作るのは外国の人が思ってるような、崇高なものが理由でもない、と思ってしまうのですが、それでも作品の穏やかな語り口と、深遠なテーマは、日本という国や文化を誇らしく思わせてくれます。

    「太平洋横断海底トンネル小史」
    上海からシアトルまでをつなぐ巨大な海底トンネルの建設に、現場で携わった男の話。
    国家の巨大事業として派手に進められた建設の裏で、地上で暮らす家族とは疎遠になり、地上に戻れなくなった男。やがて時代が進むに従い、産業の高度化や仕事の危険さ、人件費の高騰で工事の担い手が少なくなり国が取った選択と、男が取った行動は……

    繁栄する世界の裏で、忘れられ語られることもなくなってしまった悲劇と罪。そして取り残された者の哀切が印象的。


    「どこかまったく別の場所でトナカイの大群が」
    安全な空間で暮らすレネイと、宇宙飛行士として飛び立とうとするその母。そしてレネイが初めて外の世界へ飛び出したときのワクワク感。
    一方で外の世界を知ってしまった娘に対しての父の思いであったりと、冒険心と親の切なさが感じられる作品。

    不老不死がテーマの「円狐」
    生と死、様々な人や家族との出会いと別れから導き出される、人生の真理。静かに穏やかにたおやかに閉じられる物語の終わりが、また情緒深い。

    妖狐の娘と妖怪退治師の男を描く「良い狩りを」も独特のSF。
    文明や科学の発達により居場所を失っていく妖弧と妖怪退治師。本来相対するはずの二人が、そんな時代の波に飲まれつつも、その時代の中を必死に生き抜き、そして流れゆく時代に対し、最後に示す気高い姿と、未来への希望が心に残ります。


    最後に収録されていた「良い狩りを」の影響もあるのか、『紙の動物園』に収録されている短編の持つ雰囲気は、ジブリ映画の『平成狸合戦ぽんぽこ』と似たものがあるように思います。

    都市開発により、住処である里山を奪われそうになった『ぽんぽこ』の中の狸たち。彼らは妖術を使って開発を中止させようとしますが、それも徐々に限界を見せ始め……

    失われたもの、戻らないものへの郷愁。科学や文明の発達に取り残されたり、あるいは翻弄される人々。国家や時代のうねり、科学技術の波に飲まれ、表舞台からひっそりと消えたマイノリティや弱者たち。

    『紙の動物園』で描かれた登場人物たちの姿が、人間や文明の発達の前に、故郷を失い姿を消した『ぽんぽこ』の狸たちと、どこか似ているような気がします。

    そしてもう一点、『紙の動物園』と『ぽんぽこ』に共通しているように感じたのは、そうした弱者であったり、表に出なかった声を掬い上げようとするどこか優しい視点。

    人間たちへの反抗への一方で、狸たちの生活や個性、そして自然を生き生きと描いた『ぽんぽこ』
    穏やかな語り口と静かな抒情で、登場人物たちを見つめる『紙の動物園』の短編たち。

    時代や歴史の流れ、あるいは技術の発展に伴い失われゆくものや、表にでなかったもの、変わってしまうもの……。そして、そんな中でも最後まで変わらないもの。
    そうしたものたちへの愛惜であったり、優しい視点が根底にあるように感じました。

    そしてこの視点こそが『紙の動物園』が、ベストSFに名を連ねた理由だと自分は思います。
    今まで読んできたSFも、こうした話はあったような気はします。でもその視点はどちらかというとシリアスというか、ブラックというか。
    進みすぎた技術や、強大な国家への警鐘、あるいは皮肉が印象に残るものが多かったです。

    一方でこの『紙の動物園』はそれ以上に、そうしたテーマに押し流される人たちの声を、静かに、そしてたおやかに掬い上げようとしていることが印象的でした。
    そうした視点が、この感想の最初に書いた「SFの新しい風や雰囲気を感じた」理由だとも思います。

    こういう視点って人柄もそうですが、著者のケン・リュウの出自もやはり関係しているのかもしれません。
    歴史的な事件や政治的な事柄に対し、自国民に自由に語ることを許さない中国。その裏にはたくさんの声なき声が渦巻き、そして聞かれることのないまま、時代の中に消えていった声もたくさんあると思います。

    幼少期をその中国で過ごし、その後アメリカに移住したケン・リュウ。海外から見た故国の矛盾と、その一方で子ども時代や、中国文化への郷愁。
    そうしたものが合わさってこうした独特ながらも味わい深く、そして世界の壁を越えて愛される短編たちが生まれたのではないか、とも想像してしまいます。

    以前『折りたたみ北京』という中国SFのアンソロジーの感想でも書いたのですが、中国SFの作中で描かれるキーワードやガジェットは確かに目新しくて面白いです。

    でも作品の根底にあるものであったり、人間に対する視点というものは、やはり普遍的なもののような気がします。

    一方で、中国という出自やキーワード、ガジェットがあるからこそ、その普遍的なものがより鋭く、あるいは味わい深く描かれているところもあって、だからこそ中国SFが熱い! という熱が生まれたのだとも思います。

    でも〈中国〉や〈SF〉はあくまでキーワードであり、設定でしかありません。それを存分に生かした物語と、その根底にある優しい視点。それこそがこの『紙の動物園』の最大の魅力だと思うのです。

    0
    2020年07月15日
  • 真鍮の評決 リンカーン弁護士 (下)

    Posted by ブクログ

    リンカーン弁護士シリーズ第2作。相変わらずとても面白かった。こんなに早い段階でハリーボッシュも絡んできて、ファンには嬉しい限り。文句なし。

    0
    2020年05月08日
  • 真鍮の評決 リンカーン弁護士 (上)

    Posted by ブクログ

    リンカーン弁護士シリーズ第2作。相変わらずとても面白かった。こんなに早い段階でハリーボッシュも絡んできて、ファンには嬉しい限り。文句なし。

    0
    2020年05月08日
  • レイトショー(下)

    Posted by ブクログ

    (上巻より)

    女性が主人公と言うところも良かったし、
    犬が出てきたのも可愛かったし、
    海と暮らしているのも良かった。

    それと、
    ボッシュがテレビドラマ化され、
    その撮影がハリウッド署で行われ、
    署のクリスマスパーティの資金になっているという話が
    でてきたが、
    本当なのだろうか?

    次の作品が楽しみだ。

    0
    2020年03月22日
  • レイトショー(上)

    Posted by ブクログ

    マイクルコナリーの新シリーズの第1作目。

    ハワイ生まれの女性刑事が主役。
    上司ともめてレイトショーと呼ばれる深夜勤務に飛ばされたが、
    前向きに熱心に職務に励んでいる。
    オフには愛犬とともにパドルボーディングを楽しみ、
    海岸で眠る。

    女装男性に対する暴行事件とナイトクラブでの銃撃事件の両方を追う中で、
    裏切られたかつてのパートナーと衝突した直後に彼が殺されてしまう。

    (下巻へ続く)

    1
    2020年03月22日
  • レイトショー(下)

    Posted by ブクログ

     楽しみにしていたコナリーのニュー・ヒロイン、レネイ・バラード初登場作品。コナリーのメイン・シリーズを背負う我らがヒーロー、ハリー・ボッシュがかつて在籍したハリウッド署、しかもそのナイトシフトの刑事たち(タイトルの通りレイトショーと呼ばれている)を舞台に展開する独特の警察小説ワールド。

     コナリー作品の特色を余さず継続している。バラードの勤務先として描かれる警察署内の凌ぎ合い・暗闘・友情など従来のコナリーの描写にプラスして女性ヒロインならではのセクハラという材料などもじっくりと取り入れている。

     さらにヒロインであるバラードを、彼女自身につかず離れずの視点で密着して描いている。新刑事ヒロインの公私の生活。人となり。これまでの人生。関わる人々の個性。素晴らしく濃密に描かれている。

     ハワイはマウイ島出身。父をサーフィンの事故で失い、母とは幼児の頃から音信不通。西海岸の祖母に引き取られ、彷徨の末に新聞社に入社。様々な事件に魅せられ、ついに警察官となる。そんな生い立ちのバラード・シリーズに初物ならではの興味を否応なく引き立てられる。そしてコナリー・ブランドならではの素晴らしい。

     レイトショー勤務では、殺人事件のみならず、様々な犯罪に立ち会わねばならない。一晩に起こるいくつもの難事件。朝が来るとそれを日勤の担当刑事たちに引き渡さねばならない。夜勤刑事はハリウッド署では二人。交代勤務ではなく、ずっと。

     ボッシュ・シリーズ以上に事件の種類が増えるため複数事件が同時多発的に勃発する。それらのすべての事件や謎に決着をつけねばらないので、読者もけっこう忙しい。モジュラー型ミステリーと言ってもよいかもしれない。

     しかも事件は昼間の捜査課に持っていかれる。でもバラードは捜査を続けたい、事件を自分のものとして追い続ける。当然ながら警察内での軋轢。疎外。夜勤の相棒は家庭内事情にてあまりやる気はなし。ゆえにソロでの捜査が続く。

     女性独自の危険が描かれる。女性ならではの私生活も。パドルボードの趣味。海辺でのテント生活。そこそこの愛人。そして何よりも事件の中でこだわる人間と人間の問題。基本的にはボッシュと同じ世界でありながら、あまりの変数の多さに驚かされるまずまずのシリーズスタート。

     コナリーの小説世界には、やはり外れはない。優れた完成度の高さにレネイ・バラードという女刑事のシリーズスタートと、この魅力的なヒロイン像を創り出してくれた大好きなこの作家に改めて喝采を送りたい。

    0
    2020年03月19日
  • レイトショー(上)

    Posted by ブクログ

     楽しみにしていたコナリーのニュー・ヒロイン、レネイ・バラード初登場作品。コナリーのメイン・シリーズを背負う我らがヒーロー、ハリー・ボッシュがかつて在籍したハリウッド署、しかもそのナイトシフトの刑事たち(タイトルの通りレイトショーと呼ばれている)を舞台に展開する独特の警察小説ワールド。

     コナリー作品の特色を余さず継続している。バラードの勤務先として描かれる警察署内の凌ぎ合い・暗闘・友情など従来のコナリーの描写にプラスして女性ヒロインならではのセクハラという材料などもじっくりと取り入れている。

     さらにヒロインであるバラードを、彼女自身につかず離れずの視点で密着して描いている。新刑事ヒロインの公私の生活。人となり。これまでの人生。関わる人々の個性。素晴らしく濃密に描かれている。

     ハワイはマウイ島出身。父をサーフィンの事故で失い、母とは幼児の頃から音信不通。西海岸の祖母に引き取られ、彷徨の末に新聞社に入社。様々な事件に魅せられ、ついに警察官となる。そんな生い立ちのバラード・シリーズに初物ならではの興味を否応なく引き立てられる。そしてコナリー・ブランドならではの素晴らしい。

     レイトショー勤務では、殺人事件のみならず、様々な犯罪に立ち会わねばならない。一晩に起こるいくつもの難事件。朝が来るとそれを日勤の担当刑事たちに引き渡さねばならない。夜勤刑事はハリウッド署では二人。交代勤務ではなく、ずっと。

     ボッシュ・シリーズ以上に事件の種類が増えるため複数事件が同時多発的に勃発する。それらのすべての事件や謎に決着をつけねばらないので、読者もけっこう忙しい。モジュラー型ミステリーと言ってもよいかもしれない。

     しかも事件は昼間の捜査課に持っていかれる。でもバラードは捜査を続けたい、事件を自分のものとして追い続ける。当然ながら警察内での軋轢。疎外。夜勤の相棒は家庭内事情にてあまりやる気はなし。ゆえにソロでの捜査が続く。

     女性独自の危険が描かれる。女性ならではの私生活も。パドルボードの趣味。海辺でのテント生活。そこそこの愛人。そして何よりも事件の中でこだわる人間と人間の問題。基本的にはボッシュと同じ世界でありながら、あまりの変数の多さに驚かされるまずまずのシリーズスタート。

     コナリーの小説世界には、やはり外れはない。優れた完成度の高さにレネイ・バラードという女刑事のシリーズスタートと、この魅力的なヒロイン像を創り出してくれた大好きなこの作家に改めて喝采を送りたい。

    0
    2020年03月19日
  • レイトショー(下)

    Posted by ブクログ

    マイクル・コナリー『レイトショー(下)』講談社文庫。

    何ともクールなヒロインが誕生したものだ。ハリー・ボッシュやミッキー・ハラーのように人間味がある熱血漢。なかなか良いじゃないか。

    『レイトショー』はマイクル・コナリーの30作目とのこと。コナリーの邦訳作品は『ナイトホークス』以来、刊行順に全て読んでいるが、いつもながら完成度の高さには驚かされる。この先の邦訳予定を見ると、何とバラードとボッシュの共演作品も控えているらしい。

    ナイトクラブの銃撃大量殺人事件の後、かつてバラードを裏切った相棒の刑事が殺害される。幾つかの事件を掛け持ちし、精力的に捜査を進めるバラードだったが、トランスジェンダーへの暴行事件の犯人に囚われてしまう……

    本体価格880円
    ★★★★★

    0
    2020年02月19日