アーサー・コナン・ドイルのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
『事件簿』と聞いたら、中年から老境にかけての日本人シャーロッキアンは複雑な表情を浮かべること必至だろう。
ホームズの冒険談は長編が4、短編集が5つ。9冊でコンプリートできるはず。……はずなのに、ミステリ好きが愛する創元推理文庫版では8冊しか揃えられない。新潮文庫版では10冊になってしまう。おかしな状況が長らく続いていた。
というのも『事件簿』の版権を新潮社が握っていたため、他の出版社は出せなかった。
創元推理文庫で8冊を揃えたシャーロッキアンは、しぶしぶ新潮文庫版『事件簿』を買った。これでコンプリートできるかと思えば、さにあらず。
なんと、新潮文庫は他の短編集から少しずつ間引いた8編で『シャーロック・ホームズの叡智』なる日本独自の短編集を編んでしまった。
『事件簿』から外れた短編は「ショスコム荘」と「隠居絵具師」。たった2つの短編のために『叡智』を買う羽目になった中学生の苦衷を察して頂きたい。残り6編は既読なのだ。
いまの私なら「違った翻訳の味わいを楽しもう」、そうしたオトナの余裕もあるのだが、中学生が乏しい予算で買っている以上、文句の二つや三つ出てしまう。
原作者の死後60年を経て、著作権が消失し、ようやく創元推理文庫版『事件簿』が上梓された。連載時の挿し絵も満載、シャーロッキアン感涙の一冊である。 -
Posted by ブクログ
今読んでも、ほんとうに傑作ぞろいのすばらしい短編集。とくに赤毛組合は、みごとですわ~。
これ、「ストランド誌」に掲載されていた当時の熱狂を想像すると、ちょっとテンションあがる。しかもドイルはものすごい速筆だったらしく、こんな完成度の高い短編をほんの2週間かそこらで書いていたらしいんですよね(というのは、ほかの本で読んだ。)
子どものころポプラ社版のホームズを片っ端から読んでいた記憶はあるものの、ちゃんと発表順にしらみつぶしに読んだわけではないので、この機会にちゃんとぜんぶ読んでみようと思います。つぎは「帰還」かな?(ちがった。回想だ。) -
Posted by ブクログ
ネタバレ『〈シルヴァー・ブレーズ〉号の失踪』
近く開催される予定の〈ウェセックス・カップ〉の本命馬である〈シルヴァー・ブレーズ〉号の不可解な失踪と、同馬の調教師ジョン・ストレーカーの惨死という事件です。馬が無事でよかった、調教師ストレーカーは卑劣だ、と思いました。
『黄色い顔』
ノーベリーに別荘を借り、しあわせに暮らしてきた夫婦ですが、あるときから夫は妻の秘密に悩まされることになります。夫の話を聞いていると、途方に暮れて苦しくもなりましたが、最終的にはやさしい、しあわせな物語でした。
また、ホームズの“見込みは結果的にまちがっていたものの、事の真相だけははからずも明らかになる(p56)”、ホームズにとって“ノーベリー”という言葉が意味を持つようになった事件でした。
『株式仲買店員』
パイクロフトは、コクスン・アンド・ウッドハウス商会を解雇されてしまいますが、ロンドンでも最高に資金の潤沢なモースン・アンド・ウィリアムズで採用されることになります。しかし採用の手紙をもらったまさにその晩、ピナーという男がやって来て多額の給料で雇うと言い、パイクロフトは幸運に舞いあがります。
この話にはやはり、裏がありました。犯人は同情できない、悪党でした。
『〈グロリア・スコット〉号の悲劇』
ホームランが大学時代に手がけた最初の事件の話です。“帆船〈グロリア・スコット〉号で起きた凄惨な事件の記録”と、“トレヴァー治安判事がこれを一読して、恐怖のあまりその場でショック死してしまったという、いわくつきのメッセージ”(p127)にはどんな関係があるのでしょう。トレヴァー氏はどうして船乗りハドスンに頭があがらないのでしょう。
ホームズが“手がけた”と言えるのかはわかりませんが、今の仕事をするきっかけを知ることができてよかったです。
『マズグレーヴ家の儀式書』
奇妙な〈マズグレーヴ家の儀式書〉にまつわる物語です。歴代のマズグレーヴたちが見のがしてきたなにかを、利口者の執事ブランドンと、ホームズが見つけました。
『ライゲートの大地主』
ホームズが二ヵ月以上にわたる捜査の重圧から病床に臥してしまったため、ワトスンとともにヘイター大佐の住む田舎で療養することになります。しかし、侵入盗と、殺人事件が起きてしまい、ホームズも捜査に関わります。その結果、ホームズは以前と変わらない元気のよさになり、田舎で静かに静養するという計画は、ホームズにとって大成功でした。
『背の曲がった男』
バークリー夫婦が口論をした後、夫は息絶え、妻は気を失って倒れていました。とてつもなく奇怪で、わけのわからない事件でした。そして、“卒中の発作による死”という“まるきり単純な事件”(p271)でした。
『寄留患者』
ブレッシントンは、あるときから、何事か、何者かを極度に恐れているような、奇妙にそわそわした興奮状態がつづきます。そしてその後、ブレッシントンは自殺してしまいます。
ブレッシントンが、医師パーシー・トレヴェリアンに投資し、ブルック街で開業させたという話もおもしろいですが、本筋とは関係ないのが意外でした。
『ギリシア語通訳』
まずシャーロックに兄マイクロフトがいるということ、そして彼がシャーロック以上に資質をそなえていることに驚きました。今回はそのマイクロフトから聞かされた一件の物語です。
語学の達人であるギリシア人メラス氏は、月曜の夜にあらわれたラティマーに通訳がいると言われ、辻馬車に乗せられます。その後目隠しされ連れて行かれた先には、顔に絆創膏を貼られた男が脅迫されており、また謎の女性がいました。ワトスンの推理が的中していたのが意外で、自分にわからなかったのが少し悔しくなりました。
『海軍条約事件』
外務省にいるパーシーのもとから、イギリスとイタリアで結ばれたきわめて重要な秘密条約が書かれている灰色の巻き物が盗まれてしまいます。そのため彼は、脳炎をわずらい九週間も寝こみ、衰弱してしまいます。
あまりにも証拠がありすぎたため、肝心な点が隠されてしまっていた事件でした。
『最後の事件』
犯罪界のナポレオンであるモリアーティー教授と、ホームズとのあいだにあった出来事です。彼らはつかみあいの争闘をし、取っ組みあったまま滝壺に転落したと思われます。
モリアーティー教授は急に登場して急に去ってしまっていて、ドイルがホームズものと訣別したかった思いを感じました。でも私はやはりホームズが好きで、こんなにあっさりいなくなるなんて思っておらず、復活するとわかっていても悲しい気持ちになりました。 -
Posted by ブクログ
観察と推理というやりかたをするホームズが携わった事件をワトスンが記録した、という形式の作品です。“日常的な謎を扱っている作品が多い(p519)”です。
『ボヘミアの醜聞』
ボヘミア王家を揺るがした一大スキャンダルをホームズが解決しようとするのですが、ホームズが“あの女性”の機知の前に破れ去ります。まさかホームズが負けるとは、意外でした。
『赤毛組合』
赤毛の男子ならばちょっとした仕事で週給四ポンドもらえるという“赤毛組合”、質屋の店主に勧める店員、最初からとにかく怪しいです。奇妙で、重大な事件でした。
『花婿の正体』
結婚式当日に消えてしまった花婿は、血も涙もない悪党でした。こういった悪党は、許せません。
『ボスコム谷の惨劇』
マッカーシーという男が殺されます。状況証拠から、ワトスンやレストレード警部は犯人はその息子だと考えてしまいますが、ホームズは違いました。
『五つのオレンジの種』
五つのオレンジの種をK・K・Kから送られた伯父、父が次々と殺されます。自分のもとにも種が届いたジョンは、ホームズに相談に来ます。ホームズは犯人を見つけ、報復も仕掛けたのですが、謎が残ってしまい、もやもやする事件でした。
『くちびるのねじれた男』
ネヴィル・シンクレア氏がいなくなり、シンクレア氏が最後に目撃された部屋にいた物乞いヒュー・ブーンが捕らえられます。単純そうに見えながら、難問をつきつけてくる事件でした。
『青い柘榴石』
使丁(コミツシヨネア)が街で手に入れた鵞鳥の餌袋から、青い柘榴石(ブルー・カーバンクル)が出てきます。神々しい宝石だからこそ、犯罪の核心にも標的にもなるのです。
クリスマスーひとを許す季節のため特に、ホームズの優しさが見えました。
『まだらの紐』
ロイロット家の姉は、死の間際に“まだらの紐”という謎めいた言葉が叫びます。その意味とは…。
昔読んで忘れてしまった話も多いのですが、一番印象に残っていました。この事件が奇々怪々な様相を呈しているからかもしれません。
『技師の親指』
技術が親指をなくした事件です。“本来、親指のあるべき箇所には、毒々しく赤い海綿状のものが見えるだけ。(p349)”という描写には衝撃を受け、想像するだけで恐ろしく感じました。
『独身の貴族』
結婚式後の披露宴で、花嫁が消えてしまいます。不可解で奇妙な事件ですが、確かに、自然な成り行きなのかもしれません。
『緑柱石の宝冠』
民営銀行の頭取が、イギリスの高貴な方から担保として緑柱石(ベリル)の宝冠を預かりますが、その一角が盗まれてしまいます。宝冠を持って立っていた息子のアーサーが怪しまれますが、口を割ろうとしません。それには立派な理由がありました。
『橅の木屋敷の怪』
よすぎる給料を支払う家庭教師先に不安になりますが、やはり、背後には強力な動機がありました。家庭教師先のルーカッスルは恐ろしい人物でしたが、雇われたハンター嬢は独力で人生を切りひらいてきた強い女性で、惹かれました。