湊かなえのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
読み終えたあと、しばらく窓の外を眺めていた。特別な景色があったわけではない。ただ、物語の中で何度も姿を変えた「真実」というものについて考えていたのだ。
この小説では、一人の女性の死を巡って多くの人が語る。けれど彼らが口にする言葉は、どこか少しずつ歪んでいる。悪意や嫉妬、思い込みや保身が混ざり合い、まるで曇った鏡を何枚も重ねたように、本当の姿が見えなくなっていく。
僕たちは普段、自分が見たものを真実だと思っている。でも実際には、自分の都合の良い物語を作り、その中で世界を理解しているのかもしれない。SNSが広がった現代では、その傾向はさらに強くなっているように思える。
湊かなえは、ミステリーという形を借りながら、人間の不安定な認識や集団心理の怖さを静かに描き出している。犯人探しの面白さよりも、「人は他人をどれだけ簡単に誤解するのか」という問いのほうが深く心に残った。
読み終えたあとに残るのは驚きではなく、少し冷たい余韻だ。そしてその余韻は、ふとした瞬間にもう一度こちらを振り返る。そんな小説だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ犯人が誰なのか、という事はこの小説の本質では無い気がして、境遇について考えながら読み進めていったら。
陽子が1回目の悩み(結婚について)を晴美に相談した場面で『私達が親友になれたのは、同じ境遇だからなのかな』と尋ねた時点では、お互いにそれを否定できるほどの自信が無く、自分は誰の子なのかを知りたいという共通の目的があるから親友でいれてるのかもしれないという気持ちが汲み取れた。
しかし、晴美が犯人だと知っても通報しなかったことや、母親について真実を知った後も彼女達が親友であるということ自体が答えだと思った。
きっかけが境遇だろうと、彼女達が出会えた事は運命であり今も見えないリボンで繋がってる事だろう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ湊さんの伏線回収の鮮やかさに唸らされた。
二人の少女の拗れた友情を礎に、思春期の死に対する好奇的な関心、家族や友人の言葉の呪詛、未熟さゆえの妬みや被害者意識みたいな自分勝手な悪意、私が主人公らと同じ女子高生の時に読めていたらもっと響いていたかも。
あとがきに書かれていた書店員の感想が面白かった、因果応報がテーマの一つである作品で、二人を死に追いやった二人はこれからどのような報いを受けるのか。
一方で、おっさんは報いを受けるべき行いはしていないのに不遇に追いやられているし、因果応報すら理想論な世の中だとも感じる。
本筋ではないだろうけど、「悪いことをしたから殺される。これは、究極の罰は死だと言ってるのと同じでしょ。」という岡さんのセリフが刺さった。因果応報でさえ世の常ではない中で唯一の絶対は死であり、それは罰、それとも救いなの、ゲームオーバーなのかゲームクリアなのか退場なのか。
死ぬときに人生の答え合わせみたいなのがあって、戦績が全て教えてもらえたらいいのにな、って定期的に思う。