町田そのこのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
しあわせのかたちが1番好きだった
町田その子さんは、人生のどん底にいる人、とりわけ自分の力で人生をコントロールできない子供の心を繊細に表現していて、その書き方が素敵だとどの作品でも思う。子供は親を選べないから、どんなに憎くて恨めしくて自分を傷つける親であっても、子供にとっては唯一の確実な繋がりでかけがえのない存在。だからどうしても求めてしまう、選択肢のない子供ながらの矛盾や葛藤を胸が痛くなるくらい解像度高く表現するのが町田その子さんだ、と久しぶりに読んでたっぷり味わった。
“ひとが己の手で終わらせていいのは、己の命だけ。他者の命は決して奪ってはいけない“
苦しみから抜け出すために他者を殺すことは救いにならない。苦しみが「人殺し」と罪に姿を変えて一生逃れることができない、
最近老老介護に辟易して、暴力を受けていて、結局被害者が加害者を殺害する事件を耳にする。
私はそれしか被害者が救われる道は無かったのだろうなと感じていたが、この節を読んで「罪」の在り方や人を殺すことがどんな意味をその人にもたらすかを深く考えるきっかけになった。人を殺すことで自分が救われることは決して無いんだな、と、そして社会が苦しむ人にもっと敏感になり、すぐに手を差し伸べてくれるような仕組みを作っていかないといけないんだよなと同時に思ったり、、、 -
Posted by ブクログ
この本を読んで、死との向き合い方を改めて考えた。
芥子の実の話が伏線を回収するようで特にグッときた。
死は平等に訪れるのと同時に、
生きている人は、故人の死を受け入れることになる。
死に様は生き様だという言葉もあるけれど、
その様がありありと表現されていた作品だった。
生きている間に、どれだけの後悔をなくせるか
それを今後の目標にして生きていきたい。
あの時ああすればよかった、
あの人にあの時こんな言葉をかければよかったのか?
死んでからでは何もかもが手遅れで、
もう会うことはできなくなってしまう。
ただ、この作品の中で後悔する人への救いの場面、
誰しも心の中に椅子を持っている というところは
確かにそうだな、と腑に落ちた部分でもあった。
あの人ならこんな時、こんなふうに言うだろうなと
想像できてしまうくらい、深い関係を
大切な人とはこれからも築いていきたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「恋愛も結婚も、ひとりじゃできないんだ。彼を責めろとは言わないけれど、自分を責めるのはやめなよ」
「一緒に生きていくために大切なのは『しあわせな瞬間』だけではなくて、『相手のしあわせを考える時間』も大事なんだよ」
「ああ、四十を半分も過ぎたひとがやっと知ることだってある。五十を超してやっと踏ん切りをつけられる過去がある」ひとはいつ、大事なことに気付くか分からない。気付けるその日まで、自分なりにもがくしかない。」
「ぼくたちはあまりにも、明日に任せすぎている。」
「それから純也の子どものころ好きだった公園に行き、わたしが高校時代毎日のようにランニングしていた川べりを歩いた。いろいろなことを知ったと思っていたけれど新鮮な会話をして、ときどき笑いあった。二度目に出会った居酒屋で揚げ出し豆腐を食べて、別れた。」 -
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52ヘルツってなんだろ?と思いながら読みはじめましたが、想像していた以上に重い内容でした。
自分では助けを求めていても、その声が誰にも届かない。周りからは普通に見えていても、実は誰にも言えない苦しみを抱えている。そんな人が現実にもいるんだろうなと思うと、なかなか考えさせられます。
ただ、人の気持ちを理解するって難しいことですよね。相手のことをわかったつもりでも、本当は何もわかっていないこともあるだろうし…。かといって、何でもかんでも踏み込んでいけばいいわけでもないし…。
それでも、誰かが出している小さなSOSに気づける人でありたいなと思いました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ貧困、ネグレクト、DV、トランスジェンダーなどのLGBTQ問題などが詰まったなかなかの問題作でした。
主人公の貴瑚(きこ)は、家族に人生を奪われるような日々を過ごしてきた女性。つらい過去から離れ、海辺の田舎町で一人暮らしを始めた彼女は周りから偏見を受け誤解される。そして母親から虐待を受け、「ムシ」と呼ばれている少年に出会う。
少年の孤独にかつての自分を重ねた貴瑚は、彼を助けようとするが、その過程で回想し、かつて自分の苦しみに気づき、救ってくれた人との記憶や、自身が抱える深い傷にも向き合っていくことになる。
タイトルの「52ヘルツのクジラ」は、作品の中で、ほかのクジラに声が届かない孤独な存在として描かれる。それは、助けを求めても誰にも気づいてもらえない人たちの姿と重なっていく。
虐待や孤独という重い題材を扱いながら、誰かが自分の声を聴いてくれることで前向きに生きていけるという明るいエンディングだったので、ホッとした。
杉咲花出演の映画も配信で見たが、なかなかの名演技でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ個性が強烈な登場人物たちがとにかく魅力的で、彼らの掛け合いに何度も笑わされる。
けれど、物語の根底に流れているのは人の心に寄り添う温かさだ。
コンビニという身近な場所が、悩みや孤独を抱えた人々の心を救い、明日へ踏み出すきっかけになっていく姿がじんわりと胸に響く。
ユーモアたっぷりの展開に笑いながらも、ふとした言葉にハッとさせられ、気づけば登場人物たちを応援している。
町田そのこさんならではの、人間の弱さを受け止める優しい眼差しと、心に染み入る言葉が印象的。
読み終えたあと、いつものコンビニが少し違って見えてくるような、温かな余韻の残る物語。 -
Posted by ブクログ
先に生きてきた頼もしい女性たちを介して綴られた短編集です。
収録作の『くろい穴』は、町田さんのデビューのきっかけになった作品だそうです。
どの話も魅力的ですが、短い物語の中で最も感情が揺さぶられ、盛り上がりを見せたのは、最後に収録されている『先をいくひと』でした。
読み終えたあと、このタイトルが心に深く刺さりました。
幼馴染に恋をした主人公を描く『無課金アバター』など、登場人物たちの発想が楽しいからこそ、その裏にある悲しみがより一層引き立ち、深く胸に刺さりました。
元気がなくなったときに、また読み返したい大切な作品です。
ところで、並行して読んでいる西加奈子さんの『くもをさがす』も、たまたまですが「がん」というテーマが重なっています。
物語の力に背中を押され、私も一度、検査に行ってみようかと思い至りました。