町田そのこのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
コンビニ兄弟第3作品目。何だか、プロローグから面白い。和歌&マキオコンビのおふざけ(?)から、もう心を掴まれてしまう。笑える。
好きなキャラがまた増えた。底なしの明るさを感じさせる宝ちゃんと限りなく芯の強い華さん。この2人に共通するツギさんも相変わらずステキです。ツギさんの偏見のないシンプルな言葉たちが心に響く。安心する。だから皆集まってくるんだろうな、ツギさんに。
今巻は出番のなかったミツ店長とツギさんの会話、イチ兄さんの想像を巡らせる。上手いなぁ。次巻が楽しみになってしまう。
自分を傷つけられたことに対してしっかり怒れ。まっすぐ怒ってみたら、自分が泣かなくてもいいことで泣いて -
Posted by ブクログ
タイトルからはどこか不吉な印象を受けるけれど、読後に残るのはむしろ心温まるぬくもりだった。
家に染みついた祈りがバトンとなり、リレーのように次の入居者へ受け継がれていく。
そして読み終えた瞬間、第五章から時系列順にもう一度読み返したくなるような構成が印象的だった。
幸せを掴むためには、常に前へ進み続けなければならない――なんてことはない。
疲れたら立ち止まり、息を整える時間もきっと必要なのだと思う。
「不幸の家」と噂されるその家の実態は、再び歩き出すための拠点であり、幸せへ向かう途中にある“中間地点”のような場所に感じた。
入居者が悉く長く住み続けないがゆえに立った“不幸の家”という噂。 -
Posted by ブクログ
ずっと気になっていた、初読みの作家さん。
連作短編集となっている本作の1篇目は町田さんのデビュー作らしいが、そんなことを思わせないくらい登場人物たちの息苦しさが生々しく伝わってくる。この連作集では、登場人物たちが今いる環境が息苦しくてここではないどこかへ逃げようとするか、その地で必死で息をしようとしている。
晴子のように殻を飛び出して新しい自分と向き合おうとする人もいれば、唯子のように差し伸べられた手を断ってその地に留まる人もいる。どんな選択をしても、それは間違った選択ではなく、それぞれの短編の主人公たちを応援したくなるような結末が待っていたのが救いだった。 -
Posted by ブクログ
水槽のおおきさは、うまれもって、きめられている。水槽のおおきさで、魚のおおきさも比例していくというけれど、ひともきっとそうなのではないかとおもった。ちいさな街。展望台から見下ろせるくらいの、それはそれは小さな。そこからもがきたいと、広いところを目指すひとや、そのもがき方は違うと自分なりの最善を探し続けるひとや、留まってなにをすることもせず受容するひと。水槽での過ごし方の正解はない。「いつか旅立てると思えるその日まで、私の中にいたらいいんだよ」と、わたしが今過ごしている街にも、そう包んでもらえてる気がした。さいごは海にかえる。そうして、みえないわたしになって、ひろい世界へと広がっていったならば、