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コンビニパート従業員の中尾光莉は冬のある日、休日の店長・志波三彦に遭遇する。どこかいつもと様子の違う店長だが、思いがけない出来事に巻き込まれ、彼の驚きの過去を知ることに――。バイトと飼い猫と推しである志波樹恵琉の存在によって満ち足りた生活を送る高木恋斗。だが、彼女が門司港を離れると知り、一つの決断をする……。新たな展開を迎える大人気コンビニ物語第五弾。
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Posted by ブクログ
待ちに待ったシリーズ5冊目。発売日当日、書店に駆け込み平積みを見ると帯に「2026年春ドラマ化」の文字が。そして、「主演 中島健人」と。 ついにドラマ化。私の脳内では店長は目黒くんだったから「ケンティーか…」となったけど、彼はセクシーケンティーのアイドルだから店長に合うかもなぁと納得しながらレジへこ...続きを読むの本を持って行った。 今回は世のおばさま、もといお姉さまたちをトリコにしている九州限定コンビニエンス『テンダネス 門司港こがね村店』名物店長の志波三彦の切ない過去となぜ彼がコンビニの店長になったのかも明らかに。 フェロモン溢れる店長にも思春期があり、そして切なすぎる過去を乗り越えて大人に成長したんだなぁと。 今回もいつメンたちは健在で、チーム「門司港こがね村店」は優しい愛に溢れていた。 最後は寂しくも成長ある別れがあったが、まだ長兄の一彦さんは出てこないし、続編もあるんだろうなぁ。第6巻を期待して待っていよう。
やっぱり町田そのこさんはコンビニ兄弟シリーズが一番いいです。 すごい読みやすくて、今回は志波三彦のことであったり、樹恵琉中心の話でこれまでの話を知ってる身からしたらものすごく惹かれる話でずっと気になってたりしたことも描かれていて良かったです。 またコンビニ兄弟ロスが始まりそう…
/_/ 感想 _/_/_/_/_/_/ いや、、やばい、、カフェで読んでいて、ポーロ、ポーロと涙が流れてしまいました。登場人物たちがとにかくカッコよく、その姿にじわっと感動が込みあげてきます。 特に初登場のテンダネス会長・堀之内が最高で、感動と衝撃のスタートでした。 発売日...続きを読むをたまたま知れたおかげで発売日に購入でき、文庫の手頃さにも嬉しさがありました。今回も和歌、牧男の流れからスタートし、物語世界に一気に引き込まれます。 今年、門司港に行き、海底トンネルを歩いて山口まで行った経験があったので、物語の舞台が深くイメージでき、より物語に没入できました。本に出てきた場所に行った記憶と重なる瞬間は本当に楽しいものです。 心に刺さることばが多くて、今回も感動の連続でした。 /_/ あらすじ _/_/_/_/_/ 今回は、三彦がコンビニで働くことになった過去が明らかになり、彼の心の背景が丁寧に描かれます。さらに、彼とテンダネスとのつながりも物語の中で明かされ、新たな登場人物とあわせて、さらに物語の深い部分に触れる内容になっています。 /_/ 主な登場人物 _/_/_/ 和歌 牧男 中尾光莉 42歳、店員 堀之内重 テンダネス会長 広瀬太朗 大学4年、店員 阿野美也子 先生 中岡総士 小6 川瀬蓮 小6 梅田正平 あかじい 似瀬航起 塚原美幌 みほろ
シリーズ5作目。 今作はどんな内容だろうと手に取りました。 1作目で主要人物だった中尾光莉がたくさん絡んでくるのが嬉しかった。 そして、内容は店長の志波三彦の中学生の頃から今の年齢になるまでの話でした。 家族が増えるたびに襲われる自分というものへの不安。そして、そんな時に偶然出会った年上の女子高校...続きを読む生への恋心。 今作は、とってもとっても切ない物語で、少々うるっとしてしまいました。 そして、自分探しをしていた樹恵琉が一歩前に進み旅立つ話も収められていました。 途中からの登場人物だったけれど、しばらくは出てこないと思うと寂しいですね。 三彦さんは5人兄弟だそうで、まだ、一彦と四彦は登場していないので、いつか作品の中で会えるのを楽しみにしていようと思います。 今作も面白かったです(◍•ᴗ•◍)
もうシリーズ5まで来ました。さすがにシリーズ5まで来ると薄くなるかな?と思ったけど、全然楽しかった。今回は特にフェロモン店長の過去が描かれています。あの明るく優しい店長になったきっかけ、転機が素敵に描いたと思います。これまでの作品よりまたホッコリさせられました。マンガ化、ドラマ化が決まりましたが、そ...続きを読むちらも楽しみです。
本作も良かった!早いものでもう5作目ですが、飽きずに読めます。今回は、店長の過去が明かされてたり、アルパカッションくんの全貌が明かされたり(すごく可愛いですね)、働いてる子達の新たな物語があったり、感動もあり、たくさんの展開や要素があるので楽しんで読むことが出来ます。3話程の短編収録なのでサラッと読...続きを読むめるのも良いですよね。いよいよコミック版も出るようですし、なんと実写化もされるようですね。すごいな。。。私個人的には、小説だけで十分想像膨らませながらで楽しめるとは思いますが、きっと漫画や実写もこの原作が忠実に再現されれば人気作品になっていく事でしょう。次回作も楽しみにしていたいと思います。
今回は、いつもと違う人間らしい店長が見られて、良かったです。 「居場所」としてのコンビニ、店長の過去… 今回は泣けるシーンは一度もなかったので、電車の中には良かったです。 そして、コミカライズということで、試し読みもついていました。コミカライズにも向いている類だなぁと常々思ってはいました。2026....続きを読む4からドラマも始まるそうで。コミカライズも、ドラマの配役も、私の脳内店長とは、全く違っていたけれど、ちょっと気になる。
志波店長の過去が明かされる。 泣いてしまった。 毎回いい作品だなぁと思うけど今回はさらに良かった。 心に残る言葉がたくさんあった。
今作では店長の過去が語られます。 涙腺が弱い方は周りに人がいない時に読んでください。私は読みながら泣いてしまいました。
あなたは、こんな店長のいるコンビニを訪れたことがあるでしょうか? ・『震えるほど、うつくしくかつフェロモン溢れるひと』 ・『公認だか非公認だかのファンクラブもある』 私は今、『コンビニ店長』の話をしています。決してアイドルの話をしているのではありません。しかし、それは私やあなたの常識であっ...続きを読むて、広い世の中、こんな『コンビニ店長』がいる店がないとは言い切れないとも思います。 『常に彼のファンが押しかけている』 そもそもコンビニを訪れる目的が違っているようにも思いますがそんなコンビニがこの世にないとも言い切れないでしょう。 さてここに、『老若男女問わずに愛されるひとたらし』とされる一人の男性が店長を務めるコンビニが舞台となる物語があります。そんな店長の下で働く従業員が主人公を務めていくこの作品。そんな物語の中で店長の過去が明らかになるこの作品。そしてそれは、”店長はどうして、コンビニで働きたいって思ったの?”という問いの先にまさかの真実が明らかになるシリーズ第5作な物語です。 『コンビニ店員お手柄。とっさの判断が詐欺を未然に防ぐ!』『先月十五日、北九州市門司区内のコンビニエンスストア「テンダネス」で、店員のとっさの対応によりあわや特殊詐欺発生の被害が未然に防がれるという出来事があ』りました。『七十代の女性がコンビニを訪れ、電子マネー十万円分の購入を申し出た』のを、『勤務歴五年の店員・中尾光莉(なかお みつり)』がやさしく声をかけ、女性からことの真実を聞き取ったことで被害が防がれました。そんな彼女の『行動を称えて感謝状を贈呈』した『門司警察署』。そんな中尾は『テンダネス本社の会長室』へと招かれます。『ひとにやさしい、あなたにやさしい』と『大きな額縁に収まった書』が掲げられた『会長室にはいま、会長以下の役員や門司地区を担当しているエリアマネージャーまでが集ま』り、『光莉に熱い拍手を送』ります。『お客様をよくぞ、守ってくれました』と、堀之内会長から『会長賞』を授与された光莉。そんな中、『さすが、門司港こがね村店です』と話すエリアマネージャーの言葉に『ああそうか。ミツ坊の店だったなあ』と『堀之内会長が嬉しそうに目を細め』ます。『あの泣き虫で無鉄砲だったミツ坊が、こんな立派なスタッフを育てるほど立派な男に育ったんだなあ。嬉しいことが二重だよ』と言う会長に『え?堀之内会長、志波店長をご存じなんですか?』と訊く光莉は『ミツ坊?店長って、会長とそんな深い仲だったの?聞いてないんですけど!』と思います。『いろいろあったけどね、ミツ坊がいまもコンビニを…テンダネスを愛してくれてよかったと思うよ』と語る堀之内会長。 場面は変わり、『毎日のそれ、やめてもらえます?』、『花をお供えするのもやめてもらえます?わたしの遺影じゃないんですよ』と、額装された表彰式の写真を丁寧に磨く志波三彦に意見する光莉。『ぼくはほんとうに嬉しいんだよ。光莉さんのお陰で、お客様を守ることのできるお店であるという自信がついた。そういう店に育っていることが嬉しくて誇らしい』としみじみ言う志波に『どうにも怒りづらい』と、光莉は思います。そんな光莉は『それより今日は小学生新聞の取材日ですからね』と『地元である門司第二小学校の新聞クラブから、「コンビニエンスストアと防犯」について取材の依頼が来た』ことで午後に予定が入っていることを念押しします。そして、時間となり『イートインスペースに小学生と引率の』教員が現れました。『今日はお忙しい中、お時間を取っていただきありがとうございました!』、『ではさっそく、質問を始めさせていただきます!』と始まったインタビュー。『現在とっている対策を教えてください』などの質問に、『何て利発な子なの』と驚く光莉。『コンビニは、日常に根付いています…みなさまの生活の多くを担うからこそ、「安心安全」を第一に唱えなければいけません。不安な場所に、生活を預けられないでしょう?』と『子どもに対してもこんなに熱心に語る』志波に驚く光莉。そんな中、『以前、テンダネスで強盗事件があったことが原因なんですか?』と『ノートを見ながら』訊く小学生に思わず『「え」と声が出』た光莉は、『テンダネスで五年も働いているのに、知らなかった』と思います。『しかし志波はもちろん知っていたらしい。一泊の後、「ええ、そうです」と真面目な顔で頷』きます。『あれから十八年経ちますが、会長は決してあの痛みを忘れていないでしょう。だからいまもなお「安心安全」を説いている。ぼくはそう考えています』と答える志波は、『みなさんにとってコンビニは、ただいまと帰って来られる特別な場所であればいいと思っています』と続けます。そんな志波に隠されたまさかの過去に光が当たる物語が描かれていきます…という最初の短編〈第一話 一度だけのボーイミーツガール〉。〈第二話〉とセットになって志波の過去を見せていく好編でした。 2025年11月28日に刊行された町田そのこさんの最新作でもあるこの作品。”発売日に新作を一気読みして長文レビューを書こう!キャンペーン”を勝手に展開している私は、2025年9月に角田光代さん「神さまショッピング」、10月に窪美澄さん「宙色のハレルヤ」、そして11月には木爾チレンさん「哀を飲む」というように、私に深い感動を与えてくださる作家さんの新作を発売日に一気読みするということを毎月一冊以上を目標に行ってきました。そんな中、代表作「52ヘルツのクジラたち」で本屋大賞を受賞するなど虐待などの重いテーマを扱いながらも読みやすく、温かい再生の物語や、コミカルな群像劇を幅広く発表されている町田そのこさんの新作が発売されることを知り、これは読まねば!と発売日早々この作品を手にしました。 そんなこの作品は、内容紹介にこんな風にうたわれています。 “店長はどうして、コンビニで働きたいって思ったの?コンビニパート従業員の中尾光莉は冬のある日、休日の店長・志波三彦に遭遇する。どこかいつもと様子の違う店長だが、思いがけない出来事に巻き込まれ、彼の驚きの過去を知ることに ー。バイトと飼い猫と推しである志波樹恵琉の存在によって満ち足りた生活を送る高木恋斗。だが、彼女が門司港を離れると知り、一つの決断をすることに。新たな展開を迎える大人気コンビニ物語第五弾” そうです。この作品は累計90万部を売り上げている町田そのこさんの人気シリーズの最新刊でもあるのです。では、せっかくですのでこのシリーズがどのように刊行されてきたかをまとめておきましょう。 ● 『コンビニ兄弟』シリーズの今まで ・コンビニ兄弟ーテンダネス門司港こがね村店: 2020年7月29日刊 ・コンビニ兄弟2ーテンダネス門司港こがね村店: 2021年12月23日刊 ・コンビニ兄弟3ーテンダネス門司港こがね村店: 2023年8月29日刊 ・コンビニ兄弟4ーテンダネス門司港こがね村店: 2024年11月28日刊 ・コンビニ兄弟5ーテンダネス門司港こがね村店: 2025年11月28日刊 おおよそ一年に一作のペースで発表されてきていることがわかります。上記した通り、町田さんというと虐待などの重いテーマを扱われた作品がまず印象に浮かびますが、まるでその反動でもあるかのようにコミカルに吹っ切れたように展開していくのがこの『コンビニ兄弟』シリーズの特徴です。そして、この作品の舞台となるのが『門司港』です。 『大坂町通りを、関門トンネルの方に向かう』、『門司港内をぐるりと回った末、ふたりは関門トンネル人道の建物前まで来てしまった』、『本州にある下関市と繫がっている、海底トンネルだ。建物内にあるエレベーターで地下まで降り、そこから歩いて渡ることができる。下関までは約十五分ほどだ』。 物語では、リアルに存在する『門司港』の街をそのまま活かす形で描いていきます。作品の冒頭には『門司港』の地図も掲載されており、おおよその位置関係を頭に入れておくと読んでいてリアル感が増してもきます。その一方で、リアルの中に一点の創作が入るのが、この作品の舞台にもなる『コンビニ』『テンダネス門司港こがね村店』です。地図にはおおよその場所も記されていますが、もちろんあくまで架空の存在です。 『九州だけに展開し、総店舗数千店を超えるコンビニチェーン、テンダネスの本社ビルは、門司港から約七十キロほど離れた福岡市にある』。 この第5作では、ついに本社ビル、かつ会長まで物語に登場しますが、あくまで町田そのこさんの小説の中だけの存在です。このリアルと創作の絶妙な塩梅、融合がこの作品の一つの特徴であり、大きな魅力を放つ所以でもあるのです。 そして、そんな物語で外すことのできない存在、それこそが店長の志波三彦です。こちらも外すことなどできない、このシリーズの根幹ですので改めて触れておきましょう。作品冒頭に用意された『登場人物紹介』から抜き出します。 ● 『志波三彦』って何者なの? ・『九州地方で展開している地域密着型コンビニ・テンダネス門司港こがね村店の名物店長。あてられずにはいられない魔性のフェロモンの持ち主』 これだけだとだから何?という感じです。ただ後半の『魔性のフェロモンの持ち主』という記述がとても気になります。では、そんな彼のことを思う人たちの心の声を聞いてみましょう。 ・『志波さんがわたしに微笑みかけた瞬間を脳内再生するとさ、五秒で鼻血出るのが難点。いま、四秒で再生を止める努力をしてる』 ・『志波さまを近距離で直視し続けたら自分がどうなるのか分からないので、度のあっていない眼鏡をかけてきました』 ・『震えるほど、うつくしくかつフェロモン溢れるひとだ』 はい、全くもって意味不明です。なんなのでしょうか、これは?一人の『コンビニ店長』がまるで第一級のアイドルでもあるかのように位置付けられています。物語は、そんな志波の周りで起きる事ごとを描いていきます。 そして、そんなこのシリーズ第5作は、シリーズ作共通の構成をとります。〈プロローグ〉と〈エピローグ〉に挟まれた三つの短編が連作短編を構成しています。それぞれの短編には主人公となる人物が登場し、短い中にも起承転結をハッキリさせたコミカルでそれでいて町田そのこさんらしくシリアスな側面も併せ持つ物語が展開していきます。 ・〈第一話 一度だけのボーイミーツガール〉: 『コンビニ店員お手柄。とっさの判断が詐欺を未然に防ぐ!』と『特殊詐欺発生の被害』を未然に防いだというニュース。その件で『テンダネス本社の会長室』で表彰を受けることになったのは、『門司港こがね村店』で『勤務歴五年の店員・中尾光莉』。『お客様をよくぞ、守ってくれました』と深々と頭を下げる堀之内会長は、光莉が『門司港こがね村店』で働いていることを思い出し、『あの泣き虫で無鉄砲だったミツ坊が、こんな立派なスタッフを育てるほど立派な男に育ったんだなあ…』と感慨深く語ります。場面は変わり、『額装』された『表彰式の写真』を店に飾り毎日磨き続ける志波三彦は『光莉さんのお陰で、お客様を守ることのできるお店であるという自信がついた』とお礼を言います。そんな日、地元の小学生新聞の取材が入り、光莉は今から十八年前に『テンダネスで強盗事件があったこと』を知ります…。 ・〈第二話 二度目もまた出会う〉: 『おれ、すげえところにいるな』と、『テンダネス本社の会長室』で『キョロキョロと室内を見回す』のは秋吉舞人。『老若男女問わず絶大な支持を得て』いる『テンダネスオリジナルキャラクター「アル・パカッションくん」』の『中のひと』を務める舞人が出席している会議では、『アル・パカッションくんの今後の活動内容と方針』が話し合われています。そんな中、『門司港こがね村店において特殊詐欺を未然に防いだ』話題を出した堀之内会長は『アル・パカッションくんを使い、テンダネスは安全にご利用いただけるコンビニエンスストアであるという周知に取り組みたい』と発言します。そんな中、舞人の『隣に座っていた男性』から『会長は、十八年前の事件を忘れてないんですよ』、『テンダネスに強盗が入り、アルバイトスタッフが店内にいたお客様を庇って殺害されたことがあります』と続ける男性は…。 ・〈第三話 別れは再会のためにある〉: 『食事が美味い。毎日が楽しい』と『人生を満喫してい』るのは高木恋斗。そんな恋斗は『アルバイト先のコンビニ ー テンダネス門司港こがね村店の店長、志波三彦の妹で、目を瞠るほどの美貌を誇っている』志波樹恵琉の存在が『毎日の輝き』を担ってくれていると感じています。『高校を卒業後に、実家のある宮崎から兄の住んでいる門司港に引っ越してきた』という樹恵琉は『テンダネスがテナントとして入っているこがね村ビルの上階に住んでおり』、『こがね村ビルの住人たちともあっという間に打ち解け、アイドルのようにな』りました。『しかし恋斗は、彼女と恋愛をしたい、付き合いたいと考えているわけでは』ありません。『彼女はいわゆる「推し」だ。崇拝し、応援する対象であり、自分と交際なんてとんでもない不遜な考えだ』と思っています。『彼女の尊厳を守りつつ、適切な距離を持って、彼女の人生を応援したい』という恋斗は…。 三つの短編をご紹介しました。第1作以降、店長の志波三彦は登場こそすれ、どこか一歩引いた立ち位置を取り、短編によってはただの背景の一部に過ぎない場合もありました。それがこの第5作では、特に〈第一話〉と〈第二話〉において、志波三彦に隠された過去に光を当てる展開を見せます。 『志波が中学二年生のころ、何があったのだろう。十四歳として、いまの志波は三十三歳だから、二十年近く前ということになる。一体何があったのだろう』。 そんな思わせぶりな記述の先に展開する物語、これは面白いです。第4作では、シリーズ初の前編・後編という構成で魅せてくれましたが、この第5作では、明確に前編・後編ではないものの実質的にはこの二つの短編が二つ合わせて一つ的な展開で魅せてくれます。 『あのときぼくの人生は決まったんです』。 そんな言葉の先に志波三彦に隠された真実で魅せていく物語は、今は『フェロモン店長』とどこか軽く見られがちな印象を別物に変え、物語に深みを与えてもいきます。「コンビニ兄弟」シリーズを愛する方には是非とも読んでいただきたい作品だと思います。そして、そんな短編は、この先もまだまだ続いていくことを予感させる中に結末を迎えます。虐待など重いテーマの作品と対をなすかのようにはじけた世界を見せてくれるこの作品には、町田さんのもう一つの魅力で存分に魅せてくれるシリーズものの期待を裏切らない作品世界が描かれていました。 『ぼくは、みなさんにとってコンビニは、ただいまと帰って来られる特別な場所であればいいと思っています』。 そんな言葉を心から語る志波三彦が店長を務めるコンビニ『テンダネス』を舞台に描かれたこの作品。そこには、安定感のある筆致で魅せてくださる町田さんらしい物語が描かれていました。志波三彦の過去に光が当てられるこの作品。『○○のトレードマークである坊主頭に油性マジックで「うんこ」と書きたい衝動に駆られ、必死で耐えた』といった重厚な作品群では見ることのない町田さんのコミカルな魅力が光るこの作品。 志波三彦という人物の人気は、見かけだけではないのかもと感じさせてくれた、安定感のある作品でした。
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